明日の「講演会:パナマ文書を考える:富裕層や大企業の税逃れを許さないために」ですが、満席となったためご参加いただけませんので、ご了承をお願いします。
なお、当日の資料をご要望の方は、「5.8資料要望」とお書きの上、info@isl-forum.jp まで申込みください。
明日の「講演会:パナマ文書を考える:富裕層や大企業の税逃れを許さないために」ですが、満席となったためご参加いただけませんので、ご了承をお願いします。
なお、当日の資料をご要望の方は、「5.8資料要望」とお書きの上、info@isl-forum.jp まで申込みください。
このところ、「パナマ文書」問題で上村雄彦先生とテレビ出演のコンビを組んでいる(?)森信茂樹教授のパナマ文書関連の所論が、ダイアモンド・オンラインに連続して掲載されていますので紹介します(下記参照)。専門家だけあって、タックスヘイブン問題に関する実務について語られていますので、必読です。
例えば、「今後日本人(日本居住者)や日本企業の情報がパナマ文書の中から見つかった場合には、どうなるか」など。
その中で面白かったのは、日本居住者の海外財産の捕捉のための国外財産調書ですが(5000万円以上の財産)、「未提出が相当数いると言われている」とのこと。故意の不提出には罰則(1年以下の懲役)が科せられるので、パナマ文書問題には戦々恐々としているのではないか、と。
これらのことは、本日(4月30日)の日経新聞にも載っていますね。「…パナマ文書発覚以降、氏名公表を心配した富裕層からの(法律事務所への)問い合わせがやまない」、と。
*【日経新聞】「パナマ文書が問う上:逃げる富 揺らぐ税の信頼」
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO00282090Q6A430C1SHA000/?dg=1
【感想:罰則強化(例えば懲役5年以下とか)がひとつのカギになるか】
あと大企業のタックスヘイブンへの子会社(現地法人)の実態をどう把握するかですね。まずは徹底した情報開示と各国の自動情報交換制度構築が課題となります(パナマはこれに入ろうとしていなかったが、今回の事件もあり入ることに)。
日本の大企業がタックスヘイブンにどのくらいの現地法人を持っているかというと、資本金1億円以上の日本の大企業1,700社(大企業総数は2万9672社)が9000社を持っているとのことです。これは4月26日の参議院財政金融委員会で大塚耕平議員の質問(民進)に対して国税庁が答えたものですが(下記録画、42:16分頃)、やはりすごい数ですね。
*参院財政金融委員会ネット録画:http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
しかし、問題はその自動交換制度の実効性です。交換制度の条約を結んだのはよいが、タックスヘイブン諸国からまったく情報が上がってこない、という実質的サボタージュに対してです。実は、何十万社というペーパーカンパニーがあるケイマン諸島の政府機関は5階建てのビルひとつに入るくらいの規模だそうで、このような陣容で果たして政府当局が供与すべき情報を把握できるのか(志賀櫻「タックス・オブザーバー」エヌピー新書)、ということであり、情報を把握する能力も意思もなく、結果的に何ら有用な情報が出ないということも考えられます。
次に、4月のG20財務相会合の声明も挙げておきます。ちなみに、「G20では、ドイツが租税回避地への制裁も含めた強硬策を求めたが、新興国側は「事務量が増える」と慎重姿勢で、「防御的措置(対抗措置)」というあいまいな表現にとどまった」と毎日新聞にありました。
以上、森信教授の所論とG20財務相会合の声明、毎日新聞記事につき添付ファイルを見てください(赤、青字は分かりやすいように私が付けたものです)。
★写真は、ケイマン諸島とICIJのパナマ文書関連WEBサイト
4月20日参議院議員会館会議室で、院内学習会『グローバル連帯税が切り拓く未来』(主催:グローバル連帯税推進協議会事務局ほか)が開催され、国会議員7人、議員代理11人、市民37人の55人が参加しました。
