日本記者クラブ「パナマ文書」第1回&財務省への質問書

●OECD租税委員会議長・浅川財務官のお話し

 

日本記者クラブ研究会は「パナマ文書」問題を連続的に取り上げるようで、その第1回がOECD租税委員会議長である浅川雅嗣財務官のお話しでした(6月6日)。

 

浅川財務官は、パナマ文書公表については「驚くことはなかったが、BEPS(税源浸食と利益移転)の方向は正しかったし、追い風になった」と感想を述べています。また、「国境を利用した多国籍企業や富裕層の租税回避により、税の公平感・信頼感を失わせしめていることはとうてい看過できない」とBEPS取り組み等の背景について語りました。

 

同財務官はBEPSプロジェクトの取り組みを紹介しつつ、差し迫った取り組みとして、次の3課題について述べています。
 〇金融口座に関する自動情報交換について
 〇自動情報交換への非協力地域のブラックリスト作りについて
 〇実質的所有者情報と交換制について

 

◎浅川財務官のお話と質疑のもようは、ここをクリックしてください

 

 

●財務省への質問文

 

来る6月24日に第62回財務省・NGO定期協議(*)が開催されますが、ここで租税回避問題も協議できるということで、さっそく質問文を書いてみました。お気付きの点がありましたら、ご指摘ください。

 

【G7サミットを受けて租税回避の取組みについての質問】

 

1、6月30日~7月1日京都で開催されるOECD租税委員会拡大会合について

 

①「パナマ文書」公表で日本と世界とでたいへんな驚きと関心をもたらした課題ですので、財務省として正直な納税者たる市民に対してOECD租税委員会拡大会合(以下、拡大会合)に関する報告会を事前または事後に開催してください。

 

②拡大会合の主要議題の一つが、「国際的な課税逃れ阻止へ対策徹底として非協力ブラックリストの作成準備」(4月G20財務相・中央銀行総裁会議での要請)にあるようです。そこで、このブラックリスト方式はかつて2009年グローバルフォーラムが作成し公表してきた経緯がありますが、今回の予定されているブラックリスト方式は前回との違いは何であり、なぜあらためて必要なのかを説明ください。

 

2、金融口座情報の自動交換制度について

 

①金融口座の自動情報交換が2017-2018年からはじまる予定で、現在100か国程度がこれに参加しようとしていますが、とくにひとつのビルに十万社ものペーパー・カンパニーが登記しているタックスヘイブン国・地域での、例えばケイマン諸島などの税務当局の情報調査・収集能力について十分あると考えているのでしょうか(ちなみに世界第6位の金融センターであるケイマン諸島では政府機能が5階建てのビルにすっぽりと収まる程度のキャパシティしかないが)。

 

②今日先進国内のタックスヘイブンとして米国のデラウェア州などがありますが、ここが今後より大きな抜け穴になるとして問題視されています。米国に対してどのように自動交換制度への参加を図る予定でしょうか。

 

3、開発途上国を含む広範な国々が参加できる国際的枠組みの構築について

 

日本の政府税制調査会も述べているように、タックスヘイブン・租税回避で最大の被害を受けるのは開発途上国です。現在この問題はG20とOECDが先導しこれに関心を持つ途上国の参加をもって取り組まれていますが、これを国連規模の途上国を含む広範な国々が参加できる国際的枠組みへと発展させるべきではないでしょうか。そうでなければG20/OECD+アルファ諸国から漏れた国・地域が「腐敗,脱税,テロリストへの資金供与及び資金洗浄」(G7伊勢志摩サミット首脳宣言)の場になっていくからです。

 

4、内部告発に依拠しない実質的所有者の透明性の確保について

 

①G20は「実質的所有者情報の透明性」を求めていますが(4月G20財務相・中央銀行総裁会合)、ペーパーカンパニーの作成(タックスプラニングの設計)の元は銀行等金融機関であり、会計・法律事務所等であるので、まずこれらの入口を規制することにより実質的所有者を特定していくべきではないでしょうか。 

