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国際連帯税議員連盟の総会開催>外相への要請等今後の方針決める  

議員連盟総会 2023-12-07

  

 議連③

 

12月7日午前8時より参議院議員会館会議室において、国際連帯税創設を求める議員連盟の「2023年第1回総会」が開催され、今後の方針を決めました。出席した国会議員は5人と秘書の方々。市民側は10人を超えて参加がありました。

 

総会冒頭、議連の初代会長であった津島雄二先生のご逝去に対し黙とうを行いました。衛藤征士郎会長(自民、衆議院)のあいさつの後、早速議事に入りました。最初は、「2023年役員体制の確認」ということで、田島麻衣子(立憲、参議院)が事務局次長に就任されました。

 

会計報告の後、外務省国際協力局地球規模課題担当審議官の北村俊博さんから「令和6年度税制改正要望における国際連帯税の扱い」に関して報告。これまでの経緯と資金創出の現状についての説明はあったものの「令和6年度での国際連帯税要望をなぜ見送ったのか」という議連側の問いに対し十分納得する説明はありませんでした。コロナ禍に引き続くウクライナ戦争やインフレなどを挙げていまして、要するに日本経済が厳しいからというのが理由?のようです。次に、財務省、観光庁から国際観光旅客税の収支状況について報告がありました。

 

続いて、グローバル連帯税フォーラムの田中徹二氏から「国際連帯税をとりまく最新動向」について報告。①今日国際社会で二度目の国際連帯税創設の機運が高まっていること、②それはつい最近フランスやケニア等の参加による「開発・気候のための国際課税タスクフォース」が立ち上がったことに現れており、日本政府もこのタスクフォースに参加すべき、③2019年に設置された外務省「SDGs新資金を考える有識者会合」は当初の税制を検討するから民間資金検討に変質したので、2度目の有識者会議が必要、というもの(*)。

 

その後、一定の議論を行い、石橋通宏事務局長から以下の3点を今後の活動方針として提案され、承認されました。①上川外務大臣に対し国際連帯税に関する諮問委員会を作るよう申し入れを行うこと、②タスクフォースの動きもあるので駐日フランス大使館と意見交換を行うこと、③これまで議員立法の検討も進めてきたがこれを継続すること、です。最後に衛藤会長より、上川外務大臣への申し入れにつき早速行っていこうとの力強い言葉があり、緊急の議員連盟総会を終了しました。

 

(*)「国際連帯税をとりまく最新動向」

 

※写真左は、10人を超えて参加した市民側の人たち

開発・気候のための国際課税タスクフォース>COP28で立上がる

COP28モトリー

 

11月30日よりCOP28がはじまりましたが、当フォーラムが注目していた次の2つのテーマが開催間もなく決定に至りました。それは、1)「損失・損害基金」立上げが決議されたこと(規模や制度の詳細は今後になりますが)、2)マクロン大統領が公表していた「開発・気候のための国際課税タスクフォース」が開催3日目で発足したこと、です。以下、後者について報告します。

 

●国際課税タスクフォースの構成と役割

 

正式名:「開発、気候、自然の資金調達のための国際課税に関するタスクフォース」

参加国:フランス、ケニア、スペイン、バルバドス、アンティグア・バーブーダならびにアフリカ連合と欧州委員会(オブザーバー)

事務局:欧州気候財団と新パートナー

役割と目的:最も温室効果ガスを排出しつつも低税率の経済セクターへの課税、例えば炭素税、金融取引税、海上・航空輸送税などに基づく革新的な資金調達手段を特定する任務を負う。

この新しい世界税の目的は、開発、自然保護、気候の3つの課題に対応するための追加資金を動員すること

次のステップ

  ・2024年初めに専門家を特定

  ・COP29に作業内容を提示

  ・2025年のブラジルが議長の下のCOP30までに具体的な提案をまとめる  

 

●欧州気候財団CEOのローレンス・トゥビアナさんのコメント

 

事務局となる欧州気候財団(ECF)のCEOはローレンス・トゥビアナさんで、彼女はCOP21での議長国フランスの気候変動交渉担当大使を務め、歴史的な「パリ協定」の策定に主要な役割を果たした人です。そのトゥビアナさんがECFとして事務局を担うにあたり、次のようにコメントしています。

 

私は、フランス、ケニア、バルバドスその他の国々の指導者が「開発と気候変動対策を強化するための国際課税に関するタスクフォース」を立ち上げたことを心から歓迎します。気候変動と貧困との戦いを支援するために追加資金を調達するための大きな一歩です。

 

その目標は、包括的かつ公平な方法で追加的な資金を調達する可能性のある課税オプションを特定するために、力を合わせて取り組む意思のある国々を集めることです。開発途上国に負担を強いることなく、いかなる悪影響も緩和されるようにします。

 

欧州気候財団は事務局として、公平性と包括性を議論の中心に据え、解決策が最も脆弱な国のニーズを満たすことを保証します。私たちは事務局が多様性に富み、必要とされている専門知識に基づいて世界中のすべての地域を代表するよう努めます(以上、彼女の「X」投稿より)

 

なお、バルバドスのモトリー首相も12月1日のセッション、World Climate Action Summit – Transforming Climate Financeで国際課税について以下の通り発言しています。「石油とガスから 2,000 億ドル、国際海運から 700 億ドル、国際航空旅客からさらに 400 ~ 500 億ドル、そして金融取引税を徴収すると、私たちは損失・損害のためだけでなく、回復力を構築するための専用の資金源を手に入れることができます」(*)。

 

●(付録)「パリ平和フォーラム」でのトゥビアナさんのアピール

 