冒頭、衛藤征士郎議員連盟会長は次のようにあいさつを行いました。「G7伊勢志摩サミットに向けて総理へ意見書を提出する予定だ。連休明けに動く。サミットの議題の一つは“感染症対策”になろうかと思うが、G7と世界銀行が途上国向け基金を創るという動きもある。その資金に例えば国際連帯税を考えられないか。5月のG7蔵相会議でも取り上げてもらえたらよい」。
続いて、寺島実郎・日本総合研究所理事長より「グローバル連帯税が切り拓く未来」と題して講演が行われました。パナマ文書問題とマネーゲームという今日的課題を切り口に、グローバル連帯税の基本理念、G7伊勢志摩サミットに向けての提言を述べられました。
★詳細は、こちらへ⇒ PDF
次に、上村雄彦・横浜大学教授より「グローバル連帯税推進協議 最終報告書-パナマ文書も含めて-」と題してプレゼンが行われました。冒頭パナマ文書とタックス・ヘイブンの問題について明らかにし、グローバル・タックスとタックス・ヘイブン、そしてグローバル連帯税との関連を述べ、その上で具体的にグローバル連帯税(最終報告書)を説明しました。
★詳細は、こちらへ⇒ PDF
討論では、航空会社をも巻き込んでいく必要性が語られ、また国際連帯税(を求める)国民会議のようなものをつくってどうか、という提案がありました。ともあれ、5月G7伊勢志摩サミットをターゲットに国際連帯税(グローバル連帯税)を官邸に申し入れていくことを確認し、院内学習会を終えました。
◆写真左は、寺島実郎氏と衛藤議連会長
【講演】パナマ文書を考える:富裕層や大企業の税逃れを許さないために
講師:合田 寛(公益財団法人 政治経済研究所主任研究員)
・日 時:5月8日(日)14:30~16:30
・場 所:「アカデミー湯島」5階学習室
住所:東京都文京区湯島2-28-14
(地下鉄・千代田線湯島駅(出口3) 徒歩7分、丸ノ内線・都営大江戸線
本郷三丁目 徒歩10分)
・資料代:500円
・申込み:「5.8講演会参加希望」とお書きの上、info@isl-forum.jp まで
現在、タックス・ヘイブン(租税回避地)への法人設立を行うパナマの法律事務所の金融取引に関するばく大な内部文書(パナマ文書)が流出・暴露され、その中には世界的に著名な政治家や富豪などが含まれていたため、大事件となっています(日本関係のリストは少なかったようですが)。
タックス・ヘイブン問題というと、私たちから遠い存在であるように思われるかもしれませんが、日本の富裕層や大企業がもっぱら節税(度を超すと脱税)のためにこれを利用しています。東京証券取引所に上場している上位50社のうち45社がタックス・ヘイブンを活用していますし、日本の対外直接投資(日本の企業が外国に工場や販売店を建てるなど)先の国・地域を見ると、タックス・ヘイブンであるケイマン諸島にばく大に投資していました(2011年には米国、オランダ、中国に続いて第4位、680億ドル)。
税にまつわる名言として、「代表(民主主義)なくして課税なし」とか「租税は文明社会の対価である」という言葉があります。言うまでもなく、国や自治体の運営は税金なくして成り立たないからです。しかし、富裕層や大企業が節税(または脱税)というルール破りを行う限り、税負担はもっぱら国境を越えられない普通の市民や中小企業が担うことになります。そういう意味で、タックス・ヘイブン利用者は民主主義と文明社会を破壊しているのです。
この度「パナマ文書」問題で揺れるタックス・ヘイブンにつき、この問題の第一人者である合田寛(ごうだ・ひろし)先生を講師に迎え、今回の事件の意味することについて、国際社会(G20/OECD(経済協力開発機構)含む)の取り組みと問題点について、またそもそもなぜ私たちがタックス・ヘイブン問題に取り組まなければならないのか等、を学んでいきたいと思います。そしてその上で、私たちに何ができるかをみんなで考えていきたいと思います。ふるってご参加ください。
◎合田 寛先生プロフィール:
