7.7「協同組合はだれも取り残されない社会を実現します」集会

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毎年行われている国際協同組合デーですが、今年は来る7月7日に記念中央集会が開催されます。今回のテーマは《賀川豊彦と持続可能な開発目標(SDGs)》です。

 

●協同組合とNGOとの連携・連帯を求めて

 

協同組合と言えば、日本では生活協同組合や農業協同組合などで、その組合員数は8,000万人にも上ります(世界的には94カ国10億人の組合員)。いわば日本でも世界でも最大規模の非政府・市民団体と言ってよいでしょう。その協同組合団体(日本協同組合連絡協議会)がSDGsをテーマに取組むことは実に意義深いものがあります。

 

ご承知のように、SDGs(2030アジェンダ)は「誰一人取り残さない: Leave No One Behind 」を基本理念とし、貧困や不平等の解消、持続可能な経済・社会の実現、地球環境の保全、平和と公正な社会の確立等という17の目標(ゴール)を決めました。一方、2030アジェンダでは「広範なステークホルダーの連携」ということで民間企業も主なアクターとして位置付けられていますが、とくにその資金提供のリソースとして国連側は期待しています。

 

こういう中で、権限(権力)を有する国や資金(金力)を有する大企業に対抗していくには、市民社会側の大きな連携・連帯が必要ですが、今回の集会はその第一歩になることは間違いありません。

 

●基調講演に杉浦秀典さんと稲場雅紀さん

 

集会の内容は下記をご覧いただきますが、基調講演者は賀川豊彦記念松沢資料館の杉浦秀典さん、SDGs市民社会ネットワークの稲場雅紀さん。杉浦さんは、グローバル連帯税フォーラムの前身である国際連帯税を推進する市民の会(アシスト)の事務局を務めていただきました。

 

このたび、SDGs市民社会ネットワークから参加呼びかけがなされていますので、お時間の取れる方はぜひご参加ください(下記申し込みを参照のこと)。

 

 

         第95回 国際協同組合デー記念中央集会のご案内

 

        協同組合はだれも取り残されない社会を実現します
        ~賀川豊彦から持続可能な開発目標(SDGs)へ~

 

★7月1日(土)の第95 回国際協同組合デー(注1)を記念して、日本協同組合連絡協議会(JJC)(注2)と国際協同組合年記念全国協議会(IYC記念全国協議会)(注3)の共催で、下記の通り中央集会を東京で開催いたします。

 

★本集会では、「協同組合はだれも取り残されない社会を実現します~賀川豊彦から持続可能な開発目標(SDGs)へ~」をテーマに、賀川豊彦の思想とSDGsの基本理念の共通性に焦点を当て、協同組合の原点としての賀川豊彦から、協同組合の現在、未来を考えます。

 

★ご関心がございましたら、ぜひご参加いただけますと幸いです。また、ぜひ情報を共有していただければ幸いに存じます。皆様のご参加をお待ちしております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

(注1) 国際協同組合デー:
全世界の協同組合員が心を一つにして協同組合運動の発展を祝い、平和とより良い生活を築くために運動の前進を誓いあう日で、毎年7月第1土曜日と定められています。
(注2) 日本協同組合連絡協議会(JJC):
ICA(国際協同組合同盟) (http://ica.coop/) に加盟する国内協同組合組織の全国機関16団体で組織する連絡協議体です。
(注3) 国際協同組合年記念協同組合全国協議会(IYC記念全国協議会)(http://www.iyc2012japan.coop/) :
2012年の国際協同組合年に向けて2010年から活動してきた「IYC全国実行委員会」が掲げた目的を継承した25団体で組織する協議会です。

 

【開催概要】
★日時:2017年7月7日(金)13:00~16:00  (受付開始 12:30)

 

★場所:有楽町朝日ホール
 (東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11F)
  ・JR 有楽町駅、東京メトロ銀座駅・有楽町駅からいずれも徒歩1 分

 

★主催:日本協同組合連絡協議会(JJC)
国際協同組合年記念協同組合全国協議会(IYC 記念全国協議会)

★参加費:無料(事前のお申込みをお願いいたします)

 

<プログラム>
◆開会挨拶(13:00~13:05)
 JJC委員長/IYC記念全国協議会代表
◆基調講演(13:05~13:45)
 a. 基調講演Ⅰ(13:05~13:25)
  杉浦 秀典 氏(賀川豊彦記念松沢資料館 副館長)
   「賀川豊彦の遺産 -愛・協同・未来- 持続可能な社会への先駆者から学ぶ」
 b. 基調講演Ⅱ(13:25~13:45)
  稲場 雅紀 氏(一般社団法人SDGs 市民社会ネットワーク 代表理事)
   「持続可能な開発目標(SDGs)と協同組合への期待」