 

②日本では、国外財産調書の未提出者が対象者の約90%と推定されますが、これへの対策につき数値目標を含めどのように考えていますでしょうか。

 

(*)財務省・NGO定期協議:1997年に第1回協議会が開催されました。詳しくは、こちらを参照ください

グローバル連帯税フォーラム第6回総会開催される(5月8日)

たいへん報告が遅れましたが、グローバル連帯税フォーラムの第6回総会は、5月8日文京区アカデミー湯島で開催され、団体会員5団体代表5人、個人会員16人、オブザーバー7人の28人が参加しました(フォーラムの団体会員は10団体、個人会員は21人。欠席した会員につき個人の1人を除き委任状をいただいています)。

 

総会は2015年度活動報告ならびに2016年度活動方針案を巡り、1)活動方針にある「ほかのネットワークへの参加」について、そのメンバーは?具体的な連携はどのようになるか、2)海外のFTT推進、タックス・ジャスティス市民社会などとの連携はどのようにしているのか、3) 予算を見ても事務局体制が苦しくなっているようで、意義ある活動にもかかわらずもったいない。たとえば総会を、参加している全員でフォーラムの今後の活動を議論するような場として活用できないか。4) 金融やITの観点から、フィンテックやインパクト・ファンディング、仮想通貨といった新しい金融現象について着目して活動していってはどうかなど、予定時間を超えて熱心に議論が行われました。

 

結果は、第1号議案から第5号議案まで採択されました。総会議案書はこちらからご覧ください

 

なお、2016年度の主な活動方針は下記の通りです。

 

1、「パナマ文書」とタックスヘイブンに対する闘い

2、2017年度税制改正に対して、グローバル(国際)連帯税を求める活動

3、海外のFTT推進・タックス・ジャスティス市民社会などに連携しての活動  他

 

★フォーラムの活動を支えるために、あなたも会員になってください

 

グローバル連帯税フォーラムの2016年度の予算は、主に会員からの会費で賄われることになります。そこでみなさまも会員になっていただき、フォーラムの活動を支えてくださることを訴えます。会費ですが、団体会員は年間1口10,000円、個人会員は年間1口3,000円、学生会員は年間1口500円です。

 

会員になってもよいと考えてくださる団体・個人は、info@isl-forum.jp まで連絡ください。もとより会費面からの支援のみならず、具体的な活動(事務局の実務手伝いや翻訳など)に参加していただくことも大歓迎です。

 

報道:G7サミット、有識者47人の呼びかけ/本日の朝日新聞社説

Miki's comment 

 

 

 

 

 G7サミットに向けての有識者47人の呼びかけ」について東京新聞(中日新聞)でも取り上げられました。また、それに関連しての三木義一青学学長へのインタビュー記事もあります(左記事)。さらに、本日の朝日社説ではサミットが取り組むべき課題として、SDGsと資金問題(金融取引税など)並びに租税回避問題が提案されています。これらを以下お知らせします。

 

 

【東京新聞】「租税回避地対策に積極的な役割を 経済学者ら47人共同声明」

2016年5月26日

 

主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の開幕を前に、日本の経済学者ら有識者四十七人は二十五日、タックスヘイブン(租税回避地)を利用した税金逃れ問題に関し、議長国の日本政府に対して「有効な対策に向けて、サミットの主催国として積極的な役割を担うことを呼び掛ける」との共同声明を発表した。

 

 

【朝日新聞】(にっぽんの負担)課税逃れ、可能性は ケイマンに投資マネー

2016年5月25日

 

■日本の学者らも要請

 

 岩井克人・東大名誉教授ら日本の経済学者ら47人は25日、議長国の日本に対し、タックスヘイブン対策を積極的に進めるように求める呼びかけを発表した。

 

 呼びかけに加わったのは岩井氏のほか、西川潤・早大名誉教授、三木義一・青山学院大学長、上村雄彦・横浜市立大教授、諸富徹・京都大教授ら。

 

