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【資料&解説】セミナー「採択された国際租税枠組条約の草案:意義と今後」

9月24日g-taxセミナ-②「採択された国際租税枠組条約の草案:その意義と今後のステップ」は、講師に青葉博雄・CNEO(Center for New Economic Order)代表を迎え、30人が参加しました。

 

■ セミナーで使われた資料

 

この時に使われた資料、ⅰ) 国際租税協力枠組み条約を巡る交渉の状況

ⅱ)国連国際租税協力枠組み条約への付託事事項(TOR)議長草案(邦訳)を送ります。

 

■ セミナーでの質疑を踏まえた青葉さんのコメントと解説

 

また、青葉さんの報告の後、質疑を行いましたが、この質疑を踏まえ、あらためて青葉さんから、ⅰ)国連審議での日本政府の役割、ⅱ)IFF(不正な資金の流れ)への取り組み、ⅲ)来年の「第4回開発資金国際会議」に向けて、に関するコメントと解説が寄せられたのでお送りします。

 

青葉博雄さんのコメントと解説》

 

1. 国際租税枠組条約および関連議定書に関する国連での審議における日本政府の役割について

 

国際課税原則の見直しに向け、OECDは租税委員会の下、2012年に「税源浸食と利益移転(BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクト」を立ち上げました。この議論の大枠を纏めたのが、当時の委員会の議長、財務省の浅川雅嗣財務官(当時)でした。

 

その後、2018年に同プロジェクトのフォローアップとして、「デジタル化に伴う課税上の課題-中間報告書2018」を発表、「BEPSに関する包摂的枠組み」における交渉を経て、2021年10月に合意に至りました。

 

その後、発展途上国を中心に課税権への再配分が不十分であるとの認識が広がり、アフリカ諸国を中心とする発展途上国から国際課税改革における議論の場を国連に移す提案が出され、国連は「国際租税枠組み条約」の交渉開始を決定しました。8月まで開催された「国際租税枠組条約付託事項に関する政府間特別委員会」において、日本政府は「OECD/G20包括的枠組み」の下での合意事項見直しに繋がる動きに終始反対の立場を取ってきました。

 

現在開催されている国連総会において年内に「付託事項」が決定し、同条約および議定書の交渉委員会を支える事務局の設置が決まります。そして、来年早々に条約交渉委員会に置ける議論が始まる見通しです。私は、日本政府に対し、「OECD/G20包括的枠組み」における合意に固執することなく、国際課税改革に関する豊富な知見を活かし、国連における議論において(ブレーキ役を果たすのではなく、)積極的に前に進める役割を担うことを求めていきたいと考えております。

 

2. IFF(不正な資金の流れ)への取り組み

 

今回のセミナーの中でIFFへの取り組みに関する有意義な意見交換がありました。現在、国際社会はIFFに対する取り組みとして次のようなことを行っております。(注:ここでのIFFには租税回避も含むとします。)

 

  1)資金洗浄・テロ資金供与に対処を目的とするする「金融活動作業部会(FATF)」による取り組み

  2)匿名の法的組織の真の所有者および金融口座情報の自動交換などを通しての租税回避対策を図るための、「 税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム」による取り組み

  3)「税源浸食と利益移転(BEPS)」に対するOECDを中心とする取り組み

  4)透明性があり責任ある資源管理を目指す、「採取産業透明性イニシアティブ(EITI)」による取り組み

 

今回の政府間特別委員会における審議において、2つ目の初期議定書のテーマの候補の一つとして「税に関係する不正な資金の流れ」が挙げられています。よって、2)に関しては国際租税枠組条約および関連する議定書の対象となり得ると考えられますが、先ず既存の取り組みの強化が求められるものと思います。次に1)の「資金洗浄・テロ資金供与への対処」についてですが、国際的税務取り決めによって対応が図られるものではなく、刑事案件としての取り締まりが中心となると考えます。

 

3.「第4回開発資金国際会議」に向けて

 

来年6月にスペインにおいて、第4回開発資金国際会議(Ffd4)が開催されます。既に私が入っているFfDに関する国際的市民社会グループにおいても、国連のプロセスへのインプットの準備が始まっております。過去の開発資金国際会議において、SDGs実現に資する国内資金動員(DRM:Domestic Resource Mobilization)の増大を図る方策の一つとして国際課税改革の重要性が強調されてきました。

 

