isl-forum-wp-author のすべての投稿

「G7市民社会コアリション2023」と国際キックイベントのお知らせ

C7引継ぎ

 

5月に広島において開催されるG7サミットに向け市民社会から提言を含むアクションのためのプラットフォームである「G7市民社会コアリション2023」の活動についての報告です。

 

グローバル連帯税フォーラムはこのコアリションに参加するとともに、C7(Civil7)の分野別ワーキンググループ(*)の「経済正義と変革(Economic Justice and Transformation)」に所属しています。日本政府はもとよりG7に対して「新しい開発資金である国際連帯税としての金融取引税を実施せよ」と要求していきます。

 

 

「G7市民社会コアリション2023」設立(昨年5月)と目的など

 

・活動目的:首脳会合および関連閣僚会合の成果文書である宣言文に、市民社会の声が反映され、2030アジェンダが掲げる「誰ひとり取り残さない社会」の実現に貢献できるよう、議長国である日本政府を含むG7各国政府に働きかけること

 

・参加:団体会員(102団体)、個人会員(56名)<23年1月12日現在>

・共同代表(2名):

  木内真理子(特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン 事務局長)

  松原裕樹(特定非営利活動法人ひろしまNPOセンター 専務理事・事務局長)

・共同事務所(2か所):

  特定非営利活動法人国際協力NGOセンター(JANIC)

  一般社団法人 SDGs市民社会ネットワーク

 

・Webサイト: https://g7-cso-coalition-japan-2023.mystrikingly.com/

 

 

1月24日 C7日本キックオフイベント 

 

G7市民社会コアリション2023は、G7の公式エンゲージメントグループ(**)の一つであるCivil7(C7)事務局として、1月24日にC7国際キックオフイベントを開催します。このイベントでは、C7運営委員会より、今年のC7についてご説明し、また6つ設置されるワーキンググループの詳細を関係者で議論します。ワーキンググループへの参加は、G7諸国の関係者に限定されず、国際的な市民社会に広く開放されています。

 

■日時:2023年1月24日 (火) 日本時間21:00-23:00

■場所:Zoomミーティング

■使用言語:英語

■Program (*Subject to change depending on the availability of speakers)

 21:00 Welcome and introductions/Speech on G7 Agenda (tbc)

 21.20 C7 process & ToR of Working Groups

 21.30 Presentation of the Working Groups by Coordinators

 22.00 Breakout Discussions among Working Groups

 22.25 Reporting back to the Plenary

 22.55 Next Steps and Closing Remarks

 23.00 End of the session

■登録フォーム:https://forms.gle/AsrgydjW5EParYmh9

 

(*)C7分野別ワーキンググループ

1)気候・エネルギー・環境正義(Climate, Energy and Environmental Justice)

2)経済正義と変革(Economic Justice and Transformation)

3)国際保健(Global Health)

4)人道支援と紛争(Humanitarian Assistance and Conflict)

5)開かれた力強い社会(Open and Resilient Societies)

6)核兵器廃絶(Nuclear Disarmament)

※    C7分野別ワーキンググループへの登録フォーム

https://civil7.org/get_involved/

 

(**)エンゲージメント・グループ

G7サミットに対して社会の様々なステークホルダーからの提言を行う「エンゲージメント・グループ」という枠組みが設置されています。ビジネス・コミュニティ(Business7)、市民社会組織(Civil7)、労働組合(Labour7)、科学(Science7)、シンクタンク(Think7)、女性(Women7)、若者(Youth7)の7つのエンゲージメント・グループが、政策提言書を作成し、独自の「サミット」を開催します。

「ワールドワイドFTTコール」イニシアチブ>金融取引に課税を!

汎アフリカ議会議長     ローレンス・津美穴

フォーチュン・チャルムビラ氏       ローレンス・トゥビアナ氏

 

●気候変動対策資金のため欧州・アフリカ等でFTT要求署名行われる

 

先にCOP27での「損失と被害(L&D)」など気候変動対策資金創設のため、ピエール・ラルートゥルー欧州議会議員、フォーチュン・チャルムビラ汎アフリカ議会議長、ローレンス・トゥビアナ欧州気候基金理事長などが金融取引税(FTT:Financial Transaction Tax)の創設を訴える書簡を仏紙『ルモンド』に発表したことをお知らせしました(注1)。

 

