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米民主党副大統領候補 カマラ・ハリス氏も金融取引税を主張

8月19日、カマラ・ハリス上院議員は2020年大統領選の民主党副大統領候補の正式指名を受諾しました。政治的スタンスとして、同氏はバイデン氏と同じく中道派と目されているようで、その点からウォール街の民主党支持者は歓迎しているようです。

 

●米民主党政策綱領案と金融取引税

 

しかし、こうした思惑は甘いというのが下記ブルームバーグの記事です。もともと加州司法長官として金融機関の不正には厳しく当たってきましたし、何よりも同氏は大統領候補選挙で金融取引税を提案していました(*)。記事では次のように書かれています。

 

「ハリス氏はヘルスケア財源として、株やデリバティブ(金融派生商品)など金融取引への課税を支持。取引税にはバイデン氏も一定の支持を表明しているが、提案にはまだ含まれていない」

 

従って、全国大会で採択する予定の政策綱領案には金融取引税は取り上げられていません。しかし、金融取引税に関してはいわゆる民主党左派(サンダース氏やウォーレン氏など)が強く主張している政策でもあり、ハリス氏の役割のひとつが左派との架け橋になることが期待されているところから、ハリス氏が副大統領となり、米経済や財政等の動向如何により、金融取引税が具体的に俎上に乗ってくるかもしれません。

 

(*)ハリス氏の金融取引税:株取引0.2%、債券取引0.1%、デリバティブ取引0.002%課税し、10年間で約3兆ドルの税収を得ることができる。

 

●政策綱領案における主要な税制

 

なお、政策綱領案での主な税制に関しては次の通りです(8月18日付日経新聞より)。

 

○富裕層に恩恵を与え、米雇用を海外に流出させる企業を利するトランプ政権の減税政策を覆すために行動する。

○富裕層に相応の税金を払わせ、投資家が労働者と同じ税率を支払うようにする。共和党が大きく引き下げた法人税率を引き上げる。

 

 

【Bloomberg】「それでもハリス氏は革新派」-ウォール街に厳しく、取引税も支持

 

―加州司法長官として住宅金融大手との金融危機後の協議で強い姿勢
―ウェルズFの無断口座開設スキャンダルの捜査指揮でも重要な役割

 

2020年米大統領選の民主党候補となるバイデン前副大統領が、カマラ・ハリス上院議員を副大統領候補に選んだことをウォール街の民主党支持者は歓迎した。

 

ハリス氏の起用は、より強硬な銀行規制を支持する党の革新勢力が抑えられた兆しと受け止められた。しかし、同氏の州政府と上院での実績を見ると、金融業界は戸惑うかもしれない。

 

カルフォルニア州司法長官として、住宅金融大手との金融危機後の協議で示した断固とした姿勢が、ハリス氏の政治的躍進の下地をつくった。バンク・オブ・アメリカ(BofA)やウェルズ・ファーゴ、JPモルガン・チェースを含む金融機関は、借り手に対し抵当権を不適切に行使したとされる問題の決着のため、180億ドル(約1兆9000億円)の支払いを余儀なくされた。

 

米財務省の元当局者で、現在はビーコン・ポリシー・アドバイザーズ(ワシントン)のマネジングパートナーを務めるスティーブン・マイロー氏は「はっきり分かる革新派でないかもしれないが、それでもハリス氏は革新派だ」と指摘する。

 

ハリス氏は加州司法長官在任中、ウェルズ・ファーゴの行員が顧客に無断で無数の口座を開設したスキャンダルの捜査指揮でも重要な役割を果たした。

 

民主党大統領候補の指名争いを通じて、ハリス氏はヘルスケア財源として、株やデリバティブ(金融派生商品)など金融取引への課税を支持。取引税にはバイデン氏も一定の支持を表明しているが、提案にはまだ含まれていない。

 

ハリス氏台頭の意味はウォール街にとって単純でないかもしれない。ビーコンのマイロー氏は、銀行業界にどう影響するかの判断は時期尚早だと話す。バイデン氏の政策と主要な金融規制・監督機関の人事にどこまで影響力を行使できるかにかかっているが、マイロー氏によれば、消費者金融保護局(CFPB)の再活性化に一定の役割を見いだすことも考えられる。(了)

コロナ危機下の財源、環境税や金融取引税など>政府税調で佐藤一橋大教授

8月5日、政府税制調査会(首相の諮問機関)の第2回会合がウェブ会議方式で開かれ、委員と特別委員の45人全員がオンラインで繋がれたとのこと。テーマは「中間答申:経済社会の構造変化について」ということですが、新型コロナの影響を含め委員から幅広く意見を求めるという形で会合が行われました。

 

●コロナ危機により20年度国家予算160兆円のうち赤字国債は90兆円

 

ご承知のように、コロナ危機により2020年度の国の予算は2次にわたる補正予算を加えて、160.3兆円にのぼり、うち公債費(赤字国債)は90.2兆円にも及びました。こうした事態に対して、ウィズ&ポストコロナ下における税制はどうあるべきかなど議論されました。

 

第2回政府税制調査会(動画):佐藤教授の発言は、1:32:15あたりから)
同 資料一覧

  

●注目される佐藤主光・一橋大学教授の「非常時」の財源論

 

注目されたのは、「コロナ下に関する経済対策について財源をどう確保するか」という観点から意見を述べた佐藤主光・一橋大学大学院経済学研究科教授です。議論を簡単に紹介すると、次のようなものです。

 

1)「平時」と「非常時」との財政は切り離すべきで、前者は社会保障対応の消費税などであり、後者はコロナとか災害時への対応のもの。

 

