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「気候危機下の何十億人が依存」(COP議長)>L&D基金と革新的資金調達

COP28のロゴ

 

●損失と損害への資金が決まらなければ、COP28交渉全体が頓挫する可能性!

 

標題は、来月開催されるCOP28の議長スルタン・アル・ジャベル氏の言葉です。気候危機に脆弱な何十億人もの人々が損失・損害基金(以下、基金)立上げを待ち受けていること、そのために「…基金の導入方法や補充方法について、COP28までに明確でクリーンかつ確実な勧告を打ち出すよう、世界の注目が集まっている」とAFPのインタビューに答えています。

 

ところが、基金立上げに向けての管理運営ならびに実施方法等の設計に関する「移行委員会」がこれまで4回開かれたにもかかわらず、富裕国と貧困国の対立で合意できずにいます。

 

世界資源研究所(WRI)地球気候プログラムおよび金融センターの上級顧問のプリーティ・バンダリ氏は「(基金)に関する途上国の優先事項が適切に対処されなければ、COP28の成功を測る重要な尺度なので、このままでは交渉全体が頓挫する可能性がある」(注1)と危機感を強めています。

 

実際、COP27での画期的ともいえる基金設立の合意は、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの134か国ならびに小島嶼国によって勝ち取られたものですから、もしCOP28で立ち上げが不可能となれば、COPそのものが大混乱に陥りそうです。

 

●対立を解消し、基金は早く革新的資金メカニズムの議論を

 

対立は、まず基金の主催は誰か(管理部門をどこに置くべきか)ではじまり、先進国側は世界銀行に管理を任せるべきとし、途上国側は独立した機関に管理部門を置くべきとして平行線をたどっています。このため追加会合をアル・ジャベル議長がCOP28の前に設定しました。世界銀行のバンガ新総裁も対案を持っているようですので、対立を克服し早急にどのような資金で基金を賄うのかを決めていくことが必要です(注2)。

 

その資金ですが、これについては先進国も途上国も「革新的資金メカニズム」を重要視するということで一致しています。ただし、支払う側となる先進国は「民間資金の動員による」ということになるでしょうし、途上国側は「新規かつ追加的な公的資金による」という主張になると思われます。

 

そういう中で明快な主張をしているのが、ケニアのウィリアム・ルト大統領です。9月の国連総会の一般演説で、また気候野心サミットで「革新的資金調達として、航空・海上運輸、航空券、化石燃料取引への課税ならびに金融取引税を」と主張し、さらに大規模な資金調達にあたっては金融取引税が有効と力説しています(注3)

 

●「損失と損害/世界の国会議員の誓い」キャンペーンにご協力を!

 

このようにCOP28が重要テーマである温室効果ガス排出削減を目指す「グローバルストックテイク(GST)」を成功裡に実施するためにも、基金の立上げがぜひとも必要となっています。これにむけ基金を専門的にウォッチしているNGOやアフリカの最大規模の環境NGOが「損失・損害に関する世界の国会議員の誓い」キャンペーンを実施しています(注4)。

 

遅れましたが、グローバル連帯税フォーラムはこの世界的なキャンペーンに参加することとし、今後国会議員のみなさんからのご協力を得るべく宣伝・広報していきます。このキャンペーンにご関心があり一緒に活動してくださる方がおりましたら、ご連絡ください。

 

(注1)STATEMENT: Loss and Damage Transitional Committee Fails to Reach Consensus Ahead of COP28

(注2)Tensions soar over new fund for climate ‘loss and damage’ ahead of COP28
(注3)ルト大統領演説  
(注4)「損失と損害/世界の国会議員の誓い」キャンペーンのWebサイト

 

※写真は、アル・ジャベルCOP28議長
  

【ご案内】勉強会「気候正義と国際連帯税~秋の知識収穫祭」

10.28チラシ

 

学生たちが以下のミニ学習会を企画してくれました。なかなか気候変動問題と国際連帯税とが結びつかないできましたが、COP28で主要テーマとなる途上国・脆弱国への「損失と損害基金」問題--気候被害が直接食料危機や感染症等にも繋がってくる--がそれの架け橋になります。せっかくの機会ですので、興味のある方はご参加ください。

 

◇◇ミニ勉強会~秋の知識収穫祭◇◇

  気候正義と国際連帯税~新たな革新的資金調達の必要性     

 

◎日 時:10月28日(土)18:00~19:30
◎講 師:田中徹二氏(グローバル連帯税フォーラム)
◎参加方法:Zoomによるオンライン配信で行います。申し込みは、こちらのformよりお願いいたします。      
◎参加費:無料

 

今年の夏は「史上最高の暑さ」。日本や世界で異常気象が頻繁化。昨今話題となっている気候変動の問題とそれにともなう国際社会における動向について探ります。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」「人類は地獄の門を開けてしまった」と警告しています。

 

早くも来月末には第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)が開催されますが、同会議では途上国の気候被害に対する「損失と損害」基金が重要なテーマとなり、それは「気候正義」の要求です。その基金立ち上げで期待されているのが、従来のODA(政府開発援助)資金や民間資金ではなく「革新的資金調達」です。このメカニズムには国際連帯税が含まれます。

 

本年7月7日、グローバル連帯税フォーラムと横浜市大THEsの主催で「気候危機とグローバルサウス 国際連帯税は未来を救えるのか?」講演・討論会を行いましたが、引き続き次のようにミニ学習会を開催します。

 

みなさんにとって、あらゆる知識の収穫ができる会になればと願っております。関心のある方は、ぜひご参加ください。

 

損失・損害基金:世界のカトリック系NGO、世界的な署名活動を開始!

カトリック系

 

来月末からUAEのアブダビでCOP28(気候変動枠組条約締約国会議)が開催されます。主要議題は、CO2削減等の実施レビューを行う第1回グローバル・ストックテイク(GST)、並びにCOP27で合意された「損失・損害基金」の立ち上げ、その他です。

 

気候変動、温暖化といえば、私たちはまずそれを防ぐためにCO2削減をどうするかと考えがちですが、しかしその被害が世界全体で一様に現れているのではなく、CO2をほとんど排出せず温暖化に寄与していない途上国や気候脆弱国により酷く現れています。大洪水や大干ばつ、海水面上昇による国土喪失に襲われ、食料危機・飢餓、マラリアやコレラ等の感染症等に見舞われています。

 

被害の原因を作った方が被害が少なく、原因を作っていない方が被害が大きいというのは明らかにジャステス(衡平・公正)なあり方ではありません。このことから「気候正義」の考え方が広がってきました。COP・締約国会議においても2021年グラスゴー会合で言われるようになりました。かくして損失と損害への資金提供は、先進国としての「責任と補償」と位置付けることができると思います。