その後、前記の3人を含む10人による呼びかけで、「気候変動対策資金を調達するために、今こそ投機への課税を」という署名活動が行われました(注2 10人の名前は下記に)。この署名には、欧州連合11ヵ国の欧州議会議員ならびにアフリカ、アジア、ラテンアメリカの 20 カ国の国会議員の計65 人が名を連ねました。ほかに気候科学者、NGO、政治家、宗教者なども署名しています。宗教者と言えば、上智大学の副学長でもあったジャン=クロード・オロリッシュ枢機卿兼ルクセンブルク大司教も署名しています。

 

署名内容は次の通りです。

 *グローバル・サウス(南の国々)への気候変動による損失と     損害等に対処するために、圧倒的に足りない「お金」が問題の核心であること

 *その資金調達のために過剰なほどの水準にある金融取引への課税が有効であること

 *欧州レベルで0.1%という税率で570億ユーロの税収が得られ、その収益の大部分を欧州とアフリカにおける気候変動対策に直接振り向けること

 

●「ワールドワイドFTTコール」イニシアチブと6月パリ気候資金サミット

 

この署名活動は、ラルートゥルー議員を軸に始められましたが、同議員側は「ワールドワイドFTTコール」イニシアチブとして全欧州規模の取り組みにすべく、英Stamp Out Povertyのデービット・ヒルマン氏らの国際FTT会合グループと連絡を取りました。結果、同グループとしてもこのイニシアチブ(当面署名活動)を全力で推進していくことになりました。

 

次の目標は、6月仏マクロン大統領とバルバドスのミア・モトリー首相との共催によりパリで開催される「最も脆弱な国々への資金メカニズムのための気候サミット」(仮称)です。情報によれば、フランスは現在、収入源についての答えを持っておらず、マクロン大統領は資金調達方法を探しており、アイデアを受け入れる姿勢を見せているとのことで、FTTにとって重要な機会となることです。そして、同国はL&Dとエネルギー転換という課題に対応するために気候担当大使という新しい役職を設けたとのことです。

 

●トービン税をG20サミットの議題に(インドNGO)、当然G7広島サミットでも

 

今後のFTT(またはTobin Tax)実現の展望ですが、今日もっとも切実な地球規模課題としての気候変動やコロナ感染症の対策資金として国際社会が共同して拠出する仕組みを創設することが望まれます。ただその仕組みが各国の割当てで賄うというこれまでの方法では限界があります。

 

では、どうするか? 世界には手つかずの膨大なリソースが存在します。それは外国為替取引に使用されるお金で、「1日当たり」世界で7.5兆ドル(約1050兆円)もの資金が取引されています。この取引には付加価値税(所費税)が課せられていません。しかもこの取引の9割方はマネーゲーム(投機)のための取引と言われ、先日の超円安のようにヘッジファンド等の投機筋が暗躍しているのです。

 

この外国為替取引に課税するのがトービン(通貨取引)税です。私たちはまずG7広島サミットに向けて、欧州のFTTイニシアチブ運動と連携し、通貨取引税を軸とする国際連帯税の共同実施を求めて活動を強めていくことです。なお、先述した国際FTTグループには米国のパブリック・シチズンなどのNGOやシンクタンクも参加しているので、米国でも活動が展開していくことになるでしょう。

 

また9月にはインド・ニューデリーでG20サミットが開催されます。これに向けインドの有力なNGO等が気候L&D資金としての金融取引税(トービン税)をサミットの主要議題に上げよ、との主張がはじまりつつあります(注3)。

 

このように国際連帯税として金融取引税を求める声は文字通りワールドワイドで高まりつつあります。2023年を希望の年とするために、まずは一国規模で考えるのではなく、世界規模で人々の生活と命を守るために、気候変動や感染症対策のための資金創設のために奮闘していきましょう。

 

 

【10人の最初の署名者(呼びかけ人)】
 ・フォーチュン・チャルムビラ(Fortune CHARUMBIRA) – 汎アフリカ議会議長、ジンバブエ
 ・ジョゼ・ラモス=ホルタ(José Ramos-Horta) – 東ティモール民主共和国大統領
 ・ローレンス・トゥビアナ(Laurence TUBIANA) – 欧州気候基金理事長、パリ協定の交渉担当者
 ・ピエール・ラルートゥルー(Pierre LARROUTUROU) – 欧州議会議員、2021年EU予算に関する一般報告者
 ・ジャン・ジュゼル(Jean JOUZEL) – 気候学者、元IPCC副議長
 ・カコ・ヌブクポ (Kako NUBUKPO)- トーゴの元大臣、西アフリカ経済通貨同盟(WAEMU)農業・水資源・環境担当委員、トーゴ
 ・Dr. Sanjay JAISWAL – インド国会議員 (Lok Sabha)
 ・カリム・ダーウィッシュ(Karim DARWISH) – エジプト国会議員、外務委員会委員長
 ・バントゥーボンケ・ハリントン・ホロミサ(Bantu Bonke Harrington HOLOMISA I – 南アフリカ共和国国会議員、前ネルソン・マンデラ政府の大臣
 ・パトリック・テン・ブリンク(Patrick Ten BRINK) – 欧州環境局事務局長