2)非常時であるコロナ下での財源確保は、財源を確保しながら既存の課題解決につながる「二重の配当」をもたらす税目で行う。具体的には、環境税、金融取引税、金融課税、デジタル課税など。

 

●簡単な評価

 

「非常時」の財源は、「平時」には採用されずらい税を探すということで先の小林慶一郎氏のトービン税導入と通じますが、さらに単に税収だけを求めるのではなく政策実現まで求めるという「二重の配当」論まで引き延ばした点でユニークですね。佐藤教授の発言につき文字お越しを行いましたので、下記にUPしておきます(すごく早口だったので100%正確かどうかは請け負いかねます)。

 

 

佐藤主光教授の発言(全文)

 

佐藤主光教授:3点につき申し上げたい。

 

1)コロナ下における財源確保について
この際は、「平時」つまり社会保障対応の財政と、「非常時」つまりコロナであれ災害であれ、こういったことに対応するための財政とは切り離した方がよい。消費税はあくまでも平時の財政のためであって、今回のコロナにおいて減税もしないけれど、ただしコロナ経済対策にかかる財源のために増税もしない、という役割分担が効いている。

 

他方、コロナに関する経済対策について財源をどう確保するかというところで、経済に対して、社会に対してプラスになるような税を考えてみる。

 

具体的には、諸富委員(京都大学教授)からのご指摘もあったように、環境税のようなものがよい。いわゆる「二重の配当」、つまり財源を確保しながら既存の課題解決につながる、こういった税目を探してくることかなと思う。環境税のほかには金融取引税であるとか、資産格差ということを考えるならば金融課税ということが考えられる。それから法人課税の適正化という点から見れば、デジタル課税といったものがある。「二重の配当」ということを念頭に置いたらいかがかと思う。

 

2)所得税について
これも積み残された課題。源泉徴収と年末調整で完結するモデルはすでに終わっているわけで、裏にあるのは雇用の多様化、副業化が増えていることにある。多くの人たちが確定申告するという時代が来るとすれば出来るだけ簡素な仕組みがよい。

 

具体的には、所得区分の見直し。区分が10もあるわけですし、事業所得と金融所得の境界線も曖昧になりはじめている。また、雑所得とはそもそも何なのかということもある。事業所得については、例えば、フリーランスの方々、必ずしも青色申告をしない方々もいる。彼らの事業所得であっても概算控除を認める仕組みであるとか、それからプラットフォームを通じて仕事を請け負っている人たちについては、プラットフォームの段階で源泉徴収をかけるとか、そういった仕組みが必要だ。

 

雇用が多様化する中において、収入が不安定になっている方も多い。今回のコロナは平時は社会を支える人たち、税金を払い社会保険料を払う人たち、そういった人たちが逆に困ったというか、困窮するといった事態になった。もともと収入基盤が不安定だからだ。したがって、そういう収入の不安定さに応じた課税体系のあり方があってよい。

 

実はこれ何を言いたいのかというと、住民税である。住民税は今全面所得課税になっているわけで、去年、2019年の段階で普通に稼いでいた方々は今日仕事がなくても、今年仕事がなくても税金を払わなくてはならない。先ほど余計納税の話があったが、同様にキャッシュフローを彼らから奪うことにもなりかねないので、やはり住民税の全面所得課税ということを見直して、所得税と併せて減免課税化ということがあってもよい。これはもちろん国の所得税と地方の住民税の一体的徴収ということも裏にあるかなと思っている。

 

3)税と給付について
最後に、税と給付というのは一体的に改革しないといけないかなと思う。どうしても税は税、給付は給付というような妙な役割分担をこれまで強いてきたが、平たく言えば、これはタテ割り行政だと思う。

 

結果として、今困っている人たちになかなか手が行き届かないのは、もちろんマイナンバーの利用ということもあるが、究極的には「負の所得税」という仕組みがあってよい。つまり、所得が高い時には税金を払ってもらい、所得が下がったときには一定の所得を保障するという仕組みである。今の現行制度で考えれば、給付付き税額控除である。

 

税の給付が嫌だというのであれば、例えば社会保険料での通算を認める。そういう形で所得が下がった時にもそれ相応の対応ができる、そういった仕組みがあってよい。そのためには何度も言っているが、所得に対する認識を改めなければならない。

 

これまでは金持ちが正しく税金を納めてもらうために所得を補足する、つまり納税のための課税のための所得捕捉であったが、これからは給付の適正化のための所得捕捉というものがあっても、その捕捉された所得情報というものをマイナンバーに紐付けて給付に活用していくという体系があってもよい。

 

よく所得税というのは再分配機能が重視されるが、今回コロナでよくわかったことは、所得税には本来保険機能もあるはずということ。ビルト・イン・ストビライザーというマクロ経済の教科書にもあるが、保険機能がちゃんと発揮できる体系、税と給付を結びつけて保険機能を強化するという視点があってもよい。(了)

政府コロナ分科会の小林氏、三たびトービン税を主張

この間、政府コロナ分科会メンバーの小林慶一郎氏はコロナ対策財源にトービン税(金融取引税)を導入すべきと提案してきました(ブルームバーグや東洋経済)。昨日(28日)の日本経済新聞・電子版でも氏は「各国と協調しトービン税導入を」と主張していますので、紹介します。

 

ここでの主張はほぼ以前のものと同様ですが、この小林氏案を具体化、深化していくために以下の3点を考えました。

 

1)莫大な財政赤字を返済するために「為替など国際的な金融取引に課税する『トービン税』を各国と協調のもと導入」すべきと氏は提案していますが、各国で協調できるならば、各国内の借金返済の原資のみならず、感染症など国際的課題対策のための資金を協調して創出できるのではないか。

 