神戸大学大学院経済学研究科博士課程修了。国会議員政策秘書を経て、公益財団法人政治経済研究所理事・現代経済研究室長(主任研究員)。著書:『タックスヘイブンに迫る―税逃れと闇のビジネス』(新日本出版社、2014年9月)など。
●なお、この講演会に先立ち、グローバル連帯税フォーラムが第6回的総会を行い、2016年度の活動につき議論します。こちらにも関心のある方はオブザーバー参加できますので、ぜひご参加ください。午後1時から、講演会と同じ場所で行います。
★写真左はアイスランド・レイキャビクのデモ、中はロンドンのデモ(AFPほか)
院内学習会:グローバル連帯税が切り拓く未来
◎講師:寺島実郎・日本総合研究所理事長、上村雄彦・横浜市立大学教授
今日世界では貧困・格差、気候変動、紛争と難民などの地球規模課題は山積しております。これに対し、国連は昨年「2030開発アジェンダ/持続可能な開発目標(SDGs)」を採択しました。SDGs は上記のような地球規模課題につき17の目標を立て2030年まで実行していくものです。
問題は、これらの目標達成のための資金です。公的資金であるODA(政府開発援助)ではとうてい足りません。そこで「グローバル連帯税」など革新的資金調達が必要となってきます。
昨年末に寺島実郎 (財)日本総合研究所理事長が座長を務めた「グローバル連帯税推進協議会」が最終報告書を作成しました。そこでは必要な資金を試算した上で、航空券連帯税などグローバル連帯税を取りまとめられています。
おりしも、来月26、27日にG7伊勢志摩サミットが開催されますが、議長国日本が世界に向け、SDGs達成のための資金としてグローバル連帯税を発信する絶好の機会となります。
つきましては、下記の日程で寺島実郎理事長を講師にお招きし、最終報告書の内容や激動する内外の情勢について語っていただき、今後のグローバル連帯税実現のための糧にしていきたいと思います。ご多忙のこととは存じますが、ご出席賜りますようお願い申し上げます。
【呼びかけ人】
衛藤征士郎(衆議院議員・自民党) 大門実紀史(参議院議員・共産党)
藤田 幸久(参議院議員・民進党) 福島みずほ(参議院議員・社民党)
斉藤 鉄夫(衆議院議員・公明党) 川田 龍平(参議院議員・無所属)
記
・日 時: 4月20日(水)16:00-17:00
・場 所: 参議院議員会館 B1F B105会議室
・講演「グローバル連帯税が切り拓く未来」
講師:寺島 実郎・(財)日本総合研究所理事長/上村雄彦・横浜市立大学教授
【主 催】
グローバル連帯税推進協議会事務局、グローバル連帯税フォーラム、世界連邦運動協会
これには市民側も傍聴できますので、関心のある人はどうぞご参加ください。
◎申込み:「4.20傍聴希望」とお書きの上、info@isl-forum.jp まで送り下さい。参加者には後ほど当日の案内を差し上げます。
グローバル連帯税の入門書である『世界の富を再分配する30の方法─グローバル・タックスで世界を変える』がいよいよ合同出版より刊行されます
≪4月4日発売! A5変型判 144頁 定価1,400円+税≫
「深刻化を増す世界の貧困・環境破壊・紛争」の裏には、グローバルな格差・不平等という問題が存在します。さらにその根底には経済(金融)のグローバル化という構造が横たわっています。本書では、その変革のためにグローバル・タックスという手法で地球上の富の再分配を行い、公正で持続可能な社会創造に向けた具体的な政策を、たいへん「分かりやすく」提示しています。ぜひお手に取ってお読みください。
<執筆者>
上村雄彦(横浜市立大学教授)<編集>
金子文夫(横浜市立大学名誉教授)
佐藤克彦(前・PSI 加盟組合日本協議会(PSI-JC)事務局長)
田中徹二(グローバル連帯税フォーラム代表理事)
津田久美子(北海道大学法学研究科博士課程)
望月 爾(立命館大学法学部教授)
<内容紹介>
