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【ご案内】8.23民間税調シンポジウム「国際課税を考える」

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第6回民間税調シンポジウムのお知らせです。今回のテーマは「国際課税」です。

 

 

  民間税調第6回シンポジウム「国際課税を考える」

 

  ・日 時:8月23日(日)午後1時~(4時半頃まで)

  ・会 場:青山学院大学7号館720教室

       (東京都渋谷区渋谷4-4-25)

        キャンパスマップ      

  ・申込み:次のアドレスにお名前、所属をお書きの上申込みください。

        yoshimikimiki@gmail.com

  ・参加費:無料

 

日本の税制において、所得税は累進課税であるかと言えば、決してそうではありません。申告納税者の税負担率を見ると、年収1億円までは累進制になっていますが、その収入を越すと逆に税率が下がっていきます。そのからくりは、富裕層の所得の多くを占める株式の譲渡等にかかる税率が20%と低く(2003~2013年までは10%)、かつ分離課課税になっているからです。

 

「これはおかしい。分離ではなく総合課税にしきちっと累進制を取れ」ということに対し、税率が上げると富裕層は海外に所得を持ち出し課税逃れしようとするので、無暗に上げるわけにはいかない、というのが課税当局のみならずエコノミストほかの考えのようです。これを少しでも防止するために、森信茂樹中央大学教授は北欧諸国が取っている「二元的所得税」を紹介し、それに沿った日本版二元的所得税を提言しています(7月31日付日経新聞『経済教室』「戦後70年 税制残された課題(上)公平性と効率性の両立を」)。

 

しかし、森信教授のせっかくの提言も、「高率の税率を金融・資本所得に課して資本・税源が国外に逃げれば、一国の経済成長や福祉に大きな影響を与える。源泉国(所得の発生した国)で広く、確実に課税する方が、経済に良い影響を及ぼす」ということを前提にしている限り、中途半端なものに終わっています。

 

問題は、「資本・税源が国外に逃げ」ることを可能としている今日のタックスヘイブン(オフショア)の存在をどう防いでいくのかだと思います。こうした問題は日本や他の先進国のみならず、実は途上国でも大変な問題になっています。先月開催された第3回(国連)開発資金国際会議(FfD3)で最ももめたのが税制問題、とりわけ途上国側は租税不正(租税回避や犯罪・腐敗)に実効的な新しいルールを策定できる、実行力のある新国連機関の設置を求めて先進国側と激しく対立しました。結果は、新機関設置は否決されてしまいました。

【Thomson Reuters Foundation 】

Development finance talks in Ethiopia close to collapse – charities

 

◆タックスヘイブン(オフショア)に秘匿されている資金…21兆ドル~32兆ドル(タックス・ジャスティス・ネットワーク(TJN)調べ)

⇒シンポジウムで基調報告する志賀弁護士は、この数字はまだ過小推計と言っている。ちなみに、世界のGDP総額(2014年)は77兆ドルで、日本のGDPは4.6兆ドル。

 

◆タックスヘイブン(オフショア)問題はこれを放置しておくと、(世界の)民主主義も人権も立ちゆきません。何とかしないとなりません。が、専門的すぎて、一般市民はとっつきにくいが、何ができるだろうか? 

 

例えば、

 

・毎日のようにマスコミ等で報道されているタックスヘイブンに関する情報の収集と分析…分かりやすく解説してくれる専門家がいるとよいですね。

 

・各産業セクターの対外投資の状況を調査する…かならずタックスヘイブンに投資しているはず(世界の対内投資の第3位は香港で第5位は英領ヴァージン諸島)

 

◆グラフは、日経「経済教室」に載った申告納税者の所得税負担率(2013年)

 

第3回開発資金国際会議:LGのイベントと連帯税宣言

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去る7月13日から16日まで、エチオピアのアディスアベバで国連の第3回開発資金国際会議(FfD3)が開催されました。この資金会議は、この9月に国連で採択される予定の「持続可能な開発目標(SDGs)」に向け、その目標を実現するための資金問題について議論する場でした(1)。

 

資金会議の第1回目は2002年3月モンテレーで、第2回目は2008年12月ドーハで開催されました。第1回目は前年に確定されたミレニアム開発目標(MDGs)実現に向けての議論ということで、当時の盛り上がりを反映してブッシュ米大統領、シラク仏大統領(いずれも当時)という世界的な政治リーダーが参加しました。第2回目は、このモンテレー会合のフォローアップ会議でしたが、同年9月に米リーマンショックと続く国際的な金融危機で、盛り上がりに欠けるものでした。そして、第3回目。秋にSDGsの採択、冬に(2020年からの国際的枠組みを決める)COP21開催という「時代の節目」の時であるのもかかわらず、先進国の政治リーダーの参加のない寂しい国際会合でした。