2)国内と国際的課題のための資金創出のために、かつ金融業界をまき込んで課税するためには、なるべく低率な税とし、また幅広い形での金融取引(為替のみならず、株、債券、デリバティブ等)への課税を考えた方がよい。その取引には、現在高騰しつつある金(キン)取引、仮想(暗号)通貨取引も加えるべき。

 

3)各国の協調を具体的に引き出すには、どこかの有力国が国際会議の場で(G20サミットや国連総会等)倦まずたゆまず提案・主張することが重要。金融取引税については欧州でも米国でも提案されているがどちらも内向きの議論になっている。すぐ前の河野太郎外務相(当時)があらゆる国際会議の場で国際連帯税を主張してきたように、日本の「首相や財務相・外務相が先頭に立って」提案・主張していくべき、と小林氏も私たちも強く要求していくことが必要だ。

 

以下、小林氏の主張を紹介します。

 

【日経新聞】東京財団の小林氏「各国と協調しトービン税導入を」 

コロナ後の資本主義

 

…小林慶一郎氏に、今後の経済対策や財政再建をどのように推し進めるべきか聞いた。小林氏は所得保障の拡充と国際協調に基づく財政負担軽減の取り組みが必要と指摘する。

 

■今後2~3年はマイナス10%成長も…省略

 

(前略)

 

■全国民に月10万円、1年間支給を 事後に税で回収

 

――政府の一連の経済対策について評価を教えてください。

 

「対策の規模やスピード感が不十分だった。典型例が、国民1人当たり10万円の特別定額給付金の支給だ。給付金は生活できない人の所得を保障して生活機能を維持するためのものだ。…以下、省略

 

(中略)

 

――多額の国費が必要で、国の財政負担は重くなります。

 

「新型コロナによって世界中の国が同じように借金を増やしている。コロナショックでできた借金については、世界の各国で協力して返済をしていくべきだ」

 

「具体的には、為替など国際的な金融取引に課税する『トービン税』を各国と協調のもと導入することを提案したい。一国だけで導入すると投資家の資金がタックスヘイブン(租税回避地)に逃げるだけに終わる。世界で協調すれば逃げ道がふさがり、税金を分け合うことができる」

 

「もちろん、日本はコロナ前から借金大国だったので、もともとあった債務には増税など自国の手段で対処するしかないだろう。だが新型コロナは未曽有の危機であり、世界中で協調して財政負担を軽減する取り組みを進めていく必要がある」

財源確保の切り札?トービン税再び静かに浮上>加谷珪一氏の解説

今週の『ニューズウィーク』誌(7月7日号)に経済評論家・加谷珪一氏のトービン税の超解説「コロナ給付金の財源問題も即解決だが……取り扱い注意なトービン税とは」が載っていまして、それが電子版でも読むことができますので、紹介するとともに氏の「解説」へ少々のコメントを加えさせていただきます。

 

◎いま、なぜトービン税? 簡単に数兆円の財源捻出が可能?

 

まずなぜトービン税を問題にするかというと、「新型コロナウイルスに関する『基本的対処方針等諮問委員会』のメンバーに経済の専門家として加わった小林慶一郎氏…が、感染対策によって増大する財政問題の解決策として『トービン税』の導入を提唱して話題となっている」から、と加谷氏は言っています。

 

さて、為替を含む金融取引ですが、「金融取引の規模は、モノやサービスなどリアルな取引とは比べものにならない。外国為替取引ひとつをとっても、日本における取引量は1日40兆円を超える。…わずかな税金をかけるだけで、数兆円程度の税収はごく簡単に捻出できるので、トービン税は財政の切り札とも言われる」、と加谷氏は続けます。

 

数字をちょっと挙げてみましょう。年間為替取引高は、40兆円×250日=1京円、これに0.01%の低率課税で、年間1兆円、0.05%で5兆円の税収となります(世界全体では、0.01%で約18兆円)。

 

また、金融取引税は為替取引だけではなく、株・債券・デリバティブ取引等もありますので、これらにも課税できれば、より低率の税金での実施が可能となります。

 

◎世界同時導入でなければトービン税実施は不可能? 

 

「だが、トービン税は全世界で同時に導入しなければ意味がない。例えば日本だけトービン税を導入すると、日本の金融取引は全て海外に逃げて…しまう。トービン税を機能させるには、全ての国が一切の不正を行わず同時に実施する必要がある。(また)これを実現するには、ある種の世界国家を樹立するという話とな(る)」

 

この指摘は、トービン税実施不可能の論拠として必ず用いられるものですね。しかし、①まず一国で実施することが本当に不可能なのか。ブラジルは一国でも為替に関するIOF税(金融取引税)を行いました。また税率を超々低率(例えば、0.0001%)で制度設計したら可能ではないのか? ②何よりもG20サミットなどで絶えず金融取引税を主要議題とする政府が現れたら案外早く実現するのではないか、それは加谷氏が「コロナ危機がなければ、話題にはならなかった可能性が高い」と言明していますが、逆にコロナ危機だからこそ(第2波もありそうだし、別のウイルスの流行も考慮にいれて)平時では考えられないことが起こる可能性があるのです。

 

◎議論も大事だが、どうすれば実施可能か知恵を絞るべきでは?

