みなさま、よいお年を!来年もよろしくお願いします

セツルメント

 

昔々日本のどの大学にもセツルメント部というのがあり、貧しい人々のコミュニティに入り、識字運動とか、子ども会活動とかを、今で言うボランティア活動を行っていました(今でもあるとのことですが)。

 

しかし、日本がだんだん豊かになり1980年代に入ると、学生・青年たちは貧困に喘ぐ人々を支援するために大挙してアジアに出かけ、今日のNGO/NPOを基礎を作りました。

 

そして2000年が過ぎたら、また日本でもワーキングプア―が非正規雇用とともに大量に表れ、今年に入るや子ども食堂が全国に作られるなど貧困・格差が目に見えて現れてきました(相対的貧困率がOECD加盟30か国のうち下から4番目!)。

 

グローバリゼーション(経済のグローバル化)から取り残されているのは、これまでは圧倒的に途上国の人々でしたが、今や先進国の中流階層にまで及び、このことが英国のEUからの離脱や米国のトランプ新大統領を生み出した要因のひとつになりました。

 

確かにトランプ新大統領の誕生は、ひとりよがりの米国ファースト政策を推進しようとするでしょうから、国際協力・協調政治や経済を困難にさせるでしょう。しかし、こうしたある意味とんでもない政治家の登場はこれまでのグローバリゼーションとして体現されていた資本主義そのものの破壊というか自滅につながって
いくのかもしれません。

 

時代は、一時バーバリズム(野蛮主義)に陥るかもしれませんが、その後はグローバリゼーションの時よりも理性的な世界を構築できるかもしれません。そのためにもグローバル連帯税(含むタックスヘイブン根絶)を求める運動は欠かせません。

 

それではみなさま、ご健康に留意され、よいお年をお迎えください。

 

★グローバル連帯税フォーラム代表理事: 田中 徹二

 

 

ポスターは【井上直行 弁護士ブログ」より】
http://kansaigodo.blog42.fc2.com/blog-entry-213.html
「懐かしいポスターが貼ってありました。30年前の全国学生セツルメント連合の新入生勧誘ポスターじゃないでしょうかね?」とのキャプション

SDGs(持続可能な開発目標)「実施指針」策定される

去る12月22日、安倍総理出席のもと「SDGs推進本部」第2回会議が開催され、『SDGs実施指針(本文)』および『SDGsを達成するための具体的施策』が策定されました。
 *12月22日SDGs推進本部決定: http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/

 

国連SDGs採択から日本「SDGs実施指針」策定へ

 

ご案内のように、持続可能な開発目標(SDGs)は昨年9月の国連持続可能な開発サミットにおいて、ポストMDGs(ミレニアム開発目標)として策定されたもので、その内容は2030年までに世界から貧困をなくすなど、持続可能な社会をめざす17の目標が掲げられました。この目標は、同サミットで採択された成果文書『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』(以下、2030アジェンダ)の中に出てきます。
 *2030アジェンダとSDGs:http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf 

 

このSDGs採択を受けて、各国でも国内課題を含むSDGs推進のための政府組織等が作られつつありますが、日本はいち早く内閣総理大臣を本部長、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」が本年5月に設立されました(同月開催されたG7伊勢志摩サミットの議長国としてのイニシアティブもあり)。この推進本部体制の特徴として、全政府を網羅した事務作業部門と非政府系のステークホルダーとによる「SDGs推進円卓会議」が設置されたことです。

 

この非政府系のステークホルダーの構成員は次の通りです。NGO/NPOセクター3人、民間(企業)セクター3人、有識者3人、国際機関3人、消費者団体1人、労働団体1人。円卓会議は9月、11月の2回開催され、その後パブリックコメントの募集があり、その上で上記SDGs実施指針が策定されました。

 

MDGsとSDGsとはどう違う?