 

こうしたことから、損失と損害基金の立ち上げにつき、世界的に様々な運動が起きています。先にアフリカの気候正義団体や南北のアクティビストによる「損失と損害/世界の国会議員の誓い」キャンペーンを紹介しましたが、今回は世界のカトリック系NGOの署名活動を紹介します。経過は次のようです。

 

「2023年6月…損失と被害に関する会議が行われ、行動を起こすことを決めました。したがって、カトリック団体のグループである《国際カリタス、SCIAF、CIDSおよびラウダート・シ運動》(注)が、COP28で世界の指導者たちに届けられるよう、世界中のあらゆる宗教の指導者に損失と損害に関する行動への支持を示す(共同)声明を発表し、その署名を求めます」

 

Loss and Damage: The Moral Case for Action(損失と損害:行動のための道徳的課題)

※世界中の50人以上の信仰指導者の賛同を得た声明を発表!

 

 なお、10月12日に以下の170団体が、損失と損害に対する資金提供を求める共同呼びかけを発表したとのことです。

 

170以上の人道、気候、開発団体が損失・損害基金への資金拠出を拡大するよう要求

 

このように、損失と損害基金のための国会議員キャンペーンや署名・声明活動が、NGO、宗教団体、専門家などで行われています。こうした運動がシナジーして大きな運動になるとよいですね。グローバル連帯税フォーラムは主に基金の革新的資金メカニズムにフォーカスしつつ、国会議員へアプローチしてみようと考えています。

 

(注)

◎国際カリタス(英: Caritas Internationalis):165カ国・地域の組織が加盟

 ⇒カリタスジャパンはこちら  

◎CIDSE(Coopération internationale pour le développement et la solidarité=開発と連帯のための国際協力):ヨーロッパと北米から18の会員組織が参加。120か国・地域で活動。

 ⇒同団体はこれまで金融取引税や国際連帯税についても積極的に発言していました。

  金融取引税(FTT)に関する欧州カトリック指導者の声 

◎laudato si movimento(ラウダート・シ運動):回勅「ラウダート・シ(あなたは讃えられますように!)」での教皇フランシスコの呼びかけに応えるために協力したいと願う、さまざまなカトリックの国際的なネットワーク

◎SCIAF(Scottish Catholic International Aid Fund):スコットランドのカトリック国際援助基金

「損失と損害/世界の国会議員の誓い」キャンペーン、革新的資金調達への期待

L&Dロゴ

 

今年の夏はとにかく暑く、世界的にも異常気象が頻発しました。11月末日から第28回気候変動枠組締約国会議(COP28)が開催されますが、その主要議題の一つが「損失と損害」基金の立ち上げです。その基金につき、国際社会では革新的資金メカニズムの期待が高まっています。COP開催を前に「損失と損害に関する世界の国会議員の誓い」キャンペーンが立ち上がりしたので紹介します。日本でも国会議員に対してアプローチできればと考えています。

 

1、今年平均1.2℃上昇で「史上最高の暑さ」、1.5℃や2.4℃上昇となると…

 

9月14日米航空宇宙局(NASA)は今夏が「史上最高の暑さ」を記録したと発表し、この温暖化は世界中で山火事や熱波と豪雨の要因となった説明しています(注1)。が、これだけの暑さにもかかわらず、産業革命以前から地球の平均気温がどのくらい上昇したかと言えば、IEA(国際エネルギー機関)は1.1℃、英国気象庁は1.08~1.32℃(推定中央値1.20℃)と報告しています。

 

ところで、2015年のCOP21「パリ協定」では1.5℃上昇を上限努力すると決め、国際社会はそれを目標にしているわけですが、しかし1.5℃で止まったとしても今年の暑さ(+様々な気候災害)の比ではなくなることは明らかです。まして、UNEP(国連環境計画)の昨年10月27日の報告書を読むと空恐ろしくなります。「世界の今の気候変動対策では今世紀末までに産業革命前比で2.8度、各国が約束した温室効果ガス削減目標を達成しても約2.5度、それぞれ上昇してしまう」(注2)、と。いずれにせよ、コロナ・パンデミックに続き、国際社会は人類的危機を迎えていることになります。

 

2、「損失と損害」基金と「気候正義(Climate Justice)」

 

気候変動対策には、大きく分けて「緩和策」と「適応策」があります。前者は、CO2など温室効果ガスを削減する政策であり、後者は高温に強い作物育成や避警報装置設置など温暖化に適応していく政策です。そしてこの両者に加えて、昨年のCOP27で「損失と損害(L&D)策」が加わりました。

 

L&Dについては、30年前から温暖化による海水面上昇によって沈んでしまう小島嶼途上国より提案されてきましたが、先進国側はそれが(CO2排出の歴史的な)「責任と補償」に繋がってしまうことからずっと抵抗してきました。しかし、このL&Dを裏付ける「気候正義」という考え方が、2021年のCOP26で出されるという経緯もあり、先進国側も認めざるを得ませんでした。

 

事務総長②

 

気候正義につき、アントニオ・グテーレス国連事務総長は先の国連総会冒頭で次のように述べています。「私たちは…過熱する地球に取り組む決意を固めなければなりません。…温室効果ガスの排出量を削減し、この危機の原因に最も貢献していないにもかかわらず、最も高い代償を払っている人々のために気候正義を確保することです。…G20諸国は温室効果ガス排出量の80%を占めています。彼らが主導しなければならない。」(注3)

 

気候変動に関する主要問題として、温室効果ガスを歴史的にも大量に排出し気候危機を招いている先進国等と、その悪影響をもろに受けて大きな負担を強いられている途上国・脆弱国との格差であり、その格差を是正していくのが気候正義です。実際、小島嶼途上国のCO2排出量は世界全体の排出量のわずか1.1%に過ぎませんが、海水面上昇で国土を失いつつあります。また、約14億人(世界人口の17%)の人口を持ち大干ばつや洪水などに見舞われているアフリカのCO2排出量は4%未満です。

 

3、期待される革新的資金調達:ルト大統領、一般演説で金融取引税等を主張

 

L&D基金の運用はこの11月から始まるCOP28で確立することになりますので、これまで3回の「移行委員会」を行い、さらに9月22日には国連で閣僚会議を開催してきました。ところが、ここでも高所得国(先進国等)と低所得国(途上国等)の対立がいぜんとして続いています。とくに「誰が資金を拠出し、誰が資金を受け取るべきか」という本質的なところで決着ができていません。

 