 

最後に、加谷氏は「日本政府は今回のコロナ危機に際して、既に2回の補正予算を組んでおり、真水で60兆円近くの財政支出を決定している。今後、感染が再拡大すれば財政支出がさらに増大するのは確実であり、財源確保は全ての国にとって共通課題となりつつある。実際に導入するのかはともかく、聖域を設けず議論を進めることは重要だろう」、と言います。

 

今年度予算は、ついに100兆円を超えての赤字国債発行(借金)という事態になりますが、コロナ情勢によっては第3次補正予算を組まなければならないし、そもそも20年度税収が激減するなかで来年度の予算をどのように組むか、予算編成がもすごく厳しいものになりそうです。このことを鑑みれば、消費税などいわゆる大衆増税はとうてい行えませんので、何らかの金融取引税は必要です。そればかりか今後貧困国・医療脆弱国へさらに援助が必要となることは目に見えていますので、できるだけ幅広い形での徴税を実現し、国内財政や国際協力のための資金調達(国際連帯税として)を捻出していかねばならないと思います。

 

ですから、逼迫し赤字だらけの財政を何とか持ちこたえつつ、かつ国際協力を進めるという立場から、どうすれば金融取引税の実現が可能か知恵を絞るべきなのです。議論のための議論ではなく!!

 

【ニューズウィーク】コロナ給付金の財源問題も即解決だが……取り扱い注意なトービン税とは

11月の米大統領選挙で、金融取引税を掲げる副大統領が誕生?

米大統領選で民主党のバイデン候補は、以前から副大統領候補に女性を選ぶと公言し、その有力候補として(白人の)エイミー・クロブシャー上院議員の名前が挙げられていました。が、ここにきて彼女は「非白人の候補者を選ぶべき」との素晴らしい提案をバイデン氏に対して行ったようです。

 

Forbes電子版は、次のように伝えています。「秋の米大統領選で民主党候補指名を確実にしたバイデン前副大統領は、パートナーとなる副大統領候補には女性を選ぶ見通しだ。しかし、その有力候補と見られていたエイミー・クロブシャー上院議員が指名の辞退を宣言し、バイデンに対し、非白人の候補者を選ぶことを求めた」。

 

ところで、副大統領候補が女性で非白人の候補者となると、並みいる中でカーマラ・ハリス上院議員が最有力となります。彼女のこれまでの民主党の大統領候補選を見てみますと、税財政政策の主張としてサンダース氏より穏健な形での金融取引税を提案しています。そこで希望的な観測ですが、もしバイデン氏がトランプ氏を破って大統領となり、その後二期目が務まらなければ(高齢のため?)、金融取引税を掲げる米国大統領が誕生するかもしれません。

 

この間、欧州でも(対コロナ)復興基金の有力な財源として金融取引税が俎上に上げられています。もとより欧州のものも、ハリス氏のものも、国内(域内)財源確保のためで、地球規模課題のための資金としては(国際連帯税的要素の資金としては)考えられていません。また、金融取引税といっても為替(通貨)取引税は除外されているようです。もし為替取引にまで課税が行われるようになれば、かつてのロビン・フッド・タックス・キャンペーンが主張したように国内・国外の課題に十分資金を提供できるようになるでしょう。

 

【Forbes】副大統領候補には「黒人女性を」、民主党議員がバイデンに要請

 

※写真は、カーマラ・ハリス氏

諮問委新メンバー小林慶一郎氏、コロナ対策財源にトービン税を提言

政府の新型コロナ(以下、コロナ)対策の組織である「基本的対処方針等諮問委員会」はこれまで感染症の専門家中心の集まりでしたが、5月に経済の専門家4人を加えました。その1人である東京財団政策研究所の小林慶一郎研究主幹がブルームバーグの取材で、相当踏み込んだ提言をしています。

 

●ベーシックインカムとトービン税

 

提言の骨子は、①コロナで影響を受けた個人の生活再建と事業転換を支援するための「ベーシックインカム」の導入、②コロナ対策で悪化した財政立て直しのため、国際社会協調による金融取引の収益に課税するトービン税の導入、というものです。

 

【ブルームバーグ】コロナ継続支援でベーシックインカム導入を-諮問委新メンバー小林氏

 

小林氏は以前からベーシックインカム導入は提言していたかと思いますが、トービン税導入の提案ははじめてではないかと思います。なお、記事ではトービン税について「金融取引の収益に課税する」ものとしていますが、トービン税といえば「為替(通貨)取引そのものに課税するものであり、「収益」に課税するものではありません。また、金融取引といっても、株も、債券も、デリバティブも、そして為替取引もあり、何の「金融」取引か記事では判然としませんが、記事全体を読むと「為替(通貨)取引」だと思われます。

 

●欧州での金融取引税(復興基金の財源の一部)

 

一方、欧州では先にドイツとフランスがEU(対コロナ)復興基金として7500億ドル(約90兆円)創設すべきと提案しました。案の定スウェーデンやオランダ等「倹約国」が反対しているようですが、これまで後ろ向きであったドイツが提案してるのですから、今週後半に行われるEU首脳会議で最終決定に至る見込と言われています。

 

実はこの基金の財源として、金融取引税やデジタル課税、さらに国境炭素税など大企業中心の課税によって賄うようです(まずユーロ債を発行し、その償還資金に充てる)。ただここでも何の金融取引税かは提示されていません。これまでの経緯からすると、株取引税が有力ですが、これだけでは税収が十分上がらないとして他の取引税の議論もあるようです。

 

他方、我が国ですが、現在のところ第一次や二次の補正予算を加えて莫大な借金財政となった国家予算に対して、どのように立て直していくかの議論はまったく起きていません。そういう中で、小林氏のトービン税提案は大きな反響を呼ぶのではないかと思われます。

 

●世界の為替(通貨)取引への課税、0.001%の税率で17兆円の税収

 

国際協力やSDGs対策資金としてトービン税を含む金融取引税を国際連帯税として提案している私たちとしては、その貴重な資金を国内の財源確保だけのために使うことには納得できませんが、様々な金融取引をミックスして税収を行えば、相当の資金が調達されます。ちなみに、世界の為替取引量は2019年で年間 約1,614 兆 5,500 億ドル(17 京 3000 兆円)にも上っています。これに超々低率の0.001%課税するだけで、世界で16 1億 4550 万ドル(17兆2757 億円)の税収が可能になります。これに株取引や債券取引、デリバティブ取引、外国為替証拠金取引などへの課税を実施すればいっそうの税収がもたらされます。

