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第4回開発資金国際会議(FfD4)に関する提言書を提出

当フォーラムもアドバイザー団体として参加している「開発・気候資金アドボカシープロジェクト」は、6月30日~7月3日スペイン・セルビアで開催される第4回開発資金国際会議(FfD4)に関する提言書を、外務省に対して5月20日に提出しました。

 

FfD4に向けては、成果文書となるゼロからファーストドラフトまで提案されていますが(*)、当然ながら開発資金会議は途上国のための資金会議ですから基本的に途上国側の利益に立って書かれています。ところが、米国トランプ政権はここでも種々の言いがかりをつけブレーキ役を演じています(**)。

 

 

           外務省地球規模課題審議官組織 中村亮 地球規模課題審議官 
                          安藤重実 地球規模総括課長

 

    第4回開発資金国際会議(FfD4)に向けた政策提言

                              2025年5月20日
                   

 

                    開発・気候資金アドボカシープロジェクト

                       共同実施団体:アフリカ日本協議会
                             国際協力NGOセンター

                  アドバイザー団体:アジア太平洋資料センター
                           グリーンピース・ジャパン
                          グローバル連帯税フォーラム
                       セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
                         ワールド・ビジョン・ジャパン

 

 2025年6月30日から7月3日までスペイン・セビリアにて開催される第4回開発資金国際会議(The 4th International Conference on Financing for Development、以下、FfD4)に向けて、本プロジェクトの共同実施団体およびアドバイザーは以下の提言を行います。なお、本提言は必ずしもすべての団体の見解を反映しているわけではありません。

 

1. 原則

 

FfD4は、国連加盟国が合意した持続可能な開発目標(SDGs)を含む2030アジェンダの達成期限まで残り5年となるタイミングで開催されます。

 

国際社会は自国優先主義の潮流が席巻しつつあるように見えますが、一国だけでは解決できない複合的危機の中で、多国間でルールを形成し、それを尊重することが、一国主義的な潮流を克服する上でも重要になっています。また、グローバルサウスの国々が経済力・政治力を高める中で、これまでのグローバルノース主導の国際秩序は揺らいでおり、グローバルサウス諸国が公正かつ対等に参画する形で、新たな国際秩序を形成していくことも重要です。現代の開発や環境をめぐる多国間交渉で見られる厳しい南北対立は、過去の不公正な歴史の清算という観点からみれば必然的なものでもあります。日本は、そのおかれた地政学的な状況に鑑みても、自国優先主義に偏することなく、多国間主義を堅持し、グローバルサウス諸国の対等な参加に基づく、より公正で調和的な新たな国際秩序の形成に向けて対話によるルール形成に主導権を発揮することが、その国益にもかなうと考えます。開発資金会議プロセスは、その重要な柱の一つであり、日本として、国際益と国益の双方をにらみながら、粘り強い対話によって克服していくことが必要です。

 

私たちは、この国際状況にあっても、「自発的国家レビュー」(VNR)にあたって日本政府が示している「ぶれずにSDGs達成を目指して取り組んでいく」「誰も取り残さない、誰もがイノベーションの担い手になりうる日本・世界を」という決意を強く支持します。FfD4は、世界全体でSDGsを達成することをめざし、資金ギャップを埋め、国際財政構造をより公正なものにすることを目的とした、多国間の協力の仕組みやルール作りを目指すものです。日本政府には、ぜひとも交渉にて、グローバルサウス諸国の主張を踏まえてリーダーシップを発揮し、成果を出すべく尽力していただけると幸いです。

 

特に、これまで開発資金や債務問題などを主要に扱ってきたいくつかの機構や枠組みは、歴史的に先進国が主導権を握る形で設置・運営されているのが現状ですが、国連開発資金会議プロセスは、国連加盟国が対等な立場で参加し、また、市民社会やその他のステークホルダーも意見を表明できる、より民主的なフォーラムとなっています。私たち市民社会は、この点で、開発資金や債務問題等の多国間での多国間の交渉やルール作りについては、この会議プロセスを含む国連の枠組みが中心になるべきだと考えています。

 

私たち日本のNGOは、グローバル・サウス(南側)諸国の市民社会との連帯のもとに活動を行っています。私たちは日本政府に対して、公平・平等・持続可能性といった観点を踏まえ、グローバル・サウス諸国の主張を聞き、成果に反映させることを強く要望します。開発途上国の経済・社会状況が改善することは、日本が進める「人間の安全保障」の達成により近づくと確信します。

 

2. 開発資金

 

世界経済危機以降、途上国への投資や巨大新興国の資源需要の伸びなどを要因として好景気となった途上国は、経済開発に多額の資金が投入され、これらの国々も債券を発行して経済開発のための資金を確保していきました。ところが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機と、その後のインフレ・物価高、さらにこれを抑制するための利上げなどが重なり、これらの国々は債務危機に陥り、債務不履行を宣言する国も多く出現しました。現在、これら債務危機への取り組みがパリ・クラブ等を中心になされているものの、様々な困難のために進まず、これらの国々の多くは債務返済のために教育や医療、気候変動対策などに十分な資金を回せない状況となっています。

 

同時に、SDGs達成に向けた最も大きな課題の一つが開発資金ギャップであり、SDGs達成のために必要とされる費用は、以前は年間2.5兆米ドル程度であったところ、COVID-19パンデミックを経て現在は年間4兆米ドルと大きく増加しています。

 

開発資金について、第一義的に先進各国によるODA拠出目標の達成が急務です。日本は「開発途上国に対するODAをGNI比0.7%にする」という目標に対し、2022年は0.39%、2023年は0.44%(2023年)と増加したものの、2024年は再び0.39%に戻り、DACメンバーの中では第13位と、平均よりは高いものの目標にはいまだ到達していないため、2030年までに0.7%に達する道筋を示すことが求められます。また「少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与する」という目標に対し、最新の数値は0.12%であり、この達成も求められます。さらに、ODAの増加分の多くは借款が占め、貧困対策や感染症対策に効果的な贈与(グラント)は有意に増加していないところ、グラントの大幅な増加や、DAC定義によるODAのアンタイド化を進めるべきです。

 

この点について、2025年3月10日に発表されたFfD4の成果文書ファーストドラフト(以下、ファーストドラフト)では、

 

31. 国際開発協力の量を増やし、配分を強化するために(原文:To increase volumes and enhance allocation of international development cooperation)

 

政府開発援助(Official development assistance)

 

・我々は、ODAとして報告されるフローの譲許的性格を維持しつつ、ほとんどの先進国が、途上国に対するODA/GNIの0.7%、およびLDCsに対するODA/GNIの少なくとも0.2%という既存の目標を達成するというコミットメントを含め、ODAの削減を逆転させ、それぞれのコミットメントを拡大・達成するためのあらゆる努力を行うことを決定した。(原文:We decide to undertake every effort to reverse reductions in ODA and scale up and achieve our respective commitments, including the commitment by most developed countries to reach existing targets of 0.7 per cent of ODA/GNI to developing countries, and at least 0.2 per cent of ODA/GNI to LDCs, while preserving the concessional character of flows reported as ODA.)

 

・我々は、いくつかの国がODAの約束を果たし、いくつかの国がODA目標達成のための具体的で拘束力のある期限を設定したことを評価する。われわれは、他の国々にも同じことを求める。(原文:We appreciate that some countries have fulfilled their ODA commitments, and some have set concrete and binding timeframes for achieving ODA targets. We call on others to do the same.)