22日の閣僚会議での発言を見ますと、低所得国のみならず高所得国からも「革新的資金メカニズム」への期待が述べられています。実際、高所得国では自国財政に余裕がなくODA等の公的資金の拠出が困難なことから、同メカニズムに期待するのでしょう。しかし、その中身についてはアイルランドが「航空・海運ならびに化石燃料会社への課税」を主張したのみでした(注4)。

 

ルト大統領

 

一方、国連総会の一般討論演説でケニアのウィリアム・ルト大統領は、開発と気候危機に対処するため先のアフリカ気候サミットで挙げたナイロビ宣言を踏まえ、国際金融システムの改革とグローバル資金調達を訴えました。後者についてはグローバル炭素税(航空・海上輸送、化石燃料取引)とグローバル金融取引税を挙げおり、大規模な資金調達にあたっては金融取引税が有効と力説しています(注5)。

 

気候変動枠組み条約ならびにパリ協定では、途上国への資金供与につき「新規かつ追加的な」資金で行うべきとしているが、これは既存のODAではなく革新的資金調達のことを意味しているはずです。しかし、先進国側は民間資金を利用・動員することで新規&追加資金としてきました。ところが、民間資金はリターンの問題がありますので、貧困国・脆弱国には向かわないという根本的問題を抱えています。

 

以上から、「L&D」基金は公的資金で、かつグローバル炭素税や金融取引税などのグローバル・タックスによる新規の資金でなければならないこと、このことが必須条件になると思います。

 

4、「損失と損害に関する世界の国会議員の誓い」キャンペーンが立ち上がる

 

今年の地球「沸騰時代」を経験し、我が国の被害でもたいへんでしたが、途上国・脆弱国においては国土の3分の1が沈んだ昨年のパキスタンでの大洪水に見られるように、その被害、したがって損失はケタが違っています。同国においては直接生命と生活が危機に見舞われましたが、その後もマラリアやコレラ等の感染症や食料危機が広がり、同国の経済が立ち行かなくなっています。

 

こうした損失と損害をもろに受けているのがCO2 排出に僅かしか関与していない途上国・脆弱国ですから、「気候正義」を実現するにはCOP28での基金の設立・運営が成功することが何より大切だと思います。

 

そういうなかで、「損失・損害に関する世界の国会議員の誓い」キャンペーンが立ち上がりました。呼びかけは、ルワンダを拠点に南と北の専門家、活動家などで構成されるThe Loss and Damage Collaboration (L&DC)とアフリカ全大陸51か国の1,000 以上の組織からなるコンソーシアムであるPan-African Climate Justice Alliance(PACJA)です。

 

「COP28に先立ち、損失と損害に取り組む行動への支持を世界中の国会議員や立法関係者に呼びかけ、私たち全員が共にこの問題に取り組み、最前線にいる人々、特に最貧困層を気候変動の最悪の影響から守るために、私たち一人ひとりが果たすべき役割があることを世界に示そう」と呼びかけ、次の4項目につき各国の国会議員のみなさんに誓っていただくことを要請しています。

 

UNFCCC 締約国の注目のために

 

私たち、グローバルノースおよびグローバルサウスの国会議員は、損失と損害が世界中の地域社会に与える影響に深い懸念を抱いている。

 

私たちは、各国政府を支援し、以下を実施するために行動することを誓う:

 

1. COP28において、パリ協定およびUNFCCCの衡平性の原則に基づき、あらゆる損失・損害のニーズに対応する救済のための十分な資金が確保された、目的に合った損失・損害基金を運用すること。

 

2. 損失と損害に対応するため、ローン(有償)ではなく、グラント(無償)という形で重要な新規追加資金を調達し、汚染者負担の原則を法に盛り込むとともに、排出削減を推進するための法整備を強化すること。

 

3. 損失と損害に対処するための資金が、可能な限り迅速に必要とする地域社会に行き渡り、地域主導で、ジェンダーに対応し、信頼できるものとなるよう、政策的枠組みを導入すること。

 

4. 気温1.5℃の目標に沿った排出量削減のための政策と法律の実施を早急に導入し、監視すること。

 

私たちは、気候変動の影響に直面している世界中の人々と連帯し、COP28において、損失・損害基金があらゆるニーズに十分に応えられるよう、私たちそれぞれの立場を活かして、その完全かつ効果的な運用を支持します。

 

(注1)NASA、23年夏は「史上最高の暑さ」 異常気象の要因に
(注2)Emissions Gap Report 2022
(注3)2023年9月19日国連総会でのグテーレス事務総長の演説(全文)
(注4)L&Dに関する閣僚会議での各国の発言は、Loss and Damage Collaboration の「X」より。またレポートは、こちら。  
(注5)ルト・ケニア大統領の演説   
(注6)「世界の国会議員の誓い」のWebサイト

国際連帯税(金融取引税)の今:ブレーキかかる日本、動き出す世界

1、日本外務省、4年連続して国際連帯税の新設要望を断念

 

政府関係の24年度税制改正の要望が8月末に締め切られましたが、外務省は私たちの要求にもかかわらず、今年度も国際連帯税の新設要望を提出しませんでした。これで2021年度税制改正要望以降4年連続して断念したことになります。

 

一昨日(9月9日)「コラム:中ロと高まる緊張、見直されるG7 課題は途上国支援の本気度」というロイター通信記事が目に留まりました。コロナ・ワクチンを迅速に途上国へ供給しなかったことや気候資金1000億ドルの拠出の公約破り等など「G7による近年の途上国支援の実績も乏しい」と記事は述べていますが、グローバルサウスはG7を心から信用していないということでしょう。とくにコロナ・ワクチンの先進国の買い占めは酷いもので、それがために自国ワクチンを供給した中国が途上国への影響を高めたことは記憶に新しいところです。

 

ともあれ、グローバルサウスとの連携がキーポイントと言うなら、G7は本気度を見せないとならないでしょう。それを担保するにはまず資金です(含む、債務帳消し)。しかし、G7の中で日本政府に至っては、圧倒的に借金財政に陥っており、これ以上ODA(開発支援資金)を増やせる状況ではありません。ならばG7広島やG20大阪サミットの首脳コミュニケで謳われている革新的資金調達メカニズムを真剣に考えるべきではないでしょうか。外務省のみならず政府全体が途上国支援に対して本気度を見せていないことは実に遺憾と言わねばなりません。

 

2、世界で動きはじめているグローバルタックス(金融取引税等)

 

1)第1回アフリカ気候サミット>新たなグローバルタックス呼びかけも

 