以下は、11月10-11日開催された「パリ平和フォーラム」の冒頭セッション、「『人と地球のためのパリ協定』の実現」でのトゥビアナさんのアピールを紹介します。

 

マクロン大統領:

数ヶ月前にパリで言及した国際課税(international taxation)へのコミットメントについてはナイロビ気候サミットでルト大統領によって取り上げられましたが、その意義についてトゥビアナさんから報告していただきます。

 

ローレンス・トゥビアナ:

大統領、発言の機会を与えていただきありがとうございます。私たちは気候変動に対する財源を劇的に増加させていく必要があります。それは発展途上国・貧弱国をサポートし、各国の二酸化炭素削減への移行、強靭な経済の実現のために、です。

 

この会場におられる各国のみなさまがともに「ロスアンドダメージ(損失と損害)」の問題を含め気候変動の弊害の問題に取り組む必要があり、そのためにはより多くの資金を要しますし、まさに喫緊の問題でもあります。

 

国際課税の話については、各国同士の連携や実施の難しさから、多くの国でタブーであるとされていますが、気候変動の対策資金として新しい税を実現すべきときなのです。国際課税は化石燃料の会社など最も環境を汚染している産業などにも対応し、(税のほかに産出を削減する効果もあり)気候変動に対する具体的な解決策となります。

 

フランスとケニアは気候変動の対策としての国際課税について、タスクフォースを始めました。これはきわめて前向きな解決策であり、多くの国々にとってよい機会となるでしょう。COP28は共同でこれらに取り組むことができるのではないでしょうか、これらは国際社会全体のグローバルシステムにいっそうの公平性もたらす策となります。

 

最後に、フロアのみなさまに訴えます。国際課税への理解を深め、国際課税に対するタブーの意識がなくしましょう!

 

マクロン大統領:

トゥビアナさん、報告ありがとうございました。加えて一言申し上げます。気候変動対策において、G20は改革とともにより具体的なアクションを続けていく必要があります。私が最も主張したいのは、今日会場に集まったようなNGOなどのLocal actor(地域のアクター)を支援することが重要であり、今後も続けていく必要があると思います。このことは、私たちが気候資金とともに取り組まなくてはいけないアジェンダなのです。

 

(*) https://youtu.be/dqUoK7WAwzc

(**)https://youtu.be/pr27my-uJvo 

 

※写真:左はパリ平和フォーラムのもよう、中は12月1日のCOP28での World Climate Action Summit – Transforming Climate Finance セッションのもよう(フランス・コロンビア・ケニア・ガーナの各大統領、バルバドス・英国の各首相が参加) 

 

 

 

「損失・損害/世界の国会議員の誓い」署名要請、全議員に配布

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去る11月22日、国会議員全員に対して「~革新的資金調達、国際連帯税への期待高まる~気候『損失損害』基金、何十億人もが注目」 という『国際連帯税ニュース第18号』を配布しました(ニュースレターのプリントはこちらから)。その目的は「損失と損害に関する世界の国会議員の誓いキャンペーン」に協力し署名をお願いする、というものです。

 

●署名第1号は田島麻衣子参議院議員

 

このキャンペーンには、そう数は多くはありませんが、アフリカ、南太平洋の島国、欧州、オーストラリアの国会議員等が署名してくれています(*)。日本でも多くの国会議員が署名してくれるとよいですね。署名の要旨は次の通りです。

 

私たちは、気候変動の影響に直面している世界中の人々と連帯し、COP28において、損失・損害基金があらゆるニーズに十分に応えられるよう、私たちそれぞれの立場を活かしてその完全かつ効果的な運用を支持することを誓う。

 

Dear Maiko Tajima

 

The Loss and Damage Collaboration (L&DC) and the Pan-African Climate Justice Alliance (PACJA) wish to thank you for signing the global pledge for Parliamentarians to demonstrate their support for the establishment of a fit-for-purpose Loss and Damage Fund ahead of COP28.

 

We are sincerely grateful that you have taken a stand in solidarity with the people all over the world facing climate impacts, and that you will use your respective positions to champion the full and effective operationalisation of the Loss and Damage Fund at COP28 ensuring it is adequate to meet the full spectrum of needs.

 

Yours sincearly

 

●基金の枠組み合意できたが、肝心の拠出額、拠出形態(義務か任意か)等々決まらず

 

ご承知のように、この基金問題は30年前から沈みゆく南の島々などから要求されてきたもので、それがようやく昨年のエジプトでのCOP27で設立が決まったものです。しかし、COP28で基金の具体的な運用内容を決めるべく「移行委員会」が1年ほど議論してきてまとまらず、今月4日の会合でようやく草案が決まり、これがCOP28で勧告案として提出されます(**)。

 

主な内容を簡単に見てみます。
 1)【たいへん揉めたが何とか】損失・損害に直面している脆弱に国々に資金を提供する枠組みができたこと、
 2)基金のホストは「暫定的に」世界銀行がなったこと、
 3)【肝心の】どれだけの資金が必要か、誰が拠出者で拠出形態はどうあるべきか(義務か任意か)、受益者の敵悪基準はどうあるべきか、など一切決めておらず、これらの事項の一部は基金理事会の決定に委ねられることになった

 

トピックとして、ほぼ合意されつつ最終局面で、突然米国の交渉者が「資金拠出が任意であると明確にすべき」ということで反対すると発言しました。しかし、これは後ほど撤回されました。このことに象徴されるように、米国など先進国はとにかく拠出先を絞り、かつ義務化を逃れようとしたことが目立ちました。

 

このように基金については、拠出額(途上国側は当面1000億ドル要求)はじめ肝心の資金に関するの中身が決まっておらず、COP28での議論に委ねられることになりました。基金成立のそもそもの経過からして、最も温暖化に寄与していない途上国、とりわけ気候脆弱国(国土そのものが消失してしまう!)が最も悪影響を受けるという不公正を解決していくのが衡平の原則です。従って、温暖化の原因を作ってきた先進国がまず義務的に基金に拠出しなければならないでしょう。ということで、基金についてはCOP28での議論をしっかり注視し、義務を果たさせる国際的な世論を作り上げていく必要があります。

 

(*)世界の国会議員の署名状況はこちら

(**)最終草案(第5回移行委員会)

 

※上部にあるニュースレターはクリックすると拡大します。

 

気候・開発のための国際課税タスクフォース、COP28で立上げへ!