貧困や格差、環境破壊など世界が抱えている深刻な問題、同じ世界で、たった1%のお金持ちに富が集中する現状、その2つを同時に解決できる革新的な税のしくみ、それがグローバル・タックスです。グローバル・タックスは、地球上の富を再分配し、世界を変える可能性を秘めているのです。
<目次>
第1章 世界が抱える深刻な問題
1 地球を悩ます貧困・環境破壊・紛争
2 一瞬にして世界に不幸をまき散らす金融危機
3 富める人は富み、貧しい人はどんどん貧しくなる世界
4 ODAでは地球の問題は解決できない
5 CSR、BOPの手法では世界の貧しさは解決できない
コラム① トマ・ピケティの『21 世紀の資本』と「グローバル資本税」
第2章 世界のお金が1%に集中するしくみ
6 世界経済が資本主義的市場原理で一体化すると……
7 地球上のおカネと資源を貪る多国籍企業
8 実体経済の数十倍にも膨れ上がったお金の売り買い
9 1%の大金持ちに富が集中する世界のしくみ
10 マネーゲーマーたちの天国 タックス・ヘイブンのしくみ
11 地球問題を解決するのにいくらかかるのか
コラム② ドーア氏の名著『金融が乗っ取る世界経済─ 21 世紀の憂鬱』
第3章 地球規模で税金を集め、分配するしくみ
12 グローバル・タックス(国際連帯税)はこうして生まれた
13 グローバル・タックスってどんなしくみ?
14 トービン税がグローバル通貨取引税へ進化した
15 国際社会で税金を集めるルールはどのようなものか?
16 炭素に税をかけて、温暖化を解決する方法
17 武器の売買に税をかければ、武器取引も抑制される
18 飛行機に乗ることで、三大感染症の対策に貢献できる
19 グリーン気候基金で温暖化対策の資金を調達する
20 グローバル・タックスで運営される国際機関が出現すると…
コラム③ プチ・グローバル累進的資産課税の提案
第4章 金融取引税のとりくみ
21 金融は、経済の血液
22 EU金融取引税の実施で、310億ユーロの資金が見込まれている
23 世界ではじめてEU10カ国が金融取引税の実施に合意した
コラム④ 誤解されがちな金融取引税
第5章 いま、私たちが抱える問題は武力や資源の争奪では解決しない
24 世界の問題を解決する資金源革新的開発資金を創り出すために
25 集めた税金を活用する最適な機関をつくる
26 99%のための国際連帯税キャンペーン
27 なぜ、世界の労働組合は国際連帯税を求めるのか
28 国際連帯税を導入するためのルールづくり
29 日本でグローバル・タックスが実現・導入される道筋
30 世界の問題を私たちの手で解決するために
コラム⑤ 「格差と貧困」は世界のキーワード
2月21日の朝日新聞社説「世界の貧困と不平等 『分配』を共有できるか」はたいへん共感を呼ぶ内容です。
忙しい人のために、超簡単に要約します。
1)拡大する格差・不平等そして貧困、これらに歯止めをかけるべく国際社会はSDGs(持続可能な開発目標)を定めた
2)が、難題は解決のための資金であり、ODA等ではとても足りない、航空券連帯税等の革新的資金調達や金融取引税に注目すべきだ
3)格差・不平等の改善なくして経済成長もおぼつかなく、「分配」が課題となっている。米国でのサンダース氏の支持拡大や安倍総理の分配発言等
4)今や多国籍企業にも変化の兆しがあり、CSRというレベルを超え「自然資本会計」という試み等が行われている
5)結論:「5月には日本でサミットがある。テロや難民、中東や朝鮮半島の不安定化など課題は山積しているが、共通する要因が貧困だ。世界を主導する国々の首脳が議論すべき課題である」 (以上、要約終わり)
ところで、SDGs達成のための資金は10兆ドル(約1200兆円)以上という試算が出されていますが(持続可能な開発のための資金に関する政府間専門家委員会)、グローバル連帯税推進協議会(第2次寺島委員会)では貧困(食料)・教育・保健というベーシック・ヒューマン・ニーズにつき「一人も取り残さない」ようにするための費用としては2810億ドルが必要と試算しています。 また、気候変動関係では緩和と適応のために8000億ドルが必要と試算しました。
詳しくは、グローバル連帯税推進協議会「最終報告書」を参照ください。