詳しくは『国際人権ひろば(2022年03月発行号』に掲載された拙論をご参照ください。開発資金国際会議における議論の行方も注視する必要があると考えます。

 

※写真は、国連一般討論で演説するナイジェリア副大統領のカシム・シェティマ 氏(9月25日)

【資料】9.24セミナー国際租税枠組み条約付託事項3つの草案の一覧

国際租税枠組み条約に関するセミナーの第2弾が、9月24日下記の通り行われます。今回は付託事項の草案が採択されましたので、その意義について青葉氏より報告していただき、その上で今後の展望なども議論していきたいと思います。お時間が取れるようでしたらぜひご参加ください。

 

なお、付託事項の草案策定のため政府間特別委員会は4回にわたり草案(ゼロ~第3)を発表し、8月15日付公表の草案が翌日採択されました。そこで第1草案から最終草案までの文案を一覧にしてみましたので、どの文言が消えて、何が追加されたか、お読みください(どれも仮訳です)。なお、ゼロ草案は省略しています。

 

【資料】国際租税協力に関する国際連合枠組条約の付託 草案(第 1 ~第 3 )の一覧

 

ちょっと見ずらいと思いますが、「黒い字」が7月18日付の第1草案【1】、「青い字」が8月11日付の第2草案【2】、「赤い字」が8月15日付の第3草案【3】です。

 

ざっと目を通してくださると助かりますが、いっそう関心のある方は、この最終草案の意義につき、「第2草案までに盛り込まれたまっとうな内容が最終案で維持されているか(維持)」「第2草案までに盛り込まれていないまっとうな内容が最終案で盛り込まれたか(追加)」を探ってみてください。

 

※「維持・追加」内容については、前回のセミナーで青葉氏から報告された「国際租税協力枠組条約を巡る交渉の状況」を参照ください。 

 

※なお、国際租税協力枠組条約が国連の課題として浮上してきた経緯については、金子先生から報告された「国連国際租税協力枠組条約の形成過程」を参照ください。

 

《 各ドラフトのURL 》

【1】国際租税協力に関する国際連合枠組条約の草案改訂案(2024年7月18日)

 

【2】国際租税協力に関する国際連合枠組み条約の付託草案改訂案(2024年8月11日現在)

 

【3】国際租税協力枠組条約に関する議長規約案(2024年8月15日)

 

 

《インフォメーション》

【g-taxセミナー:採択された国際租税枠組み条約の草案:その意義と今後のステップ】

 ◎日 時:2024年9月24日(火)午後7時~8時30分

 ◎場 所:Zoomで開催

 ◎参加申込:希望者は次のアドレスに「g-tax②セミナー参加」、並びにお名前、所属(あれば)を明記の上申込み下さい。 gtaxftt@gmail.com(担当:田中) 

  ⇒希望者には後ほどZoomリンクを送ります。 ※ 無名の申込みはお断りします。 

 ◎参加費:無料

 ◎提案者:青葉博雄・CNEO(Center for New Economic Order)代表、GATJ(Global Alliance for Tax Justice)世界委員会アジア代表

 

【ご案内】セミナー「採択された国際租税枠組条約の草案:意義と今後のステップ」

国際租税枠組み条約問題の<g-taxセミナー>の第2弾を行います。ふるってご参加ください。

 

   ~法的拘束力のある枠組み条約と2つの議定書の交渉へ!~

採択された国際租税枠組み条約の草案:その意義と今後のステップ

 

◎日 時:2024年9月24日(火)午後7時~8時30分

◎場 所:Zoomで開催

◎参加申込:

  希望者は次のアドレスに「g-tax②セミナー参加」、並びにお名前、所属(あれば)を明記の上申込み下さい。 gtaxftt@gmail.com(担当:田中) 

 ⇒参加希望者に、後ほどZoomリンクを送ります。※ 無名の申込みはお断りします。  

◎参加費:無料

◎提案者:青葉博雄・CNEO(Center for New Economic Order)代表、GATJ(Global Alliance for Tax Justice)世界委員会アジア代表

 

既報通り、8月16日政府間特別委員会による「国際租税協力に関する国連枠組み条約の付託事項の草案」(*)が《賛成110カ国、棄権44カ国、反対8カ国》という圧倒的多数で採択されました。この結果、国連は2027年末の間までに、法的拘束力のある国連租税枠組み条約と2つの議定書を交渉していくことになりました。

 