発言するトゥビアナ

 

気候・開発に関する新しい資金創出に関してダイナミックな動きがはじまりつつあります。経過から見てみます。

 

● 6月パリ新金融サミットでは国際課税への具体的提案出されず

 

去る6月パリで『新グローバル金融協定に関するサミット』が開催され、そこでのコンセプトが気候変動問題も開発問題もともに進めるということで資金調達の方策を探り、とくに専門家やNGO、そしてケニアのルト大統領から国際課税方式による調達が提案されていました。主催者のマクロン大統領も一定の理解を示していました(事前のメディアの取材でフランスはすでに航空券税や金融取引税を実施していると語っていた)。

 

しかし、国際課税に関する具体的な提案はなく、「課税による新たな財源の可能性を検討するタスクフォース(TF)と略の立ち上げが提案されたので、9月のアフリカ気候サミットまでに最初の結論を出すことができる」というなんとも煮え切らない議長まとめが出されて終わりました。

 

● アフリカ気候サミットでは国際課税が力強く提唱されたが・・・

 

ところが、アフリカ気候サミットではTFに関する提案はないまま(議論された形跡もなく)、ただナイロビ宣言は世界の政治指導者に対して次のように呼びかけています。「化石燃料取引、海上・航空輸送に対する炭素税を含むグローバル炭素税制の提案に賛同し、さらにグローバル金融取引税によって強化すべき」、と。

 

● マクロン大統領が新しい国際課税に関するTFを提案>COP28で発足!

 

いずれにせよTFにつき半ば忘れていたところ、2日前(11月10日)から開催された『第6回パリ平和フォーラム』(注)の開催にあたり、国際NGO・グローバル・シチズンの副代表であるFriederike Röder氏からX に次のような投稿がありました。「パリ平和フォーラム2023 の開会式にて:#気候変動 と #開発 のための資金をより多く調達するための国際課税に関するTFが具体化しており、#ケニア と #フランス が #COP28 にて @LaurenceTubianaの支援を受けて発足させる予定である」。

 

続けて、Röder氏は述べています。

 

「理論的な議論を超えて、テーブルの上にある解決策(金融取引税、化石燃料税、富裕税… -)を検討することは実際に重要であり、それは、既存の公約に加え、健康へのアクセス、#気候変動への適応、#損失と損害 に資金を提供するために、多額の資金を動員することができる)

 

「このTFは、これらの税金を真に世界的なものにすることを目指す前に、できれば #COP30までに、これらの税制オプションの1つまたはいくつかを実施する国の連合体を実現する必要がある。当然だが、必要なのは政治的な意志だけだ!」

 

一方、支援するLaurenceTubiana 氏--COP21でフランス特別代表を務め歴史的な「パリ協定」作成の立役者--もX に以下のように投稿しています。

 

「気候変動に取り組むためには、資金を動員することが前提となる。再生可能エネルギーの容量を拡大し、これまで以上に深刻な影響に適応するためには、大規模な投資が必要である。 これが、本日(11月10日)パリで開催された #ParisPeaceForum2023 における世界の指導者たちからの明確なメッセージである」

 

「しかし、現在の経済状況では奇跡は起きない。新たな資金源を見つけなければならない。@EmmanuelMacron大統領が発表した国際課税に関する新しいTFを強く歓迎する」

 

「TFは、不平等に対処し、最も汚染度の高い産業が貢献できるようにしながら、気候変動と開発のための資金調達を拡大するための新たな税制オプションを検討する。鉄は熱いうちに打て、この高まりつつある機運を野心的で拘束力のある協定に変えていかなければならない」

 

● TFの発足へ!多くの政府や市民社会の参加を!

 

もともとフランスには2006年より同国外務省が常設事務局となって「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」(最盛期で60数か国が参加)があり国際課税・国際連帯税を議論してきたという経緯がありました。ですから、本当は新たにTFを設立する必要はないのですが、マクロン大統領が同グループをいつの間にかつぶしてしまったようです。

 

ともあれ、設立されるTFにフランスやケニアだけではなく(モトリー首相のバルバドスも参加のよう)、多数の政府に参加してもらうことはもとより、かつてのリーディング・グループのように専門家・市民社会代表も参加できるようにしてもらいたいと思います。ともあれ注目しましょう。

 

(注)パリ平和フォーラム:地球規模課題に取り組み、多国間協力を強化することを目的として各国首脳、国際機関や市民社会、企業の連携を推進する国際会議。マクロン大統領によって2018年より開催されてきた。

 

※写真:左はパリ平和フォーラムのロゴ。中は、マクロン大統領等の前で国際課税による資金創出を訴えるトゥビアナ氏

「気候危機下の何十億人が依存」(COP議長)>L&D基金と革新的資金調達

COP28のロゴ

 

●損失と損害への資金が決まらなければ、COP28交渉全体が頓挫する可能性!