 

(休憩 13:45~14:00)

 

◆各協同組合から取り組み報告 及び 意見交換(14:00~15:55)
テーマ:「賀川豊彦からSDGs へ」
 各団体から、それぞれのSDGs 関連の取り組みを紹介し、協同組合の今後の取り組みを展望します。

 

・コーディネーター:杉浦 秀典 氏(賀川豊彦記念松沢資料館 副館長)
・コメンテーター:稲場 雅紀 氏(一般社団法人SDGs 市民社会ネットワーク 代表理事)

 

・報告者:
 * 菅野 孝志 氏(JAふくしま未来 代表理事組合長)
 * 〓橋 怜一 氏(株式会社地球クラブ 事業部長)
 * 木下 史郎 氏(日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会センター事業団東京中央事業本部 地域福祉事業所「WORKERS NET RINGS」所長)
 * 関山 順 氏(全国労働金庫協会 経営企画部長)

 

◆閉会挨拶(15:55~16:00)
 JJC副委員長/IYC記念全国協議会副代表

 

【お申込方法】
Eメールにお名前(ふりがな)とご所属をご記入の上、メールアドレス
「y-tomooka@roukyou.gr.jp」までお送りください。参加票などはお送りいたしませんので、ご了承ください。
締切:2017年6月30日(金)
※定員に達し次第締切とさせていただきます。お早めにお申し込み下さい。

 

【お問い合わせ先】
日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会
国際部 友岡有希
email: y-tomooka@roukyou.gr.jp

 

◎写真は、労働者救済のため設立された神戸購買組合(1921年:大正10年)⇒生活協同組合コープこうべのWEBサイトより

はじまる来年度税制改正の動き>グローバル連帯税の実現へ

通常国会が、(政府与党の「テロ等準備罪」採決ならびに「加計学園問題解明」が)「あまりに強引で説明不足ではないか」(6月16日付日経新聞社説)という状況にありながら閉幕となりました。

 

●通常国会の閉幕と(世界規模での)市民活動空間への抑圧

 

「テロ等準備罪=共謀罪」ですが、確実に市民・NGO活動を委縮させることになりそうです。映画監督の周防正行氏は(気づいたら密告社会になっていたという事態を避けるためにも)「萎縮せず発言を」と訴えています(同上日経新聞社会面)。

 

このような市民・NGO活動への抑圧・締め付けは、日本も含め(新興国等では暴力も伴って)世界規模で起きており、世界の市民社会は来る来月のG20ハンブルグ・サミットで“主要な議題”に市民社会の活動空間の保護を加えるよう議長国のメルケル首相に要請しています。

 

*G20ハンブルク・サミット議題における市民社会の取り扱いに関する要請書

 

●次年度税制改正に向けて:活動を本格化していこう

 

ともあれ、これからの国レベルでの主な作業は、次年度(2018年度)に向けた予算案づくり、税制改正案づくりとなってきます。どちらも8月末に概算要求(予算)、改正要望(税制)を各省庁から財務省に提出することになります。

 

グローバル(国際)連帯税についても、例年通り外務省が「国際連帯・貢献税」の新設要望を出す(私たちから言えば、外務省に出してもらう)ことからはじまります。今年は以下の3つの状況の変化がありますので、例年より活動がしやすいと言えます。

 

(1)岸田外務大臣が国際連帯税にとても前向きなこと

 

すでにお知らせしましたが、去る5月の参議院決算委員会で、(国際連帯税議連事務局長の)石橋通宏議員の質問に対して、岸田外務大臣は次のように答えました。

 

外務省としましても、また私自身としましても、…是非、国際連帯税に向けて前向きにしっかりと取組を続けていきたい。

 

(2)外務省の国際連帯税に関する調査委託報告書の公表

 

外務省は、昨年11月国際連帯税の制度設計に関する調査のため、寺島実郎氏を座長とし有識者による研究会を立ち上げ(正式名は、「国際連帯税を導入する場合のあり得べき制度設計及び効果・影響の試算等」調査委託)、その報告書が本年3月に公表されました。

 

*外務省の調査委託報告書

 

その報告書では、「我が国が今後さらに(SDGs実施等)積極的な国際貢献を行い、 国際的な影響力を拡大させるためにも、国際連帯税導入に向けた検討を進めていくことが必要」との立場から、航空券連帯税、金融取引税、炭素税、旅券手数料への課税を打ち出しました。

 

なお、研究会では(WEB)アンケート調査も実施しましたが、航空券連帯税につき「約 3/4 が定額税・定率税を支払ってもよいと回答(ただし国際連帯税に対する賛成は5割強)」という結果を得たことも報告されています。この「賛成」の数字はとても高く、予想をはるかに超えてのものでした。