前回のセミナーで、「枠組み条約の形成過程」と「枠組み条約を巡る交渉の状況」について学びました(**)。今回その続きとして、付託事項草案採択の意義について、青葉さんより国際的な議論を踏まえて報告してもらいます。また、採択に反対した8カ国のうちに日本も入っていますが、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトをけん引してきた日本はむしろ率先して枠組み条約策定プロセスに関わっていくべきではないか、ということで対策を立てていきたいと思います。

 

いずれにせよ、国際租税ルールは、抜け穴だらけの非常に非効率なグローバル税制のままであり、世界の富裕層や大企業がタックスヘイブンを利用して税金逃れを、またアフリカ等途上国においては違法な資金流出を可能にしています。グローバルでデジタル化された経済下にあって、そのことに相応しい総合的で公正かつ効率的な国際租税制度が必要なことは言うまでもありません。

 

(*)Chair’s Proposal for Draft Terms of Reference for a United Nations Framework Convention on International Tax Cooperation

(**)前回セミナーの資料   

 

【国連租税枠組み条約の付託事項草案の概要(枠組み条約と2つの議定書)】

 

◎ 国連租税枠組み条約

<原則>

 a)普遍的アプローチと開発途上国等のニーズの考慮、b)加盟国の租税主権の承認、c)国際人権法との整合性、d)持続可能な開発の視点、など。

<具体案>

 a)多国籍企業への公平な課税、b)富裕層への課税、c) 持続可能な開発の達成に貢献するアプローチ、d) 透明性及び情報交換を含む相互行政支援、e) 不正な資金の流れ、租税回避、脱税及び有害な税慣行への対処、f) 租税紛争の効果的な予防及び解決

 

◎ 2つの議定書

*一つ目の議定書

 デジタル化とグローバル化経済において、国境を越えて行う多国籍企業のビジネスへの課税

*二つ目の議定書(以下の優先分野から選択する)

 a)デジタル化経済への課税、b)不正な資金フローへの措置、c)租税紛争の予防と解決、d)富裕層による脱税と租税回避への対処と課税

 

採択された国連租税枠組み条約「草案」の概要とその歴史的な意義

 ■ 国連租税枠組み条約の付託事項草案の概要

 

8月16日国連において、政府間特別委員会による「国際租税協力に関する国連枠組み条約の付託事項の草案」(注1)が《賛成110カ国、棄権44カ国、反対8カ国》という圧倒的多数で採択されました。この結果、国連は2027年末までの間に、国連租税枠組み条約と2つの議定書を作成することになりました。以下、採択された草案について概要を見てみます。

 

◎ 国連租税枠組み条約

<原則>

a)普遍的アプローチと開発途上国等のニーズの考慮、b)加盟国の租税主権の承認、c)国際人権法との整合性、d)持続可能な開発の視点、など。

<具体案>

a)多国籍企業への公平な課税、b)富裕層への課税、c) 持続可能な開発の達成に貢献するアプローチ、d) 透明性及び情報交換を含む相互行政支援、e) 不正な資金の流れ、租税回避、脱税及び有害な税慣行への対処、f) 租税紛争の効果的な予防及び解決

 

◎ 2つの議定書

*一つ目の議定書

 デジタル化とグローバル化経済において、国境を越えて行う多国籍企業のビジネスへの課税

*二つ目の議定書(以下の優先分野から選択する)

a)デジタル化経済への課税、b)不正な資金フローへの措置、c)租税紛争の予防と解決、d)富裕層による脱税と租税回避への対処と課税

 

■ 草案採択の意義:抜け穴だらけの国際租税制度の根本的変革へ!

 

今日、各国はグローバルな税制の不正利用により、年間4,800億ドル(約72兆円)の税金を失っています。このうち、3,110億ドルは多国籍企業による国境を越えた法人税の不正利用により、1,690億ドルは富裕層によるオフショア税(タックスヘイブンなど)の悪用により失われています(英Tax Justice Network、2023年)。実際、多国籍企業は海外で稼ぐ利益の3分の1を、タックスヘイブンに移転し続けています(注2)。

 

一方、「約890億ドル(約13兆円)の不正な資金がアフリカから流出し、先進各国に流れ込んでいる。それは先進国がアフリカに拠出している開発援助や海外直接投資よりはるかに多い」(注3)という途上国においての不正な(違法な)資金流出問題があります。

 