 

標題は、来月開催されるCOP28の議長スルタン・アル・ジャベル氏の言葉です。気候危機に脆弱な何十億人もの人々が損失・損害基金(以下、基金)立上げを待ち受けていること、そのために「…基金の導入方法や補充方法について、COP28までに明確でクリーンかつ確実な勧告を打ち出すよう、世界の注目が集まっている」とAFPのインタビューに答えています。

 

ところが、基金立上げに向けての管理運営ならびに実施方法等の設計に関する「移行委員会」がこれまで4回開かれたにもかかわらず、富裕国と貧困国の対立で合意できずにいます。

 

世界資源研究所(WRI)地球気候プログラムおよび金融センターの上級顧問のプリーティ・バンダリ氏は「(基金)に関する途上国の優先事項が適切に対処されなければ、COP28の成功を測る重要な尺度なので、このままでは交渉全体が頓挫する可能性がある」(注1)と危機感を強めています。

 

実際、COP27での画期的ともいえる基金設立の合意は、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの134か国ならびに小島嶼国によって勝ち取られたものですから、もしCOP28で立ち上げが不可能となれば、COPそのものが大混乱に陥りそうです。

 

●対立を解消し、基金は早く革新的資金メカニズムの議論を

 

対立は、まず基金の主催は誰か(管理部門をどこに置くべきか)ではじまり、先進国側は世界銀行に管理を任せるべきとし、途上国側は独立した機関に管理部門を置くべきとして平行線をたどっています。このため追加会合をアル・ジャベル議長がCOP28の前に設定しました。世界銀行のバンガ新総裁も対案を持っているようですので、対立を克服し早急にどのような資金で基金を賄うのかを決めていくことが必要です(注2)。

 

その資金ですが、これについては先進国も途上国も「革新的資金メカニズム」を重要視するということで一致しています。ただし、支払う側となる先進国は「民間資金の動員による」ということになるでしょうし、途上国側は「新規かつ追加的な公的資金による」という主張になると思われます。

 

そういう中で明快な主張をしているのが、ケニアのウィリアム・ルト大統領です。9月の国連総会の一般演説で、また気候野心サミットで「革新的資金調達として、航空・海上運輸、航空券、化石燃料取引への課税ならびに金融取引税を」と主張し、さらに大規模な資金調達にあたっては金融取引税が有効と力説しています(注3)

 

●「損失と損害/世界の国会議員の誓い」キャンペーンにご協力を!

 

このようにCOP28が重要テーマである温室効果ガス排出削減を目指す「グローバルストックテイク(GST)」を成功裡に実施するためにも、基金の立上げがぜひとも必要となっています。これにむけ基金を専門的にウォッチしているNGOやアフリカの最大規模の環境NGOが「損失・損害に関する世界の国会議員の誓い」キャンペーンを実施しています(注4)。

 

遅れましたが、グローバル連帯税フォーラムはこの世界的なキャンペーンに参加することとし、今後国会議員のみなさんからのご協力を得るべく宣伝・広報していきます。このキャンペーンにご関心があり一緒に活動してくださる方がおりましたら、ご連絡ください。

 

(注1)STATEMENT: Loss and Damage Transitional Committee Fails to Reach Consensus Ahead of COP28

(注2)Tensions soar over new fund for climate ‘loss and damage’ ahead of COP28
(注3)ルト大統領演説  
(注4)「損失と損害/世界の国会議員の誓い」キャンペーンのWebサイト

 

※写真は、アル・ジャベルCOP28議長
  

【ご案内】勉強会「気候正義と国際連帯税~秋の知識収穫祭」

10.28チラシ

 

学生たちが以下のミニ学習会を企画してくれました。なかなか気候変動問題と国際連帯税とが結びつかないできましたが、COP28で主要テーマとなる途上国・脆弱国への「損失と損害基金」問題--気候被害が直接食料危機や感染症等にも繋がってくる--がそれの架け橋になります。せっかくの機会ですので、興味のある方はご参加ください。

 

◇◇ミニ勉強会~秋の知識収穫祭◇◇

  気候正義と国際連帯税~新たな革新的資金調達の必要性     

 

◎日 時:10月28日(土)18:00~19:30
◎講 師:田中徹二氏(グローバル連帯税フォーラム)
◎参加方法:Zoomによるオンライン配信で行います。申し込みは、こちらのformよりお願いいたします。      
◎参加費:無料

 

今年の夏は「史上最高の暑さ」。日本や世界で異常気象が頻繁化。昨今話題となっている気候変動の問題とそれにともなう国際社会における動向について探ります。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」「人類は地獄の門を開けてしまった」と警告しています。

 

早くも来月末には第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)が開催されますが、同会議では途上国の気候被害に対する「損失と損害」基金が重要なテーマとなり、それは「気候正義」の要求です。その基金立ち上げで期待されているのが、従来のODA(政府開発援助)資金や民間資金ではなく「革新的資金調達」です。このメカニズムには国際連帯税が含まれます。

 

本年7月7日、グローバル連帯税フォーラムと横浜市大THEsの主催で「気候危機とグローバルサウス 国際連帯税は未来を救えるのか?」講演・討論会を行いましたが、引き続き次のようにミニ学習会を開催します。

 

みなさんにとって、あらゆる知識の収穫ができる会になればと願っております。関心のある方は、ぜひご参加ください。

 

損失・損害基金:世界のカトリック系NGO、世界的な署名活動を開始!