 

 

と記載されています。0.7%目標および0.2%目標を達成するための具体的かつ拘束力のあるタイムフレームを設けている国もあり、「我々は、[…]他の国々にも同じことを求める」とありますので、日本政府も、期限を区切ったODAの増額目標を打ち出すべきです。

 

3. 気候資金・環境アジェンダ

 

国際的な気候資金の不足が叫ばれる中、気候資金の拡充に向けた議論が気候変動枠組み条約(United Nations Framework Convention on Climate Change、以下、UNFCCC)を中心に行われてます。一方、気候資金の不足の根本的な原因は、UNFCCCの範囲に含まれていない根本的な問題である、国際資金構造(IFA)の中での不平等な仕組みにあり、その解決なくしては、気候変動課題の解決にはありえません。そのため、国際資金構造における途上国の代表制の不在を解消することが必要です。

 

国内資源動員(特にパラ22)に関しては、財政ルール及び政策全体を通して、環境及び気候保護の要請を公平な方法で主流化することを奨励すべきです。国際課税ルールは、国連租税枠組条約に向けた交渉の一環として、経済、社会、環境の3つの側面における持続可能な開発の達成に、均衡のとれた統合的な形で貢献すべきです。環境に有害な補助金は、開発途上国及び影響を受ける人々やコミュニティの具体的なニーズと状況を十分に考慮し、段階的に廃止されるようすべきです。一方、環境汚染を行う多国籍企業に対しては、世界的な利潤への追加税という形で連帯税を課し、UNFCCC及び生物多様性条約に基づくグローバルな資金調達義務に充当すべきです。

 

パラ34(a)では、UNFCCCの目的のみが言及され、原則について触れられていません。確かに時代は以前とは異なったものになっているものの、依然として歴史的に責任がある国の排出量は、非常にわずかな一部の発展途上国を除いて途上国のそれよりも圧倒的に多いのが現状です。「共通だが差異ある責任」(common but differentiated responsibilities / CBDR)を含めて、バランスのとれた表現にすることが求められます。

 

パラ34(d)に記述されている「ODAと気候変動資金について報告する際の一貫性と透明性を強化し、開発と気候に関する資金のインパクトをより適切に測定するため、総会の後援の下、政府間作業部会を設置するという提案を維持する」という条項を支持し、合意に含めてください。特に、気候資金として計上されているODAには、気候変動対策にほとんど貢献しないものも含まれていたりするなど、その計算方法には問題があります。透明性を向上させるべきです。

 

パラ34(h)の記載は曖昧かつ、民間市場メカニズムに偏重しています。ここでは、開発途上国に対する公的気候資金の提供におけるUNFCCCの資金メカニズムの中心性を強調し、これらから拠出される年間合計金額を2022年の水準から2030年までに3倍にすることにコミットして下さい。

 

貿易に関するパラ39では、デユー・ディリジェンス(Due Deligence、以下、DD)について言及があるものの、先住民や地域コミュニティに対する自決権の尊重や、環境保護についての言及がまったく不十分です。DDについては、「人権DD」と「環境DD」のように明記するとともに、その土地を所有したり、そこにすむ人々の自決権を尊重することを明記すべきです。

 

4. 国内資源動員・国際課税

 

国内資源動員の観点から国際協調による税の衡平性と富の再分配が求められる中、2024年11月、国連租税枠組条約の骨子案は125か国の圧倒的多数をもって採択されました。しかし、日本は税制に関する広範なコンセンサスが反映されていないことなどを理由として、反対票を投じています。この点について、ファーストドラフトでは、

 

23. 国際租税協力を強化し、国際租税規則がすべての国、特に発展途上国の多様なニーズ、優先事項、能力に対応できるようにする。(原文:To strengthen international tax cooperation and to ensure that international tax rules respond to the diverse needs, priorities, and capacities of all countries, especially developing countries:)

 

• 我々は、国際的な租税協力が完全に包括的であり、全ての者にとって有益であることを確保することを約束する。我々は、国際的な租税構築における途上国の発言力と代表性を強化することを決意する。我々は、国際的な租税協力の枠組みが開発途上国に与える影響を慎重に分析し、衡平な利益を確保し、開発途上国特有の課題に対処することの重要性を強調する。(原文:We commit to ensure that international tax cooperation is fully inclusive and beneficial to all. We resolve to strengthen the voice and representation of developing countries in the international tax architecture. We emphasize the importance of careful analysis of the implications of international tax cooperation frameworks for developing countries, ensuring equitable benefits and addressing their specific challenges.)

 

• 我々は、国連国際租税協力枠組み条約とその議定書に関する交渉を引き続き支持し、建設的に関与していく。(原文:We will continue to support and engage constructively in the negotiations on a United Nations Framework Convention on International Tax Cooperation and its protocols.)


と記載されています。また、国連租税枠組条約の交渉に建設的に関わることも表明されています。公平な税制を確立するために、日本政府はこのファーストドラフトによる提案にある通り、国連租税枠組条約交渉に関して各国との交渉を続けるなど、積極的な関与が求められます。

 

開発に関する追加的資金の観点からは、航空券連帯税や金融取引税などの国際連帯税により、国際的に公的資金を捻出し、社会課題に投資することが極めて重要です。2020年の「SDGsの達成のための新たな資金を考える有識者懇談会」では、航空券税に関しては「国際航空事業が正常化した段階で再考すべき」とされましたが、その後も具体化に至っていません。世界の富の配分の逆進性が高まり、貧困・格差が加速している現在、所得税や法人税の累進化を強め、税と社会保障による所得再分配機能を上げる必要があります。

 

「開発資金が大きく不足している現状で、これに対応しギャップを埋めるという観点からは、国際開発金融機関(MDBs)の改革、迅速な債務救済を行い重債務状況にある国を返済負担から解放すること、また、途上国の多くが重債務・気候危機など複合的危機にあることを踏まえ、これらを克服するために、今一度、SDR(特別引出権)の再配分を行い、その多くを低所得国や下位中所得国に再分配することによって、これらの国々において十分な資金流動性を確保し、資金アクセスの向上、必要な開発資金や気候資金の確保を実現することが必要です(詳細は、次節「5.債務持続可能性、国際財政構造の変革」参照)。

 

OECDで国際課税への合意はなされましたが、収益構造のグローバル化により、各国の税源が浸食され、また、グローバルな利益移転により超富裕層らが各国の徴税を逃れて資産を蓄積するという現象はいまだ改革されていません。その中で、グローバルに利益を得る超富裕層の資産は膨れ上がり、2024年現在、世界トップ10位の資産家の資産合計額(240兆円)は世界のODA総額(34兆円)の7倍に達しています。一方で、先進国を含め、各国は本来、各国の社会・経済開発や気候変動対策、債務の解消などに活用できるはずの公的資金をみすみす喪失する状況にあります。こうした問題を解決するには、グローバルな税源浸食や利益移転の結果として巨額な資産を築いている超富裕層への適切な課税制度は不可欠です。これは、国際課税と各国での富裕層課税の双方によって達成される必要があります。

 

この点について、ファーストドラフトでは、

 

22. 各国が必要な資源を確保し、それが透明性をもって持続可能な開発に沿った形で集められ、使われるようにする。(原文:To ensure that countries have the necessary resources, and that they are collected and spent transparently and in alignment with sustainable development:)

 

財政制度と持続可能な開発との整合性(Alignment of fiscal systems with sustainable development)

 

e) […] 我々はまた、国家主権を尊重しつつ、国際協力に支えられ、累進的な税制と富裕層への課税を促進・強化する。(We will also promote and strengthen progressive tax systems and the taxation of high-net-worth individuals, supported by international cooperation, while respecting national sovereignty.)



と記載されています。

 

しかし、日本政府が2025年の所得分から適用している「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化のための措置」については、「税負担の公平性の観点」からのみ導入されており、気候変動や貧困・格差対策などの地球規模課題に使われるわけではありません。グローバル・サウス諸国が求める地球規模課題への対処にも、これらの税収が使われるべきです。

 

5. 債務持続可能性、国際財政構造の変革

 

多くの国が深刻な債務危機に陥っており、対外債務の支払額は過去30年間で最高水準に達しています。FfD4において、現在の債務危機を公正・迅速かつ有意義な方法で解決し、透明性と責任ある貸借ルールを通じて将来の危機を防止するような財政構造を構築することが不可欠です。

 

この点で、ファーストドラフトでは、

 

43.[…]国連において政府間プロセスを開始し、債務構造のギャップを埋めるとともに、多国間ソブリン債務メカニズムを含みつつ、これに限定されない、債務の持続可能性に対処するための選択肢を模索する。(原文: […] we will initiate an intergovernmental process at the United Nations, with a view to closing gaps in the debt architecture and exploring options to address debt sustainability, including but not limited to a multilateral sovereign debt mechanism.)