端的に言って、私たちは抜け穴だらけの非常に非効率なグローバル税制を抱えており、世界の富裕層や大企業がタックスヘイブンを利用して税金逃れを可能にしています。戦後国際租税ルールを主導してきたのは先進国グループのOECD(経済協力開発機構)でしたが、いぜんとして不公平で非効率な国際租税ルールがまかり通っているのです。

 

近年のグローバル化・デジタル化経済に対応すべくBEPS(税源浸食と利益移転)包摂的枠組による「第1の柱=市場国での一定の課税権(いわゆるデジタル課税)と第2の柱=国際最低課税」という2つの新たな税制も残念ながらうまくいっていません。とくに前者につき、米国議会の批准・承認がなければ成立しないという大きな問題を抱えています。デジタル課税に反対している米共和党の上院議員は、選挙で選ばれたわけでもない非公開のフォーラム(注、OECDのこと)にどうして我々が従わなければならないのか、と述べています。

 

とするなら、世界の大多数の国々が参加し、合法的に条約等を作成し、そのことに米国などをまき込んでいくことで対応していってはどうか。このことができるのは国連でしかできません。今回の枠組み条約策定に向けての動向は、2つの歴史的ともいえる意義を持っています。ひとつは、今日のグローバル化・デジタル化経済下における包括的で効果的かつ法的なグローバル税制を目指していること、ふたつは、すべての国連加盟国の参加方式によるグローバルガバナンスを目指していること、です。文字通り、気候変動課題に続き、国際租税課題の枠組み条約が誕生する可能性が出てきたのです。

 

■ 第2弾セミナー、近日中に開催!:租税枠組み条約策定は、世銀・IMF改革に繋がります

 

去る7月29日にセミナー「国連 国際租税協力枠組み条約の設立の可能性を探る」を開催しましたが、今月中に国際的な総括議論を踏まえて、セミナー第2弾を開催します。

 

ところで、国際租税ルールに関しては、これまでもっぱらOECDが主導し、途上国は協議にすら参加できませんでした。ただ経済のグローバル化とデジタル化にあたり、OECDはBEPSプロジェクトを設定し、上記2つのグローバル課税に関し包摂的枠組ということで途上国にも参加を呼びかけ、140カ国余りが参加しました。しかし、途上国は議論には参加できても最終的な意思決定過程には参加できなかったということです。いうまでもなく国連で枠組み条約を作ることはすべての国連加盟国が対等の立場で参加できることになります。

 

一方、今日喧しく言われている世界銀行やIMF(国際通貨基金)の改革ですが、根本的には組織ガバナンスを改革する必要があります。それは投票権が出資額によって配分されており、したがって意思決定においては先進国や経済規模の大きい国が有利となるからです。一国一票制という国連方式に限りなく近づけなければなりませんが、それに向けた試みを、今回の国際租税枠組み条約策定過程でチャレンジしていることになります。

 

ともあれ、第2弾のの国際租税枠組み条約問題セミナー開催をお待ちください。

 

(注1)

Chair’s Proposal for Draft Terms of Reference for a United Nations Framework Convention on International Tax Cooperation

(注2)

米国が葬る税の国際協調 断ち切れない「底辺への競争」

(注3)

アフリカ、中国・ロシアの権威主義望まず 元世銀副総裁

 

 ※写真は、付託事項草案に関する特別委で発言する市民社会代表(米国のNGO、Center for Economic and Social Rights のHPより)

【速報】国際租税枠組み条約に向けた付託事項草案、圧倒的多数で採択!!

 国連投票結果

           <クリックすると大きな画面になります>

 

8月16日国連において「国際租税協力に関する国連枠組み条約の付託事項の草案」(1)に関し採決を行ったところ、【賛成:110、反対8、棄権44】ということで、草案が圧倒的多数で採択されました。

 

反対の8カ国は、オーストラリア、カナダ、イスラエル、日本、ニュージーランド、韓国、イギリス、アメリカ(英語圏+米国の関与が強い国と言えますか)。

 

また、先進国で賛成に回る国はなく、賛成はグローバルサウス諸国(含む、中国・インド等新興国)の大多数だけということになり、くっきりと南と北の分断が明らかになりました。

 

ちなみに、枠組み条約を作ろうということになった、2023年11月22日の「国連における包摂的かつ効果的な国際租税協力の促進」決議の採択状況は次の通りです。【賛成125、反対48、棄権9】。この時ほとんどの先進国は反対でしたが、今回は上記8カ国を除き棄権に回ったため、反対がぐっと減りました。

 