 

ともあれ、以下小林氏のトービン税提案の内容を見てみますが、時代はようやくトービン税または金融取引税の実施に近づきつつあるようです。

 

【ブルームバーグ記事より】

 

トービン税導入で国際協調を

  新型コロナ対策を踏まえた20年度の一般会計歳出総額は160兆円、新規国債発行は90兆円を上回り、それぞれ過去最高を更新。小林氏は、「感染症危機が数年後に終わった時に100兆-200兆円とかものすごい金額で国の借金が増えているはずだ。感染症危機で国内総生産(GDP)の半分くらい借金が増えるという現象は日本だけではなく世界的に起きる」と述べ、それに対応するための国際協調の枠組みが必要だと述べた。

  具体的には、金融取引の収益に課税するトービン税の導入を提案。「一つの国がトービン税を導入すると、投資家の資金は全て海外に逃げてしまうが、世界中の国が一斉にトービン税をかければ、投資家はどこにも逃げられなくなるため、低い税率でもかなりの税収が得られる」とみる。世界各国が合意できれば、「1-2年間かけてコロナ対策で増えた各国の借金は、その税収で減らしていくという考え方ができるのではないか」と述べ、20カ国・地域(G20)財務相会合などの場で議論すべきだとの考えを示した。

 

※写真は、小林慶一郎さん

寺島実郎氏講演会「ポストコロナの針路:新しい政策科学としての国際連帯税」

 寺島実郎

 

首都圏でも緊急事態宣言が解除されましたが、やや感染者が増加傾向にあるなど、まだまだ警戒を要する日々ですが、この度寺島実郎さんをお招きし、以下のような院内講演会を開催することになりました。

 

講演会には市民も参加できますが、コロナ禍中にあって、議員会館側からできるだけ人数を絞るようにと言われていますので、予定人数を超えた場合お断りすることもあることをご了承ください。現在、インターネット中継も準備中ですので、決まり次第お知らせします。

 

◎参加希望者は、acist.japan@gmail.com から講演会参加希望とお書きのうえ、お名前、所属等を記してお送りください。また、16時45分までに参議院議員会館正面玄関に集合ください。 

 

 

  ◆◇寺島実郎さん講演会◆◇

   ポストコロナの針路:新しい政策科学としての国際連帯税

 

◎日  時:6月15日(月)17:00-18:40(受付開始16:50)

◎場  所:参議院議員会館1階 101会議室

 

<呼びかけ>                                                                                                 

新型コロナウイルスとの闘いに先頭に立って活動されていることに心から敬意を表します。

 

新型コロナの流行は止まらず、約半年間で累計感染者数は世界187カ国・地域で600万人を超え、死者も世界全体では37万人に上っています(5月31日現在)。かつてスペイン風邪など人類を危機に落とし込めるパンデミックは幾度もありましたが、21世紀に入り感染症流行の頻度は増してきました。その原因は、都市化や国際交通網の発達によるグローバル化にあります。

 

しかし、世界は日本も含めこの繰り返される新たな脅威に、十分向き合ってきませんでした。ワクチン開発ひとつとっても、1000億円以上もの開発費がかかるうえ、そのうちの9割は失敗に終わるとされ、医薬品関係だけでも膨大な費用がかかることも一因でした。従って、感染症対策で言えば、資金調達ならびに研究開発体制について国際協力・連携が絶対的に必要です。

 

ところで、90年代からはじまったグローバル化はかつてない経済成長をもたらし、新興国の発展や世界の貧困解消に大いに資することができました。これが「正の影響」とすれば、他方で同じくらい地球規模課題として「負の影響」をもたらしました。上記感染症もそうですが、気候変動や経済格差等々がそうです。

 

グローバル化の「負の影響」がもたらすコストを誰がどう負担するのでしょうか。一義的には各国のODA(政府開発援助)資金が軸となりますが、何よりもグローバル化で恩恵・利益を受けた企業・個人も負担すべきです。後者の考え方による資金調達方法が国際連帯税です。

 

さて、一般財団法人日本総合研究所会長を務める寺島実郎さんは、テレビ等で『日本再生論―時代認識とポスト・コロナへの針路』と題しての講演を精力的に行っています。特に地球規模課題解決のための新たな財源として国際連帯税(航空券税や金融取引税)を政策科学として提言しています。

 

このたび寺島実郎さんをお招きし、国際連帯税はもとより新型コロナ対策と世界と日本の経済危機にどう立ち向かうか等々につき縦横に語っていただく講演会を、下記の通り開催します。たいへんお忙しい時期ではございますが、ご参加のほどよろしくお願い致します。

 

  • 主 催:グローバル連帯税フォーラム
  • 後 援:一般社団法人勁草塾、一般社団法人寺島文庫
  • 協 力:国際連帯税創設を求める議員連盟、公益財団法人日本ジャーナリスト協会

 

 ・連絡先:090-3598-3251(担当:田中/グローバル連帯税フォーラム)

コロナ禍、新興・途上国へのグローバルな支援>金融取引税等による資金援助で

このところ東京も新興コロナの感染者が減少しており、この傾向が続いてくれればと思いますが、世界では感染者が400万人を超えるなど、その勢いは止まりません。なかでも、新興国と言われている国々で急増し、さらに途上国でもじわじわと増加してきています。

 

こうした現状を日経新聞が報じていますので、簡略にまとめて紹介します。

 