 

と記述されており、これを歓迎します。

 

これらは、短・中期的な対処療法では解決できない構造的な課題であり、資金拠出の意思決定や実施をめぐる不平等な制度を改革する必要があります。IMF・世界銀行、OECDなど、主要な経済先進国が意思決定の中心を占め、開発資金や気候資金の受け手である途上国の意見が反映されない仕組みは是正されなければなりません。

 

例えば、2024年8月24日と25日に日本で開催されたアフリカ開発会議(TICAD)閣僚会合共同コミュニケにおいて、「我々は、国内外の資金源を動員する観点から、税制システム改革について協力することの重要性を認識した。我々は、アフリカ開発銀行への特別引出権(Special Drawing Rights、以下、SDR)の分配、アフリカの持続可能で安価かつ衡平な資金へのアクセスの促進及び再発する対外債務危機への対応を含め、AUアジェンダ2063及び持続可能な開発目標のためのアジェンダ2030を加速する投資のための資本を動員する緊急性を認識した」と言及されています。アフリカ連合やアフリカ諸国は、2023年9月にも「アフリカ気候サミット」を開催し、気候危機に対処するためのSDRの新たな配分などを含め、必要な資金確保を積極的に主張しています。日本を含む先進国はこれを支持し、実現に向けて取り組む必要があります。

 

SDRの配分および途上国への分配については、IMF・世界銀行でも議論が進んでおり、脆弱国の財政再建や気候適応資金への活用が期待されています。日本政府は、これまでもG7諸国の中でも積極的にSDRの活用などに取り組み、アフリカ開発銀行を通じたSDRの分配に積極的に取り組み、他のG7諸国にも同様の動きを呼びかける必要があります。

 

特に、今日の国際的な危機にあって、日本政府はSDRに関して、次のような政策を国際的に呼びかけるべきです。
 

◎ IMFによって2021年に6,500億ドル相当が発行されたSDRについて、 グローバル・ノース(北側)諸国は、この割り当てから、流動性と準備資産を維持しつつ、迅速に50%以上をチャネリングすること。

 

◎ 途上国の流動性と債務危機への対処を支援するための新たなSDRの発行を検討すること

 

日本政府は流動性と準備資産を十分に有しているので、これまでの40%のチャネリングに加えて、残りの60%(238億ドル相当)をチャネリングすることが可能です。

 

(以上)

 

(*)FfD4のHP参照: https://financing.desa.un.org/ffd4 

 

(**)【ロイター通信】米、開発資金巡る改革案に反対意向=国連会議草案文書

https://jp.reuters.com/markets/commodities/XIWBVQ3N6NO75NS25PJBGEEWEU-2025-05-05/

 

「米国が課税や化石燃料補助金、信用格付けといった項目に反対。トランプ政権が『米国第一主義』を掲げる中、『気候』『ジェンダー平等』「持続可能性』といった記載を削除することも求めている。」

 

 

【資料】SDGsに関する自発的国家レビュー(VNR)への意見

SDGsロゴ

 

外務省が「持続可能な開発目標(SDGs)に関する自発的国家レビュー(VNR)」についてのパブリックコメントを募集しましたので、提出しました(4月18日)。

 

外務省案はこちら

 

◎ コメントの主旨:

 

公的な開発資金調達を図るということで、国際連帯税のことはもとより、SDR(特別引き出し権)や円借款の利子の利用ということも提案しました。

 

SDRについては外貨準備として585.4億ドル(約8.5兆円)も保有されています。外貨準備全体としては1兆2,725億ドルもありますので、SDRはあってもなくても大勢に影響はありません。従って、SDRは途上国支援に回せと。なお、昨年の自民党の総裁選挙で当時の茂木幹事長も溜まりすぎた外貨準備金を利用しようと言っていましたが、今やいろんな政党の人が目を付けています。

 

円借款の利子は、額は多くはありませんが、1兆2,000億円程あります。これに財務省からの出資金8兆円と合わせて自己資本と言っています。この1兆2,000億円(の一部)を無償資金の方に使うべきという提案です。ご承知のように、円借款とは有償資金(ローン)で日本のODAの70%近くを占めていて、結局利子が生じそうなところに融資しています(内容は圧倒的にインフラ整備)。従って、アフリカ等のLDCs(後開発途上国)にはほとんど融資されていません。以下、提出した意見です。

 

 

SDGsに関する自発的国家レビュー(VNR)への意見書

 

意見:

 

(全般)

 

2030年に向けてのSDGs達成がきわめて困難な状況にあることをまず確認しましょう。それは、第一に、新型コロナウイルス・パンデミックやロシア・ウクライナ戦争などの地政学的危機を経て、SDGs達成の折り返し時点の2024年においても、その進捗状況が15%程度という危機的状況にあったこと(「国連未来サミット」)、です。第二に、今年に入り、米国トランプ政権が米国際開発庁(USAID)を実質的に閉鎖し、世界中での食料や医療支援などの人道援助を極めて困難にし、その上に「SDGs拒否」を表明したこと、です。加えて、欧州の国際援助有力国が遺憾なことにODA拠出を削減し始めました。

 

こうした状況から、私たちはSDGs達成の危機的事態を確認するとともに、しかし「一人も取り残さない」という理念にもとづき厳しいながらも前進を図っていかなければなりません。

 

SDGs達成危機の最大の要因は、途上国での取り組みの停滞と後退にありますが、何よりも開発資金の不足によるものです。つい昨年まで、その資金ギャップは年間4兆2000億ドルと試算されていました。一方、世界のODA資金はトータルで2,121億ドル(2024年)であり、一桁も足りません(しかも、多くをウクライナ支援に拠出)。

 

そこでこのギャップを埋めるべく、国連は資金調達の手段として、「政府開発援助の目標の達成、民間セクターの投資、国内リソースの動員、包摂的かつ効果的な国際租税協力、富裕層に対する国際的な最低課税水準の検討など」(「未来のための協定」より)を提言しました。このような提言をどう具体化していくか考えていきます。

 

(重点事項④:国際社会との連携・協働)

 

● 世界銀行や主要援助国はもっぱら民間セクターの投資(民間資 金の動員)に力点を置いていますが、最も必要としている国や   セクターに届いていないという現実があります。それは「…民間資金の動員は、ほとんどが中所得国で、銀行・金融サービス、エネルギー・産業、鉱業、建設など、収益源が明確なセクターで行われている」(OECD/UNDP、2021年)からです。

 

 ● 債務危機に陥っている国や気候脆弱国等、最も資金を必要としている国やセクターにはやはり公的資金が必要です。その第一歩はODA資金であり、我が国は財政的に困難な中で削減を行っていないことは多としますが、しかし国際目標からほど遠いことを反省しなければなりません。すなわち、2023年時のODA拠出は、GNI比0.7%目標に対して0.44%(2024年0.39%)、LDCs向け目標GNI比0.15~0.20%に対してわずか0.09%に留まっています。毎年目標を掲げるだけではなく、目標実現のための工程をきちっと打ち立てるべきです。

 

 ● 我が国のODAのあり方の抜本的改革が必要です。開発協力大綱の改定において、重点政策として「人間の安全保障」の理念を踏まえ、脆弱国・地域等への協力に取り組みつつ、SDGs達成に向けた取組を加速化すると謳っていますが、ODAの主力は円借款(有償援助)であり全体の63.0%を占めており、無償援助=贈与は36.1%です(2022年)。円借款方式ではプロジェクト実施後、元本と利子を返還してもらわないとなりませんが、いくら利子が一般の金融市場より低いとはいえ、一定利益を得ていなければ返還は可能ではありません。このことがLDCs向けがわずか0.09%に留まっている理由と思われます。脆弱国・地域等への協力はやはり無償援助資金でなくてはなりません。

 

 ● さらに、円借款融資の地域の極端な偏りです。承認額で見ると(全体で2兆1,258億円)、アジアが77%、アフリカが1.2%、残高でみると(全体で1兆4,207億円)アジアが76%、アフリカが4%となっています(2023年)。本当に開発資金を必要としているサブサハラ諸国など債務危機に見舞われている国への援助を、地域を超えて増やすべきです。

 

(開発資金)

 

● 援助国においてはどの国も財政が厳しく、公的資金としてのODAを飛躍的に増加させることが困難であること、また民間資金の動員も期待できないことから、革新的な資金調達メカニズムを考えるべきです。

 

 ● ひとつは、国際連帯税方式です。もっとも実施が容易なのは航空券連帯税である。実際フランスや韓国、チリ等が実施し、連帯税ではないが航空券税はほとんどの国で実施されています。我が国では出国税として国際観光旅客税が実施されているので、入国税として実施すべきです。また、株式取引税としての金融取引税も有力です。連帯税ではないが、30数か国で実施されています(我が国でもかつて有価証券取引税として実施されていた)。

 

● ふたつは、国際条約を使っての国際連帯税の実施で、現在「国際租税枠組み条約」の議論が始まっていますが、この条約下の議定書において、超富裕層への課税や為替取引税としての金融取引税、などが考えられます。