9月4-6日、ケニアのルト大統領とアフリカ連合主催で開催されたアフリカ気候サミットは、ナイロビ宣言で締めくくられました。世界のメディアは「気候変動対策に資金を提供するための新たなグローバル・タックスを呼びかけ」(ロイター通信 注1)、「より貧しい国々でのグリーン・エネルギーのためにグローバルな炭素税を支持」(FT)と報じました。

 

実は、ルト大統領等は気候危機にあたっては南も北もない、援助よりは投資が必要ということで、炭素クレジットなどの市場ベースの投資を強調していましたが、「最終宣言では主要汚染者と世界的金融機関がより多くの資源を投入して貧困国を支援し、手ごろな金利で借り入れを容易にするよう求める要求が最も強調された」(ロイター通信ほか)形になりました。

 

その上で、ナイロビ宣言では、世界の指導者に対して「化石燃料取引、海上輸送、航空に対する炭素税を含むグローバル炭素税制の提案に賛同し、さらにグローバル金融取引税によって強化される可能性がある」と促しました。

 

このような宣言内容がアフリカ諸国の総意となり、来る11月のUAEでのCOP28に提案されていくことになります。

 

2)気候「損失と損害(L&D)」基金での議論>多様な資金源を

 

COP28での主要議題のひとつがL&D基金の具体的な内容(誰が払い誰が受取る等の制度設計、資金源など)を取り決めることで、そのために移行委員会で鋭意議論しています。資金源の議論として、一部からグローバル・タックスの提案がなされています。フランスは次のように提案しています(南太平洋の島国バヌアツも同じような革新的な資金調達案を提案)。

 

「革新的な資金源を含む多様な資金源を受け入れることができるよう、基金を設計すべきである。…補助金ベースの資金調達から、ブレンデッド・ファイナンス・メカニズムや、グローバル化の流れに対する革新的な課税手段、例えば、航空・海上輸送や化石燃料の貿易・生産に対する課税、金融取引税、国際カーボンプライシングなどによる資金調達が考えられる」(注2)。

 

途上国・脆弱国の当面のL&D基金の要求として1000億ドル/年を挙げていますが、これまで先進国は長期気候資金1000億ドルを拠出しなければなりませんので(2025年まで)、併せて2000億ドルになりますから、これはこれまでのような資金拠出ではまったく間に合わず、思い切った革新的な資金調達方法、すなわち金融取引税など国際連帯税実施が必要となってくるのではないでしょうか。

 

3)欧州連合-欧州議会>9月13日欧州委委員長の一般教書演説に注目を

 

欧州はコロナ復興基金を含む2021~2027年中期予算を実施中ですが、ウクライナ戦争やインフレ、そして復興基金の債券の金利上昇等で、予算不足とになり修正をすることになりました。そこで欧州議会は独自財源として金融取引税の(前倒し)を軸に暗号資産への課税や法人税の一部なども含む決議案を採択しました。ところが、欧州委員会は6月に金融取引税を捨象し、国内の企業の利益分を加盟国から拠出させるという、(企業が拠出するのではない変則的?)法人税の一部拠出という修正案を提案しました。

 

こうした状況の中、ポルトガル、フランス、ドイツのEU担当大臣(&副大臣)がEU予算は課題に対してあまりにも少ないということで、未来のための税金や賦課金による「独自の資源」を備えた、より連邦的なEUを求める共同見解をメディアに発表しています。当然そこでは金融取引税も有力な選択肢となっています(注3)。

 

9月13日に欧州議会でフォン・デア・ライエン欧州委委員長が一般教書演説を行う予定で、ここでの発言が注目されます(ただし、彼女はいつも金融取引への課税について話すことを拒否しているとのこと)。

 

4)G20ニューデリー・サミット>シンクタンクGがFTTを提案

 

サミットは10日に閉幕しましたが、首脳宣言をざっと読むと金融取引税等のグローバルタックスの表現はありません(一部革新的資金源の記述あり)。エンゲージメントグループのシンクタンクグループが金融取引税を提案していましたが残念です。Think20 India Communiquéは最初の「マクロ経済、貿易そして暮らし」の章で次のように述べています。

 

「G20は、課税ベースを合理化するための政策を検討し、(不平等の削減と消費型経済の成長という)…文脈において、国際金融取引税(FTT)の役割も、総合的な費用便益分析を通じて評価されるべきである。FTTを使用する場合は、金融取引への悪影響を最小限に抑え、税収増につながるように設計すべきでる」(注4)。

 

(注1)

African leaders call for new global taxes to fund climate change action

(注2)

Submission from France to the Transisitonnal committee

(注3)

A European Union fit for the future

France, Germany, Portugal pitch EU levies and Ukraine ‘Marshall plan’

(注4)Communiqué 

 

G20サミット:BUグローバル開発政策センターが国際金融取引税を提案

G20インドのロゴ - コピー

コロナ・パンデミックや気候・食料危機、そして債務危機等というポリクライシスにあって、途上国への貧困・気候に関する資金需要は膨大なものになっており、9月9-10日インドのニューデリーで開催されるG20サミットでも新興・途上国への支援が主要課題の一つとなります(7月14日付ブルームバーグ)。

 

この支援につき、インドで著名なエコノミストのナゲシュ・クマール(Nagesh Kumar)とボストン大学(BU) Global Development Policy Center所長のケビン・P・ギャラガー(Kevin P. Gallagher)の両氏が、『G20における国際金融取引税(IFTT)議題の復活』と題した政策ブリーフで展開しています。これがG20のエンゲージメントグループのT20(シンクタンク20)に提出されました(*)。

 

この政策ブリーフの概要がセンターのWebサイトに掲載されていますので紹介します。政策ブリーフについては後ほど報告します。

 

 

G20における国際金融取引税議題の復活 (**)

 

世界的な危機の中で、実質的な気候変動対策と貧困緩和の必要性がより緊急性を増すなか、途上国も先進国も、これらの問題を和らげるために設計されたメカニズムを果たすことができていません。国連の2030年持続可能な開発目標(SDGs)の達成と気候変動対策は、グリーンな移行を確実にし、コミュニティを貧困から救い出すために必要ですが、それらを達成するには驚くべき額の外部資金が必要であり、国際社会はその支払いが困難であると感じています。厳しい予算と政府開発援助(ODA)の不足を考慮すると、気候変動対策とSDGsのために新しく革新的な資金源が必要です。

 

Nagesh Kumar氏とKevin P. Gallagher氏は、新しいThink20(T20)政策ブリーフの中で 、G20(G20)がSDGs達成と気候変動対策のための新たな収入源として、外国為替取引に対する少額の課税からなる国際金融取引税(IFTT)を導入することを提案しています。

 