 

ポストMDGs (ポスト2015開発目標)がSDGsであると述べましたが、MDGsとSDGsとはどう違うのでしょうか。MDGsは開発・貧困問題など主に途上国の目標であったのですが(8つの目標中7目標が途上国の課題)、SDGsは世界の環境、社会、経済の3分野を網羅し(それで目標が17にもなった)、したがって途上国のみならず先進国も取り組むべき国際社会の普遍的な(ユニバーサルな)目標となったことです。

 

つまり、先進国である日本も17の目標を指針にして(貧困や格差問題などの)国内ならびに(途上国支援など)国際的な取り組みを、2030年に向けて行っていかなければならない、ということになります。

 

「SDGs実施指針」をどう評価するか

 

さて、日本政府の「SDGs実施指針」についてどう評価すればよいでしょうか。結論的に言えば、SDGs(2030アジェンダ)実施に向けた構えというか心意気としては素晴らしいものがあります。しかし、その実施基調については多々疑問が出てきます。

 

◎「大胆かつ変革的な手段をとる」との心意気や良し

 

『指針・本文』は次のように言います。「我々は、これまでと異なる決意を持って、国際協調主義の下、国際協力への取組を一層加速していくことに加え、国内における経済、社会、環境の分野での課題にも、またこれらの分野を横断する課題にも、国内問題として取組を強化するのみならず、国際社会全体の課題としても取り組む必要がある」(「1 序文」の「(1)2030アジェンダの採択の背景と我が国にとっての意味」)。

 

「これまでと異なる決意」とは「(SDGs実施に向け)大胆かつ変革的な手段をとる」ということで、その心意気は大いに良し!です。

 

◎ビジョンの独創性なし

 

しかし、心意気とは裏腹に、指針の最も目玉となる「ビジョン」(「3 ビジョンと優先課題」)については見るべきものがありません。つまり、《我が国として》国内的にも国際的にも“これこれこのような持続可能な社会・世界を目指す”という独創性がないのです。『指針・本文』は言います。「我々は、2030年までに以下のことを行うことを決意する。あらゆる貧困と飢餓に終止符を打つこと。国内的・国際的な不平等と戦うこと。平和で、公正かつ包摂的な社会をうち立てること。…以下省略」と。これは国連文書『我々の世界を変革する』の第3パラグラフそのまま!で、これが《我が国のビジョン》のエッセンスなのです。

 

◎気になる(経済)成長依存主義

 

なぜ自らの確たるビジョンが出せなかったのか。『指針・本文』が井手英策慶大教授の言葉を借りなら「(経済)成長依存主義」に陥っている日本社会のあり方を一方で持ち上げ、他方では必ずしも成長主義ではない『2030アジェンダ』のエッセンスのアマルガム(混合物)となっているからと思われます。

 

『指針・本文』の「2 現状の分析」のところの「(2)現状の評価」を見ますと、(現在日本政府が推進している)「一億総活躍社会」の実現はSDGsのキーワードである「誰一人取り残さない」と軌を一にしていると述べています。そして一億総活躍社会の実現のためには、まず経済成長を強化し、その果実をSDGsや社会保障に回す(分配する)ことだと述べています。しかも、これこそ日本が他の先進国に先駆けて提示できるメカニズム(新たな「日本型モデル」)と高らかに言っています。

 

これは「成長なくして分配なし」という、それこそ経済のトリクルダウン論と同じく、とても古い考え方です。今日の世界的な論調としては(OECDなど)、「分配なくして成長なし」という方向性へと変化してきています。「不平等の拡大は経済成長の鈍化につながっており、富裕層以外の人々が恩恵を受けられるような税制によって(田中:つまり分配政策の強化によって)そうした状況が和らぐ可能性があると経済協力開発機構(OECD) が指摘した」(2014年12月9日ブルームバーグ電子版)。
 *OECDワーキングペーパー『所得格差の動向と経済成長への影響』:
http://www.oecd.org/tokyo/newsroom/inequality-hurts-economic-growth-japanese-version.htm 

 