 

(注1)欧州での金融取引税議論>「損失と被害」資金、欧州議会での「復興基金」財源

(注2)気候変動対策の資金を調達するために、今こそ投機への課税を行う時

(注3)気候「損失と被害」資金のためにトービン税を① 

 

グローバル連帯税フォーラム、Instagramを開設しました

このたび、新たにグローバル連帯税フォーラムのInstagramを開設しました。若者や連帯税を知らない一般の方々にも、当団体の活動や地球規模課題の深刻さ、グローバルタックスの重要性について知っていただきたく思います。 ぜひ、フォローをお願い致します。

 

リンク →  https://instagram.com/forumforglobaltax/

 

いんすらぐらむ

 

 

 

 

ラルートゥルー 議員の欧州議会での演説>金融投機への課税を訴える

ピエール

 

12月14日に開催された欧州議会での「2021-2027年の多年間財政枠組み[MFF]の改善(討論)」でのピエール・ラルートゥルー(Pierre Larrouturou)演説が彼のツイッターで報告されていますので、紹介します。

 

<ツイッター文章>

 

この冬、何百万人もの国民が暖房と食事のどちらかを選択しなければなりません。

インフレを抑えるために、米国は4000億ドルを投入しました。私たちはどうでしょうか?

昨日、私は欧州議会で演説をしました。

 

ヨーロッパはエネルギー危機と戦うためにどのような手段を持っているのでしょうか?

ヨーロッパは気候の危機と戦うためにどのような予算を持っているのでしょうか?

この2つの危機には、資金調達の必要性という共通点があります。

 

社会と気候の混乱を避けるために、今こそ金融市場が戦いに参加する時です。

金融投機に課税すれば毎年570億ユーロが自由に使えるようになります。

これは最初の一歩に過ぎませんが、極めて重要な一歩です。なのに、私たちはなぜ待っている必要があるのでしょうか?

 

※演説の全文については、欧州議会のWebサイトに掲載されています。

 

ピエール2

林外相に開発協力大綱改定とG7サミットでの国際連帯税提案を要請

外務省①冒頭写真

 

12月15日、グローバル連帯税フォーラムの金子文夫・田中徹二両代表理事、日本リザルツの白須紀子理事長と園田開インターン、国際連帯税創設を求める議員連盟の石橋通宏事務局長(参議院議員)、津島雄二初代議員連盟会長の代理・橋本岳議員(衆議院議員)とともに、6名で外務省に林芳正外務大臣を訪問しました。

 

記念撮影の後、林外務大臣に対して、「開発協力大綱改定並びにG7サミットでの国際連帯税導入のお願い」と題する要請書を提出。6名を代表して田中代表理事が、SDGs達成のためにはODAを補う国際連帯税が必要であり、その導入に向けて林大臣の国内外での指導性発揮を求めると発言しました。

 

 外務省②田中&白須

 

要請書の要点は、①近く改定される開発協力大綱に国際連帯税を盛り込むこと、②G7広島サミットに合わせて外務大臣会合で国際連帯税に取り組む提案をすること、③特に外国為替取引への課税をメインとすること、④新デジタル課税に連帯税を付加すること、⑤税収は国際機関管理という5項目でした。(※要請書全文はこちらから

 

●林大臣、為替取引への課税や有識者懇談会について言及

 

林外務大臣は議員連盟の前会長であったため、連帯税の意義、これまでの国内外での取組みについては十分な理解を有していました。連帯税の税目に関しては、航空券税には否定的であり、その一方、為替取引への課税についてはかねてから関心をもってみており、実需とは関係のない投機的な為替取引への課税には、それほど強い反対はないのではないか、ただし国際社会で連携して実施することがむずかしいといった発言がありました。

 

外務省③大臣&金子

 

また、過日外務省に設置された革新的資金調達に関する有識者懇談会(SDGs達成のための新たな資金を考える有識者懇談会)について、その再開を検討するかのような言及もなされました。