 

 ● みっつは、SDR(特別引き出し権)の利用です。2021年にIMFは貧困国へのSDR再配分を決め、我が国は当初の20%から40%に引き上げ159億ドル分を拠出し、国際社会から評価されました。ところで、我が国の外貨準備を見ますと、総額は1兆2,725億ドルですが、うちSDRは585.4億ドル(約8兆4,883億円)あります(2025年3月末現在)。つまり、総額の5%程度です。従って、このSDRの585.4億ドルをそっくり途上国への援助に使っても外貨準備という枠から見れば大勢に影響はありません。毎年4,000億円をODAにプラスしても21年拠出が可能です。

 

● よっつは、円借款で生ずる利益金の無償資金への繰り入れです。有償資金協力勘定を見ますと、準備金として表記されている利益金は1兆2,554億円あります(26年度9月末)。金額的にはそう多くはありませんが、利益金の一部をまた円借款使うのではなく、無償資金に使うようにすべきです。

 

                  グローバル連帯税フォーラム・田中徹二

 

バフェット氏の納税の勧めとフランス議会での超富裕層への課税採択

 3人組

 

ウォーレン・バフェット氏(94歳)が週末発表した「株主への手紙」で納税の重要性と(遠回しながら)米政権を批判していることが話題になっています。他方、フランスでは国民議会(下院)で超富裕層への課税を採択しました。

 

■ バフェット氏、トランプ政権の「愚かな財政政策」等をやんわり批判

 

2月25日の日経新聞弟子版に『バフェット氏が異例の政治発言 通貨安定を要望』という興味深い記事が配信されていたので、簡単に紹介します。

 

バフェット氏とは、言うまでもなく、世界最大の投資持株会社であるバークシャー・ハサウェイの筆頭株主であり、同社の会長兼CEOを務める大富豪ですが、60年前に会社を興して以降バークシャーの税金は1016億ドルに上り、「税金をまったく支払えなかった恥ずべき時期もあった」と述懐。「税金を払えないことは『華やかな新興企業とは異なり、米経済の柱を支える企業にとっては黄信号だ』と指摘。巨額の税金を払うバークシャーの成功を誇った」と記事は述べています。

 

その上で、トランプ大統領の富裕層を含めた減税政策等に対し、「『愚かな財政運営がまん延すれば紙幣は価値を失う。米国でも危機にひんしている』『通貨の安定にはあなた方の知恵と用心が必要なことを決して忘れないで』」と述べています。

 

内外に傍若無人な振る舞いを行っているトランプ政権ですが、富裕層への大減税や関税強化等の「愚かな財政運営」でよりひどいインフレ・物価高を招来し、足元から政権弱化を招くのではないかと思われます。

 

フランス国民議会(下院)、超富裕層への課税を採択!!

 

2月20日フランス国民議会(下院)はエコロジー党などの議員が提出した超富裕層への課税、通称「ズックマン税」案を、116票の賛成、39票の反対で採択しました。これが可能となったのは会派第一勢力である極右の国民連合(RN)が棄権したという背景があったようです(それにしても議員定員が577人なのに、どうしてこんなに投票者が少なかったのか?)。

 

このズックマン税とは、経済学者ガブリエル・ズックマンの提案に基づいて、「1億ユーロ以上の資産を持つ納税者の最も裕福な0.01%に対して、資産の少なくとも2%を税金として支払う富裕税の最低額を設ける」法案で、約1800人が対象となるようです。そして税収は150億から250億ユーロ(約2.3~3.9兆円)に上ると試算されています。ただし、実現の可能性ですが、上院では右派が多数なので否決されると予想され、かつ憲法評議会での関門もあるということで、かなり困難ということです。

 

それでも、「これは歴史的な勝利だ! フランスにとって大きな第一歩であり、他の国々にも刺激を与える可能性がある」(ズックマン氏)、「勝利!超富裕層の富に2%の課税を導入する私たちの法律案が国民議会で採択されました」(提案者の一人のクレマンティーヌ・オータン氏)と意気は高いようです。

 

超富裕層への課税については、昨年のG20リオデジャネイロ・サミットで提案し、これにフランス、スペイン、南アフリカ等も賛同したという経緯があります。ですから、フランスのマクロン大統領の与党は積極的にズックマン税に賛成すべきですね。日本でも超富裕層は少ないながらも100億円以上の資産を持つのは多くて1000人程度おられるようです。

 

※写真は、左からバフェット氏、ズックマン税を提案したエヴァ・サス氏、ズックマン氏

 

バチカンでスティグリッツ教授やサンチェス西首相らが議論=税の公正と連帯

4人組

 

2月13日、国際法人税改革独立委員会(ICRICT 注1)とローマ教皇庁社会科学アカデミー(PASS)の主催による「税の公正と連帯:包括的で持続可能な共通の家に向けて」と題するハイレベル対話が開催されました。これには世界の政治的リーダーや経済学者、宗教団体、市民団体などが参加しました。米トランプ政権が国際協力・協調を次々と壊していく中で、国際租税協力の面からグローバルな連携を強化しようという有意義な取り組みでした。

 

このイベントには、道徳的責務としての税の公正を長年擁護してきた教皇フランシスコ(教皇は欠席されたもよう)のほか、南アフリカの元大統領タボ・ムベキ氏、ノーベル賞受賞者でICRICT共同議長のジョセフ・スティグリッツ氏、ICRICT委員でEU税務監視機関の所長ガブリエル・ズックマン氏、国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長ウィニー・ビヤニマ氏など、著名な講演者が登壇しました。また、ビデオメッセージが、ブラジルのルーラ・ダ・シルバ大統領、 スペインのペドロ・サンチェス首相から寄せられました。

 

プログラムは、セッション1:世界的な不平等の拡大と課税の役割、セッション2:公正な国際税制の提案と機会、セッション3:税制改革のグローバル・アジェンダ、というもので、フルテキストは下記をご覧ください。

 

まず教皇フランシスコの開会の辞ですが、ご病気のためか無かったようですので、プログラムに載っていた言葉を紹介します。

 

「富の再分配を支持し、常に権力者に踏みにじられる危険にさらされている貧しい人々や最も弱い立場の人々の尊厳を守るための税制を求めつつ、税金は公正で公平で、各人の支払い能力に基づいて設定されなければなりません」

 

また、国連で交渉がはじまった国際租税枠組条約に関して重要と思われる発言を行ったのが、スペインのサンチェス首相です。そのメッセージを紹介します(注2)。

 

第一に、超富裕層への効果的な課税に関する昨年の突破口を土台としなければならなりません。ブラジルのG20議長国の下、私たちはこの問題を世界的に持ち込むことで、画期的な成果を収めました。格差の拡大は経済的な問題だけでなく、道徳的な問題でもあります。億万長者の納税額が一般人より少ない場合、社会的信頼は損なわれ、平等性は損なわれます。困難はありますが、この課題を消し去るわけにはいきません。

 

第二に、私たちは国際的な租税協力に関する国連条約の交渉に建設的に関与しなければなりません。特定の関係者がいないからといって、すべての人に恩恵をもたらす制度の推進を阻むべきではありません。私たちは、包括的で野心的で、近年の成果を土台とする枠組みを構築しなければなりません。

 

第三に、大企業が自国を気にせず、利益を生み出した場所で税金を払うようにしなければなりません。

 

なぜ重要かと言いますと、枠組条約交渉の第1回組織会合の主要議題であった、「意思決定ルール」を決めるにあたり欧州グループがコンセンサス方式の修正案を出し、これにスペインも賛成しました(ノルウェーだけが棄権)。しかし、このサンチェス首相は「包括的で野心的で、近年の成果を土台とする枠組みを構築する」と言っていますので、ぜひスペインが先頭になって他の諸国を説得し、欧州グループとグローバルサウス諸国とが連携、協調し、文字通り野心的な条約を作っていただきたいものです。当然日本政府もスペインやノルウェーを見習うべきです。

 

「税の公正と連帯:包括的で持続可能な共通の家に向けて」プログラム

 

<ハイレベル対話>

税の公正と連帯:包括的で持続可能な共通の家に向けて

 

午前 8:40~9:40  開会の辞

 

メッセージ:

フランシスコ教皇

ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ、ブラジル大統領

ペドロ・サンチェス、スペイン首相

タボ・ムベキ閣下、アフリカからの不正資金流出に関するハイレベル委員会議長南アフリカ元大統領

ノシフォ・ジェジーレ、イタリア共和国駐在南アフリカ大使

アミナタ・トゥーレ、セネガル大統領府高等代表、マドリッド・クラブ会員、セネガル元首相

李俊華、国連事務次長

 

午前9:40~11:15 セッション1: 世界的な不平等の拡大と課税の役割

議長: マーティン・グスマン、ICRICTコミッショナー、PASS常任アカデミー会員

 

このセッションでは、その日の導入的な議論を提示し、今日の世界的な不平等の主な課題について取り上げます。不平等はどこから来るのか? 主な傾向は何か? 税金はどのようにして世界レベルと国内レベルの両方で不平等を強化し再生産するのか? 国際課税との関係は何か? 不平等と税の不公平がなぜ私たちの民主主義を危険にさらしているのか?