一方、『2030アジェンダ』の方を見ますと、経済成長と不平等(分配政策)については明確に述べていませんが、その第27パラ(経済基盤)では「「我々は、すべての国のために強固な経済基盤を構築するよう努める。包摂的で持続可能な経済成長の継続は、繁栄のために不可欠である。これは、富の共有や不平等な収入への対処を通じて可能となる。…以下省略」と書かれています。

 

著書『21世紀の不平等』(*)で世界的に著名なアンソニー・アトキンソン氏(オックスフォード大学フェロー)は、「不平等は多くの国で生じており、豊かな国にも貧困が依然として存在している。…(中略)IMF(国際通貨基金)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事も『不平等は世界の経済的システムの安定性を脅かすものだ』と述べた。そして国連のメンバーは2015年9月に、貧困と不平等の問題を強調した『持続可能な開発のための2030アジェンダ』に署名した」(東洋経済online15年12月)と述べています。
 *「貧困度の高い日本は格差是正策を打つべきだhttp://toyokeizai.net/articles/-/97409 
 (*)『21世紀の不平等』は日経新聞の「2016年エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」の堂々第一位となっています
   http://www.nikkei.com/article/DGKKZO11042800U6A221C1MY5000/

 

SDGsの背景をなす『2030アジェンダ』のそもそもの意義につき、アトキンソン氏は「貧困と不平等の問題(の解決)」と喝破していることが印象的です。

 

SDGsの今後

 

以上『SDGs実施指針(本文)』の方をざっと見てきましたが、指針に基づいた『SDGsを達成するための具体的施策』の方もチェックしなければなりません。こちらの方は、基本的に各府省庁が実際に行っている政策・プロジェクトを寄せ集めているという感じです。肝心の「貧困と不平等・格差問題」については“子どもの貧困”を取り上げているにすぎません。

 

またタックスヘイブン対策やグローバル連帯税の創設というSDGs市民社会ネットワークからの提案も具体的施策に反映されないままです。

 

ともあれ、実施指針づくりにおいて本部事務局は様々なステークホルダーによって構成される「SDGs推進円卓会議」を設置し意見を吸い上げる努力をしていたことも事実です。「5 推進に向けた体制」の「(3)ステークホルダーとの連携」でも、NPO・NGO、民間企業、消費者、地方自治体、科学者コミュニティ、労働組合がしっかりと入りました(当初の「たたき台」では民間企業だけがカテゴライズされていた)。あと農民団体、生活協同組合、障害者団体、先住民、若者・青年等もメンバーになることが望まれます。

 

NPO・NGOとして円卓会議をけん引したのはSDGs市民社会ネットワークです。同ネットワークは実施指針が策定された12月22日、日本記者クラブで共同記者会見を開催しました。これには日本政府や企業関係者、学界、国際機関の方々も参加し、「実施指針は“目的”ではなく、あくまでも達成のためのスタートラインである」ということを確認しました。
 *記者会見: http://www.huffingtonpost.jp/ugoku-ugokasu/sdgs_1223_b_13840326.html 

 

SDGsは今年(2016年)が開始年ですが、今後世界レベルでは国連総会主催の下で フォローアップ・レビュー4年に1回行われることになりますが、ハイレベル政治フォーラム(HLPF)が毎年自主的レビューを行っていきます。来年(2017年)夏には日本もレビューを行うということで、この実施指針がたたき台となっていくと思います。

 

★ロゴは、ハイレベル政治フォーラム(HLPF)のものです。

29年度税制改正大綱:国際連帯税盛り込まれず>5年連続

政府・与党は12月8日、平成29年度の税制改正大綱を決定しましたが、国際連帯税については今回も盛り込まれませんでした。これで、政権が交代した25年度大綱から5年連続して国際連帯税の文言が外されたことになります。

 

ただし、国際連帯税に繋がる関連部分として(*)、毎年のことですが、次のような記述がなされています。「また、わが国の経済社会の変化や国際的な取組の進展状況等を踏まえつつ、担税力に応じた新たな課題について検討を進めていく」(第一 平成29年度税制改正の基本的考え方)。