 

外務省④全景

 

今回の外務大臣要請をきっかけにして、コロナ禍で動きが鈍くなっていた日本での国際連帯税運動について新たな局面を切り拓いていきたいと思います。欧州でも先月エジプトで開催されたCOP27等を機に金融取引税(欧州版国際連帯税)への活動が高まってきました。国境を超えた運動として進めていきたいと考えています。

 

 

欧州での金融取引税議論>「損失と被害」資金、欧州議会での「復興基金」財源

 ピエールとグテーレス事務総長

               グテーレス国連事務総長とLarrouturou氏

 

欧州で金融取引税についての議論が高まりつつあります。ひとつは、先の気候変動枠組条約締結国会議COP27で「画期的に」決定した「損失と被害」支援資金に関して。もうひとつは、昨年12月に欧州委員会で提案された7500億ユーロ規模のコロナ復興基金の財源(償還資金)に関して。

 

●COP21パリ協定の設計者ローレンス・トゥビアナ氏たちが金融取引税を要求

 

ご承知のように、COP27は今月20日気候変動(危機)に起因する途上国の「損失と被害」の支援に特化した基金設立に合意しました。しかし基金の具体的内容(拠出者と受益者等)については来年のCOPで決めることになりました。すでにこの支援基金に向け、島しょ国のリーダーなどから様々な資金調達の提案がされてきました。国際炭素税、航空輸送や金融取引への課税、国際エネルギー企業等への棚ぼた税そしてIMF・SDR(特別引出権)の増強など。

 

一方、フランスにおいて、COP21でのパリ協定を設計した経済学者のローレンス・トゥビアナ(Laurence Tubiana)、全アフリカ議会の議長Karim Darwish、2007年にノーベル賞を受賞した「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の元副議長ジャン・ジュゼル(Jean Jouzel)欧州議会議員Pierre Larrouturouなどの国際的な専門家や欧州議員が「金融取引税を創設するための合意を得ることが、今までになく急務である」と仏紙『ルモンド』に発表しました(注1)。

 

専門家たちは、気候変動による損失と被害に対処するためのグローバル・サウス諸国への支援に向け、「この税(金融取引税)は、国連開発計画(UNDP)が2011年から支持しているもので、米国のジョー・バイデン氏や欧州議会も支持しています。欧州議会は2020年末の気候変動対策の資金調達に関する報告書で、欧州レベルだけでも…金融取引に0.1%の小さな税をかければ、大多数の人々の家計を傷つけずに年間最大で570億ユーロを生み出せます」と強調しています。

 

欧州議会、EUの新たな収入源決める>次は2023年末までに金融取引税などを

 

欧州連合(EU)は2020年に7500億ユーロ(約100兆円)規模の新型コロナ復興基金の創設を決め、昨年12月欧州委員会は基金の財源(償還資金)として、①排出量取引、②国境炭素調整措置(国境炭素税)、③多国籍企業への課税、の3案を提案しました(収入を170億ユーロと想定)。この3案につき11月23日の欧州議会で一部修正され採決されました(注2)。この後、欧州理事会で採択され、全加盟国が批准すれば晴れて実施となります。

 

一方、欧州議会では、欧州委案が採用されなかったり、収入が予定通り得られなかったりした場合には、欧州委員会はさらに適時に行動を起こす必要がある、と注文を付けています。これに対し、欧州委員会は「2023年末までに、金融取引税や企業部門に関連する独自財源を含む、新たな自主財源の第2弾の提案を行う」と強調しました。

 

金融取引税については、当初の欧州委のロードマップでは2014年までに制度設計を行い、2016年から実施となっていましたので、1年前倒しで進められそうです。

 

●地球規模課題の資金需要は年間「兆ドル」単位に>官民総力で国際連帯税実施を!

 

現在グローバル社会ではコロナ感染症、気候危機などに基づく貧困と飢餓の増大、そして難民の激増等々という地球規模課題が山積し、これへの対策が年間数兆ドル(数100兆円)単位での費用を要するようになっています。今こそ国際連帯税として金融取引への課税や巨大IT企業はじめとするグローバル企業への課税が必要となってきています。欧州で3度目の金融取引税への議論がはじまりつつあります。日本でもG7広島サミットに向け金融取引税など国際連帯税を要求していきましょう。

 

(注1)

« Il est plus urgent que jamais de parvenir à un accord pour créer une taxe sur les transactions financières »   

「金融取引税を創設するための合意を得ることが、今までになく急務である」

(注2)

MEPs clear way for new sources of EU revenue

欧州議会、EUの新たな収入源を決着させる

 

※写真は、グテーレス国連事務総長に対して金融取引税について説明するLarrouturou欧州議会議員(Larrouturou氏のTwitterより)

 

●グローバル連帯税フォーラム・インターン募集中!