 

主な講演者: ジョセフ・E・スティグリッツ、ICRICT共同議長、PASS名誉アカデミー会員。

ジャヤティ・ゴーシュ、ICRICT 共同議長

ゲラシモス・トーマス、欧州委員会税制・関税同盟事務局長

ウィニー・ビヤニマ、UNAIDS 事務局長

アビゲイル・ディズニー、Patriotic Millionaires 会員

参加者によるディスカッション

 

11:45-13:30 セッション 2: 公正な国際税制の提案と機会

議長: ペドロ・アブラモベイ、Open Society Foundations。

 

このセッションでは、多国籍企業と社会の最も裕福な人々が公平な税金を支払うように ICRICT が提案した提案について詳しく説明します。今日の国際税制は破綻しており、社会の最も強力な人々に偏っています。1 世紀前に富裕国によって創設された、非グローバル化の世界で設計された国際税制は、多国籍企業による国境を越えた利益移転 (時代遅れの移転価格システムによって促進される)、激化する課税競争 (底辺への競争とも呼ばれる)、デジタル化、財務上の秘密、海外の隠れた富などにより、大きな圧力にさらされています。これらすべてが、税金の濫用による年間数十億ドルの損失につながり、特に公共サービス、気候変動への適応、グリーン・トランジションに資金を供給するために多額の収入を必要とする開発途上国で顕著です。この状況において、ICRICT は、親会社と子会社を単一のエンティティとして扱い、定式化されたアプローチで多国籍企業の世界的な利益を各国に配分し、世界的危機から利益を得るセクターの不当な利益に課税できるようにするためのさまざまな提案を策定しました。さらに、委員会は企業と超富裕層に対する最低課税基準を提案しています。これらの提案はすべて、不平等を減らし、公正かつ合法的で持続可能な国際税制を実現することを目的としています。

 

主な講演者:

ガブリエル・ズックマン、ICRICT コミッショナー

エドマンド・フィッツジェラルド、ICRICT コミッショナー

リカルド・マートナー、ICRICT コミッショナー

キム・ヘナレス、ICRICT コミッショナー

ローガン・ワート、アフリカ税務行政フォー​​ラム

チェナイ・ムクンバ、税制正義ネットワークアフリカ

ベンジャミン・エンジェル、欧州委員会の直接税、税務調整、経済分析および評価担当ディレクター

参加者によるディスカッション

 

午後 3:00 ~ 4:45: セッション 3: 税制改革のグローバル・アジェンダ

議長: ホセ・アントニオ・オカンポ、ICRICT コミッショナー

 

現在の課税に関するさまざまな問題と、それが今日見られる不平等のレベルと本質的に関係していることから、国際課税制度を改革し、税金の濫用、タックスヘイブン、金融の不透明性と闘うために、10年以上にわたって国際協力プロセスが進められてきました。現在、さまざまな段階のプロセスがあります。完了に近づいているものもあれば、進行中のものもあり、開始段階にあるものもあります。これらのプロセスには以下が含まれます。

  ・G20/OECDのBEPSイニシアチブに関する包括的枠組み

 ・国際租税協力に関する国連枠組条約

 ・ブラジル議長国が推進する、超富裕層への課税に焦点を当てたG20の新しい国際アジェンダ

 ・2025年の第4回国際開発資金会議

 ・2025年の第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)

 ・ラテンアメリカ・カリブ海税プラットフォーム(PTLAC)など、革新的な地域協力プロセスの方向性を定めたさまざまな地域イニシアチブ。

 ・このセッションでは、これらのさまざまなプロセス、その成果、利点と限界、そして2025年に国際レベルと地域レベルの両方で出現する新しいプロセスによって生じる改革の機会について取り上げ、分析します。

 

 主な講演者:

イレーネ・オヴォンジ・オディダ、ICRICT コミッショナー

エヴァ・ジョリー、ICRICT コミッショナー

イヤボ・マーシャ、国際通貨開発に関する 24 か国政府間グループ (G-24) のディレクター

ホセ・マヌエル・サラザール・シリナックス、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会 (ECLAC) の事務局長

パスクアーレ・トリディコ、欧州議会議員、FISC 税務小委員会の議長

ギラッド・アイザックス、経済正義研究所所長

参加者による討論

 

午後 4:45~5:00  閉会の辞

ジョセフ・E・スティグリッツ、ICRICT 共同議長、PASS 名誉学術会員

ジャヤティ・ゴーシュ、ICRICT 共同議長

 

※イベント全体の動画はこちらから 

 プログラムの原文テキストはこちらから 

 

(注1)ICRICT(Independent Commission for the Reform of International Corporate Taxation )

⇒グローバル時代における公正な企業課税(多国籍企業課税)の実現に向けて提言を行う国際NGO。

・共同議長: ジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大学教授、ノーベル経済学賞受賞)、ジャヤティ・ゴーシュ(マサチューセッツ大学教授)

委員として、トマ・ピケティやガブリエル・ズックマン、ホセ・アントニオ・オカンポほか

 

(注2)サンチェス首相のメッセージ

 

◎写真は、左からフランシスコ教皇(BBCから)、J・スティグリッツ氏、ウィニー・ビヤニマ氏、サンチェス首相 

国際租税協力枠組条約の第一ラウンドの結果と今後について

 第一組織会合

 

当フォーラムのブログにPSI(Public Services International)東アジア事務所代表の青葉博雄さんから、先日開催された国際租税協力枠組条約交渉についての投稿がありましたので、共有します。

 

1. 『国際租税協力枠組条約』交渉始まる

 

 

2月3日から6日までの間、ニューヨークの国連本部において『国際租税協力枠組条約(枠組条約)』政府間交渉委員会のオーガニゼーショナル・セッション(今後の交渉におけるさまざまなモダリティを決定するセッション)が開催された。主な議題として、オフィサー(議長、副議長等)の選出、決定に関するルール、2つ目の初期議定書の主題の決定が挙げられた。(「議題案」参照)

 

先ず初日の会議冒頭、委員会事務局のオフィサー(議長1名、副議長18名、報告者1名)の選出が行われ、エジプト代表が議長に選出された。また、アジア太平洋グループからは中国、インド、サウジアラビア、シンガポールが副議長に選出された。(「委員会作成資料」参照)

 

決定ルールに関しEU、日本を含む先進国グループがコンセンサス方式を、そしてアフリカ・グループを中心とする途上国グループが単純過半数方式を求める中、交渉が開始された。そして最終的に枠組条約については単純過半数方式、議定書の採択については3分の2の賛成を要する方式を採ることとなった。

 

昨年末に採択された国連国際租税協力枠組み条約付託事項(TOR)は、「枠組み条約と同時に2つの初期議定書を策定すべきである。」とし、その一つを「デジタル化とグローバル化が進む経済において、国境を越えたサービスの提供から生じる所得に対する課税」とした。そして今回の交渉において次の4つの優先課題から二つ目の初期議定書の主題を決定することとなっていた。

 

1)デジタル化経済への課税 2)税に関連した不正な資金の流れに対する対策 3)税務紛争の予防と解決 4)富裕層による脱税や租税回避に対処し、加盟国での効果的な課税の実施

 

そして、交渉の結果、「税務紛争の予防と解決」を二つ目の初期議定書の課題とすることを決定した。

 

2. 米国政府の交渉離脱、日本政府の反応、そして全体の雰囲気

 