著者らの試算によれば、非常にわずかなレートであっても、IFTT は ODA の年間フローの 3.5 倍に相当する年間収益を生み出す可能性がある、としています。IFTTは、外国為替投機筋を抑制しながら、途上国のSDGsや気候変動対策目標を支援できる新たな恒久的な収入源として機能する可能性があります。その結果、IFTT は金融市場のボラティリティ(価格変動率)を抑制し、有害な投機とその後の好不況サイクルを緩和する機能を生み出します。

 

新型コロナウイルス感染症のパンデミック、ロシアのウクライナ戦争によって引き起こされたインフレスパイラル、債務危機の複合的な影響により、先進国と途上国の両方で予算が逼迫している。さらに、無制限の外国為替取引は市場のボラティリティを助長し、国際金融システムを脅かしています。クマール氏とギャラガー氏は、IFTTには気候変動対策とSDGsを達成するための財源を創出しながらボラティリティを抑制する独自の能力があり、G20から生まれる画期的な多国間イニシアチブとなる可能性があると主張しています。

 

*Nagesh Kumar:ナゲシュ・クマールは、ボストン大学グローバル開発政策センターのグローバル経済ガバナンス・イニシアチブの非居住上級研究員。また、ニューデリーに本拠を置く公的資金による政策シンクタンクである産業開発研究所(ISID)の所長兼最高経営責任者。

 

*Kevin P. Gallagher:ケビン P. ギャラガー博士は、ボストン大学グローバル開発政策センター所長。また、ボストン大学フレデリック S. パーディー グローバル スタディーズ スクールのグローバル開発政策教授。

 

(*)Reviving the International Financial Transactions Tax (IFTT) Agenda for the G20
  
(**)Reviving the International Financial Transactions Tax Agenda for the G20

 

国際連帯税要望の復活を!林外務大臣への手紙

 

【2019年8月29日付朝日新聞】

    【2019年8月29日付朝日新聞より】

 

 

8月末は、24年度予算の概算要求が各省庁から上がるとともに、税制改正要望も提出する時期です。従いまして、国際連帯税についても実現に至るには、まず外務省から新設要望として提出してもらうことが必要となります(閣法となる場合)。

 

こうしたタイムテーブルを射程に入れ、私たちは昨年12月に林大臣にお会いするとともに、5月G7大阪サミットに際し要望書を提出し、8月上旬に「令和6年度税制改正での国際連帯税要望の復活をお願いします」という手紙を出しました。現在この手紙をもとに外務省担当者との話し合いを進めつつあるところです。

 

さて、この手紙の要望は次の2点です。

 

1)日本外務省は令和6年度(2024年度)税制改正にあたり国際連帯税要望を復活させること

2)国際課税方式による開発資金調達方法について有識者会議を設置すること

 

外務省は2009年より2019年まで国際連帯税の新設要望を出していましたが、2020年コロナ・パンデミックを機に要望提出をやめてしまいました。19年に外務省内に作られた「SDGs達成のための新たな資金を考える有識者懇談会」も当初国際課税について議論することだったのが、コロナ・パンデミックを機に民間資金の活用の方へと捻じ曲げられた、という経緯があります。

 

要は、債務危機を含め危機に陥っている貧困国・脆弱国を最大限支援するための開発・気候資金調達を国内外で図るという意思を日本政府が持つか、どうかだと思います。かつて「国際連帯税創設を求める議員連盟」の会長も務めていた林芳正外務大臣は最大限支援のために尽力していただければと願うところです。

 

◎林外務大臣への手紙は、こちらからお読みください。

 

 

ケニア・ルト大統領、新しい気候・開発資金創設に向けグリーン・バンクを提唱

6月のパリでの新グローバル金融協定に関するサミット(以下、パリ・サミット)で気候・開発資金調達に向け「グリーン・バンク」創設を提案するなど、一躍名を挙げたのがケニアのウィリアム・ルト大統領(以下、大統領)です。同大統領がサミット終了後フィナンシャル・タイムズ(FT)にロングインタビューを受け、そのもようが8月10日付電子版に掲載されましたので、紹介します。

 

インタビューのタイトルは、「ケニアのウィリアム・ルト大統領:“私たちは負債から逃げているわけではない”」というものですが、以下要点を列挙してみます。

 

1)大統領は「今急務なのは、緊急流動性、債務救済―多くの国は借金をする余地がないため―、そして気候変動『資金調達』」と述べていまして、多くのグローバル・サウス(GS)の声を代表していました。つまり、債務救済や開発資金援助のためのIMF・SDRの利用と世界銀行・多国間開発銀行改革という点ではそうですが、ただ「気候変動に関するグローバルな金融システム」の創設という点で他のGSの指導者とは違っています。

 

2)そのグローバルな金融システムとは、IMFや世界銀行という既存の金融アーキテクチャーとは違う「(グローバル)グリーン・バンク」の創設です。前者は、「国益と株主の利益の人質」になっており気候変動問題に対処できないと述べています(株主とは主要先進国ですね)。では、気候変動に対処するにはどうするか? どの国にも株主にも左右されない新しい資金とそのメカニズムが必要で、「すでに提案されている『税金と課徴金(tax and levy)』構想の中に見出すことができる」と述べています。

 

3)その『税金と課徴金』構想と言いますと、それは既にいろいろ提案されていたものであり、具体的には「炭素税、グローバル金融取引税、海運税、航空[賦課金]」等と述べています。そしてこれらの税から「1.5兆ドルから2兆ドルを調達し…[その資金があれば] 2050 年までにネットゼロへの道を歩むことができます」と述べています。

 

4)FTインタビュアーはこの構想を支持する西側諸国はあるのかとの問いに対し、ルト氏はIMFが炭素税を提案していることや欧州議会が金融取引税を提案していること、またCOP28のチームとは話し合っていること等を挙げ、しかし「彼ら(西側諸国)は世界銀行とIMFの株主です。彼らは権力を支配し続けたいと考えています。だから戦いになるでしょうが、私たちにはその準備ができています(バックにはアフリカ大陸全体が存在している)」と言い切っています。

 

5)9月4日からはじまる(6日まで)第1回アフリカ気候サミット(*)で、先のパリ・サミットで合意された「国際課税を通じた新たな財源の可能性を検討するタスクフォース」が開催されることになりますが、そこでの議論がその戦いの第1ラウンドとなるはずです。こうした財源の創設につき、本来なら、フランスがもともと組織していた「開発のための資金調達に関するリーディング・グループ」(2006年フランスの提案で創設)で議論すべきでした。2019年には日本政府が同グループの議長国を務めていたのです。しかし、マクロン大統領が、歴代のシラク、サルコジ、オランド政権下で続いていた同グループを結果的に潰してしまったのです。