 

 

 

【朝日新聞・社説】持続する世界 G7の決意が問われる

2016年5月26日

 

 主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)が、きょう始まる。話し合うべきテーマは、世界経済への対応など直近の問題だけにとどまらない。

 

 世界にはびこる飢餓や貧困を克服し、国や地域を問わず人間が平穏に暮らせる地球をどう築き、将来世代に引き継ぐか。それが究極の問いだろう。

 

…(中略)

 

 サミットでもこの開発目標を取り上げ、…具体的な計画のもとで、息長く取り組みを積み重ねることが重要だ。G7がしっかりと決意表明し、必要な資金をどう確保し、行動するかが問われる。

 

 G7各国が政府の途上国援助(ODA)を着実に増やすことが望ましいが、どの国も財政難に悩む。株式などの金融取引に薄く広く課税する金融取引税の導入を独仏両国などが提唱して久しいが、景気の停滞もあって作業は進んでいない。

 

 まずは国際的な大企業や富裕層の間に広がる課税逃れを封じ込めたい。それ自体が経済格差を縮める一歩となるうえ、開発目標に充てる財源の確保にもつながりうる。

 

 その意味でも「パナマ文書」が提起した世界規模の脱税・節税問題に正面から向き合わねばならない。具体策の検討は経済協力開発機構(OECD)などに委ねるとしても、中国やロシア、インドなど新興国も巻き込みながら、税逃れへの監視網を世界全体に広げていく。G7がその旗振り役を果たすべきだ。

G7サミット:岩井克人氏ら有識者47名がタックスヘイブン対策を呼びかけ

明日(26日)からG7伊勢志摩サミットが開催されますが、オックスファム・ジャパンとグローバル連帯税フォーラムは、先の腐敗防止サミット(ロンドン)に対してのトマ・ピケティ氏らの公開書簡に賛同しつつ、かつG7サミットでのタックスヘイブン対策強化を求める「日本の有識者の呼びかけ」をオーガナイズしました。

 

これには、岩井克人国際基督教大学客員教授/東京大学名誉教授、西川潤早稲田大学名誉教授、三木義一青山学院大学学長、上村雄彦横浜市立大学教授、諸富徹京都大学教授ら、有識者47名が賛同し、同時に日本政府に対して、タックスヘイブンへの有効な対策に向けG7主催国として積極的な役割を担うことを呼び掛けています。

 

明日からのG7サミットで首脳たちが実効性のあるタックスヘイブン対策を打ち出せるか、単なる一課題としてお茶を濁すのか、ともに監視していきましょう。

 

以下、昨夜プレスリリースを行いましたので、それをお読みください。

 

★プレスリリース:G7サミットへ向け岩井克人氏ら 国内有識者47名がタックスヘイブンへの対策を呼びかけ

 

 

★有識者による日本政府へ呼び掛けと ピケティ氏らの公開書簡へ賛同

 

写真は、米国の「ウォールストリート対抗キャンペーン」

G7サミット:ピケティ氏ら公開書簡への賛同願い>岩井克人氏も賛同!

現在オックスファム・ジャパンとグローバル連帯税フォーラムとで、G7伊勢志摩サミットへ向けて、「トマ・ピケティ氏ら世界の経済学者の公開書簡」に対して「日本の有識者としての賛同」を募り、これをサミット開催前後に内外のメディアに対して発表する予定です。

 

実は賛同募集は4日前からはじめたのですが、三木義一青山学院大学学長や日本経済学会の重鎮ともいえる岩井克人東京大学名誉教授等から、ぞくぞくと賛同をいただいています。

 

つきましては、当WEBサイトをご覧の有識者の方(経済学者にはこだわりません)はぜひ賛同していただきたく、お願いします。また、周りに賛同していただけそうな有識者の方がおりましたら、下記呼びかけを使ってぜひ賛同をいただいてください。締め切りは、とても時間がないのですが、5月23日(月)まで!

