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「官邸に行こう、大きなうねりを」国際連帯税議連、総会開催

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2月5日午前8時より衆議院第一議員会館会議室において、「国際連帯税創設を求める議員連盟」の2016年度第1回総会が開催され、国会議員8人をはじめ議員代理、第2次寺島委員会・委員、外務省、市民など40人ほどが参加しました。

 

議題は次の通り。1)総会「2014~2015年度活動報告及び会計報告」、「2016年度活動の重点領域について」、2)講演「グローバル連帯税が切り拓く未来」、「グローバル連帯税推進協議会(第2次寺島委員会)最終報告書のポイント」、3)質疑。

 

●総会

 

冒頭、衛藤征士郎会長(自民)が次のようにあいさつを行いました。「自民党税制調査会でようやく国際連帯税を公式に認知させるところまできた。航空業界からOKを取ることが肝心である」。

 

続いて、石橋通宏事務局長(民主)が2014年から昨年の第2次寺島委員会までの経過報告を行いました。なお、議員連盟は今回新規加入8人を含め総勢70人が参加していることも報告されました。

 

【会員:自民32人、民主22人、公明5人、共産2人、社民5人、日本維新2人、改革結集1人、無所属1人】

 

次に、西岡達史・外務省地球規模課題総括課長より、28年度税制改正に向けた取り組み(国際連帯税の新設要望)や国際連帯税を取りまく世界の動向について報告しました。

 

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●講演

 

1)寺島実郎氏「グローバル連帯税が切り拓く未来」

寺島氏は、次のように3つの観点から報告書の特徴を述べました。

①グローバル化とは金融経済でもある。今や金融が実体経済の4倍にも肥大化し、グローバルなレベルで格差と貧困をもたらしている。各国別に対処していてはダメである。

②この間大きな変化を迎えたのはICT(情報通信技術)基盤の進化だ。ぼう大な金融取引も捕捉可能であり、税を課すことができるようになった。

③とはいえ、連帯税導入には「段階的接近」法が肝心だ。すでに14カ国で導入されている航空券連帯税からはじめよう。今日の感染症の拡大も航空産業の発展というグローバル化と無縁ではない。航空機を利用する人はその責任を共有してもらう。

 

2)上村雄彦横浜市大教授「第2次寺島委・最終報告書のポイント」

 上村氏は端的に「最終報告書のポイント」として、次の5点を提示しました。

ⅰ)必要な資金を試算、ⅱ)グローバル連帯税の税収を試算、ⅲ)課税根拠と原則を明示、ⅳ)段階的アプローチを取る(まず1国でも導入できる航空券連帯税、続いて欧州10カ国と強調しつつ金融取引税を)、ⅴ)首相直轄のグローバル連帯税諮問会議(タスクフォース)の設置。【詳細は、パワーポイント参照】

 

●質疑

 

自民党税制調査会のメンバーからは、「28年度の税制調査会では(消費税の)軽減税率問題に時間が取られすぎ、国際連帯税を十分押し込めなかった。が、これまでは無印だったのを二重三角(中長期的課題扱い)まで何とか引き上げることができた」と発言。これを受け衛藤会長から「29年度は(他に時間が取られても大丈夫なように)早目に取り組んでいこうと事務局長と相談している」と述べました。

 

また、会長は「今後は5月G7伊勢志摩サミット、安保理非常任理事国入り、そして秋の日中韓サミットを射程に入れ国際連帯税をアピールしていきたい」とも述べました。別の議員からは「TICADの日程が8月末に決まったのでこれも射程に入れたい。ところで本日これだけの議員しか集まっていないのは問題だ。これが自民党含め国会議員の意識の低さを物語っており、たいへん遺憾だ」。

 

最後に、斉藤鉄夫会長代行(公明)が次のように発言しまとめました。「与党の税調では、毎回10項目程度共通課題として挙がるが、今年は自民党外交部会からの強い要望もあり、国際連帯税もその中に入った。衛藤会長から次のように言われている(注:会長は5分ほど前に次の会合に出掛けた)。議員連盟で総理官邸に申し入れに行こう、そして大きなうねりを創ろう、と。ともに頑張っていきましょう」。