カトリック系

 

来月末からUAEのアブダビでCOP28(気候変動枠組条約締約国会議)が開催されます。主要議題は、CO2削減等の実施レビューを行う第1回グローバル・ストックテイク(GST)、並びにCOP27で合意された「損失・損害基金」の立ち上げ、その他です。

 

気候変動、温暖化といえば、私たちはまずそれを防ぐためにCO2削減をどうするかと考えがちですが、しかしその被害が世界全体で一様に現れているのではなく、CO2をほとんど排出せず温暖化に寄与していない途上国や気候脆弱国により酷く現れています。大洪水や大干ばつ、海水面上昇による国土喪失に襲われ、食料危機・飢餓、マラリアやコレラ等の感染症等に見舞われています。

 

被害の原因を作った方が被害が少なく、原因を作っていない方が被害が大きいというのは明らかにジャステス(衡平・公正)なあり方ではありません。このことから「気候正義」の考え方が広がってきました。COP・締約国会議においても2021年グラスゴー会合で言われるようになりました。かくして損失と損害への資金提供は、先進国としての「責任と補償」と位置付けることができると思います。

 

こうしたことから、損失と損害基金の立ち上げにつき、世界的に様々な運動が起きています。先にアフリカの気候正義団体や南北のアクティビストによる「損失と損害/世界の国会議員の誓い」キャンペーンを紹介しましたが、今回は世界のカトリック系NGOの署名活動を紹介します。経過は次のようです。

 

「2023年6月…損失と被害に関する会議が行われ、行動を起こすことを決めました。したがって、カトリック団体のグループである《国際カリタス、SCIAF、CIDSおよびラウダート・シ運動》(注)が、COP28で世界の指導者たちに届けられるよう、世界中のあらゆる宗教の指導者に損失と損害に関する行動への支持を示す(共同)声明を発表し、その署名を求めます」

 

Loss and Damage: The Moral Case for Action(損失と損害:行動のための道徳的課題)

※世界中の50人以上の信仰指導者の賛同を得た声明を発表!

 

 なお、10月12日に以下の170団体が、損失と損害に対する資金提供を求める共同呼びかけを発表したとのことです。

 

170以上の人道、気候、開発団体が損失・損害基金への資金拠出を拡大するよう要求

 

このように、損失と損害基金のための国会議員キャンペーンや署名・声明活動が、NGO、宗教団体、専門家などで行われています。こうした運動がシナジーして大きな運動になるとよいですね。グローバル連帯税フォーラムは主に基金の革新的資金メカニズムにフォーカスしつつ、国会議員へアプローチしてみようと考えています。

 

(注)

◎国際カリタス(英: Caritas Internationalis):165カ国・地域の組織が加盟

 ⇒カリタスジャパンはこちら  

◎CIDSE(Coopération internationale pour le développement et la solidarité=開発と連帯のための国際協力):ヨーロッパと北米から18の会員組織が参加。120か国・地域で活動。

 ⇒同団体はこれまで金融取引税や国際連帯税についても積極的に発言していました。

  金融取引税(FTT)に関する欧州カトリック指導者の声 

◎laudato si movimento(ラウダート・シ運動):回勅「ラウダート・シ(あなたは讃えられますように!)」での教皇フランシスコの呼びかけに応えるために協力したいと願う、さまざまなカトリックの国際的なネットワーク

◎SCIAF(Scottish Catholic International Aid Fund):スコットランドのカトリック国際援助基金

「損失と損害/世界の国会議員の誓い」キャンペーン、革新的資金調達への期待

L&Dロゴ

 

今年の夏はとにかく暑く、世界的にも異常気象が頻発しました。11月末日から第28回気候変動枠組締約国会議(COP28)が開催されますが、その主要議題の一つが「損失と損害」基金の立ち上げです。その基金につき、国際社会では革新的資金メカニズムの期待が高まっています。COP開催を前に「損失と損害に関する世界の国会議員の誓い」キャンペーンが立ち上がりしたので紹介します。日本でも国会議員に対してアプローチできればと考えています。

 

1、今年平均1.2℃上昇で「史上最高の暑さ」、1.5℃や2.4℃上昇となると…

 

9月14日米航空宇宙局(NASA)は今夏が「史上最高の暑さ」を記録したと発表し、この温暖化は世界中で山火事や熱波と豪雨の要因となった説明しています(注1)。が、これだけの暑さにもかかわらず、産業革命以前から地球の平均気温がどのくらい上昇したかと言えば、IEA(国際エネルギー機関)は1.1℃、英国気象庁は1.08~1.32℃(推定中央値1.20℃)と報告しています。

 

ところで、2015年のCOP21「パリ協定」では1.5℃上昇を上限努力すると決め、国際社会はそれを目標にしているわけですが、しかし1.5℃で止まったとしても今年の暑さ(+様々な気候災害)の比ではなくなることは明らかです。まして、UNEP(国連環境計画)の昨年10月27日の報告書を読むと空恐ろしくなります。「世界の今の気候変動対策では今世紀末までに産業革命前比で2.8度、各国が約束した温室効果ガス削減目標を達成しても約2.5度、それぞれ上昇してしまう」(注2)、と。いずれにせよ、コロナ・パンデミックに続き、国際社会は人類的危機を迎えていることになります。

 

2、「損失と損害」基金と「気候正義(Climate Justice)」

 

気候変動対策には、大きく分けて「緩和策」と「適応策」があります。前者は、CO2など温室効果ガスを削減する政策であり、後者は高温に強い作物育成や避警報装置設置など温暖化に適応していく政策です。そしてこの両者に加えて、昨年のCOP27で「損失と損害(L&D)策」が加わりました。

 

