「損失・損害/世界の国会議員の誓い」署名要請、全議員に配布

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去る11月22日、国会議員全員に対して「~革新的資金調達、国際連帯税への期待高まる~気候『損失損害』基金、何十億人もが注目」 という『国際連帯税ニュース第18号』を配布しました(ニュースレターのプリントはこちらから)。その目的は「損失と損害に関する世界の国会議員の誓いキャンペーン」に協力し署名をお願いする、というものです。

 

●署名第1号は田島麻衣子参議院議員

 

このキャンペーンには、そう数は多くはありませんが、アフリカ、南太平洋の島国、欧州、オーストラリアの国会議員等が署名してくれています(*)。日本でも多くの国会議員が署名してくれるとよいですね。署名の要旨は次の通りです。

 

私たちは、気候変動の影響に直面している世界中の人々と連帯し、COP28において、損失・損害基金があらゆるニーズに十分に応えられるよう、私たちそれぞれの立場を活かしてその完全かつ効果的な運用を支持することを誓う。

 

Dear Maiko Tajima

 

The Loss and Damage Collaboration (L&DC) and the Pan-African Climate Justice Alliance (PACJA) wish to thank you for signing the global pledge for Parliamentarians to demonstrate their support for the establishment of a fit-for-purpose Loss and Damage Fund ahead of COP28.

 

We are sincerely grateful that you have taken a stand in solidarity with the people all over the world facing climate impacts, and that you will use your respective positions to champion the full and effective operationalisation of the Loss and Damage Fund at COP28 ensuring it is adequate to meet the full spectrum of needs.

 

Yours sincearly

 

●基金の枠組み合意できたが、肝心の拠出額、拠出形態(義務か任意か)等々決まらず

 

ご承知のように、この基金問題は30年前から沈みゆく南の島々などから要求されてきたもので、それがようやく昨年のエジプトでのCOP27で設立が決まったものです。しかし、COP28で基金の具体的な運用内容を決めるべく「移行委員会」が1年ほど議論してきてまとまらず、今月4日の会合でようやく草案が決まり、これがCOP28で勧告案として提出されます(**)。

 

主な内容を簡単に見てみます。
 1)【たいへん揉めたが何とか】損失・損害に直面している脆弱に国々に資金を提供する枠組みができたこと、
 2)基金のホストは「暫定的に」世界銀行がなったこと、
 3)【肝心の】どれだけの資金が必要か、誰が拠出者で拠出形態はどうあるべきか(義務か任意か)、受益者の敵悪基準はどうあるべきか、など一切決めておらず、これらの事項の一部は基金理事会の決定に委ねられることになった

 

トピックとして、ほぼ合意されつつ最終局面で、突然米国の交渉者が「資金拠出が任意であると明確にすべき」ということで反対すると発言しました。しかし、これは後ほど撤回されました。このことに象徴されるように、米国など先進国はとにかく拠出先を絞り、かつ義務化を逃れようとしたことが目立ちました。

 

このように基金については、拠出額(途上国側は当面1000億ドル要求)はじめ肝心の資金に関するの中身が決まっておらず、COP28での議論に委ねられることになりました。基金成立のそもそもの経過からして、最も温暖化に寄与していない途上国、とりわけ気候脆弱国(国土そのものが消失してしまう!)が最も悪影響を受けるという不公正を解決していくのが衡平の原則です。従って、温暖化の原因を作ってきた先進国がまず義務的に基金に拠出しなければならないでしょう。ということで、基金についてはCOP28での議論をしっかり注視し、義務を果たさせる国際的な世論を作り上げていく必要があります。

 

(*)世界の国会議員の署名状況はこちら

(**)最終草案(第5回移行委員会)

 

※上部にあるニュースレターはクリックすると拡大します。

 

気候・開発のための国際課税タスクフォース、COP28で立上げへ!