 

………………………………

 

以上ですが、今回の総会はたいへん元気の出る総会でした。議員さんたちにさらに頑張っていただくために市民側で大いに盛り上げていきたいものです。【文責:田中徹二】

 

グローバル連帯税推進協議会(第2次寺島委員会)最終報告書を読む

 

 

 

 

 

BS11で22日放映「国際連帯税構想と日本導入の可能性」

BS11

 

寺島実郎・日本総合研究所理事長が司会を務める、BS11テレビの「報道ライブ21 『現代ビジネス講座』世界を知る力」で、上村雄彦・横浜市大教授が、もうひとりのゲストの田瀬和夫・デロイトトーマツコンサルティング執行役員とともに国際(グローバル)連帯税について語ります。

 

■「国際連帯税構想と日本導入の可能性」(1月22日放送)

 

ゲスト:上村雄彦(横浜市立大学国際総合科学部准教授)、田瀬和夫(デロイト
トーマツコンサルティング執行役員)

 

「国際連帯税」とは、金融危機、感染症や気候変動など、一国だけでは解決しえ
ない世界規模の深刻な課題に対処する仕組みを支える税体系のこと。既に欧州で
は「航空券連帯税」が導入され、現在「金融取引税」導入の準備も進んでいる。
また、日本でも国会議員が超党派の議員連盟を立ち上げ、議論が始まった。今回
は「国際連帯税」研究の第一人者が、新しい課題に対応する新しい税構想の意義
と今後について提言する。

 

・放送:1月22日(金)よる9時00分~9時54分

 

※「報道ライブ21『現代ビジネス講座』世界を知る力」:
「経済・金融・国際情勢」をメインテーマにした知的報道番組。
 中堅ビジネスマン、知的視聴者を対象に、世界と日本の動きの見方と処方箋を
提示。「世界を知る力」が身につきます。

【分析】株、原油価格暴落の背後でうごめく投機マネー

年が明けてから、世界の株や原油価格の下落が止まりません。もともと株や原油も価格が高すぎました。米欧日の中央銀行による超金融緩和政策により生み出されたぼう大な過剰流動性が投機マネーとなって、いわゆる金融相場を演出していたのです。日本がそうであるように、とくに景気も良くないのに株だけが上昇していました。つまり、実体経済とは何の関係もない、バブルだったのです。

 

●空売り手法=金融市場での破壊的メカニズム

 

そのバブルが今はじけつつあるようですが、問題はそれがあまりにも急速であることです。株も原油もあれよあれよという間に下落し、底値が見えない状態です。どうしてそうなるのかと言うと、今日の金融市場には破壊的なシステムがビルトインされ、従って(エコノミストとかの)予想をはるかに超えて落ち込むことになります。そのシステムとは、「空売り」です。

 

●米NY株式市場ダウ株価の事例

 

16,000ドルの大台を割った1月15日のNY株式市場ダウ株価のもようを、日本経済新聞(以下、日経新聞)は「機関投資家は米株の持ち高を急いで減らし、ヘッジファンドがそれに乗じて空売りを入れた」と米証券会社幹部の声を伝えています(15日付夕刊「(ウォール街ラウンドアップ)『運用のプロ』にも及ぶ売り連鎖」)。が、真実はヘッジファンドによる空売りが激しく、それに他の機関投資家が追随した、というのが本当のところではないでしょうか。

 

●東京証券取引所1部での事例

 

日本の株の例で見ますと、年初から下落しっぱなしでしたが(13日だけ上昇)、その裏では次のような事態になっていました。「東証1部の空売り比率は昨年12月に30%台半ばを挟み推移していたが、ことしに入り40%台が恒常化している。東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、『空売り比率40%というのは異常な高さ。いくら株が割安で売られ過ぎていると分かっていても、投資家が手を出せないレベル。お手上げだ』と言う。13日に株価が反発したにもかかわらず、空売り比率が低下しなかったことについては、『CTAなどヘッジファンドが本格的にショートに取り組んでいる。これではほとんどの投資家は様子見になる』との見方を示した」(1月14日付ブルームバーグ)。つまり、東京証券市場はこの間ヘッジファンドなどの投機筋による空売りに翻弄されている、と言うのです。