 

さて、この資金会議で「アディスアベバ行動目標(The Addis Ababa Action Agenda)」という成果文書が採択されました(2)。この内容は「…9月に新たな長期開発目標を策定するのを前に、2030年まで年間3兆~4兆ドルが必要とされる開発資金の調達で協力することでこのほど合意した。政府開発援助(ODA)に加え、課税逃れの防止の徹底、政府系金融や民間資金の活用を通じて実現を目指す」(7月18日付日本経済新聞 電子版)というもの(3)。今回目立ったのは、資金需要はぼう大ではあるが、先進国がODAや革新的資金メカニズムによる公的資金を増加させて途上国支援を行うというよりも、民間資金・資本の活用が前面に打ち出されていることです。民間資金・資本はもともと利潤を上げることが目的ですので、とくに貧困国には向かわないでしょう(実際、今日の途上国向け直接投資も大部分は中国やブラジル等新興国に行っている)。

 

ともあれ、資金会議開催中の7月14日、我が国も参加している「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」(常設津事務局・フランス)が「ポスト2015・持続可能な開発アジェンダにおける革新的資金調達」というサイドイベントを開催し(3)、そこで「持続可能な開発に向けた歳入を倍加するための連帯税に関する宣言」を上げました(4)。同宣言は、FfD3に参加している各国政府に対して、またCOP21(パリ)に向けて各国政府に署名を取っていきたい、との意向です。現在、フランス、チリ、韓国が署名し、さらにリーディング・グループに参加している政府が署名していくと思われます。従って、日本政府もぜひこの宣言に署名していただくことを要請していきたいと思います。

 

(1)第3回開発資金国際会議(外務省、全体):

http://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/gic/page22_002123.html 

 

(2)アディスアベバ行動目標(外務省、骨子):

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000091207.pdf 

 

(3)日経新聞「国連加盟国、開発資金の調達協力で合意 年3~4兆ドル」:

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM17H0E_Y5A710C1NNE000/ 

 

(4)リーディング・グループのサイドイベント(日本語):

 http://isl-forum.jp/wp-content/uploads/2015/07/Side-event-of-the-Leading-Group.pdf

 

(5)リーディング・グループの連帯税宣言(日本語):

 http://isl-forum.jp/wp-content/uploads/2015/07/Declaration-on-Solidarity-Levies.pdf

 

◆左のロゴはリーディング・グループのロゴ、中の写真は外務省のウェッブサイトより

 

【ご案内】7.26民間税調第6回シンポジウム「社会保障と税を考える」

図1 主要国の税・社会保障国民負担率(財務省)図2 所得階級別に見た税・社会保険料

 

民間税制調査会の次のシンポジウムは「社会保障と税を考える」です。以下、「社会保障と税」問題を少々考えてみました。

 

まず、図1の「主要国(日、米、英、独、スウェーデン、仏)の税と社会保障費(社会保険料)による国民負担比率」<税と社会保障費/国民総所得(GNI)>を見て下さい。以下のような特徴があります。

 

・日本:税負担が少なく、(税に比べて)社会保障費負担が多い 
・米国:税も社会保障費も少ない
・独・仏:税も社会保障費も多い
・スウェーデン:税が多く社会保障費が少ない

 

ここで我が国の様々な問題が起きてきます。消費税の逆進性が問題となっていますが、実は社会保障費負担の逆進性の方も大きな問題となっています。

 

え? 社会保障費(社会保険料)って本人負担もあるけれど、会社負担も同じくらいの比率で負担しているし、率で料金を計算するのだから、給料の高い人が負担率が多くなり、累進性となっているのではないの、と思われるかもしれません。

 

最新の労働・社会保険の料率表(⇒これは分かり易い)
http://www.office-i.net/insurancerate.html

 

しかし、問題は会社負担のない労働者です。つまり、非正規雇用の人々や年金生活者です。つまり、現役非正規雇用の支払う年金(国民年金)や健康保険(国民健康保険)等は定額制ですので、収入の少ない人ほど負担率が高く、まったくの逆進性になっています。

 

図2の「所得階級別に見た税・社会保険料(2010年)」を見ますと、下位所得になればなるほど保険料の負担比率は上昇し、消費税の逆進性を上回っています。この時期は消費税は5%でしたから現在はもうちょっと負担率は上がっているかもしれませんが、社会保険料(年金・保険料金等)も上がっていますから、数字的にはそう変化はないと思います。

 