 ⇒詳細は、http://isl-forum.jp/archives/3729 

フォーラム、インターン募集>世界のコロナ感染症・温暖化等の資金調達を!

オルタモンドユース2

 

グローバル連帯税フォーラムは下記の通りインターンを募集します。時間等が許される方は積極的にご応募ください。いっしょに活動しましょう、どうぞよろしくお願いします。

 

【グローバル連帯税フォーラム:インターン募集要項】

 

1. 呼びかけ
コロナ等感染症や気候変動などの地球規模課題のための対策資金を創出するスキームとしての国際連帯税、またグローバルな経済的格差を是正するためのトービン税(金融取引税)などについて強い関心を持ち、社会を変革したいと願う学生や社会人のインターンを募集しています。私たちといっしょに社会課題に取り組んでみませんか?

 

2. 取り組む業務
主に下記の業務のお手伝いをお願いします
 ① セミナーやシンポジウムなどのイベント運営
 ② 広報業務(SNSやML等による広報の実施)
 ③ 翻訳(主に英語)
 ④ 国会議員や省庁へのロビイング
  現在①~③は、オンラインでの活動が中心となっています。

 

3. 応募方法
 ① お名前(ふりがな)
 ② メールアドレス
 ③ 携帯電話番号
 ④ 属性(学生、社会人)
 ⑤ 所属(学校名、会社名、定年退職者)
 ⑥ 応募いただいた理由(800字以内でお書きください:メール本文でもWordでも可)
 上記①~⑥を記載したメールを下記メールアドレス(応募先)までご送付ください。
<応募先>
    gtaxftt@gmail.com (担当:田中)

 

※写真左は、「国際連帯税東京シンポジウム2008」のもよう。右はユースによる水の民政化に関する研究・発表会のもよう。

COP27「損失と被害」、エネ企業への課税案だが国際連帯税も必要

エジプトで開催されている第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)で、温暖化による途上国の「損失と被害」への先進国からの資金支援がメイン議題の一つとなっています。途上国側の代表として島が沈みつつあるなどたいへんな被害を受けている「島しょ国グループ」から、次のようなアイデアが出されているとのことです(注1)。それはこの間のエネルギー価格の高騰で「巨額の利益」を得ているエネルギー企業等の(超過)利益に課税し、それを対策資金とすべき、というものです(注2)。

 

温室効果ガス排出がとても少ない途上国からすれば、パキスタンの大洪水やアフリカ諸国の大干ばつなどに見られるように多大な被害を受けているのですから、このようなアイデア=提案はもっともなことだと思います。しかし、このエネルギー企業等の(超過)利潤への課税については、「ウインドフォール(棚ぼた課税)」として欧州各国で既に実施または検討中であり(注3)、先進国と途上国で奪い合いになりそうです。

 

こうした状況から、11月16日付日経新聞ではエネ企業等の利潤への課税について次のように述べています。

 

「実現には国際的な合意が必要で、簡単ではない。国際的な航空輸送や金融取引に課税する国際連帯税構想も長らくあるが、いまだに実現していない」

 

いずれにしても、「損失と被害」対策資金については、恒久的かつ国際(共通)炭素税、そして国際連帯税から捻出することがよいでしょう。通常の支援の方法は、自国の領土内で徴収した税収を海外支援に回すということで、絶えず自国国民からブレーキがかかります。例えば、アフリカの貧困に何億円か拠出するとした場合、その資金は自国の私たちの税金であること、また国内にも貧しい人たちがいること等から結構国民からの反発があります。こうした反発を抑えることができるのが国際連帯税スキームです。航空輸送や金融取引税は国家の領土主権の外で行われる消費行為に対する課税となるからです。

 

ともあれCOP27での「損失と被害」に対する資金については、いぜんとして先進国と途上国との対立があるようです。そういう中で、「130か国余りの途上国(G77)と中国が共同で、気候変動による被害を受けた途上国支援のための新たな基金の創設を議長国に提案」しました(注4)。提案の中身は分かりませんが、注目していきたいと思います。カリブ海の島国バルバドスのミア・モトリー首相が途上国や脆弱国により多く配分するIMFの特別引出権(SDR)の新規発行などを提案していましたが、どうなりますでしょうか。