■ グローバルサウスのアフリカ・ブルンジからの声

 

ブルンジ国連政府代表部は「X」で、次のようなコメントを出しています(2)。

 

素晴らしいニュースです!国際租税協力に関する国連枠組条約の付託事項の草案が、本日 2024 年 8 月 16 日に採択されました。この重要な節目により、グローバルサウスが国際税務の議論に平等に参加できるようになります。南側諸国はこの歴史的な決定を圧倒的に支持しましたが、北側諸国の大半は棄権または反対票を投じました。この分裂は、真の国際租税協力を達成する上での継続的な課題を浮き彫りにしています。こうした違いにもかかわらず、この成果は、世界的な税の公平性を強化し、持続可能な開発を支援するための重要な一歩となります。公正で公平な国際租税システムを求めるキャンペーンは続きます!

 

■ 今後のタイムテーブル>3年かけて枠組み条約と2つの議定書を作成

 

今後のタイムテーブルですが、この草案が本年の総会で採択された後、「IV. 交渉のアプローチと期間」によれば、3年かけて枠組み条約と2つの議定書(3)を作成することになっています。つまり、2027年末までに完成させるとのことです。アフリカ・グループは2年を主張していましたが、先進国側に押し切られたようです(4)。

 

ともあれ、この草案には何点かの問題点はありますが、全体的にはきわめて包括的かつ野心的なものです。一方、我が日本政府は枠組み条約に対して一貫として後ろ向きの姿勢を取っています。建前としてはグローバルサウスとの連携、連帯を言いながら、いざ国際租税取極めを巡っては分裂、分断を選択しています。こうした拗ねたような姿勢ではなく、グローバルサウスのためにも、OECDでのBEPSプロジェクトをけん引した日本政府・財務省の英知を国連租税枠組み条約の取り組みでも生かせるようにしていただきたいと思います。

 

(1)草案最終版

 

(2)ブルンジ国連政府代表部の「X」

 

(3)二つの議定書について

<草案最終版より>

15. 枠組み条約と同時に2つの初期議定書を作成すべきである。早期議定書の1つは、デジタル化とグローバル化が進む経済において、国境を越えたサービスの提供から派生する所得に対する課税を扱うべきである。

 

16. 第二の早期議定書の主題は、政府間交渉委員会の組織会合で決定されるべきであり、以下の特定の優先分野から選択されるべきである:

  a. デジタル化経済への課税

  b. 税関連の不正な資金フローに対する措置

  c. 租税紛争の予防と解決

  d. 富裕層による脱税と租税回避に対処し、関連する加盟国における効果的な課税を確保する。

 

(4)European Network on Debt and Development (Eurodad)のポリシー&アドボカシー・マネージャーのTove Maria Ryding さんの「X」より

 

※写真は、Tove Maria Ryding さんの「X」より

 

「SDGs推進への資金確保 連帯実現へ 日本も動け」朝日新聞掲載

miyakoshi' report

 

8月7日付朝日新聞「私の視点」コーナーに、当フォーラム理事の宮越太郎氏の投稿が掲載されましたので、紹介します。なお、文中にある「ジョセフ・スティグリッツの外交誌での論稿」というのは、FOREIGN AFFAIRS誌に載ったThe International Tax System Is Broken(国際課税システムは破綻している)です(*)。

 

 

宮越太郎さん「私の視点」

SDGs推進への資金確保 連帯実現へ 日本も動け

 

6月末の国連報告によれば、2030年達成が目標のSDGs(持続可能な開発目標)の内83%が達成されていない。大きな原因は資金不足で、不足額は年間約4.2兆ドルに上る。ESG投資など民間資金は広がっているが、公的資金の拡大なしに達成は難しい。

 

大きなウェートを占める目標が、気候変動対策だ。昨年のCOP28 (国連気候変動会議)では、フランスのマクロン大統領が、「国際課税に関するタスクフォース」を発足した。化石燃料や海上・航空輸送への課税、国境を超えた経済取引の恩恵を受ける金融取引への課税など、グローバルタックス(国際連帯税)に基づく革新的な資金調達手段を決めるのが目的である。グローバルタックスは、従来の国家主権に専属した課税では対応できない、国境を超える取引や資産に課税し、税収を地球規模課題の解決などに充てる税制だ。

 

すでに導入されているのが航空券連帯税だ。税収はユニットエイドという国際保健機関に送られるが、医薬品開発などは成功率が低くリスクが高いので、まさに公的資金が適しているといえる。