この報道の結論は、「新興・途上国への医療や経済の両面でのグローバルな支援体制の構築が求められています」というものです。国連やWHO、世界銀行などから相次いで支援呼びかけがなされています。

 

資金支援については、各国政府はODAで、民間は寄付ということで拠出していますが、再三述べていますように、第二の公的資金としての性格を持つ国際連帯税も必要です。とくにコロナ危機による世界的な大不況の中にあって、株や為替など金融取引がどこ吹く風とばかりに、バブル気味な動きを呈しています。感染症流行というグローバル化の負の影響に対処するため、金融取引への課税こそが求められるのではないでしょうか。

 

 新興国

 

【日経新聞】新興国感染、先進国抜く 1日5万人超え 新たなリスク

 

◎米欧が経済再開へ動き始めているが、新興・途上国で新型コロナの感染が急増

・新規感染者数は5月上旬に先進国を逆転

・ロシア:感染者数が連日1万人超え、ブラジル:1日の死者数が米国に次いで世界2位に

・脆弱な医療体制だが、経済再開を急ぎ、感染爆発の懸念が高まる

⇒財政基盤が不安定な新興・途上国の感染拡大は、世界経済へのリスクに

 

◎アフリカも急増を懸念(累積感染者数4万人超、死者数約1300人だが)

 ・WHO:対策をとらなければ、1年間で最大4400万人感染、19万人死亡の恐れ

・同:とくに南アフリカやカメルーンの感染拡大に警鐘

 

◎新興・途上国の公的な医療体制の脆弱という問題(WHOによると)

 ・公的医療関連支出は国内総生産(GDP)比3%、先進国は8%

 ・感染が拡大しているロシアやブラジル、イラン、インド、メキシコ、世界平均(6%)を下回る

 

◎新興・途上国から海外(投資)マネーの流出増大

 ・自国通貨の相場が下落し、対外債務の実質負担を高めるという悪循環に

 ・国際通貨基金(IMF)には100カ国以上が緊急融資要望

 

◎新興・途上国への医療・経済の両面でのグローバルな支援体制の構築が必要

 ・新型コロナの感染爆発を止められなければ世界的戦いに終止符は打てず

 ・対外債務の不履行などが広がれば、世界経済にも大混乱が広がる懸念

 

※グラフは日経新聞より

 

 

 

 

感染症対策と国際連帯税:新しい資金創出と政治の役割

新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の影響で、主に自宅ワーク・待機を余儀なくされていると思いますが、日本ではまだ感染ピークが見えず、厳しい状況が続くと思います。医療体制も「崩壊」という言葉が飛び交うなど、たいへん心配される状況です。

 

さて、感染症問題における国際連帯税の役割についてあらためて書いてみました。骨子は次の通りです。

 

①どの国も国内対策でたいへんだが医療の脆弱国・地域への支援が不可欠

②支援のための公的資金としての国際連帯税創出が求められている

③国家エゴを生じさせない形での国際連帯税を考える

④日本の政治リーダーはあらゆる国際会議の場で「共同しての連帯税創出」を訴えるべき

 

 

感染症対策と国際連帯税:新しい資金創出と政治の役割

 

1、ビル・ゲイツ氏のG20首脳会議への提案

 

世界的に感染状況を見れば、欧米で引き続き厳しい状況が続いていますが、さらに問題はアフリカや南米ならびに難民キャンプなど医療制度のぜい弱な地域での感染拡大で、次の大震源地になるのではないかと懸念されます。突然職を失った出稼ぎ労働者や極貧層が深刻な状態に置かれているもようがテレビ等で報じられ、心が痛みます。

 

こうした事態にあって、長年途上国へ保健・医療支援を行ってきたビル・ゲイツ氏が去る3月下旬行われたG20首脳テレビ会議に向け新型コロナ対策を提案しました。その内容が『(コロナ危機私の提言)G20首脳世界的視野を』と題し日経新聞に掲載されましたので紹介します。

 

【日経新聞】(コロナ危機私の提言)G20首脳世界的視野を

 

同時に、提案の重点の一つが資金問題ですが、そのことにつき国際連帯税の立場から探ってみたいと思います。

 

ゲイツ氏の提言を超簡潔に要約すれば次のようなものです。

①マスク、検査試料など医療資材が世界的に供給が限られていることから「誰が一番高いお金を払うか」で配布の偏りがあること、これを効率よく分配するためG20首脳などが協調すること

②今脆弱な医療体制の国・地域を支援しなければ、数百万人が命を失う危険があり、先進諸国が抑え込みに成功しても、パンデミックが別のところで猛威を振るう限り、再び先進国の感染が不可避となる。従って、初めからグローバルに取り組まなければならないこと。

③G20首脳は、多大な費用(数十億ドル)がかかるワクチンの開発や製造・展開に、資金拠出を誓約すべき。

 

2、ODA、国際連帯税、グローバリゼーション

 

ところで、資金調達の方法についてここではゲイツ氏の提案はありませんが、通常は各国の公的資金であるODAであり、国家単位での拠出が基礎となると思います。しかし、国家単位でものごとを進めるとゲイツ氏が言う「誰が一番高いお金を払うか」という問題が起き、国家エゴが現れやすいという欠点があります。今回の米国トランプ政権がWHOへの拠出金を一時停止するという事態になりましたが、これこそ国家エゴの典型です。

 

ODA以外の公的資金としては国際連帯税という方法が考えられます。それは、グローバリゼーション(経済のグローバル化、以下グローバル化と略)上で活動し利益を得ている経済セクターから税を徴収するという方法です。典型的なセクターとして金融(とくに為替取引)、デジタル、航空などが挙げられます。

 