 

与党の(合同)税制調査会で国際連帯税につきどのような議論がなされたのかはまだ分かりませんが、前年度には(政権交代以後はじめて)議論のテーブルに乗り、「長期的な検討課題扱い」となりました。今年はここから前進したのか、あるいは後退したのか、が問題です。

 

税制改正に向けて、この間フォーラムは有力国会議員、府省庁へ一定ロビー活動を行いました。また、国際連帯税議員連盟も外堀を埋めるべく航空業界との意見交換などを行いました。さらに、外務省も独自で動いていました。しかし、税制調査会全体また官邸を動かすまでには至りませんでした。

 

ともあれ、5年連続して大綱に盛り込まれなかったという現実を見据え、今後抜本的対策を考えていきたいと思います。

 

 

(*)国際連帯税に繋がる関連部分について:

 

平成26年度税制改正大綱では、「(税制抜本改革法)においても示されているこうした課題について検討を進め、所要の措置を講ずる。また、今後、内外の社会情勢の変化を踏まえつつ、担税力に応じた新たな課税について検討を進める」と記述されましたが、この税制抜本改革法が連帯税に繋がる根拠です。

 

つまり、この「税制抜本改革法」(2012年8月国会で成立)では、その第7条の7で「国際連帯税について国際的な取組の進展状況を踏まえつつ、検討すること」と謳っています。ですから、「こうした課題について検討を進め、所要の措置を講ずる」という中に国際連帯税も含まれることにもなります。

 

注)「税制抜本改革法」の正式名は「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」。

『世界』11月号での寺島実郎氏の論考=米大統領選と金融取引税

世界11月号

 

米国大統領選挙も第3回目のテレビ討論会を終え、いよいよ2週間後に投票となりました。この大統領選挙のもつ今日的、あるいは時代的意義は何なのか? このことにつき月刊誌『世界』11月号(岩波書店)で、寺島実郎氏が「2016年米大統領選挙の深層課題―民主主義は資本主義を制御できるか」と題し、縦横無尽に語っています。

 

「格差と貧困」をもたらす「経済の金融化」をいかに制御するか―欧州金融取引税に注目

 

タイトルにもあるように、氏の論考は大統領選挙だけではなく今日の資本主義の本質的課題も展開しています。超簡単にまとめてみます。

 

「…この民主主義と資本主義の緊張関係のバランスが近現代史の主題であった」が、80年代から冷戦終焉以降、「新自由主義」の名のもとに、とくに金融資本が肥大化し、「…健全な経済社会へと制動をかける力(注:民主主義のこと)を失ったかに見える」。

 

ところが、「資本主義の総本山たる米国の大統領選挙」で両候補とも、今や「新自由主義からの決別を語っている」(TPP見直し・反対、グラス・スティーガル法の復活など)。両候補が「どこまで本気かは別にして」資本主義改革に触れざるをえないほど、資本主義の変質は顕著であり、これに対して米国の民主主義が機能するかどうか注目される。

 

「『経済の金融化』が進む21世紀資本主義の変質と民主政治に齟齬が生じ格差と貧困を増幅させていることは、欧州においても政治の中心課題に浮上しており、BREXIT後の英国を率いることになったメイ首相も…『資本主義改革』…を強調している」。

 

「今や実体経済の4倍を超すまでに肥大化した金融資産…、ICTで武装した金融工学の進化により制御不可能とさえ思われるマネーゲームの自己増殖をいかに人間社会のあるべき仕組みにおいてコントロールできるか、それこそが格差と貧困を克服する起点であり、新しい公正な政策科学が求められている。EU10カ国が進める金融取引税の導入など国際連帯税の動きが重要になる」。

 

「おそらく、この『資本主義改革』という世界的テーマがまったく自覚できていないのが日本であろう。…産業活動や家計消費など実体経済は動かず、(エスカレートする日銀の異次元金融緩和など)金融政策に過剰依存した経済政策が展開されているのである」。<以下、省略>