 

また、この調査委託につき、岸田外務大臣は先の委員会で「調査に制度設計をお願いしたのだから、その答えを踏まえながら具体的取り組みを進めていきたい」と答えています。

 

(3)国連HLPFでのフランスの報告>国際連帯税の実施を報告

 

ご案内のように、2015年9月国連で「持続可能な開発目標(SDGs)/2030アジェンダ」が採択されて以降、舞台は持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム(HLPF :High Level Political Forum)に移りました。

 

HLPFでは4年に1回首脳級の総会を開催し、SDGs実施のレビューを行いますが(第1回が2019年)、これとは別に毎年閣僚級による自国の取組に関する自発的レビューや取組につき発信することになり、昨年からはじまっています。

 

昨年22ヵ国が自発的なレビューを行いましたが、フランスの報告が注目されます。それは先進国・ドナー国としての重要な責務である開発資金の調達に関し明確に述べたことです。

 

フランスはODAのGNI比0.7%拠出の2030年までの実施(EUの共通援助目標として)を報告するとともに、革新的資金調達としての国際連帯税(航空券や金融取引への課税)を実施し、パンデミック(感染症の世界的な流行)や気候変動への対策資金として提供している、ということを報告しました。

 

*HLPFでのフランスの報告

 

今年7月には2回目のHLPFが開催され、今回は日本政府も報告します。日本政府はぜひともフランスに続いて、先進国・ドナー国の責務としてODAの0.7%拠出ならびに国際連帯税につき報告していただきたいと思っています。

 

【フランス報告での国際連帯税の部分】
FRANCE TAKES AN INNOVATIVE APPROACH TO SUSTAINABLE DEVELOPMENT TOOLS AND FINANCING

 

In 2004, France took the initiative, with Brazil and Chile, to propose putting in place international solidarity taxes on activities that benefit the most from globalisation to provide innovative development financing in addition to budget resources. It introduced these taxes on airline tickets and financial transactions, providing funding to tackle the pandemics and take climate change action.

 

★写真は、UNITAID(国際医薬品購入ファシリティ)の新ロゴ。UNITAID(ユニットエイド)はその予算の70%弱を各国の航空券連帯税による税収で賄われており、途上国の主にエイズ・結核・マラリアという3大感染症の治療薬を購入する資金を提供しています。

【資料】6.11研究会「欧州FTT(金融取引税)の現状と課題」

611日に開催される研究会「欧州FTT(金融取引税)の現状と課題」の当日講演する資料が届きましたので、事前にお知らせます。《もくじ》は以下の通りです。

 

《もくじ》                            

・はじめに:グローバル連帯税と金融取引税

・問題設定:EU金融取引税の政治過程

1.G20サミットにおける争点化:200910

2.EUにおける議題設定:201011

3.「有志連合」諸国による決定:201213

4.実施法策定の難航:2013年~

・小括:EU金融取引税の意義と課題

・最近の動向

・今後の展望

 

★「欧州FTT(金融取引税)の現状と課題」を読む

 

さて、停滞を余儀なくされている欧州FTTですが、現在の英国総選挙でトピックとなり、またこれまでこの税制を政治的に引っ張てきたオーストリア財務相のシェリング氏は、英国のEU離脱後の新たなEU予算としてのFTTを提案しています。

 

ReuterFinancial transaction tax could go into European budget: Schelling

 

 

【研究会「欧州FTT(金融取引税)の現状と課題」】

 

◎日時:611日(日)午後230分~午後4

◎場所:文京区「アカデミー茗台7F・洋室」

    地図:http://www.city.bunkyo.lg.jp/gmap/detail.php?id=1995 

◎講師:津田久美子(北海道大学法学研究科博士課程 日本学術振興会特別研究DC1             

◎資料代:500円(会員、学生は無料)

◎申込み:「6.11研究会参加希望」とお書きのうえ、Eメールで申込みください。    Eメール:info@isl-forum.jp 

 

◇欧州の図はロイター通信に掲載されたもの

   

 

政府「骨太方針」にSDGs観点なし、幼児教育の無償化が目玉?