交渉初日、米国は「『国連国際租税協力枠組条約』の目標は米国の優先事項と一致せず、歓迎できない行き過ぎの所望である」として交渉を離脱した。米国代表は会場を去る前、他国代表に対し交渉を拒否するよう同調を呼びかけた。米国以外、交渉を離脱する国は現れなかったが、交渉最終日(6日)の日本政府代表の発言は市民社会団体代表者を含む観衆の注目を浴びた。

 

日本政府代表は、「日本は、交渉プロセスがコンセンサスに達することができるかどうかを注意深く見守りながら、今後の交渉への関与を評価していく(Japan will assess its future engagement in the negotiation, while closely monitoring whether the process can successfully reach a consensus.)」と述べ、コンセンサスに達しない場合は交渉を離脱する可能性もあるとも捉えかねない発言を行った。(「日本政府代表発言部分の映像(16分40秒~)」参照)他の多くの先進国がコンセンサス醸成の必要性を訴える場面はあるものの、引き続き交渉プロセスへの建設的な貢献をする旨の発言を行う中、日本政府代表の発言は特異なものとして映ったと言える。

 

GATJ(税正義グローバル連合)のエグゼクティブ・コーディネーターであるデレジェ・アレマエフ(Dereje Alemayehu)は交渉の全体の雰囲気について、当初、アフリカ・グループとOECDグループの双方が自身の提案の受け入れを迫る緊張感に満ちた雰囲気があったが、最終的にはアフリカ・グループが議定書について3分の2の賛成による採択をOECDグループが枠組条約について単純過半数による採択を受け入れる、双方が譲歩し合う結果となった、と述べている。

 

3. 今後の交渉スケジュール

 

毎年3回以上政府間交渉を行い、『国際租税協力枠組条約』と2つの初期議定書を策定し、2027年の国連総会に提出することが予定されている。今年は3回の政府間交渉が行われる予定であるが、それぞれの交渉期間の議題に沿って事前にGATJとして政策ポジションを策定していくことになる。同ポジションについては当勉強会としても適宜共有を図る予定である。

 

4. 私たちの今後の活動予定

 

情報発信に加え、立法府、特に衆議院および参議院の財務金融委員会メンバーに対するロビーイング(政策提言活動)を行っていく。なお下記の問題についての情報発信に向け準備を進めている。

 

  • 1月20日、米国政府は2021年10月のOECD主導で合意した国際課税ルールを「前政権下で支持されたOECDのグローバル・タックス・ディールは、米国内の所得に対する域外管轄権を認めるだけでなく、米国企業と労働者の利益に資する税制を制定するわが国の能力を制限するもの」と評し、合意枠組みからの離脱を表明した。(「覚書」参照)日本政府は上記の同意された国際ルールに基づき国内ミニマム課税(QDMTT)および軽課税所得ルール(UTPR)の導入を2025年度税制改正案に盛り込んでいる。米国が「差別的な域外課税」として報復措置と取る可能性もあり、事態の早急な評価が求められる。

 

  • 今年6月から7月にかけてスペインで開催される「第4回国際開発資金会議」の成果文書のゼロドラフトが発表され、それに対し「市民社会開発資金メカニズム(CS FfD Mechanism)」が既に市民社会からのコメントをとりまとめ国連への提出を行った。ゼロドラフトは幅広い課題をカバーしているが、ゼロドラフトの特に租税および金融制度に関する部分についての当勉強会としての評価を共有する予定。

 

◎ 青葉 博雄 (aoba.hiroo@gmail.com)

 PSI(Public Services International)東アジア事務所代表の青葉です。これまでPSIスタッフとして国際課税・金融分野の諸問題に取り組んでまいりました。現在、国際課税を巡る市民社会の国際ネットワーク団体GATJ(Global Alliance  for Tax Justice)および開発資金を巡る国際ネットワーク団体である「市民社会開発資金メカニズム(CS FfD Mechanism)」の金融制度問題(financial systemic issues)を扱うグループの活動に参加しております。2025年は国連における「国際租税協力枠組条約」に関する交渉が本格化し、6月にはスペインで「第4回開発資金国際会議」が開催されます。今後は主に国際課税および国際金融制度に関する情報を継続的に発信すると共にロビー活動(特に立法府に対するものを)を含む政策提言活動を行っていく予定です。

 

※左の写真は、アフリカ・グループを代表して発言するガーナのJeswuni Abudu-Birresborn氏

2月3日 国際租税枠組み条約の正式交渉始まる、米国は退席

フィージー

 

2月3日から国際租税協力に関する国連枠組み条約の正式な交渉が始まりました(6日まで)。議題は、役員選出のほかに、条約の意思決定ルールや条約原案などの主要な問題について議論することになります。初日のトピックは何といっても、米国の交渉プロセスからの離脱でした。

 

また、議論の中で目立ったのは、意思決定ルール(単純採決方式か、全員一致のコンセンサス方式か)でのグローバルサウスと先進国側の溝です。前者はサウスが要求し、後者はEUが要求しました。以下、NYを拠点とする国際NGO、CESRのXでの報告です。

 

●Center for Economic and Social Rights(CESR)のX より

 

今日(2月3日)の #UNTaxConvention (国連租税条約)交渉の進展:
エジプトのラミー・モハメド・ユセフ(注:財務省租税政策・改革担当副大臣)が政府間交渉委員会の議長に選出された。各国はそれぞれの立場を再確認し、包括的かつ公正な税制枠組みに対するグローバル・サウスからの強い支持を得た。

 

アフリカ・グループ、カリコム(注:カリブ共同体)、その他は、世界的な不平等に対処する税制を求めた。ガーナは、これを「決定的な瞬間」と呼び、公正な成果を求めた。ケニアは、コンセンサスにつき進展を阻む道具として使うべきではないと警告した。

 

EUはポーランドを通じ、関与へのコミットメントを強調したが、主要な対立点であるコンセンサスベースの意思決定を強く求めた。一方、タンザニア、バハマ、イランは、膠着状態を避けるため、単純多数決方式を支持した。

 

午後のセッションは、グローバルな租税ガバナンスの透明性と説明責任の鍵となる、市民社会の参加に関する重要な議論で始まった。

 

午後のセッションは、グローバル租税ガバナンスにおける透明性と説明責任の鍵となる市民社会の参加に関する重要な討論で幕を開けた。

 

この議論が始まった直後、米国代表団は退席した。彼らは国連租税条約は米国の目的と矛盾していると宣言し、その成果を「拒否し反対する」と誓った。

 

しかし、プロセスは前進した。交渉は中断されることなく継続され、今が極めて重要な瞬間であることを証明した。より公正なグローバルな税制ルールを求める戦いは、引き続き軌道に乗っている。

 

※Intergovernmental Negotiations for UN Framework Convention on International Tax Cooperation のWebサイト: https://financing.desa.un.org/inc

 

※写真は、フィジーの国連常駐部のXより

フィジーの国連常駐代表のFilipo Tarakinikini大使は今朝、国際租税協力に関する国連枠組条約の政府間交渉委員会においてフィジーの演説を行い、小島嶼開発途上国(SIDS)にとって国際租税協力が果たす重要な役割を強調した。「国連主導のこの取り組みは、経済規模に関係なくすべての加盟国が世界の税制ガバナンスに発言権を持つことができる包括的かつ公平な税制を構築する必要がある」と強調した。

航空券連帯税、400~1100億円の税収が可能>パンデミック対策の財源に!