 

 

    トマ・ピケティ氏ら世界の経済学者の公開書簡を活かすために
   G7伊勢志摩サミットへ向けて、日本の有識者としての賛同のお願い

 

●● 様
拝啓

 

立夏の候、みなさまにおかれましては、ますますご活躍のこととお喜び申し上げます。

 

本年4月、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)による「パナマ文書」公開を受け、格差拡大を増幅させるタックスヘイブンの問題がメディアでも大きく取り上げられるに至りました。貧困・格差の問題、またグローバル連帯税やグローバルタックスの問題に取り組んできた私たちとしては、「パナマ文書」をきっかけに、こうした課題がメディアで話題になり、市民の関心や声が大きくなることで、政治的な取り組みが加速することを願ってやみません。

 

5月上旬には、イギリスにて腐敗防止サミットが開催されました。このサミットに先駆けて、このタックスヘイブン問題に対し各国に国際協調と取り組みを要請する公開書簡が発表されました。国際NGOオックスファムが呼び掛けたこの公開書簡には、ベストセラー『21世紀の資本』を執筆したトマ・ピケティ教授、2015年のノーベル経済学賞受賞者であるプリンストン大学のアンガス・ディートン教授、潘基文国連事務総長のアドバイザーを務めるジェフリー・サックス氏やIMFの前主席エコノミストのオリビエ・ブランシャール氏など、世界30か国以上から300人以上の経済学者が名を連ねました。

 

5月26-27日、伊勢志摩で日本政府が議長国となりG7サミットが開催されます。タックスヘイブンをめぐる国際世論の高まりを受け、タックスヘイブンを含む反汚職も議題として取り上げられることになり、付属文書として行動計画が採択される見通しです。タックスヘイブンをめぐる動きには、国際協調が欠かせません。すべての国や地域が対策をとらなければ、制度の抜け穴は残ってしまいます。一方で、日本政府をはじめ、G7など政治力を有する国による積極的なリーダーシップも期待されます。

 

こうした動きを踏まえ、この「トマ・ピケティ氏ら世界の経済学者の公開書簡」の趣旨に賛同していただく日本の有識者を募り、日本政府に対し、タックスヘイブンへの有効な対策へ向けてG7主催国として積極的な役割を担うことを呼び掛けたいと考えます。つきましては、●●先生にはぜひとも賛同人としてお名前を連ねていただきたく、ご連絡をさせていただく次第です。なお、公開書簡はここをクリックしてお読みください(日本語)

 

お忙しい中恐縮ではありますが、添付のフォームにご記入の上、メールにて5月23日(月)17時までに返信いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

敬具

 
                                2016年5月吉日
              (特活)オックスファム・ジャパン 事務局長 中川英明
               グローバル連帯税フォーラム 代表理事 田中徹二

 

 

【公開書簡 賛同に関する返信フォーム】

 

□はい、公開書簡に賛同します。
□いいえ、公開書簡に賛同しません。

 

・お名前:
・所 属: 
・肩書き: 
・連絡先(メールアドレス): 

 

上記を記入の上、5月23日(月)までに maiko@oxfam.jp(担当:森下)まで返信ください。

 

★イラストは、欧州の市民団体である WeMove.EU のWEBサイトより

G7サミット:官邸へ「国際連帯税実現」を申入れ>国際連帯税議連

官邸申入れ②IMG_0046

 

5月19日午前11時、国際連帯税創設を求める議員連盟は総理官邸におもむき「G7伊勢志摩サミットにおいて、安倍総理より、我が国として航空券連帯・貢献税の導入を実施することを宣言せよ」と申し入れました。

 

議連側は以下の通り、超党派で参加しました。

 

衛藤征士郎会長(衆、自民)、藤田幸久会長代行(参、民進)、斉藤鉄夫会長代理   (衆、公明)、逢沢一郎副会長(衆、自民)、大門実紀史副会長(参、共産)、鈴木克昌副会長(衆、民進)、谷合正明常任幹事(参、公明)、小熊慎司事務局次長(衆、改革)