 

【Bloomberg】空売り比率高止まり、投機家本腰に警戒-日本株安定へ30%台前半必要

 

●原油:米WTI市場での事例

 

次に、原油価格について見てみましょう。原油市場もとっくに株式市場と同じような金融市
場となっており、株券の代わりを原油が務めているだけである。当然ここでも空売りが頻繁に行われます。先月の半ば次のような記事が日経電子版に載っていました。

 

「…皮肉なことには、石油輸出国機構(OPEC)が価格調整役を放棄したことで、原油価格形成における投機家の存在感が飛躍的に高まったことだ。(WTIの1バレル)100ドル台から30ドル台まで空売り・買い戻しを繰り返して連戦連勝。笑いがとまらない。今年は、充分もうけさせてもらったから、もう打ち止めにして、早々とクリスマス休暇に入る、という声が聞こえてくる」(15年12月15日付)。現在、ヘッジファンドは第二ラウンドの空売り攻勢に入っているようです。「底打ち」どころではありません(時間外取引で29.09ドルまで下落中)。

 

【日経電子版】原油下げ局面に底打ちの兆し(豊島逸夫の金のつぶやき)

 

●「空売り」とはどんな手法?

 

ところで、「空売り」とはどんな手法でしょうか。以下、日経新聞の説明です。

 

「株式の信用取引を利用し、一定の保証金を積むことによって現在持っていない株式を売ること。証券会社や証券金融会社から借りてきた株を売るもので、実物取引の形だが、持っていない株を売るためこれを空(から)売りという。空売りしている株が値下がりしたとき、その株を買い戻して値ざやを稼ぐのが目的。相場が大幅に下落する局面では、株価下落の原因扱いされることが多いが、会社の弱点などを早期にあぶり出すといった一定の役割を果たしているという議論もある。」

 

つまり、株や通貨や原油の価格が下がれば下がるほど儲けが出るという、いわば倒錯した金融手法なのです。通常、株であれ通貨であれ、実体経済の景気・不景気に合せて価格を上げ下げするはずですが、空売りはいわば不景気を増幅させ経済を混乱させてしまう手法なのです。

 

●アジア通貨危機の再来? ドルペッグ制採用の国への攻撃

 

現在、中国経済の減速や米国の利上げという新たな事態に対して、グローバル経済が揺れ動いています。そしてこのことを絶好の機会とばかりに、ヘッジファンドなどの投機筋がいっせいに空売りを仕掛け、大きな混乱を呼び起こしています。当面、ドルペッグ制(対ドル固定相場)を取っている中国やサウジアラビア等への通貨攻撃の帰趨がどうなるか、が焦点となるでしょう(中国当局が言うように投機筋は勝てないと思いますが)。ともあれ、1997年のアジア通貨危機を思い出されるような事態となっています。

 

さらにその企業や国が倒産や破産によりデフォルト(債務不履行)状態になった方が儲けられるという、これまた倒錯した金融手法であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が、このような危機の状況の中で再々度(2008年リーマンショックや2012年ギリシャ危機に続き)浮上してきました。下の記事をご覧ください。この件は後ほど説明します。

 

【Bloomberg】アジア信用市場に広がる恐怖感、2008年以来の大きさ

上村教授、NHKに連続出演:次回は1月14日「視点論点」

昨年末から、グローバル連帯税推進協議会(第2次寺島委員会)の最終報告書の公表もあって、国際連帯税(グローバル連帯税)関係のメディア取材が増えてきました。

 

この中で、上村雄彦・横浜市立大学教授がNHKのラジオとテレビに出演し、グローバル連帯税(グローバル・タックス)につきたいへん分かりやすく説明・解説しています。どうぞお見逃さずお聞きください。

 

■1月6日【⇒録音あり!】NHKラジオ第一放送「先読み!夕方ニュース」
http://www.nhk.or.jp/hitokoto/backnumber/
(「1月6日(水)放送分」のところをクリック)

タイトル:「“ピケティ税”がやってくる ~ニュース裏読み 日本の論点③」
→グローバル・タックスのイロハと、最新の動向を竹田解説委員とトークしてい
ます。

 