今や東京でも繁華街に行きますと外国人観光客で溢れかえり、訪日外国客が年間4,000万人の大台に乗りそうな勢いです。このことから、政府・与党は「国際観光旅客税」(以下、観光税と略)の増税を検討しているようです(航空新聞)。ただし2025年度税制改正大綱には要望が出ていませんので、26年度税制改正で打ち出されるかもしれません。翻って、この観光税は様々な点で問題があり、国際線利用からの税収は地球規模課題に使用すべきです。あらためて航空券連帯税(正確には航空券・船舶券連帯税、以下連帯税と略)を考え、やや早いのですが、26年度税制改正に向け提言していきたいと思います。

 

■ 2024年の訪日外国人は過去最高、2025年は4000万人強を予測

 

2024年の訪日外国人数と出国日本人数、並びに大手旅行会社JTBの2025年予測は次の通りです(1)。前者の訪日外国人は過去最高ですが、超円安のため出国日本人は最高時の6割程度。観光税の税収ですが、出国にあたり1回1000円の徴収で、2023年度で合計440億円に上りました。

 

・2024年(実績):訪日外国人数 36,869,900人/出国日本人数 13,007,300人 ⇒合計:49,877,200人

 

・2025年(予測):訪日外国人数  4020万人/出国日本人数  1410万人 ⇒合計:5430万人

 

■ 2025年の国際線の予測のもとに、入国税としての「連帯税」の税収を試算してみる

 

2025年の国際線の予測のもとに連帯税による税収を試算してみますが、まず税目として導入されていない「入国税」と位置付けます(2)。観光税は「出国税」という形を取っていますが、日本に入国するに際して連帯税がかかるという仕組みです。

 

税率(定額税)と税収ですが、担税力の観点から座席(船舶の場合キャビン)により格差をつけるパターンを2つ、それに観光税のように座席別に関係なく一律とするパターンの3種類を試算してみます。

 

◎パターンA:税収426億円/E席0円、PE席1,000円、B席:5,000円、F席:10,000円 

 

◎パターンB:税収1121億円/E席1,000円、PE席2,000円、B席:8,000円、F席:15,000円 

 

◎パターンC:税収543億円/座席別なしで一律1,000円                    

  注1)E席はエコノミー、PE席はプレミアムエコノミー、B席はビジネス、Fはファースト

  注2)以下は(3)を参照。

 

パターンAはできるだけ税額を低くするパターンで、とくにエコノミークラスには課税しないという特徴があります。パターンBはできるだけ税額を高くし税収を多くするパターンで、したがってエコノミークラスも観光税並みに徴収します。パターンCは観光税の税額を踏襲します。

 

ひとつ見逃せないのは、富裕層や超富裕層が使うプライベート(ビジネス)ジェットの利用が近年急速に増えてきて、国際線での発着回数が2023年で5864回となっていますので(4)、2025年には1万回を軽く超えるでしょう。何よりもCO₂排出量が桁違いということもあり、これには「連帯税」を大幅に課してもよいのではないでしょうか。ちなみに英国では航空旅客税のワンクラスとして11万円以上を課しています(5)。従って、「連帯税」をその半額の5万円としても125億円となります(1機当たり5人搭乗として)。さらに言えば、プライベートヨット(高級クルーザー)利用者にも課すことができます。

 

■ なぜ「連帯税」か? 税収はパンデミック対策の財源に!

 

ⅰ) 今日の主な地球規模課題のひとつに新型コロナ等感染症パンデミックがありますが、国境を越えた人の移動、とくに飛行機による短期間の移動は爆発的な感染症拡大をもたらしました。この結果、莫大な人的被害をもたらすとともに国際経済に大打撃を与えました。現在、コロナ感染は完全に終息した訳ではなく、さらに第二第三のウイルスによるパンデミックが起きないとは限りません。その危険性からして、国境を越えて移動する人に対し予備的に一定の対策費用を負担してもらうことは理に適っていると考えます。

 

ⅱ)日本政府は出国税による税制(国際観光旅客税)を国内観光という限られたセクターの資金にしましたが、観光税で受益するのはもっぱら観光業界並びに観光を目的とした訪日外国人であり、必ずしも航空機利用者全員の利益になっていないという矛盾があります。税収を感染症対策資金とすれば間違いなく搭乗者全員にとって、ひいては人類全体にとって裨益することになります。

 

ⅲ) 米国トランプ政権が発足しましたが、心配した通り(世界保健機関)から脱退を表明しました。WHOの分担金は米国が最大拠出国で22%を占めますので(金額は1.33億ドル)、予算が立ち行かなくなりそうです。他方、日本の拠出は第3位の8.6%(4097万ドル)。さらに心配なのは、低中所得国のパンデミックPPR(予防、備え、対応)強化を支援するための「パンデミック基金」での米国の貢献がなくなることです。ここでも米国の拠出は24年のプレッジを含めダントツ1位の11.2億ドルを占めています。日本は第5位の1.2億ドルです(6)。

 

これはたいへん由々しきことで、世界的規模で感染症・公衆衛生対策が立ち遅れてしまうことになってしまいます。日本政府は、米国にWHO脱退の撤回を粘り強く求め、同時にパンデミック基金など国際保健のための資金調達を航空券連帯税で賄い、拠出金のさらなる増額に向け努力すべきです。また、連帯税が1000億円前後になるようでしたら、その半分を国内の感染症対策に使用することも考えられます。外務省・日本政府は国際・国内感染症対策の資金調達を真剣に考える時です!

 

(1)【JTB】2025年(1月~12月)の旅行動向見通し

 

(2) 入国税:航空券税につき多くの国は出国税として徴収していますが、米国は出入国税として国際通行税(出発・到着)を取っています。最近ではスイスが国会に入国税を提案しています。

  【スイス】入国税、赤字抑制…スイス冬期議会の注目ポイント 

 

(3) 注2)通常の飛行機の座席割合を、Eは70%、PEは12%、Bは16%、Fは2% とした。

       注3)訪日外国人客が増えるとともに、LCC(格安航空)利用者も増え3割を超えるようになったが(2025年予想で1629万人)、この利用者の席をほとんどエコノミー席として計算。

        注4)クルーズ船での訪日外国人数は150万人(2024年)で、キャビン(客室)による区別は飛行機に準拠。

 

(4)【国交省】日本におけるビジネスジェットの発着回数推移(国際)  

 

(5)参考:英国の航空券税(航空旅客税/25年4月1日から実施料金) ※PJ;プライベートジェット

①0~2000マイル(EU内など) E席2,500円/PE・B・F席2,700円/PJ15,000円

 

②2000~5500マイル(米国など)E席17,000円/PE・B・F席37,000円/PJ112,000円

 

③5500マイル以上(日本など) E席18,000円/PE・B・F席43,000円/PJ117,000円

 

(6)【財務省】グローバルヘルス戦略フォローアップ/パンデミックPPRに関する最近の取組

 

冬季資金支援のお願い>希望は急速に盛り上がった国際課税の議論

本年を振り返りますと、世界的には、戦争、気候危機、そしてインフレ・物価高騰等々に見舞われ、途上国ではこれに債務危機が重なり「ポリクライシス(複合危機)」に陥っています。他方、先進国では米大統領選挙に典型的なようにポピュリスト・極右勢力が台頭してきました(英国だけは別)。このような情勢の中で、人々のグローバルな希望の一つとして「国際課税」実現に向けての取り組みの進展があります。当フォーラムは当面この希望を国内で推進していく決意ですが、そのためには資金も必要ですので、冬季一時金の折、資金支援を訴えますので、よろしくお願いいたします。

 

■ 超富裕層への課税:G20リオ・サミットそして経団連会長

 

去る11月18-19日、ブラジル・リオデジャネイロでG20サミットが開催され、その首脳宣言の冒頭に「我々は、誰一人取り残すことなく、公正な世界と持続可能な地球を構築すること」というSDGs(持続可能な開発目標)理念の確認を行いましたが、宣言でも述べているように目標は17%しか進展しておらず、SDGs危機ともいうべき状況です。これを打破すべく、議長国ブラジルは「飢餓と貧困に対するグローバル・アライアンス」と、それを推進するための資金調達として「世界の超富裕層への課税」を提唱しました(宣言にも明記 注1)。

 

この超富裕層への課税ですが、4月にブラジルが起草し、ドイツ、南アフリカ、スペインが賛同した提言は、資産額が10億ドルを超える全世界の約3000人の超富裕層の資産に少なくとも2%を課税し、2500億ポンド(47兆円)の収入を見込む、というものです(注2)。

 

この提案については、今日グローバルな資金創出のツールとして国際的に市民権を得るに至っています。実際、7月と10月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議声明において、9月の国連未来サミットでの「未来のための協定」において、さらに後述する「国連 国際租税協力のための枠組条約」議論において、取り上げられています。

 

一方、こうした国際的な議論に刺激されたのか(?)日本経団連の十倉雅和会長が2040年を見据えた政策提言「フューチャー・デザイン2040」で、所得や資産に対する富裕層への課税強化で34年度までに5兆円規模の財源を確保し、現役世代の社会保険料の負担率が上がらないようにする、と提案しています。課税の具体的な中身は分かりませんが、注目すべきかと思います。ちなみに、日本で資産額が10億ドル(1500億円)を超える人は、ファーストリテイリングの柳井会長以下44人いて(フォーブス・ジャパン「日本長者番付 2023 トップ50」)、そこに2%課税すると5180億円の税収を得ることができます。

 

■ グローバル連帯税:7項目の連帯税オプション

 

フランス、ケニア、バルバドスを議長国とする「グローバル連帯課税タスクフォース」は、先月のCOP29で報告書「連帯を拡大する: グローバル連帯税の進捗(Scaling Solidarity: Progress on Global Solidarity Levies)」を発表し、以下の7項目の連帯税オプションを提案しています。1)航空税、2)化石燃料課税、3)金融取引税、4)海上輸送課税、5)プラスチック生産課税、6)暗号通貨課税、7)超富裕層個人への課税。

 

詳細は、当フォーラムのWebサイトに掲載している「COP29:グローバル連帯税で数千億ドル創出可能との訴え>モトリー首相」をご覧ください(注4)。

 

■ 国際租税協力に関する枠組条約:反対した8カ国の税収損失は1,770億ドル(約26.6兆円)!!