 

(注1)
【日経】途上国の損失支援、エネ企業に課税案 COP27で浮上
(注2) 
利益への10%課税(1ドルにつき10セント)。主要なエネルギー企業はこの3カ月で2000億ドル(約28兆円)の利益を上げている。
(注3)
【日経】「棚ぼた課税」は愚策か 財源めぐるタブー破れ
(注4)
【NHK】COP27 130か国余の途上国と中国 新たな基金創設を議長国に提案

※写真は、UNFCCCのホームページより

金融所得課税:財務省「年間所得が数億円超の富裕層への増税検討」だが…

1億円の壁

 

【金融所得課税10%アップで約3兆円の税収を得ることができる】

 

●日本の所得税制は累進性が途中で崩れ、富裕層が有利に

 

昨日(11月8日)の日経新聞によると、財務省は年間所得が数億円超の富裕層への増税の検討に入ったと報じています(注1)。これは例の「1億円の壁」と言われている、所得が1億円を超えると税負担率が下がってしまうという(累進課税であるべき)所得税の「不公平・不公正性」を是正しようという狙いがあります。

 

実際、「財務省が10月上旬の政府税制調査会(首相の諮問機関)で示したデータによると、所得税と社会保険料の負担率は所得5千万超~1億円の層で28.7%と最も高い。所得5億超~10億円は21.5%、50億超~100億円では17.2%となり、300万~400万円の17.9%より低くなる」(同日経新聞 図参照)となっています。

 

なぜこうした事態になっているかと言いますと、次の通りです。勤労者などの「給与所得」は所得が増えるほど税率が上がっていく「累進課税」で、最高税率は4,000万円以上の45%(+地方税10%)ですが、他方、株式売却益や配当などの「金融所得」は一律15%(+地方税5%)という「分離課税」で、従って4,000万円以上の所得があっても「金融所得」が多いほど税率は下がってきます。その分岐点が1億円所得なのです。

 

●政府・与党は課税強化に向かうか?

 

金融所得課税の不公平・公正性については以前から指摘されており、とくに2019年消費税の10%へのアップ時には財務省も相当前向きでしたが見送られてきたという経過があります。また、岸田首相が誕生した当初「金融所得税の強化」を訴えていましたが、たちまち前言を翻す事態となっています。こうした中での今回の財務省の動きですが、いろいろ制約がかかりそうです。

 

そもそも自民党の税制調査会の動きがどうなのか、実施する気があるのか、です。なにしろ「貯蓄から投資へ」というのが岸田式「新しい資本主義」のキャッチフレーズですので(ぜんぜん新しくないと思いますが)。

 

ともあれ、記事では、①政府が進める創業支援に逆行しないこと、②所得5億円以下の層は土地・建物の売却益が多く固定資産税がかかることを考慮すること、③給与所得が大半の人はすでに高い税を払っているので調整すべきこと、④株売却益への課税強化は幅広い層に影響が及ぶので線引き等を検討、等々課題点が挙げられています。

 

●様々な条件が付き税収は縮小か?金融取引税の新設なども必要

 

では金融所得税を10%アップしたらどのくらいの増税になるかと言いますと、約3兆円になります(2019年の税収で 注2)。同税を分離課税ではなく総合課税としますと35%アップとなりますので税収は10兆円を超えるのではないでしょうか。10兆円超となりますと、消費税の4%分ほどになりますので、税収ボリュウームは十分と言えましょう。

 

しかし、総合課税化は激変となりますので、当面は10%程度のアップがよいのかもしれません。それでも政府・与党が課税強化に向かうとしても、上記のようにいろいろ条件が付いて、思ったほどの税収が上がらない恐れもあります。ですから、1000兆円を優に超える財政赤字を解消していくためには、所得税や法人税の累進課税の強化や金融取引税の新設などが必要となってきます。

 

驚いたのは、今回の22年度第二次補正予算において一晩で4兆円も積み上げ、しかも29兆円中22兆円を赤字国債で賄うという政府の行いです。英国では予算の裏付けのない安易な減税政策が財政の悪化を招くとして市場からの反乱にあい頓挫しましたが、日本の赤字垂れ流しは英国の比ではありませんので、近い将来が心配です。

 

●諸富徹:京都大学大学院経済学研究科 教授の「ひとこと解説」

 