 

官邸側は、菅官房長官が対応しました。

 

申し入れは、冒頭衛藤会長から、「安倍総理にも別の機会に国際連帯税の話をしたら関心をお持ちだった」との説明がありました。また、藤田会長代行からは、(参議院)ODA特別委員会の決議に国際連帯税の文言が入ったことを説明しました。

 

これに対し、菅長官は「タイムリーな内容で(要請については)承知した」との答えを寄せました。

 

●なお、要請書はこちらでお読みください。

 

                         (情報提供:議連事務局・石橋通宏参議院議員事務所)

【プレスリリース】「パナマ文書」の徹底究明、公正な国際課税制度の実現を

グローバル連帯税フォーラムは、本日の「パナマ文書」の全ファイルの公表にあたり、以下のようにプレスリリースを行いました。

 

報道関係各位 

 
「パナマ文書」の徹底究明、公正な国際課税制度の実現を

 

 ・タックスヘイブンに関する情報の公開
 ・違法な脱税の摘発、処罰
 ・グローバル企業情報の公開
 ・タックスヘイブン規制の強化
 ・伊勢志摩サミットでの国際連携における主導性の発揮

 

本日未明、「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)は「パナマ文書」に登場する21万余の法人(ペーパーカンパニー)とその株主らの名前をウェッブサイトで公表しました。このペーパーカンパニーに関係している日本在住の個人と日本企業は合わせて約400を超えており、東証一部上場企業や著名な企業経営者の名前も含まれています。

 

これら大企業や富裕層がタックスヘイブンを利用するのは、節税・脱税などを行って税金を逃れるためです。こうした行為により世界的に見れば、法人関係で1000億~2400億ドル(11兆円~26.4兆円)の税収の逸失を、個人関係で1900億ドル(21兆円)の税収の逸失をもたらしています。つまり、世界的には50兆円もの巨額なお金が税金として納められず、大企業や富裕層のふところに入っているのです。

 

これは明らかに税制の公正さを欠くものであり、国や自治体の成り立ちを危うくするものです。一言でいえば民主主義の危機です。

 

このような観点から、当グローバル連帯税フォーラムは日本政府・財務省に対して、別紙のような「『パナマ文書』の徹底究明、公正な国際課税制度の実現を」とする要請書を提出する予定です。その上で、私たちは航空券連帯税や金融取引税などのグローバル連帯税の実現とともに、脱税やマネーロンダリングの温床となっているタックスヘイブンを廃絶するために活動していく所存です。

 

●問合せ先:グローバル連帯税フォーラム事務局(担当:田中)
  〒110-0015 東京都台東区東上野 1-20-6 丸幸ビル3F
    Tel: 03-3831-4993  Fax: 03-3834-2406

 

 

「パナマ文書」の徹底究明、公正な国際課税制度の実現を要請します

 

財務大臣 麻生太郎 様
                     グローバル連帯税フォーラム
                        代表理事 金子文夫、田中徹二
                                                                                          
 2016年4月~5月に公表されたいわゆる「パナマ文書」は、世界の富豪、大企業がタックスヘイブンを利用して「合法的脱税」を行っている実態を明らかにし、世界に衝撃を与えました。世界の人口の1%にすぎない富裕層が世界の資産の50%を保有しているといわれるように、世界的な冨の偏在は著しくなってきており、タックスヘイブンはこうした格差を広げる役割をもっています。タックスヘイブン・システムのもとで、世界全体で年間法人税収の逸失は1000億~2400億ドル(11兆円~26.4兆円)、すなわち世界の法人税収の4~10%にも上り、また個人資産への税収の逸失は1900億ドル(21兆円)にも上るという推計もあります。

 