ご承知のように、国民年金の未納率は40%を超えています。その背景には、非正規雇用労働者が増大(2014年で1,962万人、雇用者全体の37.4%)があります。つまり、低所得層が増大し、会社負担のある厚生年金(&共済年金)に入れないため、自己負担だけでしかも定額制の国民年金に入らないとならないが、それが払いきれないという現実があるからです。

 

とすると、解決策として次のこと(方向性)が考えられます。第一に社会保障費にも累進性を導入すること(非正規労働者の保険料をずっと安くするなど)、第二に国民負担のうち社会保障費増ではなく税金を増やす方向性に転換すること(本当の累進所得税や法人への課税ベース拡大、金融取引税などを通して)、第三に税制とは直接結びつきませんが何よりも非正規雇用を縮小させる政策を取ること(が、現在は労働者派遣法が改悪されようとしており完全に逆行しています)、ですね。

 

そんなことを考えましたが、ぜひ民間税調シンポジウムに参加し、大いに議論を巻き起こしていきましょう。

 

 

     民間税調第6回シンポジウム「社会保障と税を考える」

 

・日 時:7月26日(日曜日)午後1時~(4時半頃まで)
・会 場:青山学院大学1号館123教室(東京都渋谷区渋谷4-4-25)
     キャンパスマップhttp://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html
・申込み:次のアドレスにお名前、所属をお書きの上申込みください。
        yoshimikimiki@gmail.com
・参加費:無料

 

※各国の国民所得における税収の割合についての論考ですが、トマ・ピケティの
『21世紀の資本』の「第13章 21世紀の社会国家」が面白いですね。結局、税収率の低い国は社会保障・福祉政策を満足に取れないということで、我が国は米国と並んで30~35%のラインにいます。北欧・独仏は50%前後。さらに問題は途上国で10~15%でこれが年々下がっている、「実に由々しき事態」とピケティ教授は述べています。

 

◆図1は財務省のWEBサイトから、図2は内閣府“財政・社会保障の持続可能性に関する「経済分析ワーキング・グループ」”に提出された小塩隆士一橋大学教授の提出資料から、それぞれ取りました。

 

ローマ法王、気候変動問題に関する回勅を公表(6月18日)

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先に「米国からウェビナーのお誘い」という記事を国際連帯税メーリングリストに流しましたが(下記参照)、そこで話題となっていたローマ法王の回状(encyclical 正しくは回勅)が昨日公表されました。で、この回勅ですが、「カトリック教会の公書のひとつ。ローマ教皇から全世界のカトリック教会の司教へあてられるかたちで書かれる文書で、道徳や教えの問題についての教皇の立場を示すものである…」(Wikipediaより)とのこと。

 

ともあれ、気候変動=地球温暖化問題を何とか前進させようとする世界の指導者やNGOにとっては、たいへん心強い声明となったと思います。以下、マスコミ記事で貧困(国)に焦点を当てているところをピックアップしてみました。

 

【毎日新聞】ローマ法王:環境問題で初の「回勅」迅速な温暖化対策促す

 

…また、法王は「富裕国の大量消費で引き起こされた温暖化のしわ寄せを、気温上昇や干ばつに苦しむアフリカなどの貧困地域が受けている」として先進国市民に「使い捨て」の生活様式を改めるよう要請。「回勅」にはカトリック史上初の中南米(アルゼンチン)出身法王として、社会的弱者に寄り添う「貧者の教会」路線が反映されている。…

 

【朝日新聞】ローマ法王、地球温暖化に警鐘 公文書で呼びかけ

 

…法王は、道徳や教義への法王の立場を示す公文書「回勅」の中で、「数々の科学研究が、ここ数十年の地球温暖化の原因は主に人間活動の結果排出される温室効果ガスの濃縮によるものだと示している」と指摘。温室効果ガスを排出し続けて経済成長を遂げた先進国が、貧困の克服や社会の発展を目指す途上国の温暖化対策に技術などで協力するよう呼びかけた。…

 

【wsj】ローマ法王、迅速な地球温暖化対策を訴え

 

…法王はまた、政治的・経済的な強い関心が貧困層や次世代を犠牲にして地球を略奪していると強く非難した。…

 

◆写真左はフランシスコ法王、中は聖フランシスコ教会のあるアッシジ(2008年撮影)

 

 

●国際連帯税メーリングリスト(6月15日付)より

 

米国地球の友のKaren Orensteinより、以下のような招待メールが来ていましたので紹介します。タイトルは、『ウェビナー:気候変動事項に関して―パリ、ヴァチカンそしてウォールストリート税』。

 

このウェビナーとはオンラインセミナーのことのようですが、タイトルにヴァチカンが入っていましたので、気候変動や金融取引税とヴァチカンがどう関係しているのかなど、ちょっと関心がありましたので見てみました。