 

…中略…

 

これまで先進国中心のOECDが国際課税ルールを策定してきたが、現行制度では年間約4800億ドル(約72兆円)の租税漏れが生じるため、昨年、国連が国際課税の公平な制度を目指し「国際租税協力枠組み条約」交渉開始の決議をした。9月の国連総会で進捗報告が予定されている「枠組み条約」には、租税回避を許す欠陥税制を改革するものと期待が集まる。ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツも7月、外交誌にそう明確に指摘した論稿を寄せた。

 

この条約に加え、今年と来年はSDGs達成の資金調達にとって決定的に重要な年となる。一つは11月に開催されるCOP29で、気候変動対策へ向けた資金動員が主要な議題になる。二つ目は来年十年ぶりに国連の第4回「開発資金国際会議」が開催されることだ。第3回ではその後の開発資金調達の指針となる行動目標が策定された。

 

グローバル連帯税フォーラム(http://isl-forum.jp)はグローバルタックスや枠組み条約の実現に向けて動いているが、非現実的と批判されることも多い。しかし、これらのアイデアはむしろ国境を越えて繋がる今の世界の現実に即したものだ。SDGsを取り巻く困難な現実に世界が諦めつつある中、国際課税のようなアジェンダに大きな発言権を持つ日本だからこそ、官民総掛かりでこの現状を変え得るアイデアに挑戦すべきではないだろうか。

 

(*)原文はこちら邦訳はこちら。

「SDGs推進への資金確保 連帯実現へ 日本も動け」朝日新聞掲載

miyakoshi' report 

 

8月7日付朝日新聞「私の視点」コーナーに、当フォーラム理事の宮越太郎氏の投稿が掲載されましたので、紹介します。なお、文中にある「ジョセフ・スティグリッツの外交誌での論稿」というのは、FOREIGN AFFAIRS誌に載ったThe International Tax System Is Broken(国際課税システムは破綻している)です(*)。

 

 

宮越太郎さん「私の視点」

SDGs推進への資金確保 連帯実現へ 日本も動け

 

6月末の国連報告によれば、2030年達成が目標のSDGs(持続可能な開発目標)の内83%が達成されていない。大きな原因は資金不足で、不足額は年間約4.2兆ドルに上る。ESG投資など民間資金は広がっているが、公的資金の拡大なしに達成は難しい。

 

大きなウェートを占める目標が、気候変動対策だ。昨年のCOP28 (国連気候変動会議)では、フランスのマクロン大統領が、「国際課税に関するタスクフォース」を発足した。化石燃料や海上・航空輸送への課税、国境を超えた経済取引の恩恵を受ける金融取引への課税など、グローバルタックス(国際連帯税)に基づく革新的な資金調達手段を決めるのが目的である。グローバルタックスは、従来の国家主権に専属した課税では対応できない、国境を超える取引や資産に課税し、税収を地球規模課題の解決などに充てる税制だ。

 

すでに導入されているのが航空券連帯税だ。税収はユニットエイドという国際保健機関に送られるが、医薬品開発などは成功率が低くリスクが高いので、まさに公的資金が適しているといえる。

 

…中略…

 

これまで先進国中心のOECDが国際課税ルールを策定してきたが、現行制度では年間約4800億ドル(約72兆円)の租税漏れが生じるため、昨年、国連が国際課税の公平な制度を目指し「国際租税協力枠組み条約」交渉開始の決議をした。9月の国連総会で進捗報告が予定されている「枠組み条約」には、租税回避を許す欠陥税制を改革するものと期待が集まる。ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツも7月、外交誌にそう明確に指摘した論稿を寄せた。

 

この条約に加え、今年と来年はSDGs達成の資金調達にとって決定的に重要な年となる。一つは11月に開催されるCOP29で、気候変動対策へ向けた資金動員が主要な議題になる。二つ目は来年十年ぶりに国連の第4回「開発資金国際会議」が開催されることだ。第3回ではその後の開発資金調達の指針となる行動目標が策定された。

 

グローバル連帯税フォーラム(http://isl-forum.jp)はグローバルタックスや枠組み条約の実現に向けて動いているが、非現実的と批判されることも多い。しかし、これらのアイデアはむしろ国境を越えて繋がる今の世界の現実に即したものだ。SDGsを取り巻く困難な現実に世界が諦めつつある中、国際課税のようなアジェンダに大きな発言権を持つ日本だからこそ、官民総掛かりでこの現状を変え得るアイデアに挑戦すべきではないだろうか。