L&Dについては、30年前から温暖化による海水面上昇によって沈んでしまう小島嶼途上国より提案されてきましたが、先進国側はそれが(CO2排出の歴史的な)「責任と補償」に繋がってしまうことからずっと抵抗してきました。しかし、このL&Dを裏付ける「気候正義」という考え方が、2021年のCOP26で出されるという経緯もあり、先進国側も認めざるを得ませんでした。

 

事務総長②

 

気候正義につき、アントニオ・グテーレス国連事務総長は先の国連総会冒頭で次のように述べています。「私たちは…過熱する地球に取り組む決意を固めなければなりません。…温室効果ガスの排出量を削減し、この危機の原因に最も貢献していないにもかかわらず、最も高い代償を払っている人々のために気候正義を確保することです。…G20諸国は温室効果ガス排出量の80%を占めています。彼らが主導しなければならない。」(注3)

 

気候変動に関する主要問題として、温室効果ガスを歴史的にも大量に排出し気候危機を招いている先進国等と、その悪影響をもろに受けて大きな負担を強いられている途上国・脆弱国との格差であり、その格差を是正していくのが気候正義です。実際、小島嶼途上国のCO2排出量は世界全体の排出量のわずか1.1%に過ぎませんが、海水面上昇で国土を失いつつあります。また、約14億人(世界人口の17%)の人口を持ち大干ばつや洪水などに見舞われているアフリカのCO2排出量は4%未満です。

 

3、期待される革新的資金調達:ルト大統領、一般演説で金融取引税等を主張

 

L&D基金の運用はこの11月から始まるCOP28で確立することになりますので、これまで3回の「移行委員会」を行い、さらに9月22日には国連で閣僚会議を開催してきました。ところが、ここでも高所得国(先進国等)と低所得国(途上国等)の対立がいぜんとして続いています。とくに「誰が資金を拠出し、誰が資金を受け取るべきか」という本質的なところで決着ができていません。

 

22日の閣僚会議での発言を見ますと、低所得国のみならず高所得国からも「革新的資金メカニズム」への期待が述べられています。実際、高所得国では自国財政に余裕がなくODA等の公的資金の拠出が困難なことから、同メカニズムに期待するのでしょう。しかし、その中身についてはアイルランドが「航空・海運ならびに化石燃料会社への課税」を主張したのみでした(注4)。

 

ルト大統領

 

一方、国連総会の一般討論演説でケニアのウィリアム・ルト大統領は、開発と気候危機に対処するため先のアフリカ気候サミットで挙げたナイロビ宣言を踏まえ、国際金融システムの改革とグローバル資金調達を訴えました。後者についてはグローバル炭素税(航空・海上輸送、化石燃料取引)とグローバル金融取引税を挙げおり、大規模な資金調達にあたっては金融取引税が有効と力説しています(注5)。

 

気候変動枠組み条約ならびにパリ協定では、途上国への資金供与につき「新規かつ追加的な」資金で行うべきとしているが、これは既存のODAではなく革新的資金調達のことを意味しているはずです。しかし、先進国側は民間資金を利用・動員することで新規&追加資金としてきました。ところが、民間資金はリターンの問題がありますので、貧困国・脆弱国には向かわないという根本的問題を抱えています。

 

以上から、「L&D」基金は公的資金で、かつグローバル炭素税や金融取引税などのグローバル・タックスによる新規の資金でなければならないこと、このことが必須条件になると思います。

 

4、「損失と損害に関する世界の国会議員の誓い」キャンペーンが立ち上がる

 

今年の地球「沸騰時代」を経験し、我が国の被害でもたいへんでしたが、途上国・脆弱国においては国土の3分の1が沈んだ昨年のパキスタンでの大洪水に見られるように、その被害、したがって損失はケタが違っています。同国においては直接生命と生活が危機に見舞われましたが、その後もマラリアやコレラ等の感染症や食料危機が広がり、同国の経済が立ち行かなくなっています。

 

こうした損失と損害をもろに受けているのがCO2 排出に僅かしか関与していない途上国・脆弱国ですから、「気候正義」を実現するにはCOP28での基金の設立・運営が成功することが何より大切だと思います。

 

そういうなかで、「損失・損害に関する世界の国会議員の誓い」キャンペーンが立ち上がりました。呼びかけは、ルワンダを拠点に南と北の専門家、活動家などで構成されるThe Loss and Damage Collaboration (L&DC)とアフリカ全大陸51か国の1,000 以上の組織からなるコンソーシアムであるPan-African Climate Justice Alliance(PACJA)です。

 

「COP28に先立ち、損失と損害に取り組む行動への支持を世界中の国会議員や立法関係者に呼びかけ、私たち全員が共にこの問題に取り組み、最前線にいる人々、特に最貧困層を気候変動の最悪の影響から守るために、私たち一人ひとりが果たすべき役割があることを世界に示そう」と呼びかけ、次の4項目につき各国の国会議員のみなさんに誓っていただくことを要請しています。

 

UNFCCC 締約国の注目のために

 

私たち、グローバルノースおよびグローバルサウスの国会議員は、損失と損害が世界中の地域社会に与える影響に深い懸念を抱いている。

 

私たちは、各国政府を支援し、以下を実施するために行動することを誓う:

 

1. COP28において、パリ協定およびUNFCCCの衡平性の原則に基づき、あらゆる損失・損害のニーズに対応する救済のための十分な資金が確保された、目的に合った損失・損害基金を運用すること。

 

2. 損失と損害に対応するため、ローン(有償)ではなく、グラント(無償)という形で重要な新規追加資金を調達し、汚染者負担の原則を法に盛り込むとともに、排出削減を推進するための法整備を強化すること。

 