 

まず原文(下記参照)の“Why”でセミナーの目的が書かれています。以下、訳してみました。

 

…………………………
【翻訳】
貧困国は、これまでも人間としての要件―基礎的な保健サービスや初等学校教育の提供のような―を満たすための資金に苦労しているが、現在、気候変動に起因する異常気象対策に莫大な費用をかけなければならないことに直面しています。

 

気候危機を引き起こすことへの責任ほとんどを負ってないにもかかわらず 、彼らは命と生活を失うことによりそれの支払いをしています 。

 

世界はフランシスコ法王の気候変動に関する回勅を待っており、この12月のパリでの国連サミットでグローバルな気候に関する合意を得る方向にある時、金融取引への小さな税率の課税を行う方法を学ぶウェビナーにどうぞ参加してください。一般的にはロビンフッド税/ウォールストリート税として知られていますが、途上国が気候変動に対処するために必要な資金を提供できます。
<ここまで>
…………………………

 

しかし、なぜフランシスコ法王(ヴァチカン)の名前が出てくるのか、まだ分かりませんでしたが、ずっと下のスピーカーや主催者を見て納得。その中に、Maryknoll Office for Global Concernsとありますが、直訳すると世界的関心のためのメリノール事務所となりますが、この団体は米国のカソリック系教会であるMaryknoll FathersのNGO部門ですね。

 

いずれにせよこのウェビナーは、国際環境NGO、宗教団体NGO、労働組合、シンクタンク、与党民主党の国会議員事務所等の共催で行われるようです(それに仏の環境団体、英のいつもおなじみのデービット・ヒルマン)。米国の運動のダイナミズムが伝わってきます。これに参加したい人は以下の要項でお願いします。

 

◎日時:6月17日(米国)東部夏時間正午

◎連絡:ウェビナー参加希望者は、korenstein@foe.org まで連絡のこと

 

《原文》

You’re invited!

 

What: Webinar -Connecting the climate change dots – Paris, the Vatican and taxing Wall Street

 

When: Wednesday, June 17, noon EDT (9 AM Pacific)

 

Why: Impoverished countries, already struggling to fund unmet human needs — like providing basic health services and primary school education — now also face the enormously expensive fallout of extreme weather caused by climate change. Though bearing little-to-no responsibility for causing the climate crisis, they are already paying for it in lives and livelihoods lost.

 

As the world awaits Pope Francis’s encyclical on climate change and heads toward a global climate agreement at the UN summit in Paris this December, please join us for a webinar to learn how a tiny tax on financial transactions ? popularly known as the Robin Hood Tax/Wall Street Tax — could provide the money developing countries need to address climate change.

 

Speakers:

 

Bill Gallagher, National Nurses United
David Hillman, Stamp Out Poverty (UK)
Alix Mazounie, Climate Action Network France
Chloe Schwabe, Maryknoll Office for Global Concerns
Carol Wayman, Office of Congressman Keith Ellison

 

The webinar will cover:

・The basics ? The “what” and “how” of the financial transactions tax (FTT)

・Trailblazing trends in Europe – How 11 nations are leading the way with the establishment of a the world’s first regional FTT

・U.S. hope – Exciting initiatives in the U.S. Congress

・The climate connection ? What does the FTT have to do with climate change and the major Paris climate summit

 

The webinar will take place via Go-To-Meeting. Please RSVP to korenstein@foe.org  and we will send you a link to join the webinar. (If you’ve already RSVP’d, no need to do so again. We’ll be sending the link out this Thursday, June 11.)

 

Sponsored by Friends of the Earth US, Institute for Policy Studies, and Maryknoll Office for Global Concerns.

 

Karen Orenstein <KOrenstein@foe.org>

【ご案内】6.14民間税調第4回シンポジウム「所得税を考える」

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三木義一青山学院大学教授と水野和夫日本大学教授が共同を代表を務める民間税制調査会の第4回シンポジウムのご案内です。

 

     第4回民間税調シンポジウム「所得税を考える」

 

   ・日 時:6月14日(日曜日)午後1時から~4時半頃まで

   ・会 場:青山学院大学7号館720号教室

        (東京都渋谷区渋谷4-4-25) キャンパスマップ    

   ・申込み:次のアドレスにお名前、所属をお書きの上申込みください。

         yoshimikimiki@gmail.com

   ・参加費:無料

 