政府は6月2日、「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」(以下、「骨太」と略)の素案をまとめました。この「骨太」は2018年度国家予算の原型となるもので、たいへん重要な政府の政策であることは間違いありません。

 

・「経済財政運営と改革の基本方針 2017(仮称)」素案  
 

●SDGs理念「持続可能で強靱、誰一人取り残さない…」見当たらず

 

重要な政府の政策と言えば、これが持続可能な開発目標(以下、SDGsと略)観点からの捉え返しが行われているかどうか注目する必要があります。というのは、昨年12月SDGs推進本部(本部長:安倍内閣総理大臣)は『SDGs実施指針』を策定しましたが、「政府全体及び関係府省庁における各種計画や戦略、方針の策定や改訂に当たっては、SDGs達成に向けた観点を取り入れ、その要素を最大限反映する」と記述し、“SDGsの主流化”を謳っていたからです。

 

結論から言えば、この「骨太」にはほとんどSDGs観点が入っていません。かろうじて第2章「…中長期の発展に向けた重点課題」の最後の項目である「外交・安全保障」のところで「SDGs実施指針に基づく国内施策や国際協力を含めた総合的な取組…など、グローバルな課題の解決に向けた取組を推進する」と述べています。しかし、「総合的な取組」については何も語っていませんので、SDGsが完全な付け足しになっているといっても過言ではありません。

 

また本来的な「骨太」の課題としては、「一億総活躍ができず、持続可能かつ強靭とはいえない」分野を分析し、その対策を講ずることですが、その分野とは第一に「少子(高齢)化」であることは言を俟ちません。

 

●「骨太」の目玉は「保険方式」による幼児教育の無償化か?

 

その少子化ですが、「骨太」が出された当日、「昨年の出生数 初の100万人割れ」と厚労省の統計が発表されました(出生数のピークは1949年の269万6638人)。止めどなく少子化が続いていることに対し、「今後本格化する人口減少・少子高齢化は必ずしもピンチや重荷でなく、イノベーションのチャンスとして捉えるべきである」と「骨太」では強がりを言っていますが、ちょっと認識が甘いのではないでしょうか。

 

ともあれ、その少子化問題とも絡みますが、どうやら今回の「骨太」の目玉は“幼児教育の無償化”にあり、なかでも小泉進次郎議員ほかが提唱している「こども保険」にあるようです。「骨太」では、その財源につき①新たな社会保険方式、②財政の効率化、③税の3案を含めて検討するとなっていますが、どうも「こども保険」を目玉中の目玉にしようという流れとなっています。とくに、マスメディアの日本経済新聞が「骨太」に関し、「教育財源に『保険』明記」(6月3日付朝刊)として報道するなど、すでに既定路線であるかのような報道ぶりです。

 

●教育財源は保険方式ではなく税方式で、かつ「社会連帯税」(佐藤主光一橋大学教授)で

 

この「こども保険」ですが、そもそも保険は疾病や死亡などリスクに備えるものですから、教育にはとうていなじまないという本質論はともかく、多数の識者は税方式で行うべきという主張です。では、どんな税制で行うべきか?

 

現在の日本の社会保障は、年金、介護など高齢者向けの対策が優先されており、少子対策等が立ち遅れていることは明白です。そこで高齢者対策はできる限り高齢者同士で助け合い、それで浮く分を少子対策等に回すことが必要です。高齢者同士の助け合いとは、言うまでもなく困っている高齢者につき、裕福な高齢者が税制を通じて支え合う仕組みです。

 

その税制のあり方として、佐藤一橋大学教授は「健保の保険料のうち高齢者医療支援に充てている分は、金融所得などに課税ベースを広げた社会連帯税に転換すべきだ」と、下記の日経新聞で主張しています。ここでは主に社会保険のうちの健康保険料のことを言っていますが、課税ベースをいっそう広げ社会連帯税の税収を上げることができれば、高齢者の社会保障全般の財源として使うことができると思います。

 

ちなみに、2016年末での金融資産残高は、家計で過去最高の1800兆円(ちなみに企業の金融資産残高も過去最高で1101兆円)。これに0.1%という薄い税をかけても1.8兆円の税収となります。

 

また、現在の所得税が累進性にも拘わらず所得1億円をピークに逓減していくというまことにおかしな仕組みを直す(富裕層の主な所得源である株式譲渡や配当の20%分離課税制を総合課税化するなど)等々、高齢富裕層優遇措置を抜本的に改正していく余地は十分あります。

 

さらに金融資産への課税としては、金融取引税(FTT)も当然考えられます。東証一部上場株取引で717兆円、デリバティブ取引で2293兆円が昨年取引されました。また外国為替取引を見ると1京534兆円という天文学的数字となります(2016年の営業日を240日として計算)。これらの金融取引に0.01%~0.005%という超薄い税率をかけても相当の税収になることは間違いのないところです。ちなみに、一昨年12月公表したグローバル連帯税推進協議会(第二次寺島委員会)の最終報告書では、金融取引税につき8000億円~3.0兆円まで4段階のメニューが提示されています。

 

【日経新聞】社会保険料という名の税 上級論説委員 実哲也