■1月14日(木)NHKテレビ「視点論点」
タイトル:「地球規模課題とグローバル・タックス」

NHK 総合テレビ 4:20-4:30
NHK Eテレ(再) 13:50-14:00

 

グローバル連帯税推進協議会・最終報告書『持続可能な開発目標の達成に向け
た新しい政策科学―グローバル連帯税が切り拓く未来―』はコチラから
 ⇒ http://isl-forum.jp/archives/1420

 

◆写真は、上村雄彦教授です。

グローバル連帯税推進協議会「最終報告書」を掲載します

既報通り、昨年11月からはじまったグローバル連帯税推進協議会(座長:寺島実郎日本総合研究所理事長)は、先月27日第8回目の協議会をもって終了し、12月中に最終報告書をまとめあげました。

 

最終報告書のタイトルは、『持続可能な開発目標の達成に向けた新しい政策科学―グローバル連帯税が切り拓く未来―』です。どうぞお読みください。

 

グローバル連帯税推進協議会「最終報告書」を読む PDF

 

簡単にコメントを:

世界の貧困問題や気候変動問題など地球規模課題に対処するための資金調達に関する国際的な議論は、2009年から2010年にかけて盛んに行われていました【注1】。2010年という年は、ミレニアム開発目標(MDGs)に関する第2回目のレビューが行われた年であり、同時に気候変動カンクン会合・COP16(「緑の気候基金」など資金問題で合意)が行われた年でした。

 

そこでの議論の特徴は、新しい資金源(革新的資金)の構想で、どの議論でも金融取引税などのグローバル・タックスの提案が行われています。また、気候変動では炭素に価格付けをした上での排出権取引や炭素税(含む航空・海上輸送税)などが提案されました。

 

ところが、税制を取った場合当該ビジネスセクター(金融、航空等)からの反発が強く、また政治の側からの強いイニシアティブが発揮されず、その後進展がみられていません。

 

今年7月に開催されたポスト2015開発アジェンダに向けた第3回国連開発資金会議(FfD3)でもグローバル・タックスを後景に退けています。原案では、金融取引税、炭素税、航空・海上輸送税、タバコ税などのグローバル・タックスが提案されていました (「成果文書のゼロ・ドラフト」2015年3月)【注2】。ところが、会議の議論の中で米国はじめとした強い反対があり、グローバル・タックスは「成果文書」から消えてしまいました。

 

そういう状況の中で、グローバル・タックスとしてのグローバル連帯税とは何か、それがなぜ必要なのか、そしてどのようなガバナンスが求められているのか等につき、じっくりと分析したのが本最終報告書です。どうぞ目を通していただき、ご意見を寄せていただければとてもうれしく思います。

 

【注1】

・「地球環境税等研究会」報告書(2009年3月 環境省)

・「保健システムへの革新的国際投資検討タスクフォース」(2009年3月 ブラウン英国首相・ゼーリック世界銀行総裁共同議長)

・「国際通貨金融システム改革についての専門家委員会(スティグリッツ委員会)報告」(2010年9月 国連)

・「開発のための国際金融取引についてのタスクフォース・専門家グループ」(2010年7月 開発のための資金調達に関するリーディング・グループ)

・「国連事務総長の気候変動資金に関するハイレベル諮問グループ」報告(2010年9月)

・「国際連帯税推進協議会:環境・貧困・格差に立ち向かう国際連帯税の実現をめざして―地球規模課題に対する新しい政策提言―」(2010年9月)

 

【注2】The zero draft of the Outcome document, 16 March 2015

62. …We encourage additional countries to voluntarily join in implementing the agreed mechanisms and to help develop and implement additional innovative modalities, including a widening of countries participating in a financial transaction tax, carbon taxes or market-based instruments that price carbon, taxes on fuels used in international aviation and maritime activities, or additional tobacco taxes.…

国際連帯税推進派は?外務省、民主党、民間税調、池田会長

国際連帯税を巡る動きのなかで、どの省庁、政党、団体等が賛同しその導入をめざしているかとの質問が寄せられていますので、紹介します。

 