 

6)とはいえ、ケニアの国内情勢を見ますと、東アフリカの大干ばつの影響(350万人が飢餓に直面し250万頭の家畜を喪失)や公的債務も700億ドルに上るなど厳しい状況があります。そもそも「例えばフランスはGDPに占める歳入の割合が45%です。ケニアは14%以下です」と大統領は述べていますが、これだけ税収が少ないと、とうてい十分に教育や保健医療等へ予算配分を行うことはできないでしょう。それで昨年9月に大統領となったルト氏は補助金の廃止や増税(歳入割合を18%に増やしたい)を行っているようですが、それが国民の反発を買っているようです

 

7)決して経済的に余裕があるとは言えないケニアの大統領が世界に向かって気候と開発のための新しい資金の創設を呼びかけています。一方、ケニアよりははるかに余裕があり、上記リーディング・グループという組織を持っていたフランス・マクロン大統領がルト大統領の提案に対し、 “comme ci, comme ça”(まあ、まあ?)と言ってお茶を濁している姿勢を見ていますと、失望せざるを得ません。とはいえ、アフリカ気候サミットの成功を祈るとともに、日本政府に対して国際連帯税による途上国支援を訴えていきたいと思っています。

 

(*)アフリカ気候サミットのWebサイト: https://africaclimatesummit.org/ 

 

以下、FTのインタビュー記事の一部を紹介します。

 

 

ケニアのウィリアム・ルト大統領:「私たちは負債から逃げているわけではない」

Kenya’s William Ruto: ‘We are not running away from our debt’ 

 

東アフリカの国家大統領、世界的なグリーン・バンクを呼びかけ、返済一時停止が開発資金の助けになると語る

 

ケニアのウィリアム・ルト大統領は昨年9月の就任以来、迫り来る債務不履行リスクに対処し、中国を含む債権者への高額な月々の支払いを抑制するため、国の債務削減に注力してきた。

 

同時に、ケニアは気温の上昇と降雨量の減少の影響に取り組んでおり、今年初めにアフリカの角で発生した壊滅的な干ばつは、気候変動によってその可能性が100倍高まったと科学者たちは指摘している。

 

途上国からの債務返済は、気候変動で最も大きな打撃を受けている国々への支援と並行して行われなければならないというルト氏の主張は、国際フォーラムで定着しており、世界銀行とIMFの両者は、これらの共同課題に対処するために資金を解放するよう圧力を受けている。

 

世界金融システムの改革について話し合うために6月に世界の首脳がパリで会合する中、モラル・マネー記者のケンザ・ブライアン氏と気候特派員のアトラクタ・ムーニー氏はルト氏に話を聞いた。

 

ケンザ・ブライアン:特別引出権[IMFが創設した準備資産=SDR]と一時停止条項(国が災害に見舞われた際に融資の返済を一時的に停止する)について合意に達することについて、どの程度楽観的ですか?

 

William Ruto:私たちの野心は、SDR だけではありません。私たちの立場は、アフリカやグローバル・サウス、途上国の私たちが開発資源に緊急かつ大規模にアクセスできるようにする、より大きな協定を打ち出すことができるはずだ、というものです。私たちの立場は、多国間開発銀行の改革が必要だということです。

 

今急務なのは、緊急流動性、債務救済―多くの国は借金をする余地がないため―、そして気候変動 [資金調達]です。ケニアのように洪水や干ばつのせいで、債務の支払いや社会サービスの提供、人々の食料に資源を流用しています。私たちは[深刻な飢餓に直面している]350万人の人々を養わなければなりません。私たちは250万頭の家畜を失い、危機的な状況にあります。

 

KB:最近の干ばつで?

 

WR:ええ、昨年もそうでした。だから私たちが今必要なのは、 [新型コロナウイルスのパンデミックの際に]SDRのために6,500億ドルを拠出したのと同じ方法で、 [開発と気候変動対策のために]少なくとも10年間は毎年5,000億ドルを拠出することで多国間金融機関と合意することです。

 

そして、私たちはそのお金を私たちに与えられることさえ望んでいません。私たちはそのお金を、私たちが支払うはずの債務の清算に使ってほしいと考えています。そうすれば、債務を返済する代わりに、私たちが抱えている資源―現在債務返済のために現在使っている資源―を緩和や再生可能エネルギーのために使えるようになります。私たちは同意することもできます。10年間この [債務]返済を停止させましょう。

 

KB: [国際社会からの約束による]5,000億ドルは、基本的には債務帳消しか債務一時停止になるのでしょうか?

 

WR:はい。10年間休止します。そして私たちは支払います。私たちは債務から逃げているわけではありません。

 

アトラクタ・ムーニー:そして、その一時停止によって解放されたお金は、開発や気候変動緩和に使われるのでしょうか?

 

WR:開発のため、そしてある程度の気候緩和のためです。

 

グリーンエネルギーへの投資を魅力的なものにする方法は、このグリーン バンクを創設することです。それが化石燃料から移行する唯一の方法です

 

気候変動に関して、私たちはブレトンウッズ[世界銀行とIMFを含む通貨管理システム]の外、多国間開発銀行の外で、グローバルなメカニズムに合意できることを望んでいます。

 

なぜなら、多国間開発銀行のアーキテクチャは別のもののために構築されているからです。

 

彼らは気候変動という課題に対処できません。彼らは国益と株主の利益の人質です。

 

世界銀行とIMFは株主がいるビジネスです。それらが作成されたとき[1944年]、ケニアは存在していませんでした。そこには[創設メンバーとして]44カ国しかいませんでした。

 

気候変動に対処するには、株主によって制御されず、どの国の利益にも左右されない新しい金融メカニズムが必要です。[そして] 新しいお金が必要です。新しいお金はどうやって手に入れるのでしょうか? 私たちは、新たな資金はすでに提案されている[税金と課徴金]構想の中に見出すことができると提案しています。

 

IMFは炭素税を提案しましたよね? 私たちケニアでも、炭素税の負担分を支払う準備ができています。IMFは、炭素排出量1トンにつき25ドルとしています。

 

AM:たとえば、どの大規模な排出国と比較しても、ケニアではそれほど多くの炭素排出量は発生しません。

 

WR:はい、最も多く燃やした人が最も多くお金を払いましょう。

 

AM:あなたの言いたいことは理解できますが、それに中国を参加させることができると思いますか?