このような不公正な税のあり方を是正するために国際社会は一致して取り組むべきですが、「パナマ文書」は、あろうことかイギリス、ロシア、中国などの最高権力者・関係者が不正な蓄財、租税回避に関与した事実を暴露し、人々の強い怒りを呼んでいます。今こそ格差是正、税の公平性の実現、財政健全化のために、国際課税制度の抜本的な改革を進めるときです。

 

すでに4年前にOECD租税委員会は、グローバル企業の目に余る租税回避行動に対処するために、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを発足させ、2015年10月に「最終報告書」を公表しました。そこには、グローバル企業の世界的な活動の報告義務、租税回避の防止策など、多くの評価すべき勧告が盛り込まれています。

 

私たちは、「パナマ文書」の徹底究明とともに、BEPS報告書の積極的内容を活かした公正な国際課税制度の実現のために、日本政府に以下の5項目の実施を要請します。

 

               記

1.タックスヘイブンに関する情報の公開
「パナマ文書」その他の資料を使ってタックスヘイブンに関する実態調査を行い、タックスヘイブンを利用している個人名、企業名をすべて公表し、真の所有者を特定すること。

 

2.違法な脱税の摘発、処罰
現行の法制度に違反し、必要な税務処理を行っていない個人、企業に対して漏れなく査察を行い、厳正に処罰すること。

 

3.グローバル企業情報の公開
今後整備される金融情報の自動交換制度や多国籍企業の国別報告制度を通じて収集した情報を公開すること。これらの制度にはタックスヘイブンを含むあらゆる国・地域を例外なく参加させること。とくに後者にあっては、4月12日提案された欧州員会の“大企業の税逃れを防ぐ制度”を参考に徹底した情報公開と透明性を図ること。

 

4.タックスヘイブン規制の強化
情報交換に応じないなど、公正な税制の実現を妨げるタックスヘイブンを廃絶していくために、そのようなタックスヘイブンとのあらゆる取引を禁止すること(そのタックスヘイブンの中に米国のデラウェア州やワイオミング州なども含まれる)。

 

5.国際連携における主導性の発揮
G7伊勢志摩サミットで租税回避問題の解決に向けて主導性を発揮するとともに、開発途上国を含むより広範な国々が対等の立場で参加することのできる国際的枠組みの形成を目指すこと。

                                    以上

明日(8日)の「パナマ文書・タックスヘイブン問題講演会」は満席です

明日の「講演会:パナマ文書を考える:富裕層や大企業の税逃れを許さないために」ですが、満席となったためご参加いただけませんので、ご了承をお願いします。

 

なお、当日の資料をご要望の方は、「5.8資料要望」とお書きの上、info@isl-forum.jp まで申込みください。

パナマ文書:戦々恐々とする海外資産5000万円以上保持する富裕者

ICIJ

 

このところ、「パナマ文書」問題で上村雄彦先生とテレビ出演のコンビを組んでいる(?)森信茂樹教授のパナマ文書関連の所論が、ダイアモンド・オンラインに連続して掲載されていますので紹介します(下記参照)。専門家だけあって、タックスヘイブン問題に関する実務について語られていますので、必読です。

 

例えば、「今後日本人(日本居住者)や日本企業の情報がパナマ文書の中から見つかった場合には、どうなるか」など。

 

その中で面白かったのは、日本居住者の海外財産の捕捉のための国外財産調書ですが(5000万円以上の財産)、「未提出が相当数いると言われている」とのこと。故意の不提出には罰則(1年以下の懲役)が科せられるので、パナマ文書問題には戦々恐々としているのではないか、と。

 

これらのことは、本日(4月30日)の日経新聞にも載っていますね。「…パナマ文書発覚以降、氏名公表を心配した富裕層からの(法律事務所への)問い合わせがやまない」、と。

 

*【日経新聞】「パナマ文書が問う上:逃げる富 揺らぐ税の信頼」

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO00282090Q6A430C1SHA000/?dg=1 

 

【感想:罰則強化(例えば懲役5年以下とか)がひとつのカギになるか】

 