3. 損失と損害に対処するための資金が、可能な限り迅速に必要とする地域社会に行き渡り、地域主導で、ジェンダーに対応し、信頼できるものとなるよう、政策的枠組みを導入すること。

 

4. 気温1.5℃の目標に沿った排出量削減のための政策と法律の実施を早急に導入し、監視すること。

 

私たちは、気候変動の影響に直面している世界中の人々と連帯し、COP28において、損失・損害基金があらゆるニーズに十分に応えられるよう、私たちそれぞれの立場を活かして、その完全かつ効果的な運用を支持します。

 

(注1)NASA、23年夏は「史上最高の暑さ」 異常気象の要因に
(注2)Emissions Gap Report 2022
(注3)2023年9月19日国連総会でのグテーレス事務総長の演説(全文)
(注4)L&Dに関する閣僚会議での各国の発言は、Loss and Damage Collaboration の「X」より。またレポートは、こちら。  
(注5)ルト・ケニア大統領の演説   
(注6)「世界の国会議員の誓い」のWebサイト

国際連帯税(金融取引税)の今:ブレーキかかる日本、動き出す世界

1、日本外務省、4年連続して国際連帯税の新設要望を断念

 

政府関係の24年度税制改正の要望が8月末に締め切られましたが、外務省は私たちの要求にもかかわらず、今年度も国際連帯税の新設要望を提出しませんでした。これで2021年度税制改正要望以降4年連続して断念したことになります。

 

一昨日(9月9日)「コラム:中ロと高まる緊張、見直されるG7 課題は途上国支援の本気度」というロイター通信記事が目に留まりました。コロナ・ワクチンを迅速に途上国へ供給しなかったことや気候資金1000億ドルの拠出の公約破り等など「G7による近年の途上国支援の実績も乏しい」と記事は述べていますが、グローバルサウスはG7を心から信用していないということでしょう。とくにコロナ・ワクチンの先進国の買い占めは酷いもので、それがために自国ワクチンを供給した中国が途上国への影響を高めたことは記憶に新しいところです。

 

ともあれ、グローバルサウスとの連携がキーポイントと言うなら、G7は本気度を見せないとならないでしょう。それを担保するにはまず資金です(含む、債務帳消し)。しかし、G7の中で日本政府に至っては、圧倒的に借金財政に陥っており、これ以上ODA(開発支援資金)を増やせる状況ではありません。ならばG7広島やG20大阪サミットの首脳コミュニケで謳われている革新的資金調達メカニズムを真剣に考えるべきではないでしょうか。外務省のみならず政府全体が途上国支援に対して本気度を見せていないことは実に遺憾と言わねばなりません。

 

2、世界で動きはじめているグローバルタックス(金融取引税等)

 

1)第1回アフリカ気候サミット>新たなグローバルタックス呼びかけも

 

9月4-6日、ケニアのルト大統領とアフリカ連合主催で開催されたアフリカ気候サミットは、ナイロビ宣言で締めくくられました。世界のメディアは「気候変動対策に資金を提供するための新たなグローバル・タックスを呼びかけ」(ロイター通信 注1)、「より貧しい国々でのグリーン・エネルギーのためにグローバルな炭素税を支持」(FT)と報じました。

 

実は、ルト大統領等は気候危機にあたっては南も北もない、援助よりは投資が必要ということで、炭素クレジットなどの市場ベースの投資を強調していましたが、「最終宣言では主要汚染者と世界的金融機関がより多くの資源を投入して貧困国を支援し、手ごろな金利で借り入れを容易にするよう求める要求が最も強調された」(ロイター通信ほか)形になりました。

 

その上で、ナイロビ宣言では、世界の指導者に対して「化石燃料取引、海上輸送、航空に対する炭素税を含むグローバル炭素税制の提案に賛同し、さらにグローバル金融取引税によって強化される可能性がある」と促しました。

 

このような宣言内容がアフリカ諸国の総意となり、来る11月のUAEでのCOP28に提案されていくことになります。

 

2)気候「損失と損害(L&D)」基金での議論>多様な資金源を

 

COP28での主要議題のひとつがL&D基金の具体的な内容(誰が払い誰が受取る等の制度設計、資金源など)を取り決めることで、そのために移行委員会で鋭意議論しています。資金源の議論として、一部からグローバル・タックスの提案がなされています。フランスは次のように提案しています(南太平洋の島国バヌアツも同じような革新的な資金調達案を提案)。

 

「革新的な資金源を含む多様な資金源を受け入れることができるよう、基金を設計すべきである。…補助金ベースの資金調達から、ブレンデッド・ファイナンス・メカニズムや、グローバル化の流れに対する革新的な課税手段、例えば、航空・海上輸送や化石燃料の貿易・生産に対する課税、金融取引税、国際カーボンプライシングなどによる資金調達が考えられる」(注2)。

 

途上国・脆弱国の当面のL&D基金の要求として1000億ドル/年を挙げていますが、これまで先進国は長期気候資金1000億ドルを拠出しなければなりませんので(2025年まで)、併せて2000億ドルになりますから、これはこれまでのような資金拠出ではまったく間に合わず、思い切った革新的な資金調達方法、すなわち金融取引税など国際連帯税実施が必要となってくるのではないでしょうか。

 

3)欧州連合-欧州議会>9月13日欧州委委員長の一般教書演説に注目を

 

欧州はコロナ復興基金を含む2021~2027年中期予算を実施中ですが、ウクライナ戦争やインフレ、そして復興基金の債券の金利上昇等で、予算不足とになり修正をすることになりました。そこで欧州議会は独自財源として金融取引税の(前倒し)を軸に暗号資産への課税や法人税の一部なども含む決議案を採択しました。ところが、欧州委員会は6月に金融取引税を捨象し、国内の企業の利益分を加盟国から拠出させるという、(企業が拠出するのではない変則的?)法人税の一部拠出という修正案を提案しました。