 

WR:それは世界的な合意であるべきです。なぜだめですか? なぜ中国を取り込めないなどと考えるのでしょうか? それは可能だと思います。

 

欧州議会は金融取引税をすでに可決しています。それはヨーロッパだけの問題であってはなりません。気候変動はヨーロッパの問題ではありません。金融取引税をグローバル化すべきです。ケニア[では]誰もが払うことを望んでいます。全員に払ってほしいと思っています。これは世界的な課題です。航空税…海事税。私たちは支払う準備ができております。

 

KB:アフリカ諸国はいかなる排出税からも除外されるべきだと言う人もいます。

 

WR:いいえ、支払いたいと思っています。私たちは排除されたくないのです。私たちもみんなが払っているのと同じくらいの金額を払いたいと思っています。それが[すべての国が平等に扱われるようにする]唯一の方法です。現在、私たちは世界銀行とIMFから借りているお金に対して8倍の金利を支払っています。私たちは、[気候変動に対処するために]8倍以上の費用を支払うという新たな状況に陥りたくありません。私たちは全員に平等に支払いたいと考えています。そして、彼らが私たちに多くのお金を払わせているのは、株主がいるからです。今度は株主になりたいと思っています。

 

KB:先ほどのラウンドテーブルで、あなたはおそらく損失と損害の話から離れようといういくつかの興味深い指摘をしました。[発展途上国への「損失と損害」資金の問題は長年論争が続いており、富裕国は産業活動によって引き起こされた気候変動に対する財政的責任を受け入れ、より貧しい国に財政支援を提供することに消極的である。しかし昨年、各国はエジプトで開催された国連COP27気候変動協議で損失被害基金を創設することに同意しました]。

 

WR:それは無駄な話です。損失や損害[資金]は決して実現しません。あなたの国に行くとき…もしあなたが今日[国民に]こう言ったら、『税金を払ってほしい。私はお金を集めて世界的な問題を解決しに行き

ます」 彼らは「私たちに関係あるのですか?」と尋ねるでしょう。

 

そして、国益と世界財が争った場合、常に国益が勝つでしょう。

 

それは時間の無駄です。そして、それが私たちを「あなたが原因でこれを引き起こしたのだから、あなたが支払わなければなりません」という有害な会話をする場所に私たちを連れて行くのを見たことがあるでしょう…私たちはそれを望んでいませんし、緊張も望んでいません。なぜなら、気候変動は北部の問題でも南部の問題でもないからです。

 

気候変動は地球規模の問題です。北も南と同様に問題に直面しており、排出者も排出者でない人々と同様に問題を抱えています。[新しいメカニズムの]解決策について合意しましょう。そして最後に統治構造、権力構造について合意しましょう。

 

KB: [新しいメカニズム] についてもう少し詳しく教えていただけますか。それは団体、組織、銀行でしょうか?

WR:そうですね、世界銀行が設立されたのと同じように、気候変動に対処する銀行を設立してはどうでしょうか?

 

AM:それで、世界的なグリーンバンクを作ればいいのですね?

 

WR:はい。私は[フランスのエマニュエル・]マクロン大統領と話をしていたとき、彼は「誰がこれらの税金を徴収するんだ?」と言っていました。そしてご存知のように、世界銀行と IMF が設立されたとき、そのような質問はなされませんでした。

 

AM:従来の金融アーキテクチャをバイパスして、何か新しいものを作りたいということですか?

 

WR:現在の伝統的な金融アーキテクチャでは気候変動を解決することはできません。そのために作られていないし、能力もありません。レガシー(遺産)の問題もあれば、官僚制の問題もあります。彼らはそれを理解していないだけです。

 

そして問題は、彼らは株主の人質だということです。私たちは、アメリカが主導権を握り、次の国が主導権を握り、誰が何を得るかを彼らが決めるような状況を望んでいません。だからこそ、私たちは株主ではないので、他の国よりも8倍も高いお金を払っているのです。今回、私たちは、自分たちの負担分を支払わなかったという理由で、自分たちがテーブルに着けないという状況は避けたいと言っているのです。

 

KB:これは世界的にどのフォーラムで作成できますか?

 

WR:ここは[ここパリ]のフォーラムです。私たちはここから出発し、その後アフリカ気候サミットのためにナイロビに行きます。私たちは気候変動野心サミットのため、[アントニオ・]グテーレス国連事務総長とともに国連総会に行きます。そしてCOP28[11月にドバイで開催予定の国連気候変動サミット]でこれを批准します。

 

AM:この件について COP28 チームと話しましたか?

 

WR:しました。彼らは100%一致しています。実際、COP28の[議長候補]はここに来ており、2日前にはナイロビにいました。

 

AM:スルタン・アル・ジャーベルと話し合いをしたんですね…

 

WRはい。これこそまさに私たちが必要としているものです。現在のIMFと世界銀行は3週間で44カ国が合意しました。80年経った今でも存在しています…だからそれは可能です。

 

KB:これを支持する世界の指導者と話したことがありますか?

 

WR:はい、[アフリカの]大陸全体がその背後にあります。私たちが探しているのは[税金や課徴金に関してまだ議論されていない]ものではありません。IMF自身も炭素税を提案しています。彼らは、少数の国[だけ]にお金を払ってもらいたいので、間違ったやり方をしているのです。私たちは化石燃料を購入しているのだから、購入した化石燃料に対して税金を支払いましょう。

 

KB:今日、西側諸国の指導者で銀行のアイデアを支持した人はいますか?

 

WR:彼らはどうやって支持するのでしょうか? 彼らは世界銀行とIMFの株主です。彼らは権力を支配し続けたいと考えています。だから戦いになるでしょうが、私たちにはその準備ができています。

 

KB:つまり、マクロンはそれを支持しなかったのですね…

 

WR:マクロンは…「まあまあ」。だって、彼らは私たちに「そうそう、少しずつ、少しずつね」といういつもの会話をしてほしいからです。どうして? なぜ少し会話したいのですか? 私たちは問題がどこにあるのかを知っています。

 

KB:それで、どうすれば彼らの考えを変えることができるでしょうか?

 

WR:彼らは考えを変えるでしょう。私たちは正しいので、彼らが私たちの主張を理解できないことを不可能にします。正しいことをすれば決して間違うことはありません。私たちは正しいです。彼らは私たちがグローバルな[解決策]を必要としていることを知っています。彼らの問題は、やり方に行き詰まっていることです。

 

WR:私たちは[パリ協定に基づいて各国が地球の気温上昇を制限することに合意した]2015年から[気候変動に関する取り組みに資金を提供するための]世界的な解決策を見つけようとしていますが、状況は改善していません。これからCOP28に行きます。今問われているのは、これらのCOP会議に出席して何の成果も得られなかったことで、私たちがどれだけの二酸化炭素排出量を[蓄積]してきたのかということです。

 

AM:では、伝統的なアーキテクチャーの改革についてはどうでしょうか?