1)外務省

●平成 28 年度税制改正(租税特別措置)要望事項
「…前略…平成26年8月8日に採択された国連の『持続可能な開発のための資金戦略に関する政府間専門家委員会』の報告書においても,革新的メカニズムの探求が提言されている。こうした革新的な資金調達のための税制度として,既に航空券連帯税が複数の国で実施されているほか,欧州では金融取引税による対応も検討されている。…中略…

 

『持続可能な開発のための2030アジェンダ』等にも示されている世界の開発需要に対応し貢献するため,納税者の理解と協力を得つつ,国際連帯税(国際貢献税)についての検討を進め,必要な税制上の措置を講ずる。…後略…」
http://www.mof.go.jp/…/o…/fy2016/request/mofa/28y_mofa_k.pdf

 

2) 民主党
●平成 28 年度税制改正(租税特別措置)要望
「『持続可能な開発のための2030アジェンダ』等にも示されている世界の開発需要に貢献するため、納税者の理解と協力を得つつ、国際連帯税(国際貢献税)についての検討を進め、国際的な取り引きに関する課税などに関連して必要な措置を講ずること」
https://goo.gl/en75Ld 

 

※選挙公約等では、日本共産党が取り上げています(2014年総選挙)。ちなみに、自民党は2010年段階では国際連帯税を公約に入れていました。

 

3)民間税制調査会
●民間税調2016年税制改革大綱
「トービンが考案したことによってトービン税として知られる構想がある。…2013年にEUにおいて金融取引税(FTT)の委員会指令案が出されたことによって、トービン税の系列に属する税制が急速に注目を浴びるようになっている。フランスとイタリアは先行して国内法によって単独で導入済みである。わが国における導入も、その税収の使途と共に検討を始めるべきである」
http://minkan-zei-cho.jp/…/84e456ba74d60cc120ebbd5a13db9ed5… 

 

※民間税調の大綱公表を受けて、東京新聞が以下のような社説を載せました。

 

【東京新聞・社説】「『民間税調』提言 所得再分配を取り戻せ」(2015年12月9日)
=======
 <…前略…>提言の最も重要な点は、税本来の格差是正機能を取り戻し、経済協力開発機構(OECD)加盟国で下位といわれる「所得・資産の再分配」を強化することである。

 ただ、所得税や資産課税の最高税率を上げるだけでは現状では税は国外に逃避してしまう。国境を越えた租税回避を防ぐ手段が不十分なのだ。その分、限定的な改正の提言にとどまったのは残念だ。<…後略…>
=======

 

4)池田大作・創価学会インタナショナル会長
●第40回「SGIの日」記念提言『人道の世紀へ 誓いの連帯』(2015年1月)
「…経済の分野では、昨年5月、EU(欧州連合)加盟国の中で 11 カ国が『金融取引税』を共同導入することに合意しました。

 

 マネーゲームの過熱が金融危機を引き起こし、世界経済に深刻な打撃を与えた2008年のリーマン・ショックの教訓を踏まえ、金融取引に一定の課税を行い、過剰な投機の抑制と租税を通じた再分配を目指すもので、明年からの制度開始が予定されています。

 

 私は6年前の提言で、この取引税をはじめ、各国がアイデアを競いながら、「ミレニアム開発目標」を促進する国際連帯税の輪を広げることを呼び掛けましたが、今後、国連の新目標を推進するにあたり、その必要性はさらに増しているのではないでしょうか」
http://www.sokayouth.jp/content/media/teigen2015/book.pdf 

 

●イラストは、駐日フランス大使館のWEBサイトに掲載されているCOPP21特集の「気候変動対策の資金調達」より

http://www.ambafrance-jp.org/article9113 

 

28年度税制改正大綱:国際連帯税盛り込まれず>4年連続

平成28年度の(自民党)税制改正大綱・案が昨日公表されましたが、国際連帯税については今回も盛り込まれませんでした。これで、政権が交代した25年度大綱から4年連続して国際連帯税の文言が外されたことになります。

 