図に示されているように、100億円の所得を得る人の所得税+社会保険料の負担率が、400万円の所得を得る人の負担率より低いという状況は、いくらなんでも正当化し難い。本来、累進所得税の目的は所得を再分配することだ。これでは税制が、格差の拡大を助長しかねない。所得税のこうした問題を是正するため、新興企業支援を施したうえで、一定の所得(5億円とか10億円)以上に対象を絞った課税強化なら、望ましいといえよう。逆進的な消費税は、すでに数次にわたって税率が引き上げられてきた。今後のさらなる引き上げも議論しなければならない中、再分配を担うはずの所得税の機能不全がこれ以上、放置されていてよいはずがない。

 

(注1)
超富裕層に増税検討 財務省「1億円の壁」是正目指す
(注2)
金融所得課税強化の株式市場への影響をどう予測するか

 

 

円安ドル高で物価高騰は止まらず、トービン税でヘッジファンドと戦うべき

149円

 

引き続く円安ドル高によっての物価高騰は止まらず、これに対し政府は「投機筋による過度な変動には断固たる措置を取る」(鈴木財務相)として先月為替介入を行いました。一方、金融系エコノミストや経済評論家は投機筋の動向を所与のものと受け入れ、状況解説するのみです。これに対し、私たちはトービン税による投機筋との戦いを提案しています。

 

●国内企業物価指数9.7%も上昇(コアCPIは+3%)、その50%強が円安要因

 

急速な円安が進み、政府・日銀は先月145円90銭の段階で為替介入を行いましたが止めることができず、150円台の攻防に入ろうとしています(10月17日149円台に)。こうした円安は輸入物価を高騰させ、9月には円換算で前年比+48.0%と跳ね上がり、この結果国内企業物価指数は9.7%も上昇してしまいました。この上昇を受け、生鮮食料品を除くコアCPI(消費者物価指数)は前年比+3%にもなりました。そして10月には6700品目が値上がりし、さらに円安はなお続く傾向ですから、有効な対策がなければまだまだ値上げが続くということになります。

 

この輸入物価高騰はエネルギーや穀物価格の上昇にもよりますが、今日ではますます円安による影響が強くなってきています。その影響は上昇分の5割強にも上っています。

 

●私たちの生活に関係する消費者物価高騰の大元を辿れば米国の高インフレに

 

翻って、そもそもなぜこうした事態になっているのかを探ってみましょう。まずなぜ円安になっているのか。それは日米の金利差によります(米=高金利、日=低金利どころかマイナス金利)。ではなぜ米国FRB(連邦準備制度理事会)は高金利政策を取っているのか。それは高インフレを抑制するためです。

 

つまり、一連の事態は次のような図式となります。【米国高インフレ⇒米国高金利(日本マイナス金利)⇒円安(ドル高)⇒日本輸入物価高騰⇒日本消費者物価高騰】

 

以上から、「日本消費者物価高騰」要因の大元を探っていくと「米国高インフレ」に辿り着きます。ではなぜ高インフレに? 結論的に言いますと、このインフレをもたらした最大の原因は、超がつくくらいの過剰流動性、つまりジャブジャブのお金が市中・市場に提供され、コロナ禍では当初使う場がなかったため過剰貯蓄がなされたのです(注1)。そのお金の出どころですが、基本的に超金融緩和による株高とコロナ対策のための複数回にわたる給付金です。この結果、ただでさえインフレ傾向だったのが、コロナ禍が下火になるとともに爆発的に需要が高まり、インフレも急速に高まったのです。

 

●米高インフレを呼び込んだ株式バブル、金融取引税による抑制必要

 

米国の株高ですが、2008年のリーマンショック以降FRBはゼロ金利や低金利を取り、また量的緩和政策をつい最近まで取り続け、すっかりバブル状況ともいえるような事態になっていました。とりわけGAFAなど大手IT企業の時価総額が大幅に上昇しました(22年1月3日に最高値)。今日高金利政策によって半ば強制的にバブルを弾けさせているのですが、「FRBは株価が下落することが望ましいと考えている」(ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁)とまで言われています。

 

米国が高インフレを避けるとすれば、2010年代の早い時期から超金融緩和政策を転換させるべきだったのですが、いったん決めた政策はなかなか転換できない(ウォールストリートなどのステークホルダーの圧力により)という現実があります。だとしたら、その政策遂行にブレーキがかかる仕組みを埋め込んでいくことが必要だったのです。この場合は、できるだけ過剰流動性を抑制する金融取引税です。

 