発言するトゥビアナ

 

気候・開発に関する新しい資金創出に関してダイナミックな動きがはじまりつつあります。経過から見てみます。

 

● 6月パリ新金融サミットでは国際課税への具体的提案出されず

 

去る6月パリで『新グローバル金融協定に関するサミット』が開催され、そこでのコンセプトが気候変動問題も開発問題もともに進めるということで資金調達の方策を探り、とくに専門家やNGO、そしてケニアのルト大統領から国際課税方式による調達が提案されていました。主催者のマクロン大統領も一定の理解を示していました(事前のメディアの取材でフランスはすでに航空券税や金融取引税を実施していると語っていた)。

 

しかし、国際課税に関する具体的な提案はなく、「課税による新たな財源の可能性を検討するタスクフォース(TF)と略の立ち上げが提案されたので、9月のアフリカ気候サミットまでに最初の結論を出すことができる」というなんとも煮え切らない議長まとめが出されて終わりました。

 

● アフリカ気候サミットでは国際課税が力強く提唱されたが・・・

 

ところが、アフリカ気候サミットではTFに関する提案はないまま(議論された形跡もなく)、ただナイロビ宣言は世界の政治指導者に対して次のように呼びかけています。「化石燃料取引、海上・航空輸送に対する炭素税を含むグローバル炭素税制の提案に賛同し、さらにグローバル金融取引税によって強化すべき」、と。

 

● マクロン大統領が新しい国際課税に関するTFを提案>COP28で発足!

 

いずれにせよTFにつき半ば忘れていたところ、2日前(11月10日)から開催された『第6回パリ平和フォーラム』(注)の開催にあたり、国際NGO・グローバル・シチズンの副代表であるFriederike Röder氏からX に次のような投稿がありました。「パリ平和フォーラム2023 の開会式にて:#気候変動 と #開発 のための資金をより多く調達するための国際課税に関するTFが具体化しており、#ケニア と #フランス が #COP28 にて @LaurenceTubianaの支援を受けて発足させる予定である」。

 

続けて、Röder氏は述べています。

 

「理論的な議論を超えて、テーブルの上にある解決策(金融取引税、化石燃料税、富裕税… -)を検討することは実際に重要であり、それは、既存の公約に加え、健康へのアクセス、#気候変動への適応、#損失と損害 に資金を提供するために、多額の資金を動員することができる)

 

「このTFは、これらの税金を真に世界的なものにすることを目指す前に、できれば #COP30までに、これらの税制オプションの1つまたはいくつかを実施する国の連合体を実現する必要がある。当然だが、必要なのは政治的な意志だけだ!」

 

一方、支援するLaurenceTubiana 氏--COP21でフランス特別代表を務め歴史的な「パリ協定」作成の立役者--もX に以下のように投稿しています。

 

「気候変動に取り組むためには、資金を動員することが前提となる。再生可能エネルギーの容量を拡大し、これまで以上に深刻な影響に適応するためには、大規模な投資が必要である。 これが、本日(11月10日)パリで開催された #ParisPeaceForum2023 における世界の指導者たちからの明確なメッセージである」

 

「しかし、現在の経済状況では奇跡は起きない。新たな資金源を見つけなければならない。@EmmanuelMacron大統領が発表した国際課税に関する新しいTFを強く歓迎する」

 

「TFは、不平等に対処し、最も汚染度の高い産業が貢献できるようにしながら、気候変動と開発のための資金調達を拡大するための新たな税制オプションを検討する。鉄は熱いうちに打て、この高まりつつある機運を野心的で拘束力のある協定に変えていかなければならない」

 

● TFの発足へ!多くの政府や市民社会の参加を!

 

もともとフランスには2006年より同国外務省が常設事務局となって「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」(最盛期で60数か国が参加)があり国際課税・国際連帯税を議論してきたという経緯がありました。ですから、本当は新たにTFを設立する必要はないのですが、マクロン大統領が同グループをいつの間にかつぶしてしまったようです。

 

ともあれ、設立されるTFにフランスやケニアだけではなく(モトリー首相のバルバドスも参加のよう)、多数の政府に参加してもらうことはもとより、かつてのリーディング・グループのように専門家・市民社会代表も参加できるようにしてもらいたいと思います。ともあれ注目しましょう。

 

(注)パリ平和フォーラム:地球規模課題に取り組み、多国間協力を強化することを目的として各国首脳、国際機関や市民社会、企業の連携を推進する国際会議。マクロン大統領によって2018年より開催されてきた。

 

※写真:左はパリ平和フォーラムのロゴ。中は、マクロン大統領等の前で国際課税による資金創出を訴えるトゥビアナ氏