ただし、国際連帯税に繋がる関連部分として、次のような記述がなされています。「また、わが国の経済社会の変化や国際的な取組の進展状況等を踏まえつつ、担税力に応じた新たな課題について検討を進めていく」(第一 平成28年度税制改正の基本的考え方)。この記述は、平成26年度以降3年連続してなされています。

 

今年も、自民党税制調査会レベルまで国際連帯税案件は上がるものの、そこからの進展が今回も図れませんでした。私たちの力不足を反省するのみです。

 

ともあれ、この税制改正全体の動きを見てみるならば、与党が消費税の軽減税率問題ですっかりエネルギーを取られ(本日に至るも最終合意はみていない)、肝心の税制の役割としての所得や資産の再分配、格差是正に向けた抜本的改革がなされなかったことです。

 

民間税調共同代表の三木義一青山学院大学教授は「(今回の税制改正の点数)20点:所得税の抜本的改革など必要な改革が手つかずのまま。軽減税率は不公正な業界の要望を生み出し、税で票を買う従来型政治に戻る原因も」(本日付日本経済新聞)、と分析しています。

【報告】金融取引税に関する国際電話会議(15.11.25)

去る11月25日に行われた「金融取引税に関する国際電話会議」の報告につき、和訳しましたので送ります。実は本日12月8日、ECOFIN(EU財務相会合)が開催されますが、そこで11カ国金融取引税(FTT)につき、実施に向けての全体的な合意が発表される可能性があるということで、欧州のNGOが電話会議で分析を行っています。

 

現在気候サミット・COP21がパリで開催中ですが、「フランスは気候サミットにて合意に到達したことを発表できるよう強力に推し進めてきた(注:昨年あたりは「FTTの税基盤を狭くせよ」と主張するなどむしろブレーキ役だったが)」という経過もあり、もし合意ということになれば、「2017年1月1日に税収があがるというスケジュールの実現はかなり厳しいが、2017年中のどこかのタイミングで実現することはあり得るだろう」とのことです。

 

国際電話会議の報告⇒ PDF

 

ところで、COP21ついでで言えば、次の2つの情報に注目してください。

 

ひとつは、海水面の上昇による陸地の減少など気候変動に対して最も脆弱な20カ国(V20グループ:)による気候資金の要求として金融取引税を上げていることです。

 

Vulnerable nations unite to call for greater access to climate funds

 

V20グループとは、アフガニスタン、バングラデシュ、バルバドス、ブータン、コスタリカ、エチオピア、ガーナ、ケニア、キリバス、マダガスカル、モルディブ、ネパール、フィリピン、ルワンダ、セントルシア、タンザニア、東ティモール、ツバル、バヌアツ、ベトナム

 

もうひとつは、フランスが独自で実施しているFTTのうち、これまでは税収の15%を開発支援に拠出していたが、それを50%までに高めるということです。2015年のFTT税収は7億ユーロ(2016年税収見込み9億3270万ユーロ)ですので、開発政策に年間4億ユーロ(約520億円)程度が拠出されることになります。

 

France to use 50% of FTT revenue on overseas aid

 

◆写真は、脆弱国(V20グループ)の国旗

グローバル連帯税推進協議会、最終報告書へ>8回の協議

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国際連帯税創設を求める議員連盟から「国際連帯税の目的と具体的な税制について」の検討を依頼され、昨年11月からはじまったグローバル連帯税推進協議会(座長:寺島実郎日本総合研究所理事長)は、先月27日第8回目の協議会をもって終了しました。

 

この協議会を通称、第2次寺島委員会とも呼んでいましたが、最初の(第1次の)寺島委員会(正式名称:国際連帯税推進協議会)は2009年4月から2010年9月にかけて行われました。この協議会の最終報告書は以下から読むことができます。

 

※  国際連帯税推進協議会・最終報告書⇒ PDF

  

 現在、最終協議会での議論をもとに、最終報告書をまとめているところですので、全文の紹介はできませんが(A4版で65ページを予定)、「最終報告書・報告要旨」を先行的にお知らせします。どうぞお読みください。

 

グローバル連帯税推進協議会最終報告書・報告要旨⇒ PDF

 

 