あと大企業のタックスヘイブンへの子会社(現地法人)の実態をどう把握するかですね。まずは徹底した情報開示と各国の自動情報交換制度構築が課題となります(パナマはこれに入ろうとしていなかったが、今回の事件もあり入ることに)。

 

日本の大企業がタックスヘイブンにどのくらいの現地法人を持っているかというと、資本金1億円以上の日本の大企業1,700社(大企業総数は2万9672社)が9000社を持っているとのことです。これは4月26日の参議院財政金融委員会で大塚耕平議員の質問(民進)に対して国税庁が答えたものですが(下記録画、42:16分頃)、やはりすごい数ですね。

 

*参院財政金融委員会ネット録画:http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php 

 

しかし、問題はその自動交換制度の実効性です。交換制度の条約を結んだのはよいが、タックスヘイブン諸国からまったく情報が上がってこない、という実質的サボタージュに対してです。実は、何十万社というペーパーカンパニーがあるケイマン諸島の政府機関は5階建てのビルひとつに入るくらいの規模だそうで、このような陣容で果たして政府当局が供与すべき情報を把握できるのか(志賀櫻「タックス・オブザーバー」エヌピー新書)、ということであり、情報を把握する能力も意思もなく、結果的に何ら有用な情報が出ないということも考えられます。

 

次に、4月のG20財務相会合の声明も挙げておきます。ちなみに、「G20では、ドイツが租税回避地への制裁も含めた強硬策を求めたが、新興国側は「事務量が増える」と慎重姿勢で、「防御的措置(対抗措置)」というあいまいな表現にとどまった」と毎日新聞にありました。

 

以上、森信教授の所論とG20財務相会合の声明、毎日新聞記事につき添付ファイルを見てください(赤、青字は分かりやすいように私が付けたものです)。

 

★写真は、ケイマン諸島とICIJのパナマ文書関連WEBサイト

 

学習会報告:パナマ文書と連帯税/寺島実郎氏・上村雄彦氏のプレゼン

 IMG_3616院内学習会

 

4月20日参議院議員会館会議室で、院内学習会『グローバル連帯税が切り拓く未来』(主催:グローバル連帯税推進協議会事務局ほか)が開催され、国会議員7人、議員代理11人、市民37人の55人が参加しました。

 

冒頭、衛藤征士郎議員連盟会長は次のようにあいさつを行いました。「G7伊勢志摩サミットに向けて総理へ意見書を提出する予定だ。連休明けに動く。サミットの議題の一つは“感染症対策”になろうかと思うが、G7と世界銀行が途上国向け基金を創るという動きもある。その資金に例えば国際連帯税を考えられないか。5月のG7蔵相会議でも取り上げてもらえたらよい」。

 

続いて、寺島実郎・日本総合研究所理事長より「グローバル連帯税が切り拓く未来」と題して講演が行われました。パナマ文書問題とマネーゲームという今日的課題を切り口に、グローバル連帯税の基本理念、G7伊勢志摩サミットに向けての提言を述べられました。

 

★詳細は、こちらへ⇒ PDF

 

次に、上村雄彦・横浜大学教授より「グローバル連帯税推進協議 最終報告書-パナマ文書も含めて-」と題してプレゼンが行われました。冒頭パナマ文書とタックス・ヘイブンの問題について明らかにし、グローバル・タックスとタックス・ヘイブン、そしてグローバル連帯税との関連を述べ、その上で具体的にグローバル連帯税(最終報告書)を説明しました。

 

★詳細は、こちらへ⇒ PDF

 

討論では、航空会社をも巻き込んでいく必要性が語られ、また国際連帯税(を求める)国民会議のようなものをつくってどうか、という提案がありました。ともあれ、5月G7伊勢志摩サミットをターゲットに国際連帯税(グローバル連帯税)を官邸に申し入れていくことを確認し、院内学習会を終えました。

 

◆写真左は、寺島実郎氏と衛藤議連会長