日本の大多数のサラリーマン(労働者)の所得税は、“源泉徴収と年末調整”という仕組みとなっており、ほとんど何も考える暇もなく税が徴収されてしまいます。ここから日本人の税制への無関心が形成されてきました。逆に言えば、財務省が巧妙な(モノ言わせぬ)納税システムを作った結果でもあります。日本の所得税について根本的に考えてみましょう(累進課税も含め)。

 

今回、以下の論点を中心に議論するとのことです。

 

1 税率構造

2 所得分類

3 課税単位

4 所得控除か税額控除か

5 年末調整

 

◆写真は、4月26日に開催された前回のシンポジウムの模様です(会場は政策研究大学院大学)

 

 

 

欧州FTT:20の作業部会での詰め進む=5月国際電話会議報告

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4月の電話会議報告の時、「本日欧州11カ国財務大臣会合>金融取引税実施の合意なるか?」とお知らせしましたが、結局この日にまでは合意ができず、引き続き11カ国は20もの技術的問題に関する作業部会を組織し、合意に向けての議論を行っています。

 

そういう中で5月14日に行われた市民社会側の国際電話会議の報告が来ましたので邦訳し、お知らせします。

 

要点をまとめます。1)欧州情勢は、「6月19日のECOFIN(経済・財務相理事会)時に少なくとも今後の枠組みといった、何らかの発表がある見込み」とのことです【注:この電話会議後、欧州のNGOより「公式発表は7月になされる可能性もあり」との報告が来ている】。作業部会の到達点については一覧表を参照ください。

 

2)米国でも、とくに来年の大統領選挙に向けてFTT推進グループが活発に動いています。ジョセフ・スティグリッツによるRoosevelt Instituteの報告書「アメリカ経済のルールを書き換える(Rewriting the Rules of the AmericanEconomy)」が興味のあるところです。

 

3)国連開発資金会議(FfD)プロセスについては、米国のグループがオバマ大統領へ「FTTの導入を求めつつも、少なくともグローバル・レベルでの導入に向けた動きを妨げるべきではない」とするレターを起草したとのこと。【注:この電話会議の直前に成果文書に向けた第2ドラフトが出され、やや表現が弱くなったもののパラグラフ60でFTT含む革新的資金メカニズムについて明記された⇒しかしその後の政府間交渉で米国とG77がグローバルタックス、とくにFTT記述を削除するように求めてきた】

 

では、5月のFTT市民社会側の国際電話会議の報告をお読みください。

 

FTT市民社会側の国際電話会議の報告を読む⇒ PDF

 

※その他情報:仏独がG7で途上国の温暖化対策のための資金支援の拡充を提案か

 ⇒フランスのNGOによれば、金融取引税もオプションに入る可能性ありとのこと

 

日経新聞】仏、途上国の温暖化対策拡充をG7に提案へ 独とともに 

 

◆写真左は第3回開発資金国際会議の国連のロゴ、中央はドーハCOP18(2012年)でFTTを求める各国のNGO

 

 

(ご案内)グローバル連帯税を知ろう!~国連での議論と意義について~

 

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今年2015年は、持続的な開発問題と気候変動問題できわめて重要な国際会議が開催されます。それに向け、グローバル連帯税フォーラムは「グローバル連帯税(革新的資金メカニズム)」を軸に下記のようなキャンペーンをはじめます。その第1弾が6月8日の勉強会です。

 

 

     ポスト2015開発アジェンダとグローバル連帯税キャンペーン/NO.1
   グローバル連帯税を知ろう!~国連での議論と意義について~

 

◎日 時:2015年6月8日(月)午後6時30分~8時30分
◎場 所:日本リザルツ・会議室
     (東京都千代田区霞が関3-6-14 三久ビル503)
     地図:http://resultsjp.org/about/access 
◎講 師:田中徹二(グローバル連帯税フォーラム代表理事)
     上村雄彦(横浜市立大学教授)

◎主 催:グローバル連帯税フォーラム

◎申込み:次のアドレスから、「勉強会希望」とお書きの上、お名前、所属(あれば)とともに申込みください。
     info@isl-forum.jp
◎参加費:無料

 

今年2015年は、持続可能な開発・貧困問題や気候変動問題という地球規模課題について大きな転換点をなす年です。9月には国連において、ミレニアム開発目標(MDGs)に替わり、2030年を射程に入れたポスト2015開発アジェンダ(新目標)が採択されます。また、11月末から国連気候変動会議(COP21)が開催され、2020年以降の気候変動・温暖化対策の世界的な枠組みが決められます。

 