話は変わりますが、サンダース候補の税制政策をWSJは次のように説明しています。「同氏は多くの増税策を提案しており、その中には高額所得者を対象にした大幅な税率の引き上げが含まれる。具体的な数字には言及していないが、レーガン政権以前(70%)や、ニューディール政策当時(94%)の税率をしばしば愛おしげに引き合いに出していた」。つまり、かつては富裕層への超累進的課税は当たり前だったのですね(第二次大戦の戦費問題もあり)。この「当たり前」感を今日のグローバル化時代にあってどのように一般化していくか、が課題ですね。
ピケティになると、累進所得税に加えて累進資産(資本)税をも提案しています(『21世紀の資本』第14章と15章)。 いずれにせよサンダース候補は米国内の格差・不平等を対象としていますが、ピケティ教授はグローバルな格差・不平等を対象としていることが分かります(途上国の統計資料不足のため分析が十分でないということを本人が言及)。 あと企業への内部留保税に関する論文としては、以下の諸富教授の論稿が参考となります。
■政策課税としての法人課税-ニューディール期「留保利潤税」の思想と現実を中心に-
右のロゴはSDGs17目標のロゴ、左は第3回開発資金国際会議(15年7月、アジスアベバ)のロゴ
2月5日午前8時より衆議院第一議員会館会議室において、「国際連帯税創設を求める議員連盟」の2016年度第1回総会が開催され、国会議員8人をはじめ議員代理、第2次寺島委員会・委員、外務省、市民など40人ほどが参加しました。
議題は次の通り。1)総会「2014~2015年度活動報告及び会計報告」、「2016年度活動の重点領域について」、2)講演「グローバル連帯税が切り拓く未来」、「グローバル連帯税推進協議会(第2次寺島委員会)最終報告書のポイント」、3)質疑。
●総会
冒頭、衛藤征士郎会長(自民)が次のようにあいさつを行いました。「自民党税制調査会でようやく国際連帯税を公式に認知させるところまできた。航空業界からOKを取ることが肝心である」。
続いて、石橋通宏事務局長(民主)が2014年から昨年の第2次寺島委員会までの経過報告を行いました。なお、議員連盟は今回新規加入8人を含め総勢70人が参加していることも報告されました。
【会員:自民32人、民主22人、公明5人、共産2人、社民5人、日本維新2人、改革結集1人、無所属1人】
次に、西岡達史・外務省地球規模課題総括課長より、28年度税制改正に向けた取り組み(国際連帯税の新設要望)や国際連帯税を取りまく世界の動向について報告しました。
●講演
1)寺島実郎氏「グローバル連帯税が切り拓く未来」
寺島氏は、次のように3つの観点から報告書の特徴を述べました。
①グローバル化とは金融経済でもある。今や金融が実体経済の4倍にも肥大化し、グローバルなレベルで格差と貧困をもたらしている。各国別に対処していてはダメである。
②この間大きな変化を迎えたのはICT(情報通信技術)基盤の進化だ。ぼう大な金融取引も捕捉可能であり、税を課すことができるようになった。
③とはいえ、連帯税導入には「段階的接近」法が肝心だ。すでに14カ国で導入されている航空券連帯税からはじめよう。今日の感染症の拡大も航空産業の発展というグローバル化と無縁ではない。航空機を利用する人はその責任を共有してもらう。
2)上村雄彦横浜市大教授「第2次寺島委・最終報告書のポイント」
上村氏は端的に「最終報告書のポイント」として、次の5点を提示しました。
ⅰ)必要な資金を試算、ⅱ)グローバル連帯税の税収を試算、ⅲ)課税根拠と原則を明示、ⅳ)段階的アプローチを取る(まず1国でも導入できる航空券連帯税、続いて欧州10カ国と強調しつつ金融取引税を)、ⅴ)首相直轄のグローバル連帯税諮問会議(タスクフォース)の設置。【詳細は、パワーポイント参照】
●質疑