【ご案内】院内勉強会:国際的な税逃れの実態と対策を考える

来る10月27日、英国のタックス・ジャステス・ネットワーク代表のジョン・クリステンセン氏の来日を記念して、下記の通り国会議員向けの院内勉強会を開催します。これには市民も参加(傍聴)できますので、参加希望者は次の注意事項を確認の上ご連絡ください。

 

  ・15分前までに衆議院議員第一議員会館にお越しくださり、通行証を受け取り下さい。
  ・この勉強会は国会議員向けのものですので、発言の機会がない場合もあります。

 

●参加申込み:「院内勉強会参加希望」とお書きの上、info@isl-forum.jp から申込みください。

 

<院内勉強会の呼びかけ>

 

                      ジョン・クリステンセン氏来日記念・院内勉強会
           「パナマ文書問題~国際的な税逃れの実態と対策を考える」

 

日頃のご活躍に心より敬意を表します。

 

この間パナマ文書やバハマリークが流出し、世界の大企業や富裕層のみならず著名な政治家などが、タックスヘイブン(租税回避地)を利用して税金逃れや財産隠しをしている実態の一部が明らかにされました。

 

現在OECD(経済協力開発機構)やG20は、スターバックスやアップルなど世界的大企業の税逃れの発覚を機に取り組みを強め、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトなどの実施が始まっています(これらをOECD租税委員会議長としてけん引してきたのが浅川財務省財務官でした)。

 

一部大企業や富裕層が税逃れを図れば、もっぱら課税が一般市民に押し付けられることになり、著しい税の不公平を招くとともに公正であるべき税制を歪めてしまいます。同時に民主主義国家の根幹を崩すことになり、このような税逃れを決して許してはなりません。

 

この度、タックスヘイブン問題を先駆的に取り組んできた国際的な市民団体「タックス・ジャステス・ネットワーク」代表のジョン・クリステンセン氏が英国から来日されます。これを機会に是非とも国会議員のみなさまとともにタックスヘイブン問題についての勉強会を持ち、ともに考えていきたいと思います。ご多忙とは存じますがぜひご参加くださるよう願います。

 

【呼びかけ人】
    林  芳正(参議院議員・自民党)      古川 元久(衆議院議員・民進党)
    斉藤 鉄夫(衆議院議員・公明党)  大門実紀史(参議院議員・共産党)
    福島 瑞穂(参議院議員・社民党)  山本 太郎(参議院議員・自由党)

 

                                                  
日  時: 10月27日(木)17:00-18:00
場  所: 衆議院議員第一議員会館 第2会議室

 

共催:グローバル連帯税フォーラム、公正な税制を求める市民連絡会、PSI(国際公務労連)東京事務所 
           連絡先:090-8044-3873(担当:青葉)

タックスヘイブン研究の第一人者、J・クリステンセン氏来日!

ジョン・クリステンセン氏①

 

今日、全世界的に所得(富)の格差を拡大し、不公正な税システムを招いているタックスヘイブン(租税回避地)への取り組みを強化しよう。

 

             10月タックスヘイブン研究の第一人者、J・クリステンセン氏来日

       

       講演会等に参加を! 資金カンパをお願いします!

              

          10/27院内勉強会、10/29市民講演会 など

 

今日、「パナマ文書」や「バハマリークス」などタックスヘイブン問題、また欧州委員会によるアップル社への145億ドル(1.7兆円)という巨額の追徴課税命令問題など、世界的大企業や富裕層の税金逃れが大きくクローズアップしています。

 

こういうなかでタックスヘイブン問題を早くから専門家を軸に取り組んできたのが英国の民間団体タックス・ジャステス・ネットワーク(TJN)です。このたび同代表のジョン・クリステンセン氏が10月に来日し、市民向け講演会等を行います。

 

つきましては、講演会等へのご参加、ならびに招へいにあたっての資金カンパ(主に通訳代)を呼びかけます。世界的なタックスヘイブン問題の最新情報を知り、その対策について、そして日本市民は何ができるか、共に考えていきましょう。