20世紀後半からグローバル化が開花してきましたが、同時に、気候変動や感染症などの地球規模課題が顕在化するようになり、人類(生存)の危機が意識化されるようになってきました。しかし、政治家も経営者もそして多くの市民もその危機はまだまだ先のことだと考えていました。ところが、今回の新型コロナによるパンデミックは治療薬もワクチンもなく、1~2年という超短期間で危機的状態に落とし込めることを可視化しました。

 

危機的状態とは、言うまでもなく人々の健康や命に関わってくることですが、同時にグローバル化の基盤そのものが消失していくことを意味します。実際、世界の航空セクター各社が大幅赤字はもとより経営破綻の危機に直面しています。グローバル化は実は今回の感染症のみならず様々な地球規模課題に対応できてはじめて成り立つものです。そのためには莫大な資金が必要となり、各国家の税金に頼るだけではとうてい間に合わないことは明白です。とするならば、グローバル化で受益している経済セクターがそのコストを一定程度担うことは理にかなっていますし、そうしなければグローバル化が維持できないのです。ただし、効率化や経済的利益のみを追い求めるグローバル化ではない形で。

 

3、国際連帯税の新しい仕組み、国家を通さない徴税の試み

 

国際連帯税の新しい仕組みを考えてみます。課税対象は、グローバル化上で活動し利益を得ている経済セクター・個人となりますが、これは従来の考え方です。問題は徴税主体で、国際機関(仮称、グローバル連帯基金)を想定します。

 

というのは、先に述べた国家エゴを防ぐために、基本的に国家を通さない形での資金創出を行う方法を考え、国際機関が直接徴収する仕組みです。為替取引やデジタル商取引については資金の流れが国際的に電子的に捕捉でき、従って課税することが可能です。国連が関与した国際機関(仮称、グローバル連帯基金)をG20首脳の支持のもとに設立し、ここが税を徴収することになります。為替取引なら円/ドル、ユーロ/ドル取引等々にX%、デジタル商取引ならIT企業の取引(売上)にY%を課し、国際機関が自動的に徴収します。

 

なお、為替取引への課税については、2010年に革新的資金調達リーディング・グループ専門家会議(横浜市大の上村教授も参加)で検討され、グローバル通貨取引税として提言されています。その時の税率は0.005%でしたが、その後為替取引は倍化しましたから税率をいっそう下げることも可能です(1営業日の取引量:2010年3.97兆ドル⇒2019年6.59兆ドル)。もっともコロナ危機で取引量がどう変化していくか見通せませんが。

 

4、世界経済の損失と国内対策で13兆ドル、もしワクチンが開発できていれば

 

IMF(国際通貨基金)は4月14日「2020年の世界経済成長率見通し」を公表しましたが、そこでは新型コロナ禍で世界経済が今年中に5兆ドル(540兆円超)の損失を被ると試算されています。また、各国の国内対策用の財政出動も8兆ドル(860兆円)にも上るとのことです。

 

申しまでもなく、コロナ用ワクチンが開発されていれば流行にブレーキがかかり、経済的損失を止めることができます。そのために世界の研究所や大学、製薬会社がしのぎを削っていますが、そのひとつに「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」があります。この組織は世界連携でワクチン開発を促進するため、2017年にビル&メリンダ・ゲイツ財団や日本、ノルウェーなど官民連携により設立されました。同連合は現在8種類のコロナ用ワクチン開発に挑戦しており、その成功のために20億ドル(2200億円)必要と訴えています。

 

今この2200億円でワクチンが開発し実用化されれば、IMF試算による540兆円の経済損失も860兆円の各国の国内財政出動もずっと縮小することが可能になります。なお、感染症は今回の新型コロナだけではなく、伝統的なエイズ・結核・マラリアの問題がありますし、エボラ出血熱やジカ熱等々、枚挙にいとまがありません。これらへの対策をおろそかにしていれば、グローバル化や温暖化の進行により途上国も先進国も別なく流行していくでしょう。この対策のためには、とくに資金問題では官民挙げて賄うことが求められています。

 

5、新たな国際連帯税、それを可能にするには

 

こうした国家を超えた形での国際連帯税は可能かどうかを見なければなりませんが、実はそのことに挑戦していた政治リーダーがおりました。それは国際連帯税生みの親のシラク元大統領そして日本の河野太郎元外相(現防衛相)でした。シラク氏は、2006年初の国際連帯税である航空券連帯税を創設し、それを世界に呼びかけた、いわが連帯税の生みの親でした。

 

その後の河野氏ですが、外相時代の2年前から、国連はじめあらゆる国際会議の場で並みいる他の政府のリーダーに対して「SDGs達成のために国際連帯税を共に議論し、実現をしよう!」と訴えてきました。氏によれば賛同する他の政府代表も結構出てきたと報告されていました。

 

確かに、例えば為替取引税を世界的に実現するとすれば、米国の参加を抜きには考えられませんが、トランプ政権が続けばそれは不可能と言えましょう。しかし、今日の感染症流行への対策資金問題を見ても国単位での拠出には限度がありますし、それだけ革新的な方法としての国際連帯税方式を採用する絶好の機会となるでしょう。G20全体でなくても、まずは数か国が先行して実施方針を打ち出せれば、それが起爆となり全体化していくという可能性は大いにあります。

 

ビル・ゲイツ氏やグテーレス国連事務総長も言うように、今新型コロナ感染につき、脆弱な医療体制の国・地域を支援しなければ数百万人が命を失う危険があります。また流行地域が残っていれば、そこから第二派、第三派となって先進国を襲うことになるでしょう。未曽有のコロナ禍にあって、日本を含む各国政府は自国対策で非常にたいへんですが、最貧国など脆弱な途上国支援も不可欠です。そのためにODAはもとより何らかの国際連帯税による資金調達を用意すべきです。

 