 

(*)原文はこちら邦訳はこちら。

 

 

【資料】セミナー「国連国際租税協力枠組条約設立の可能性を探る」

7月29日同上セミナーが開催されましたが、当日提案者が使用したパワポ資料を公開します。

 

1)報告1:「国連国際租税協力枠組条約の形成過程」

  -金子文夫・グローバル連帯税フォーラム/横浜市立大学名誉教授

 

 

 2)報告2:「国際租税協力枠組条約を巡る交渉の状況」

      &国連国際租税協力枠組条約への付託事項(TOR)草案の仮訳

  -青葉博雄・CNEO (Center for New Economic Order)

 

【若干の解説】

2023年12月、国連総会は決議78/230「国連における包括的かつ効果的な国際税務協力の推進」を採択し、国際租税協力に関する国連枠組条約の付託事項の草案を作成する権限を持つ特別政府間委員会を設立し、2024年8月までに委員会の作業を完了することを目指しました。

 

それで現在(本年4月26日~5月8日の特別委の第1回会議に続き)、7月29日~8月16日にかけて第2回会議が行われています。この会議に先立ち、枠組条約への付託事項(TOR)草案の改訂版が公表され、これに沿って議論されています。

 

青葉さんは、この草案内容において、そのまま「維持されるべき要素(守り)」と、さらに草案にはないが今後「追加されるべき要素(攻め)」を指摘しています。第2回会議で後者が多く盛り込まれることが期待されます。

G20財務相等会合、超富裕層への課税、国際租税協力枠組み条約

G20財務相・中銀総裁会議が25-26日に開催されますが、その共同声明のドラフトをロイター通信が入手したということで、電子版に掲載されています(注1)。様々な課題がある中で、議長国ブラジルがもっとも重視し今回の共同声明に盛り込もうとしていたのが「超富裕層へのグローバルな最低課税」案ですが、どうなりそうでしょうか?

 

■超富裕層へのグローバルな最低課税案は共同声明に盛り込まれるか?

 

ロイター記事は次のように述べています。「共同声明案はブラジルが強く主張する富裕層への課税強化について支持表明は盛り込まれず、IMFとブラジルの依頼で行われている収入に関する調査をG20財務相が注目していると記すにとどめた」、と。この富裕層への課税案は次回G20議長国となる南アフリカやアフリカ連合、そしてフランスやスペインなどが賛同しましたが、米国その他が反対したようです。

 

もっとも共同声明とは別に「国際課税協力に関するリオデジャネイロG20閣僚宣言」を上げるようですが、これは多分に議長国のメンツを立てるためでしょうか? ただ、この閣僚宣言が「国際租税協力に関する枠組み条約」との関連で述べられることになれば、たいへん意義のあるものになると思います。

 

ちなみに、タックス・ジャステス関係NGOのみならず、国際協力NGO・研究団体、労働組合は、まず枠組み条約を制定し、その中に富裕層への課税を盛り込むべきではないかと提案しています。同時に、多国籍企業への公正な課税、金融取引税なども。要するに、脱税、租税回避、利益移転、そして違法な資金流出を止めていく手立てを準備していくことです。

 

■OECDの権威の失墜>国連 国際租税協力枠組み条約の動き加速か?

 

なお、本日(25日)の日経新聞は、『デジタル課税遠い決着、独自税復活に懸念 G20の焦点に』と題し、次のように述べています(注2)。「これまで国際課税の議論は先進国の主導でOECDがけん引してきたが、近年はアフリカ諸国を中心に国連に軸足を移す動きもある。東京財団政策研究所の岡直樹研究員はデジタル課税の膠着が続けば『OECDの権威を失墜させかねない』と警鐘を鳴らす」。

 

日経新聞ではほとんど報道されていませんが、「国連に軸足を移す動き」とは国際租税枠組み条約づくりに動きのことですが、スケジュールは以下の通りとなります。
 1)7月29日~8月16日枠組条約の付託事項を起草する特別委員会の第2回目の会合
 2)ここで草案が合意されると、これを9月からの国連総会に報告し、最終決定を図る
 3)その後条約文の交渉が行われる。

 

◎以下、特別委員会によるドラフト(⇒この分析は29日のセミナーで行います)
国際連合枠組条約のゼロドラフト(2024年6月7日)
国際連合枠組条約の規約改訂案(2024年7月18日)