自民党税制調査会のメンバーからは、「28年度の税制調査会では(消費税の)軽減税率問題に時間が取られすぎ、国際連帯税を十分押し込めなかった。が、これまでは無印だったのを二重三角(中長期的課題扱い)まで何とか引き上げることができた」と発言。これを受け衛藤会長から「29年度は(他に時間が取られても大丈夫なように)早目に取り組んでいこうと事務局長と相談している」と述べました。
また、会長は「今後は5月G7伊勢志摩サミット、安保理非常任理事国入り、そして秋の日中韓サミットを射程に入れ国際連帯税をアピールしていきたい」とも述べました。別の議員からは「TICADの日程が8月末に決まったのでこれも射程に入れたい。ところで本日これだけの議員しか集まっていないのは問題だ。これが自民党含め国会議員の意識の低さを物語っており、たいへん遺憾だ」。
最後に、斉藤鉄夫会長代行(公明)が次のように発言しまとめました。「与党の税調では、毎回10項目程度共通課題として挙がるが、今年は自民党外交部会からの強い要望もあり、国際連帯税もその中に入った。衛藤会長から次のように言われている(注:会長は5分ほど前に次の会合に出掛けた)。議員連盟で総理官邸に申し入れに行こう、そして大きなうねりを創ろう、と。ともに頑張っていきましょう」。
………………………………
以上ですが、今回の総会はたいへん元気の出る総会でした。議員さんたちにさらに頑張っていただくために市民側で大いに盛り上げていきたいものです。【文責:田中徹二】
★グローバル連帯税推進協議会(第2次寺島委員会)最終報告書を読む
寺島実郎・日本総合研究所理事長が司会を務める、BS11テレビの「報道ライブ21 『現代ビジネス講座』世界を知る力」で、上村雄彦・横浜市大教授が、もうひとりのゲストの田瀬和夫・デロイトトーマツコンサルティング執行役員とともに国際(グローバル)連帯税について語ります。
ゲスト:上村雄彦(横浜市立大学国際総合科学部准教授)、田瀬和夫(デロイト
トーマツコンサルティング執行役員)
「国際連帯税」とは、金融危機、感染症や気候変動など、一国だけでは解決しえ
ない世界規模の深刻な課題に対処する仕組みを支える税体系のこと。既に欧州で
は「航空券連帯税」が導入され、現在「金融取引税」導入の準備も進んでいる。
また、日本でも国会議員が超党派の議員連盟を立ち上げ、議論が始まった。今回
は「国際連帯税」研究の第一人者が、新しい課題に対応する新しい税構想の意義
と今後について提言する。
・放送:1月22日(金)よる9時00分~9時54分
※「報道ライブ21『現代ビジネス講座』世界を知る力」:
「経済・金融・国際情勢」をメインテーマにした知的報道番組。
中堅ビジネスマン、知的視聴者を対象に、世界と日本の動きの見方と処方箋を
提示。「世界を知る力」が身につきます。
年が明けてから、世界の株や原油価格の下落が止まりません。もともと株や原油も価格が高すぎました。米欧日の中央銀行による超金融緩和政策により生み出されたぼう大な過剰流動性が投機マネーとなって、いわゆる金融相場を演出していたのです。日本がそうであるように、とくに景気も良くないのに株だけが上昇していました。つまり、実体経済とは何の関係もない、バブルだったのです。
●空売り手法=金融市場での破壊的メカニズム
そのバブルが今はじけつつあるようですが、問題はそれがあまりにも急速であることです。株も原油もあれよあれよという間に下落し、底値が見えない状態です。どうしてそうなるのかと言うと、今日の金融市場には破壊的なシステムがビルトインされ、従って(エコノミストとかの)予想をはるかに超えて落ち込むことになります。そのシステムとは、「空売り」です。
●米NY株式市場ダウ株価の事例
16,000ドルの大台を割った1月15日のNY株式市場ダウ株価のもようを、日本経済新聞(以下、日経新聞)は「機関投資家は米株の持ち高を急いで減らし、ヘッジファンドがそれに乗じて空売りを入れた」と米証券会社幹部の声を伝えています(15日付夕刊「(ウォール街ラウンドアップ)『運用のプロ』にも及ぶ売り連鎖」)。が、真実はヘッジファンドによる空売りが激しく、それに他の機関投資家が追随した、というのが本当のところではないでしょうか。
●東京証券取引所1部での事例