以上から、日本政府は、とくに首相、外相、財務相は、国連はもとよりG20サミットや、G7サミットで倦まずたゆまず共に連帯税システムを作り上げようと提起していくべきです。(了)

 

 

11.13議連総会報告:外務大臣要請書を手交、議員立法も射程

★総会全体

 

遅れましたが、11月13日外務省の中谷真一大臣政務官も出席され開催された国際連帯税創設を求める議員連盟の第2回総会について、そのもようと議連活動の今後について報告します。

 

総会は衛藤会長以下国会議員8人、外務省から塚田玉樹・地球規模課題審議官ほか、議員代理や市民など40人ほどが参加しました。冒頭、茂木大臣の代理で出席した中谷政務官が「現在国際連帯税については自民党外交部会には重点事項として扱うようにお願いしている」と述べ、6月のG20大阪サミットや9月の「開発のための資金調達に関するリーディング・グループ」会合(ニューヨーク)での革新的資金メカニズムに関する外務省・日本政府の活動を披瀝されました。

 

●航空券連帯税を実施できていれば2018年で130億円の税収

 

続いて、「国際連帯税を取り巻く国内外の状況~市民社会からのご報告~」として、グローバル連帯税フォーラムの田中徹二代表理事が報告しました。

 

1)有識者懇談会は、税制と民間資金の2本立てで議論をしているが、私は税制につき発言している。

 

2)税制の中での航空券連帯税について、これまでの衛藤会長提案を具体化してみた。前提として、本年より国際観光旅客税(出国税)が導入されているので、税額は相当低くせざるを得ないことである。

 

3)具体的には、税額をエコノミー席100円、ビジネス席500円、ファースト席1000円とするが、2018年に導入されていれば約5000万人が国際線を利用しているので、約133億円の税収となる。

 

4)使途につき、航空機の負の影響として、①新旧感染症拡大のリスク、②CO2大量排出のリスク、があるので、前者からは感染症対策、後者からは温暖化対策が考えられる。実際、今日気候変動問題への関心の高まりから航空機へ環境税導入という国も現れてきている(スウェーデンなど)。税額がとても低いことと、その使途を地球規模課題に使用するということであれば、国民的な支持を得ることができる。

 

●茂木大臣あての「国際連帯税の導入に関する要望書」を手交

 

これらの報告を受けて、参加された議員から意見が出されました。「世界を見れば難民が7千万人にも上るように課題は山積しているが、我が国のODAはピーク時の半分となっており、国際連帯税は必要だ」「連帯税を実現する筋道として、外務大臣が総理や官房長官に対しその必要性を説明し、その上で三者が与党の税調会長を官邸に呼んで説得するという、いわば政府主導型で国民にアピールしていくという形が本来必要だ」等々。

 

その後、衛藤会長から中谷政務官に茂木大臣あての「国際連帯税の導入に関する要望書」が手交されました。要望は次の2項目です。①今月のG20外相会合では議長国の「茂木イニシアチブ(仮称)」として国際連帯税に関する論議をリードしていただきたい、②令和2年度税制改正にあたり、国際連帯税の導入に向け与党税制調査会に強力に働きかけていただきたい。

 

一方、外務省の塚田審議官は、有識者懇談会では税制に関して、業界からの圧力や壁があり、例えば金融への課税は資金が東京市場からシンガポール市場等へ逃避してしまうから困難との意見が出ている。また、今日公共目的に投資家が関心を持っており、SDGsに民間資金を誘導していくための方法を深堀していくべきとの議論もなされている、と述べました。

 

こうした意見を受けて、衛藤会長は「航空券連帯税に関しては世界で14か国の例をすでに見ている。日本でも実現できるのではないかと思われる。議員立法という方法もある」と述べました。

 

●外務省としてがんばってもらうが、議連としては議員立法も考える

 

続いて、9月国連ハイレベルウィークに派遣された2人の学生、横浜市立大学1年の藤澤茉由さんと南亜伽音さんが次のようにそれぞれ報告し感想を述べました。「国際連帯税に若者をどのように巻き込んでいくか、資金を提供するのは一般の人なので、国民の理解を増やすことが必要だ」「革新的資金調達について、資金の使途明確化により議論が活性化するのではないか」。

 

★【神奈川新聞】「国際連帯税」導入を 横浜市立大生、議員に訴え

 

次に、上村雄彦横浜市大教授から「民間資金の活用だが、同資金はどうしても利潤が伴わなければならず、これで開発資金を賄うことには限界があるのではないか」との問題点が指摘されました。これに対し、塚田審議官は国際的流れとしては国際連帯税より民間資金の活用の方である、との議論を展開。

 

しかし、こうした議論は、この1、2年国際社会に向けて河野(前)大臣が国際連帯税実施を発信してきたこととは異なってきます。国際連帯税を実現していくための方策と、民間資金の活用を促していく方策とははっきり区別すべきで、業界の反対や抵抗に合うので外務省としては厳しいという話は最初っから税制による資金創出を諦めているに等しいと言えます。なぜなら、航空券連帯税で言えば10数か国が業界の反対や抵抗にあいつつも国際貢献策として実施しているからです。

 

こうした議論を踏まえつつ、最後に石橋通宏議連事務局長は「外務省は国際連帯税方式の重要性をよく考えてもらいたい。税制改正に向け頑張ってもらいたいが、議連としては衛藤会長とも相談しつつ議員立法という手法も考えていき、次回までに提案したい」とまとめ、さらに今後の活動として、①茂木新大臣への要請、②各党の税調活動での要望書の主旨の反映を提案しました。①につき、学生たちも参加できるようにしてはどうかとの提案もあり、なるべくそのように図りたいということになり、議員連盟の第2回総会を終えました。