 

こうした状況の中、ポルトガル、フランス、ドイツのEU担当大臣(&副大臣)がEU予算は課題に対してあまりにも少ないということで、未来のための税金や賦課金による「独自の資源」を備えた、より連邦的なEUを求める共同見解をメディアに発表しています。当然そこでは金融取引税も有力な選択肢となっています(注3)。

 

9月13日に欧州議会でフォン・デア・ライエン欧州委委員長が一般教書演説を行う予定で、ここでの発言が注目されます(ただし、彼女はいつも金融取引への課税について話すことを拒否しているとのこと)。

 

4)G20ニューデリー・サミット>シンクタンクGがFTTを提案

 

サミットは10日に閉幕しましたが、首脳宣言をざっと読むと金融取引税等のグローバルタックスの表現はありません(一部革新的資金源の記述あり)。エンゲージメントグループのシンクタンクグループが金融取引税を提案していましたが残念です。Think20 India Communiquéは最初の「マクロ経済、貿易そして暮らし」の章で次のように述べています。

 

「G20は、課税ベースを合理化するための政策を検討し、(不平等の削減と消費型経済の成長という)…文脈において、国際金融取引税(FTT)の役割も、総合的な費用便益分析を通じて評価されるべきである。FTTを使用する場合は、金融取引への悪影響を最小限に抑え、税収増につながるように設計すべきでる」(注4)。

 

(注1)

African leaders call for new global taxes to fund climate change action

(注2)

Submission from France to the Transisitonnal committee

(注3)

A European Union fit for the future

France, Germany, Portugal pitch EU levies and Ukraine ‘Marshall plan’

(注4)Communiqué 

 

G20サミット:BUグローバル開発政策センターが国際金融取引税を提案

G20インドのロゴ - コピー

コロナ・パンデミックや気候・食料危機、そして債務危機等というポリクライシスにあって、途上国への貧困・気候に関する資金需要は膨大なものになっており、9月9-10日インドのニューデリーで開催されるG20サミットでも新興・途上国への支援が主要課題の一つとなります(7月14日付ブルームバーグ)。

 

この支援につき、インドで著名なエコノミストのナゲシュ・クマール(Nagesh Kumar)とボストン大学(BU) Global Development Policy Center所長のケビン・P・ギャラガー(Kevin P. Gallagher)の両氏が、『G20における国際金融取引税(IFTT)議題の復活』と題した政策ブリーフで展開しています。これがG20のエンゲージメントグループのT20(シンクタンク20)に提出されました(*)。

 

この政策ブリーフの概要がセンターのWebサイトに掲載されていますので紹介します。政策ブリーフについては後ほど報告します。

 

 

G20における国際金融取引税議題の復活 (**)

 

世界的な危機の中で、実質的な気候変動対策と貧困緩和の必要性がより緊急性を増すなか、途上国も先進国も、これらの問題を和らげるために設計されたメカニズムを果たすことができていません。国連の2030年持続可能な開発目標(SDGs)の達成と気候変動対策は、グリーンな移行を確実にし、コミュニティを貧困から救い出すために必要ですが、それらを達成するには驚くべき額の外部資金が必要であり、国際社会はその支払いが困難であると感じています。厳しい予算と政府開発援助(ODA)の不足を考慮すると、気候変動対策とSDGsのために新しく革新的な資金源が必要です。

 

Nagesh Kumar氏とKevin P. Gallagher氏は、新しいThink20(T20)政策ブリーフの中で 、G20(G20)がSDGs達成と気候変動対策のための新たな収入源として、外国為替取引に対する少額の課税からなる国際金融取引税(IFTT)を導入することを提案しています。

 

著者らの試算によれば、非常にわずかなレートであっても、IFTT は ODA の年間フローの 3.5 倍に相当する年間収益を生み出す可能性がある、としています。IFTTは、外国為替投機筋を抑制しながら、途上国のSDGsや気候変動対策目標を支援できる新たな恒久的な収入源として機能する可能性があります。その結果、IFTT は金融市場のボラティリティ(価格変動率)を抑制し、有害な投機とその後の好不況サイクルを緩和する機能を生み出します。

 

新型コロナウイルス感染症のパンデミック、ロシアのウクライナ戦争によって引き起こされたインフレスパイラル、債務危機の複合的な影響により、先進国と途上国の両方で予算が逼迫している。さらに、無制限の外国為替取引は市場のボラティリティを助長し、国際金融システムを脅かしています。クマール氏とギャラガー氏は、IFTTには気候変動対策とSDGsを達成するための財源を創出しながらボラティリティを抑制する独自の能力があり、G20から生まれる画期的な多国間イニシアチブとなる可能性があると主張しています。

 

*Nagesh Kumar:ナゲシュ・クマールは、ボストン大学グローバル開発政策センターのグローバル経済ガバナンス・イニシアチブの非居住上級研究員。また、ニューデリーに本拠を置く公的資金による政策シンクタンクである産業開発研究所(ISID)の所長兼最高経営責任者。

 

*Kevin P. Gallagher:ケビン P. ギャラガー博士は、ボストン大学グローバル開発政策センター所長。また、ボストン大学フレデリック S. パーディー グローバル スタディーズ スクールのグローバル開発政策教授。

 

(*)Reviving the International Financial Transactions Tax (IFTT) Agenda for the G20
  
(**)Reviving the International Financial Transactions Tax Agenda for the G20