 

既報通り、11月27日国際租税枠組条約への付託草案が圧倒的多数で採択され、新しい条約の交渉プロセスは、いよいよ来年2025年2月に開始され、2027年に終了することとなります。条約草案は、多国籍企業への公平な課税、世界の富裕層への効果的な課税、不正な資金の流れや租税回避・脱税への対応等を求めており、総合的で持続可能な開発のための国際税制の構築を目指しています。これは、タックスヘイブンが世界の多国籍企業や富裕層の脱税を許している現在の制度の根本的転換となります。

 

ところで、付託草案採択にあたり、これまで反対していた8カ国<オーストラリア、カナダ、イスラエル、日本、ニュージーランド、韓国、英国、米国>とアルゼンチンが今回反対しました。英国のNGO、タックス・ジャスティス・ネットワークの最新の調査によれば、各国はタックスヘイブンを利用して税金を安く納めている多国籍企業や富裕層により、年間4,920億ドル(約74兆円)の税金を失っていますが、上記8カ国の損失は1,770億ドルで、ほぼ半分(43%)を占めるとのことです(注5)。何という皮肉!!

 

■ 冬季資金支援のお願い:最低向こう3年間はがんばります

 

以上、急ピッチに進んだ本年の国際課税の動きを概括すると、超富裕層への課税もグローバル連帯税も国際租税枠組条約の動向に収斂していくと思われます。今日多国籍企業や富裕層への課税につき、単独でまたは有志国で実施することは困難な状況で、まして米国で国際協調に背を向けることが予想されるトランプ政権が誕生する状況にあってはなお厳しく、従って、国連を舞台とした法的根拠のある条約と議定書が必要になります。

 

その条約と議定書が晴れて陽の目を見るのは3年後の2027年です(その頃はトランプ大統領もレームダック状況になっているかも?)。それまでは当フォーラムとしてもがんばっていこうと考えています。国内外の関係NGOのみなさんと連携しつつ、いっそう国会議員や政府・省庁へのアプローチを強化していきますので、資金支援をよろしくお願いいたします。

 

<資金支援先>

 

【お振り込み先】
■銀行口座: みずほ銀行 築地支店(支店番号015)
        普通 2698313
■口座名義: 国際連帯税フォーラム

 

※ 支援された方は、gtaxftt@gmail.com までご一報くださると助かります。

 

(注1)
G20リオデジャネイロ首脳宣言
(注2)
World’s billionaires should pay minimum 2% wealth tax, say G20 ministers
(注3)
経団連会長「税・社保改革逃げるな」 2040年見据え提言
(注4)

COP29:グローバル連帯税で数千億ドル創出可能との訴え>モトリー首相

(注5)
The State of Tax Justice 2024

国連国際租税協力枠組条約への付託草案、圧倒的多数で採択!

投票結果

 

昨日の国連総会第2委員会での採決結果と今後について、PSI (Public Services International)の青葉博雄さんから以下のような投稿がありましたので、紹介します。

 

【 採決結果:賛成125、反対9、棄権46 】

 

11月27日昼(日本時間同日深夜)、国連第2委員会(マクロ経済政策)において、ナイジェリア政府がアフリカグループを代表して提出した決議案(資料1参照)が賛成125、反対9、棄権46の圧倒的多数の下、採択しました。欧州連合(EU)加盟27か国すべてが棄権する中、8月の「国連国際租税協力枠組み条約への付託事項草案作成特別委員会」における議長草案への採択において反対票を投じた8か国(米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イスラエル、日本、韓国)に加えアルゼンチンも反対票を投じました。一方、8月の採択において棄権したシンガポールが今回、賛成票を投じました。

 

今回採択された決議は8月に「付託事項草案作成特別委員会」で採択された付託事項を承認するものです。よって、8月に採択された特別委員会議長草案(資料2参照)が正式に効力を持つ文書となったとご理解ください。日本政府は採決に先立ち、広範なコンセンサスの不在、国内資源動員(DRM)強化への意欲の欠如などを理由に反対する旨の発言を行いました。

 

今後、決議は第5委員会(国連の行財政)に送付され、予算そして事務局構成等の検討および決定が行われます。次に来年2月に開催される租税条約交渉委員会において委員会の意思決定規則が検討・決定されます。単純過半数を基本とする規則を求めている「賛成派」と採択のハードルをより高く設定したい「反対派」との間で再び論戦が繰り広げられることになるでしょう。

 

引き続きグローバルな市民社会ネットワークである”Tax Justice Workstream of the Civil Society Finance for Development Mechanism”における議論に参加しながら、「グローバル連帯税フォーラム」ほか国際租税問題に関心のあるみなさまと共に日本政府、政党、国会議員等への政策提言活動を行ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

 

PSI (Public Services International) 東アジア事務所

代表 青葉博雄

 

※国連の投票ボードは、Xより入手

11月20日 国際租税枠組条約問題で財務省主税局へ要請行う

■国連総会第2委員会での採択迫る

 

11月20日、現在国際的に焦点となっている「国連国際租税協力に関する枠組条約」問題に関し、枠組条約と議定書策定のための交渉に入る一歩手前の、特別委員会への付託事項草案の国連総会第2委員会(経済と開発、税を審議)での採択が迫っています。つまり、ここで否決されれば枠組条約等策定は無に帰すことになります。

 

ところで、日本政府は枠組条約に関しては前向きではなく、一貫して採択に反対してきました。本年8月の特別委員会での付託事項議長草案の採択は、賛成110カ国、反対8カ国、棄権44カ国でしたが、超少数グループとなった反対8カ国の中に日本政府も入っていました(注1)。このままでは上記第2委員会での採択でも反対し国際社会で孤立するのではないかとの懸念から、要請することになりました。

 

■ 私たちの要望と財務省のコメント

 

当日、財務省主税局からは、参事官補佐(国際租税担当)の大和史明さんが対応してくれました。冒頭、加藤勝信財務大臣あての「国連国際租税協力に関する枠組条約策定についての要望書」を提出し、主旨を説明しましたが、要望内容は次の2項目です(注2/全文)。

 

1、日本政府は、国連第2委員会における国際租税協力に関する国連枠組条約の付託事項草案の採択にあたり賛成票を投ずること

 

2、日本政府は、「OECD/G20 BEPS包摂的枠組」における合意にこだわることなく、BEPSプロジェクトでの先進的知見を踏まえ、国連枠組での議論において主導的立場を取っていただきたいこと

 

この後ざっくばらんな意見交換となりました。財務省側のコメントと説明について簡単にまとめると次のようになります。「日本政府としてはやはり広範なコンセンサスが不足しており、国内資源動員(DRM)強化についても意欲を欠いているという認識であること。とはいえ、日本政府としては国連の議論については建設的に参加していきたいこと。また、採択については交渉事であるので、どうするとは言えないこと。さらにBEPS包摂的枠組の柱1(市場国での一定の課税権)については引き続き交渉を進める立場であること」

 

■ 日本政府・財務省は国連の場で枠組条約議論をリードすべき

 

このことに対し、私たちは次のようなコメントを付け加えました。「かつてOECDでのBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトにおいて日本の財務省が能力を発揮し議論をけん引していたという経緯があったが、BEPS包摂的枠組の、とくに柱1での行き詰まり状況からして、OECDという枠からより広い国連という枠において財務省の知見を発揮すべきではないか」

 

早ければ来週にも第2委員会において採決が行われる見通しです。その結果を皆さまにお知らせすると共に、日本政府・財務省、政党、国会議員に対し、引き続き提言活動を行ってまいります。

 

(注1)

国際租税枠組み条約に向けた付託事項草案、圧倒的多数で採択!!

(注2)

財務大臣への要望書・全文