 

※参加申込みは、「〇日の××」(例えば「27日の院内勉強会」)とお書きの上、

info@isl-forum.jp から申込みください。また、カンパについても同アドレス

ら「○○円を×日に送った」とお書きの上ご連絡ください。

 

10月26日(水)  18:30~20:30

<市民向け勉強会:主催「日本弁護士連合会」>

・場所:弁護士会館2階講堂クレオBC(地下鉄丸ノ内線・日比谷線・千代田線 

    「霞ヶ関駅」B1-b出口直結)

・アクセス:http://www.toben.or.jp/know/access.html 

・日本語通訳あり、参加費なし、事前申し込み不要

 

10月27日(木)〔超党派による〕院内勉強会

<国会議員・市民向け勉強会>

・時間・場所未定

・日本語通訳あり、参加費無料

 

10月28日(金)17:45~20:00

<専門家・有識者向け勉強会>

・参議院議員会館 B108会議室

・日本語通訳なし

 ⇒都合により、中止となりました。

 

10月29日(土)13:00~16:30(12:30受付開始)

<市民向け:主催は「公正な税制を求める市民連絡会」>

・場所:田町交通ビル 6階ホール(港区芝浦3-2-22 JR田町駅「芝浦口」徒歩3分)

・日本語通訳あり、資料代:1000円

・詳細はこちらのチラシから:http://tax-justice.com/ 

 

カンパ送り先

◎銀行口座: みずほ銀行 築地支店(支店番号015)

        普通 2698313

◎口座名義: 国際連帯税フォーラム

 

J・クリステンセン氏招へい実行委員会:「グローバル連帯税フォーラム」

「公正な税制を求める市民連絡会」「PSI(国際公務労連)東京事務所」の3団

体です。

 

◆写真は、J・クリステンセン氏と英国でのタックス・ジャステス運動

外務省8年連続で国際連帯税を要望: H29年度税制改正要望

NHKはしか

 

政府の2017(H29)年度予算概算要求ならびに税制改正要望が8月末で締め切られましたが、後者につき、外務省は8年連続で国際連帯税(国際貢献税) を新設要望しました(骨子は下記に)。

 

国際連帯税要望全文は、こちらからお読みください。 

 

この税制改正にあたり、グローバル連帯税フォーラムから、そして国際連帯税創設を求める議員連盟から外務省へアプローチしてきました。まず第一段階はクリアーしたところです。今後秋から冬にかけて、与党の税制調査会を巡っての攻防が第二段階となります(もちろん野党の税制調査会からの要求も重要です)。当然航空業界や金融業界からの反対ロビイングも強化されてくると思います。

 

ところで、航空券連帯税という私たちの要求は、ジカ熱やデング熱、そして麻疹(はしか)などの感染症の脅威が増す中で、その背景には航空網の発達があります。いわばグローバル化の負の影響ですが、このコストについて利用者が一定負担すべきという私たちの主張は世論も支持してくれると思います。航空業界もCSR(企業の社会的責任)の一環として連帯税に協力してくれることが期待されます(税を払うのは航空会社ではなく、国際線利用者ですし)。

 

【朝日新聞】関西空港職員ら16人、はしかに集団感染 (9月1日)

 

日テレ】ジカ熱の感染者150人超に シンガポール (9月2日)

 

 

外務省H29年度税制改正要望・骨子

 

制度名:国際協力を使途とする資金を調達するための税制度の新設

税 目:国際連帯税(国際貢献税)

 

要望内容:

…① 「持続可能な開発のための2030 アジェンダ」等にも示されている世界の開発需要に対応し貢献するため,納税者の理解と協力を得つつ,国際連帯税(国際貢献税)についての検討を進め,必要な税制上の措置を講ずる。 ② その税収の使途として,世界の開発需要への対応・貢献であることを明確に位置 づける。 ③ 課税方法として,我が国としてどのような方式を導入することが適当かについては,今後国際的な取組の進展状況を踏まえつつ検討する。