さて、この最終報告書の核心は、第2章の『グローバル・タックスの定義と課税原則』にあります。グローバル連帯税とは一言でいえば、「グローバルな資産や活動に、グローバルに課税し、負の活動を抑制しながら、税収を地球規模課題の解決に充当する税制」ということですが、今協議会ではその定義を厳密化しました。

 

これまで私たちは国際連帯税と呼んでいましたが、グローバル化の時代にあってその負の影響が様々な地球規模課題をもたらしていること(地球環境破壊や貧困・格差の拡大、金融危機等)、従って、それへの対処のために最初からグローバル化を射程に入れた、あるいはグローバル・タックスとしての税制が必要になっています。それがグローバル連帯税です(そういう意味では単にODAを補完する資金ではない)。

 

しかし、現実は国家の壁(主権としての課税権)や金融セクターを含むグローバル企業の壁は厚く、グローバル連帯税実現の道は厳しいものがあります。とはいえ、14カ国で実施されている航空券連帯税はグローバル連帯税そのものですし、また欧州11カ国で実施されようとしている金融取引税はグローバル連帯税に繋がっていく可能性をもっています。

 

さらに、グローバル連帯税そのものではありませんがスターバックスやアップルなどの多国籍企業の租税回避行動に対してのOECDによるBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの発動等は国際課税(グローバル税制)の改革をもたらす第一歩となるでしょう。

 

現在行われている気候変動・COP21パリ会議でも議論されている気候資金についても、国連環境計画(UNEP)は「途上国が国連に提出した温暖化対策の計画で、対策実施に必要とする資金は少なくとも1兆360億ドル(約126兆円)に達する」と発表しました。今協議会の試算では、地球規模課題解決のために必要な資金として、年間1兆810億ドル(約129兆7200億円)を挙げました。これらの数字が厳密に正確であるか否かはともかく、ばく大な資金が必要であることに間違いはないと思います。

 

それでは最終報告書全文をお待ちください。

 

◆写真は、左が第8回協議会の全体風景、右が発言する石橋通宏参議院議員(国際連帯税創設を求める議員連盟事務局長)でその右隣が寺島座長

 

 

【ご案内】感染症とワクチン・予防接種の役割~日本の民間セクターへの期待

エボラ出血熱やマーズ等の感染症は、グローバル化・航空網の発達とともに地球規模で拡大しています。その対策費用として利便性を享受している航空機利用者に一部払っていただくことも考えられますね。航空券連帯税はそうした国際貢献のためのものです。ともあれ、下記セミナーに参加し、ともに感染症問題とワクチン・予防接種の役割について考えてみましょう。
 
 
 
<一般社団法人平和と健康の会 設立記念セミナー>
感染症とワクチン・予防接種の役割~日本の民間セクターへの期待~
 
 
■日時 2015年12月17日(木)18:00-21:15
■会場 ホテル ルポール麹町 3階 エメラルド
 
 
■主催 一般社団法人平和と健康の会、特定非営利活動法人日本リザルツ
■共催   Gaviワクチンアライアンス、ストップ結核パートナーシップ、一般社団法人ジェイ・アイ・ジー・エイチ(JIGH)
■日英同時通訳付、参加費無料(要参加登録、定員100名)
 
 
■開催趣旨
日本政府は国際保健分野に多くのイニシアティブを打ち出し、すべての人々が医療を受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進しようとしています。9月には「平和と健康の基本方針」、「国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本方針」を発表するなど、来年のG7サミットやTICAD VI、そして2030年までの国連・持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも貢献しようとしています。
 
 
一方、WHOチャン事務局長が指摘するように、世界の感染症対策は「予防の時代」を迎えています。特にワクチン・予防接種への投資は、費用対効果が高く、その後の医療費を大幅に抑えることができます。またワクチン研究開発の進歩により、HIV/エイズ、マラリア、結核、エボラ出血熱のワクチン開発も進められています。
 
 
今回のセミナーでは、バークレーGavi事務局長、シディベUNAIDS事務局長、ディトゥー・ストップ結核パートナーシップ事務局長等の海外ゲストをお迎えし、日本企業が世界の感染症対策にどのように貢献し、ビジネス機会を拡大できるのか、主にワクチン・予防接種の観点から考えます。本年10月に設立された一般社団法人「平和と健康の会」は、こうした日本の民間セクターの貢献を後押しすることを目的の一つに掲げております。ぜひご参加ください。
 