これらの会議の中心的議題の一つは資金問題です。現在、7月アジスアベバで行われる第3回開発資金国際会議に向け、国連で議論が行われています。しかし、圧倒的に資金が足りません。援助国はどの国も財政的に厳しく伝統的援助資金のODA(政府開発援助)を増やす傾向にはありません。とくに国際目標であるGNI(国民総所得)比0.7%の拠出という観点からみますと、米国や日本は0.2%を下回っており、援助国トータルでも0.29%というたいへんお寒い状況です(2014年)。

 

そこでもうひとつの公的援助資金として期待されているのが革新的資金メカニズムの有力スキームである「グローバル連帯税」です。すでに航空券に少額の税を課す「航空券連帯税」が10か国で実施されています。また欧州は2016年1月から11カ国で実施予定の「金融取引税」の一部を開発・気候変動資金として拠出する方向で議論が行われています。新しい公的資金としてグローバル連帯税の出番と言えます。

 

こうした状況から、私たちは日本政府に対して、《世界規模での新たな資金調達のために国際会議の場でグローバル連帯税を議題として提案する》ことを求めてキャンペーンを行っていきます。

 

このキャンペーンの第一歩として上記の通り勉強会を開催しますが、グローバル連帯税についてのABCを含む、意義と可能性について学んでいきます。また、この考え方が国際社会並びに国連レベルで議論されてきた過程についても学びます。ふるってご参加ください。

 

◆写真左はミャンマー・マンダレーの結核病院、真ん中はエチオピアでの結核治療中の風景(どちらもユニットエイド(*)からの医薬品提供で治療しています)

 

(*)ユニットエイド:各国の航空券連帯税を主な原資として、エイズ・結核・マラリア等感染症対策の治療薬や診断薬を提供する国際機関

 

本日欧州11カ国財務大臣会合>金融取引税実施の合意なるか?

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4月21日行われたFTT(金融取引税)に関する市民社会国際電話会合の報告を送ります(日本語)。簡単なまとめと解説です。

 

FTTに関する市民社会電話会合の報告を読む⇒PDF

 

1)欧州情勢について

 

(マスコミではまったく報道されていませんが)本日5月11日、FTT導入予定の欧州11カ国の財務大臣会合が行われ(明日欧州経済・財務相理事会 [ECOFIN] 開催)、実施内容の取り決め合意に至るのではないか、との感触を得ているようです。これまで11カ国で技術的内容について20ほどの技術作業部会が作られ、相当詰めてきたようです。

 

この電話会議報告では触れられていませんが、5月7日付ルモンド紙に、パスカル・カンファン前開発大臣への気候変動・COP21に関するインタビュー記事が載っています。ここで彼は11日の財務大臣会合でのFTT合意を期待しています。

 

Climat : ≪ La question du financement peut faire derailler la COP 21 ≫

  「気候:資金問題がCOP21を脱線させることができる」

 

2)第3回(国連)開発資金国際会議(FfD3)について

 

同資金会議(7月、アジスアベバ)に向けての成果文書に関してですが、3月に草案(ゼロドラフト)が出されまして、そのパラグラフ62に、革新的資金メカニズムとFTTなどのグローバル・タックスについて記述されていました。

 

ところが、これに対し米国が反対し、IMFがこれに追随したことから(G77は支持のようです)、市民社会側は署名要請行動等を配置してアドボカシー活動を強化しようということになりました。

 

●以上が4月21日時点での市民社会側からの報告ですが、アジスの成果文書について、5月6日に第2(改訂版)ドラフトが出されました。これを見ますと、パラグラフ60にゼロドラフトで記述されたものと、ほぼ同じ内容で記述されています。フランスやチリなど「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ(LG)」ががんばったのでしょうか(4月末には市民社会側へのヒアリングがありブラジルのNGOがFTTを強く主張)。

 

◆写真左はパスカル・カンファン前仏開発大臣(ルモンド紙より)、中は米国のロビンフッド・タックス・キャンペーンのデモ(2015年1月)

 

 

子どもの日に「子どもの貧困」を考えなくてはならないとは!=各社の社説より

今日は「子どもの日」ですが、各新聞の社説を見ると、「子どもの貧困」を取り上げている新聞が多いですね。子どもの貧困についてはここ数年問題となってきましたが、昨年厚生労働省は2013年の「国民生活基礎調査」で子どもの貧困率が16.3%に達し(2012年段階)、過去最悪となったことを公表しました。

 

実際、「学校現場では、給食以外満足な食事を得られない子や、医療費を負担できず病院に行けない子も報告されている。放置すれば社会の階層化と格差拡大が進み、子供が将来に希望を持ちにくい社会となりかねない」(14年7月20日付毎日新聞)という懸念が一層拡大してきています。

 

子どもの将来に希望を持ちにくい国というのは、その国の将来に希望を持ちにくいということを物語っています。このままでは少子化とともに確実に衰退していくでしょう。いずれにせよ祝日である子どもの日に子どもの貧困を考えなければならないというのは国として恥ですね。