 

 

【セミナー「国連国際税務協力枠組条約の設立の可能性を探る」】

 

 ◎日 時:7月29日(月)午後7時~8時30分
 ◎提案者:青葉博雄・CNEO(Center for New Economic Order)代表/GATJ                        

      (Global Alliance for Tax Justice)世界委員会アジア代表             

      金子文夫・横浜市立大学名誉教授:

 ◎参 加:Zoomによるオンライン配信。gtaxftt@gmail.com から申込み下さい。
 ◎参加費:無料
   ※ 詳細は、こちらをご覧下さい。

 

(注1) 
G20財務相、共同声明で世界経済「軟着陸」の可能性に言及へ
(注2)
デジタル課税遠い決着、独自税復活に懸念 G20の焦点に

国際租税協力に関する枠組条約>スティグリッツの小論とセミナー開催

著名な経済学者のジョセフ・スティグリッツが、FOREIGN AFFAIRSオンラインに、『国際課税システムは破綻している しかし国連はそれを解決できる―ワシントンが邪魔をしなければ』と題して、現在国連で議論中の「国際租税協力に関する枠組条約」について寄稿文を寄せています。

 

今日まで国際課税ルールを主導してきたOECD(経済協力開発機構)の政策は失敗に帰していること、これを克服するためには途上国が主張するように、気候変動枠組条約の租税版となる国際枠組条約を創設すべきと訴えています。スティグリッツの寄稿文は下記をご覧ください。

 

■「枠組条約」問題は歴史的な取組み>しかし、日本ではまったく報道されず

 

この「枠組条約」問題ですが、二重の意味で歴史的ともいえる取組みとなりそうです。巨大IT企業等の目に余る租税回避行為に対し、OECD主導で「恒久施設なくして課税なし」という100年来の国際課税ルールの変更を、2021年にG20で合意しましたが、まずこのことが歴史的と言えます(まだ実施には至っていませんが)。さらに途上国側はこうしたプロセスが不十分として「国連枠組条約」として国際ルールを決めるべきとして、2023年に国連で採択したこと、です(現在、特別委員会で草案作成に向け議論中)。もし「枠組条約」案が国連で採択されるなら、気候変動問題に続いて歴史的なものになるでしょう。

 

ところが、日本では前者のことは報道されても、後者のことはまったく報道されていませんし、驚くべきことにシンクタンクなどでも分析や論文等が公表されていません。この背景には、日本を含むG7諸国がこぞって「枠組条約」創設に後ろ向きの態度を取っているからでしょうか。

 

そこであらためて私たちは国際租税枠組条約の意義を探るとともに、決して前向きではない日本政府を変えるために何をすべきか、ともに議論していくために下記のようなセミナーを開催します。ふるってご参加ください。

 

■セミナー「国連国際税務協力枠組条約の設立の可能性を探る」開催

 

◎日 時:7月29日(月)午後7時~8時30分

◎提案者:青葉博雄・CNEO(Center for New Economic Order)代表/GATJ(Global          Alliance for Tax Justice)世界委員会アジア代表

     金子文夫・横浜市立大学名誉教授:

◎参 加:Zoomによる配信。gtaxftt@gmail.com  から申込み下さい。

◎参加費:無料

詳細は、こちらをご覧ください。

 

 

 

国際課税システムは破綻している【FOREIGN AFFAIRS】

しかし国連はそれを解決できる―ワシントンが邪魔をしなければ

ジョセフ・E・スティグリッツ

 

国連の静かな廊下で激しい戦いが繰り広げられている。昨年 12 月、国連総会は、より公平な新しい世界税制の枠組みに関する交渉を開始する決議を可決した。提案されている国連国際税務協力枠組条約は、企業や富裕層が納税逃れを許す抜け穴だらけの現行の欠陥税制を改革するものである。

 

今日の租税回避の規模は驚くべきものだ。現在の制度では、企業や富裕層がタックスヘイブンに利益を「隠す」ことができる。毎年、多国籍企業の海外利益、つまり企業の本国以外で発生した利益の35% が、スイス、シンガポール、バミューダ、ケイマン諸島などの国に帰属し、利益が実際に発生した国の税務当局の手が届かない場所に帰属している。その結果生じる歳入の損失は、年間 2,400 億ドルから 6,000 億ドルに上ると推定される。

 

…以下、全文はこちらをご覧ください。