 
■18:00-20:00 第一部 感染症とワクチン・予防接種の役割~日本の民間セクターへの期待~
 
 
モデレーター: 梅村 聡 前参議院議員、内科医師
 
 
18:00-18:10 開会挨拶 伊藤 雅治 (一社)平和と健康の会 理事長
            大島 一博  内閣官房 健康・医療戦略室次長
 
18:10-18:30 スピーチ1「感染症対策と予防接種の役割、日本の民間セクターへの期待」
                セス・バークレー Gaviワクチンアライアンス事務局長
18:30-18:50 スピーチ2「世界のHIV/エイズ対策と民間セクターの役割」
                ミシェル・シディベ UNAIDS事務局長
18:50-19:10 スピーチ3「世界の結核対策への取り組みとワクチン開発」 
                            ルチカ・ディトゥー ストップ結核パートナーシップ事務局長
 
19:10-19:55 コメント「感染症対策と日本の民間セクターの役割」、質疑応答
            渋谷 健司 東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授、
           (一社)ジェイ・アイ・ジー・エイチ(JIGH)代表理事
            ご参加の民間企業よりコメント
 
19:55-20:00 閉会挨拶 高久 史麿 日本医学会長
           
 
■20:15-21:15 第2部 ミシェル・シディベUNAIDS事務局長との意見交換会 
 
UNAIDS事務局長のミシェル・シディベ氏の来日機会を活用し、日本の市民・NGO、企業等と意見交換会を開催致します(同会場)。
第2部からのご参加からも可能です。
 
モデレーター: 田中 剛 内閣官房国際感染症対策調整室 企画官
 
 
20:15-20:20 冒頭挨拶
         竹若 敬三 外務省国際協力局審議官(地球規模課題担当)
20:20-20:30 ミシェル・シディベUNAIDS事務局長スピーチ
20:30-20:35 モデレーターコメント 
20:35-21:10 質疑応答、参加者との意見交換
21:10-21:15 総括、閉会挨拶
         伊藤 雅治 (一社)平和と健康の会 理事長
 
 
*会場に軽食をご用意しております。
*PDFのご案内はhttp://resultsjp.org/top-japaneseに掲載しております。
 
■参加申し込み方法:http://goo.gl/forms/kl2ilBeo9cよりお申込みください。
           うまく登録できない場合には、Eメールにてinfo.jahp@gmail.com までお名前・所属・役職・電話番号を送付ください。
 
 
■会場アクセス Google Map https://goo.gl/maps/NLqkguQDBsH2
ホテル ルポール麹町(〒102-0093 東京都千代田区平河町2-4-3)
 TEL 03-3265-5361
有楽町線「麹町駅」1番出口より徒歩3分
有楽町線・半蔵門線「永田町駅」 5番出口より徒歩5分
南北線「永田町駅」9a番出口より徒歩5分
丸の内線・銀座線「赤坂見附駅」 D番出口より徒歩8分
 
 
【平和と健康の会】世界の平和と健康、貧困問題解消のために、政府、関係機関や団体等に対する諸問題への政策提言とその支援活動、民間企業との連携、または市民社会への啓発活動を通じて、健康の外交と貧困のない平和な世界の創造に日本がさらに貢献できるよう寄与することを目的として、2015年10月設立(事務局:千代田区霞が関)。伊藤雅治理事長。
 
 
【Gavi】Gaviワクチンアライアンス(以下Gavi)(本部:ジュネーブ)は、2000年の設立以来、世界で約5億人の子どもたちにワクチン接種し、約700万人の死を未然に防ぎ、280回以上の新ワクチン・キャンペーンの導入を達成。現在では全世界の子どもたちへの予防接種の約60%にGaviの支援が関与し、対象国は73か国に上る。
 
 
【本セミナーに関するお問い合わせ】
一般社団法人平和と健康の会 事務局 高木
Tel: 03-6268-8744  Fax: 03-3597-3448