…以下、省略

 

◆写真は、8月31日放映したNHKテレビニュースより。イラストは、ユニットエイドのマラリア・コントロールの10周年のお祝いで国連デジタル大使エリックスの描いたもの。

 

 

欧州金融取引税の最終合意期限、6月から9月に延期に

欧州FTT(金融取引税)ですが、昨年12月に、実施に向けての最終合意を6月までに行うと決めていましたが、これが9月にまで延期されました。

 

この延期につき、欧州FTTをウォッチしている当フォーラムの津田久美子氏(北海道大学法学研究科博士課程)は次のように分析しています。

 

ユーロ圏10カ国、EU金融取引税の6月最終合意目標を9月に延期へ。明日(6月17日)のEU財務相会合を前に方針が固まったもよう。世界金融危機、ユーロ危機をきっかけに盛り上がったこの政策も、近年はDEAD or ALIVEの厳しい交渉が続いており、それがぎりぎり引き伸ばされた格好。これは来週のイギリス国民投票の前に決着させるのを回避したという意味もあるだろう(イギリスは実施メンバーではないがかねてより強硬な反対派で、Brexit実現してしまったら多少やり易くなるという側面がある)。

 

しかしそれ以上に、本丸の焦点は実施条件である「参加国9カ国以上」をキープできるか。これまでの報道によれば2カ国ドロップアウトする可能性があり9カ国を下回る恐れがあった。キーとなるのはこの半年間慎重な姿勢をとり続けてきたベルギー。デリバティブ課税による市場への悪影響を相当懸念しているもよう。それに対しソブリン債関連取引を課税適用外とする妥協案も出されてきたが、決着を見ず。そのベルギーが少なくとも交渉を続けることには合意したこと、また昨年から引き続きオーストリアが取りまとめ役を引き受けてくれたのが今回の合意期限延長につながったと言えるが、その裏側にどんな駆け引きがあったかはまだわからない。3カ月の延命措置は功を奏するのか、あるいは…。

https://www.facebook.com/kmktsd/posts/1215183408501500?pnref=story 

 

なお、欧州のNGO・労働組合は #TheTimeIsNow キャンペーンを行い、10カ国首脳へ「6月17日最終合意を得るよう」手紙作戦を行いましたが、いま一歩及びませんでした。

 

<参考>
Schaeuble Says EU ‘Avoids Total Failure’ With Financial Tax Plan

Ten EU States Vow to Push Ahead on Financial-Transaction Tax

Ten EU Countries Set Financial Transactions Tax Agreement Deadline

明日、参議院選挙公示>連帯税議連の立候補予定者

明日(22日)参議院選挙が公示されます。国際連帯税創設を求める議員連盟の役員で立候補を予定している方々は、以下の通りです(議連役職/政党:選挙区)。

 

みなさまにはぜひとも再選され、議連役員を続けていただくよう祈念するものです。

 

福島みずほ(顧問/社民:比例区)
猪口邦子(副会長/自民:千葉選挙区)
大門みきし(副会長/共産:比例区)
ふじすえ健三(副会長/民進:比例区)
谷あい正明(常任幹事/公明:比例区)
白しんくん(常任幹事/民進:比例区)
石橋みちひろ(事務局長/民進:比例区)

 

なお、この間の議員連盟等の動向については、石橋事務局長のWEBサイトをご覧ください

 

★写真は、フランスのアニック・ジラルダン開発担当大臣(当時)の議員連盟への表敬訪問のもよう(15年3月)
・議連側出席:衛藤会長、藤田会長代行、福島副会長、石橋事務局長

【ご案内】民間税調シンポ「投票の前に税のあり方を問い直そう!」

OECD:格差拡大

 

民間税制調査会による久しぶりのシンポジウムです。今回のテーマは7月参議院選挙を射程に入れて「投票の前に税のあり方を問い直そう!」というもの。ふるってご参加ください。

 

