フランスの有価証券取引税が市場流動性および価格変動の大きさに及ぼす影響
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/14e007.html
金融取引税(FTT)に関するちょっと興味深い論文(ディスカッション・ペーパー)が独法・経済産業研究所(RIETI)のウェッブサイトに載っていますので紹介します。
ディスカッション・ペーパー 14e007
by HAVRYLCHYK, Olena
どうして興味深いかと言いますと、FTTのひとつの論争に対して、フランスの一昨年8月から実施している独自のFTTである有価証券取引税、つまり株式取引税を材料にして、一定の結論を出しているからです。
その論争というのは、「投機的取引を抑制し、金融市場を安定化できるような金融取引税の仕組みを作ることは可能なのか? それとも追加的に金融取引税を導入することで市場の流動性が損なわれ、市場のボラティリティはむしろ高まってしまうのだろうか?」(本文より)というものです。
結論は、「調査の結果明らかになったのは、全体的に見て、…投機を抑制して市場のボラティリティを小さくすることもなかったが、悪影響をもたらしたこともない。したがって、金融取引税に関する世界的な論争の文脈においては、この検証結果は、STTは、是正目的というよりむしろ税収目的の課税手段という考え方を支持している」(本文より)としています。
ところで、株式取引税(有価証券取引税)については、現在英国が0.5%の課税を行っており(フランスは0.2%)、こちらもとくに投機規制が強まったとかボラティリティが高まったとかはまったく聞こえてきません。かつて日本でも1997年まで有価証券取引税がありましたが。
言うまでもなく、税率が高くなればなるほど投機規制の圧力は強くなるであろうし、投機にブレーキがかかれば取引量も相当減ることになるので、そうすると今度はボラティリティが高まる、という関係にあると思います。ですから、0.2~0.5%程度での税率であれば、実は金融セクターが騒ぐほどボラティリティは高まらない、つまり取引量は減らない、ということでしょう。
ともあれ、フランスのユニークな制度設計が上記のような実験的比較ができたということで、このディスカッション・ペーパーはたいへん有効かと思います。