 

WR: IMF と世界銀行の改革が必要です。すでに抱えている債務について協力できるようにする必要があります。しかし、[私たちが提案している]気候変動に関するグローバルな金融システムは、再生可能エネルギーに投資する必要があります。つまり、再生可能エネルギーを石炭よりも投資するのにはるかに魅力的なものにする必要があります。 [地球温暖化という]問題があるにもかかわらず、私たちは依然として[再生可能エネルギーよりも]化石燃料に多くの投資を行っています。そして私たちは皆、このままでは沈没することを知っています。その理由は、炭素燃料への投資が引き続き有利であり続けているからです。 グリーンエネルギーへの投資を魅力的なものにする方法は、[このグリーン バンク] を創設することです。それが化石燃料から脱却する唯一の方法なのです。

 

KB:そして、その資金はすべて税金から賄われるのでしょうか?

 

WR:それらの税金を使ってどれくらいの資金が集まるかご存じですか? 炭素税、グローバル金融取引税、海運税、航空[賦課金]から、1.5兆ドルから2兆ドルを調達します… [その資金があれば] 2050 年までにネットゼロへの道を歩むことができます。 [2015年のパリ協定]後、ヨーロッパは資金を投入したため、排出量は減少しました。OECD加盟国の[排出量]はすべて減少しました。しかし、世界のその他の国々では、排出量削減に投資する資金がないため、排出量は増加しました。

 

以下、省略

 

※写真は、パリ・サミットでのルト大統領とマクロン大統領

ユーチューブ版>7.7「国際連帯税は未来を救えるのか?」集い  

去る7月7日にグローバル連帯税フォーラムと横浜市立大学SDGs学生団体TEHsとの共催による「気候危機とグローバルサウス 国際連帯税は未来を救えるのか?」講演・討論会をユーチューブにアップしましたので、どうぞご覧ください。

 

◎接続URLhttps://youtu.be/4xQOH9mAXWA 

 

【動画のタイムライン】

1)明日香壽川教授・・・4分以降(パワポ資料はこちらから

2)儀同千弥さん・・・・34分50秒以降

3)田中徹二さん・・・・47分35秒以降(パワポ資料はこちらから

4)質疑応答・・・・・・1時間10分5秒以降

 

<質疑応答の一端>

・学生「環境問題に関する欧州と日本との若者の意識の違いについて」

・教授「例えば、フランスの国民的スポーツは何かと聞いたら、フランス人は何と答えると思いますか?」

・学生「サッカーでしょうか」

・教授「違います。国民的スポーツはデモだと答えます。それはどうしてかと言いますと…」(以下、省略)■■

【ご案内】途上国・新興国の債務問題を解決するためにー政府と市民社会との対話ー

「G7市民社会コアリション2023(C7経済WG)」と「SDGs市民社会ネットワーク 開発ユニット」との共催で、今日懸案の途上国・新興国の債務問題について政府との対話(学習会)を開催します(グローバル連帯税フォーラムはどちらにも参加しています)。コロナ禍や異常気象等により途上国での貧困や飢餓人口が増大する一方ですが、先のG20財務相会合では何ら債務問題の進展がありませんでした。由々しき事態といえましょう。関心のある方はどうぞご参加下さい。

 

 

【8/7開催】オンライン学習会:
途上国・新興国の債務問題を解決するためにー政府と市民社会との対話ー

 

新型コロナウイルスのパンデミック、ウクライナ戦争による食料不足や物価高騰、そして不安定な国際金融などの中で、これまで以上に途上国・新興国が抱える対外債務は膨れ上がっています。

 

世界銀行によると、2021年末の低・中所得国の対外債務残高は約9兆3,000億ドルと、2010年末の約4兆2,900億ドルから倍増しました。さらに物価高騰への対応として2022年3月に始まった米連邦準備制度理事会(FRB)による急速な利上げ(政策金利引き上げ)は、ドル建ての対外債務を多く抱える途上国に大きな打撃となっています。

 

すでにスリランカ、ガーナ、ザンビア、エチオピアをはじめ債務不履行(デフォルト)あるいはそのリスクに直面する国は多数あります。債務返済のため社会保障費や教育費を削減せざるを得ない国もあるなど、まさに債務問題が人々の生活―とりわけ貧困層や社会的に脆弱な人びとの暮らしに打撃を与えているのです。

 

債務問題については、IMF・世界銀行も喫緊の課題と位置づけており、5月に開催されたG7広島サミット首脳会合のコミュニケでは、「債務脆弱性に対処する緊急性を再確認」しました。また、G20では債務再編のための「G20共通枠組み」がすでに設置されています。しかし、これまでの経済・金融システムが生み出した構造の上に生じている債務問題は複雑であり、これらの対策が十分機能しているわけではありません。新たな貸し手として存在感を増す中国の存在も含め、課題は大きいと言えます。

 

国際市民社会からは、債務帳消しやグローバルサウスの立場からの債務再編などより根本的な対策の必要性が提起されています。このたび、主に日本で経済課題のアドボカシーを行う団体や開発分野で活動する団体、SDGs達成や貧困削減などに取り組む団体を中心に、公正で持続可能なグローバル経済を実現するためのステップとして、政府担当者をお招きし債務問題の現状と政策課題について対話を行います。ぜひご参加ください。

 

◆日時:2023年8月7日(月)15:00-16:30
◆形式:オンラインのみ
◆内容(予定):
 ◎主旨説明
   内田聖子(C7「公正な経済への移行」ワーキンググループ コーディネーター/NPO法人アジア太平洋資料センター共同代表)
 ◎日本政府担当者からのレクチャー
  「途上国・新興国の債務問題の現状と国際社会・日本政府の対応」(仮)
   真船貴史氏(財務省国際局開発政策課)
 ◎質疑応答
 ◎日本政府と市民社会組織との対話
  ※モデレーター:若林秀樹(JANIC理事/THINK Lobby所長)

 

◆お申込み方法:以下のURLから登録をお願いします。自動返信メールに接続URLが記載されています。自動返信メールが届かない場合はメールアドレスの入力ミスである可能性がありますので、今一度ご確認の上、再登録をお願いします。
 https://zoom.us/meeting/register/tJUvfu-vqjorG91EnA4OjBhgvoPxcP5NIfFU

◆共催:G7市民社会コアリション2023/一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク 開発ユニッ

◆お問い合わせ: G7市民社会コアリション2023共同事務局 堀内 <horiuchi@janic.org>