・日 時:6月26日(日)13時~16時半頃

・場 所:青山学院大学(青山キャンパス)5号館545号室

・参加費:無料

・申込先:参加希望者は、joe.aoki01@gmail.com から申し込みください。

 

当日のプログラムはまだ発表されていませんが、私が希望するのは「税のあり方」としてやはり「格差・貧困是正に資するための税制」を各党の選挙公約から見出していくことにあると思います。今日の日本が古き良き「一億総中流」社会から「格差・貧困」社会へと転落してきたことを踏まえると(「子ども食堂」が全国的に作られる社会なんて誰が想像したでしょう!)、何はともあれ「分配機能を強める税制」が待ち望まれます。

 

ただし、理念・理想ばかりではなく、実現可能性も配慮しないとなりません。

 

●成長なくして格差是正なしは本当か?

 

ところで、格差是正のための分配を行うにはまず経済成長が必要だ、という伝統的とも言える議論があります。一方、今日新たな経済政策・理論として、格差(つまり、分配政策の不備)こそが経済成長を阻害しているという議論が出てきました。

 

ご案内のように、後者のような議論は、ラジカルな経済学者だけではなくOECD(経済協力開発機構)やIMFというメインストリームからも出てきているというところに(今日的な)特徴があります。OECDペーパー『所得格差は経済成長を損なうか?』(14年12月)では次のような結論を導き出しています。

 

・富裕層と貧困層の格差は今や大半の OECD 諸国において過去 30 年間で最も大きくなっており、このような所得格差の趨勢的な拡大は、経済成長を大幅に抑制している。…

・ 租税政策や移転政策による格差への取り組みは、適切な政策設計の下で実施される限り、成長を阻害しない。

・特に、再分配の取り組みは、人的資本投資に関する主要な決定がなされる対象である子供のいる世帯や若年層を重視するとともに、生涯にわたる技能開発や学習を促進すべきである。

 

●「格差拡大=経済成長を阻害」論の背景

 

以上のような議論の背景はどのようなものでしょうか? このことを紹介しているのが、小林慶一郎・慶大教授の「経済教室『格差拡大、成長に悪影響?』」(日経新聞 16年2月22日)です。ここではOECDやIMFの研究者のみならず世界の経済学者の議論も紹介していて、勉強になります(電子版になし)。

 

格差拡大がなぜ経済成長を阻害するかですが、「OECDやIMFの研究では、教育や技術などの『供給能力』の低迷という要因を重視しているが、『需要』の縮小という要因も問題だと思われる。…(注:名前が長いので…大学教授2人の)共著『ハウス・オブ・デット』(14年)は、家計の債務の膨張(これは富の格差拡大の一種である)が米経済を脆弱にしていると主張している」、と小林教授は紹介しています。

 

確かに家計の縮小・貧困化が需要増を妨げており、米国や他の先進国のみならずこの間の日本社会の家計消費活動の低迷がそれを物語っています。そしてそのことが経済成長を停滞させていると言えます。

 

その日本ですが、14年4月実施の消費税アップが低迷の主要因という説もありますが、実際はもっと複雑です。実は消費税以上に社会保障関連(年金、医療・介護、雇用など)負担が毎年3%のペースで値上がりしており、国民全般が将来への不安を抱き生活防衛(貯蓄を含め)に回っています。また、高齢者や非正規雇用者など(これに比例して貯蓄率が低下)低所得と貧困の分厚い層が社会に積もり消費活動の最大のブレーキとなっています。

 

<参考>
【東洋経済】なぜ消費低迷が続くのか?社会保障の負担も重く

【日経新聞】雇用絶好調でもさえぬ消費 賃上げ力不足、貯蓄に回る

 

●格差・貧困是正に資するための税制に向けての議論を

 

以上から、所得税や法人税、資産課税や消費税そして国際課税なども、格差・貧困是正のために抜本的に改革する必要があります。参議院選挙に臨む各政党は税制をどのような理念から政策化しようとしているのか、シンポジウムの中でともに考えていきたいと思います。