日本の株の例で見ますと、年初から下落しっぱなしでしたが(13日だけ上昇)、その裏では次のような事態になっていました。「東証1部の空売り比率は昨年12月に30%台半ばを挟み推移していたが、ことしに入り40%台が恒常化している。東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、『空売り比率40%というのは異常な高さ。いくら株が割安で売られ過ぎていると分かっていても、投資家が手を出せないレベル。お手上げだ』と言う。13日に株価が反発したにもかかわらず、空売り比率が低下しなかったことについては、『CTAなどヘッジファンドが本格的にショートに取り組んでいる。これではほとんどの投資家は様子見になる』との見方を示した」(1月14日付ブルームバーグ)。つまり、東京証券市場はこの間ヘッジファンドなどの投機筋による空売りに翻弄されている、と言うのです。
【Bloomberg】空売り比率高止まり、投機家本腰に警戒-日本株安定へ30%台前半必要
●原油:米WTI市場での事例
次に、原油価格について見てみましょう。原油市場もとっくに株式市場と同じような金融市
場となっており、株券の代わりを原油が務めているだけである。当然ここでも空売りが頻繁に行われます。先月の半ば次のような記事が日経電子版に載っていました。
「…皮肉なことには、石油輸出国機構(OPEC)が価格調整役を放棄したことで、原油価格形成における投機家の存在感が飛躍的に高まったことだ。(WTIの1バレル)100ドル台から30ドル台まで空売り・買い戻しを繰り返して連戦連勝。笑いがとまらない。今年は、充分もうけさせてもらったから、もう打ち止めにして、早々とクリスマス休暇に入る、という声が聞こえてくる」(15年12月15日付)。現在、ヘッジファンドは第二ラウンドの空売り攻勢に入っているようです。「底打ち」どころではありません(時間外取引で29.09ドルまで下落中)。
【日経電子版】原油下げ局面に底打ちの兆し(豊島逸夫の金のつぶやき)
●「空売り」とはどんな手法?
ところで、「空売り」とはどんな手法でしょうか。以下、日経新聞の説明です。
「株式の信用取引を利用し、一定の保証金を積むことによって現在持っていない株式を売ること。証券会社や証券金融会社から借りてきた株を売るもので、実物取引の形だが、持っていない株を売るためこれを空(から)売りという。空売りしている株が値下がりしたとき、その株を買い戻して値ざやを稼ぐのが目的。相場が大幅に下落する局面では、株価下落の原因扱いされることが多いが、会社の弱点などを早期にあぶり出すといった一定の役割を果たしているという議論もある。」
つまり、株や通貨や原油の価格が下がれば下がるほど儲けが出るという、いわば倒錯した金融手法なのです。通常、株であれ通貨であれ、実体経済の景気・不景気に合せて価格を上げ下げするはずですが、空売りはいわば不景気を増幅させ経済を混乱させてしまう手法なのです。
●アジア通貨危機の再来? ドルペッグ制採用の国への攻撃
現在、中国経済の減速や米国の利上げという新たな事態に対して、グローバル経済が揺れ動いています。そしてこのことを絶好の機会とばかりに、ヘッジファンドなどの投機筋がいっせいに空売りを仕掛け、大きな混乱を呼び起こしています。当面、ドルペッグ制(対ドル固定相場)を取っている中国やサウジアラビア等への通貨攻撃の帰趨がどうなるか、が焦点となるでしょう(中国当局が言うように投機筋は勝てないと思いますが)。ともあれ、1997年のアジア通貨危機を思い出されるような事態となっています。
さらにその企業や国が倒産や破産によりデフォルト(債務不履行)状態になった方が儲けられるという、これまた倒錯した金融手法であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が、このような危機の状況の中で再々度(2008年リーマンショックや2012年ギリシャ危機に続き)浮上してきました。下の記事をご覧ください。この件は後ほど説明します。