 

ところで、その対策ですが、「国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩・社会保障応用分析研究部長は『子どもの貧困率は景気がよい期間も上昇傾向が続き、景気対策だけで解決しないのは明らか。教育などを充実させるだけでは不十分。現金給付を増やし、生活苦を和らげて初めて、教育の充実も有効に機能する』と強調」(同上)しています。まさに「税制や社会保障政策の出番」(朝日新聞・社説)ですね。

 

ともあれ、各マスコミの社説を要旨とともに紹介しますが、全文についてもぜひお読みください。

 

 

(社説)子どもの貧困―大人一人ひとりが動こう

2015年5月5日(火)付 朝日新聞

 

日本の子どもの今を考えるとき、見過ごせない数字がある。16・3%。子どもの貧困率である。ひとり親など大人が1人だけの世帯の貧困率は、5割を超える。先進国の中で最も高い水準だ。

 

親を亡くした子どもたちを支援する「あしなが育英会」が、奨学金を受けている高校生にアンケートをしたところ、こんな声が寄せられた。「正直あした食べるご飯に困っている。早く自立できたらと何度もふさぎこんだ」「学校では食べずにガマンしている。友達といるとお金がかかるのでいつも一人でいる」

 

■不十分な政府の対策

 安倍政権は子どもの貧困対策法の成立を受け、総合的な対策を進める大綱を昨年、決めた。しかし、ひとり親家庭への児童扶養手当を増やすことは、財源不足などを理由に見送られた。また、子どもの貧困率を下げる数値目標もない。

 

…不平等をなくすのは政府の役割だ。「国民全体で負担し、支え合う」という、税制や社会保障政策の出番である。その意味で疑問を感じるのが贈与税の非課税枠の拡大だ。…ゆとりのある家庭には恩恵が大きいが、家庭間の不平等を広げかねない危うさをはらむ。

 

■おせっかいの勧め

■支える連鎖を生もう

 大人が関わることで、子どもを支える連鎖も生まれる。…奨学金を受けてきた大学生たちも、支援活動に加わっている。民間団体の有志らが集まり政策を提言する「子どもの貧困対策センター」。その設立に向けた募金活動を5日に行う。

 

…少しだけ、おせっかいになってみよう。大人になっても貧困から抜け出せない「貧困の連鎖」を断ち切ることにつながるかもしれないのだから。

 

 

(社説)社会全体で子育てを支えよう 

2015/5/5付 日本経済新聞

 

 「団塊の世代」が生まれてすぐの65年前には3人に1人だった。30年前には5人に1人、そして今では8人に1人――。日本の総人口に占める14歳以下の子どもの割合だ。…子どもを持つかどうかは、もちろん個人の選択だ。しかし子どもを持ちたいと望んでも、それを阻む様々な壁がある。社会全体で子育てを支え、子どもが健やかに成長する環境を整えたい。

 

妊娠中からきめ細かく

…子育てや子どもを支える施策には、一定の費用がかかる。20年までの少子化対策をまとめた大綱は、財源を確保して予算を増やすとしたが、具体的な手立ては盛り込まなかった。子どもの貧困対策として、政府は夏までにひとり親家庭や子どもが多い家庭への支援策をまとめる予定だ。この財源もどう手当てするのか。どんな施策を優先させるのかを含め、議論を深めなければならない。

 

一人ひとりが担い手に

…多くの大人が活動にかかわることで、子育て家庭の負担は軽くなる。参加する人にとっても生きがいになる。かつて支援を受けた人が、やがて支援をする側に回るという好循環も期待できる。少子化がこのまま進めば、日本経済は活力を失い、社会保障制度の土台も揺るぎかねない。行政も私たち一人ひとりも、前に踏み出すときだ。

 

 

(社説)こどもの日に 貧困の連鎖を断ち切りたい

2015年05月05日 京都新聞 

 

 <けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる>で始まる詩をご存じの方も多いだろう。米国の教育学者ドロシー・ロー・ノルト博士の「子は親の鏡」だ。…この詩を基にした博士の著書「子どもが育つ魔法の言葉」(PHP文庫)は世界中で愛読され、日本でも120万部を超すベストセラーとなった。…通底するのは子どもとしっかりと向き合うことの大切さだ。親は心にゆとりが求められる。だが、今の日本には生きていくのに精一杯で、わが子と向き合う余裕のない家庭が少なくない。

 

支援の手を緩めるな

 …とりわけ母子家庭は深刻だ。子どもを抱えての就労が難しく、4割以上は非正規雇用で平均就労年収は200万円に満たない。子どもの貧困率は5割に跳ね上がる。貧困には負の連鎖も付きまとう。生活苦で進学を諦め、大人になっても安定収入を得られる職に就けず、貧困にあえぐ。その子どもも同じ境遇を繰り返す。生活保護受給世帯で育った子どもの4人に1人が大人になって再び生活保護を受ける、との調査結果もある。

 

深刻さ増す児童虐待

ネットの危うさ懸念

 …冒頭の詩は<和気あいあいとした家庭で育てば、子どもは、この世の中はいいところだと思えるようになる>と結ばれている。

 

 

<社説>こどもの日 貧困対策と教育に全力を

2015年5月5日琉球新報

 

 今日は「こどもの日」。沖縄の未来を担う子どもたちの幸福や教育のため、予算や労力は惜しみなくつぎ込むべきだと強調したい。…県民所得が全国最下位にある沖縄は、もっと深刻だ。特に厳しい状況にある「ひとり親世帯」の割合は、沖縄は全国の約2倍。県のひとり親世帯の実態調査では、生活状況が「苦しい」と回答したのは13年度で8割に上り、母子世帯に比べ余裕があるとされた父子世帯の環境悪化が目立った。

 …使途をめぐって議論がある一括交付金などで、子どもを毎年百人、いや千人規模で留学させるような発想があってもよい。そのくらいの大胆さで、教育には予算をつぎ込むべきだ。

 子どもの貧困は、食事や栄養などの「健康格差」にも直結しているとの非常に気掛かりな指摘もある。子どもたちを取り巻く課題の解決は、社会全体に課せられた課題であることを再認識したい。その取り組みは待ったなしだ。

風薫る5月:が、貧困格差は止めどなく=究極のデータ

キャプチャ5

 

今日から早くも5月1日。5月は風薫る季節で、暦上はすでに初夏です。GW中はどうぞ緑の中を散策してください。

 

ところで、この間のトマ・ピケティの『21世紀の資本』の勉強会でも明らかになったように、彼の学問的功績の第一は、富と所得に関するぼう大な歴史的データを提示したことにあります。このことにより、21世紀は19世紀資本主義と同じく不可避的に格差を生み出す、ということを歴史的に証明しました。この結果「資本主義が発達すれば(所得)格差は自動的に縮小する」とする主流派経済学の超楽観論は打ち砕かれました。

 

さて、データ=事実の集積は、なまなかな理論や仮説、ましてイデオロギーを吹き飛ばすくらい威力があるものですが、次のデータはいかがでしょうか。何かしら暗澹たる感慨をもたらすものですが。

 

それは「親の収入が多いほど、子どもの脳は発達する」というものです(逆に言えば、貧困下に育った子どもの脳は未発達に留まる)。下記のレポートをお読みください。

 

米国で実証された「金持ちの子供は頭がいい」 年収300万円の家の子は、富裕層の子より大脳皮質が6%小さかった

 

 

簡単に要旨を記すと、ロサンゼルス小児科病院とニューヨーク・コロンビア大学医学部を含む9大学の研究者25人が、3歳から20歳までの1099人の子どもの脳の高解像度のMRIによる画像解析と両親・家庭の社会経済学的要因の聞き取り調査を行い、結果は世帯年収が2万5000ドル(約300万円)未満の家庭に育った子供たちは、15万ドル(約1800万円)以上の家庭の子供たちよりも、MRIの計測値で大脳皮質の領域が6%小さかった、というもの。

 

ここでの大脳皮質の領域というのは、とくに言語と認識力をつかさどる脳の部位であり、ここに親の収入によって差異が生じているというのですが、同研究の筆頭執筆者は「生まれ持った資質よりも世帯年収の差違の方が学力に影響を与える」と言っているそうです。

 

もちろん貧困家庭に生まれても(大脳皮質が小さくても?)勉強ができる子どもは必ずいますが(レポーターの堀田氏はこちらの方の神経科学的・社会経済学的な要因を探ってほしいと言っているが)、残念ながらそれは圧倒的に小数であるのも現実です。そういう意味では何ともやり切れないものがありますが、大脳皮質の大小(発達度)も貧困と格差に関係があるのかもしれません。

 

ところで、以下の記事は昨年のハフィントンポストに載ったものですが、富裕層と貧困層の格差が一目瞭然です。米国、北朝鮮、シリア、18世紀のフランス、古代ローマの「持てる者と持たざる者」の食事です。

 

富裕層と貧困層の食事を並べてみた 「持てる者と持たざる者」の目に余る格差(画像)

 

◆中の写真は、ハフィントンポスト電子版より