米国の与党・民主党内で金融取引税を主張する有力議員が何人もおり法案を作成していますが、どちらかというと税収を得るための金融取引税でした。今後金融市場の正常化というか安定化のための金融取引税という主張が出てくるではないかと思われます。

 

●通貨の著しい変動は「市場の失敗」なのにG7は「注意深く監視する」だけ

 

さて、いわば米国の一方的理由でドル高が取られ、その結果日本円のみならずユーロも韓国ウォンもというように、世界各国が通貨安に見舞われています。この背景には、金利差が激しいドル/円相場が典型ですが、この差を利用してヘッジファンド等投機筋による通貨安攻撃があるのです。こうした事態に対し、今月G7ならびにG20財務相・中銀総裁会議が開催されました。

 

その対策について、G7は次のような声明を発しました。「声明は『多くの通貨がボラティリティー(変動率)の高まりに伴い著しく変動している』と指摘した。その上で、為替レートは市場で決定されるのが原則だとしつつ、過度な変動や無秩序な動きによる経済への悪影響に言及したG7の従来の合意を再確認」し、「注意深く監視していく」とのことです(注2)。

 

つまり、為替レートは市場で決定されるはずだが、そうはなっていない事態とは「市場の失敗」ではないでしょうか。だとするならば、監視しているだけではどうしようもなく、参加国どうしによる協調政策が必要でしょう。例えば、かつてのドル高を抑えるためのプラザ合意による協調為替介入ということも考えられますが、当時とはまるで状況が違いますので、為替取引への課税、つまりトービン税が有効ではないでしょうか。同税は、今から50年前の1972年、ノーベル経済学賞受賞者でもあるイェール大学のジェームズ・トービン教授(当時)が「一国の金融政策の自律性を獲得するためのスキーム」として提唱されました。

 

●国際金融「トリレンマ論」はトービン税で克服でき、税収を有効に活用できる

 

ところで、内田稔・高千穂大准教授は国際金融の「トリレンマ理論」を用いて、現今の円安問題について次のような論考を記しています(注3)。

 

まず「国際金融のトリレンマとは、1)為替相場の安定、2)金融政策の独立性、3)自由な資本移動──の3つを同時に満たすマクロ経済的な枠組みや制度は存在せず、どれか1つを放棄しなければならないことを指す」こと。それでこの枠組みでドル/円上昇に歯止めをかける選択肢を考えると、次の2つ。「1つは、金融政策の独立性を放棄することだ。このケースでは、米国に倣って利上げに踏み出さなければならない」というもの。「もう1つは新興国と同じく資本移動に制限を加えることだ。例えば、円安圧力つながる輸入や対外的な投資への制限がこれにあたる」。しかし、「日本にとって、どちらの選択肢も非現実的であることは明らかだ」、と。

 

では、どうすべきか。「消去法で考えて為替相場の安定を放棄する以外、日本には選択肢がない」「(世界のインフレが収束し、多くの中央銀行が金融緩和へかじを切るとか等々の)外部環境に変化がみられない限り、ドル/円はまだ、高値を目指す危険性が高い。率直に言えば、150円で止まるのかどうか、極めて疑わしくなってきた」、と内田さんは言います。つまり、手の打ちようがなく、150円で止まらないのではないか、というのが内田さんの結論のようです。

 

ウーム、困ったものですが、本当に円安を止める手段はないのでしょうか。あります。G7やG20のリーダーは、まずもって上記トリレンマ論で言うところの「自由な資本移動」がこれまで何度も行き過ぎた投機マネーの跳梁を招いてきたという「市場の失敗」を認識すること、その上でそれを克服すべく為替取引に課税し投機マネーを抑制するというトービン税を協調して実施することです。

 

そういう意味で、イエレン米財務長官の「市場で決定される為替レートがドルにとって最良の体制であり、それを支持する」(注4)という発言はとうてい承認することはできません。同長官は実はイェール大学でトービン教授(当時)の薫陶を受けた学研の徒であっただけに残念です。

 

ともあれ、G7やG20で協調してトービン税を実施すれば、投機筋の跳梁を大規模に抑制できるでしょうし、一国でも取引量が莫大ですので(東京市場の取引は1日当り65兆円にも上る)、税率をぐっと押さえれば実施可能でしょう。そして同税は税収が上がりますから、それを感染症・パンデミックや気候変動・脆弱国「損失と被害」に使用することができます。

 

ともあれ、米高金利による円安/ドル高そして物価高騰はいっこうに止まりませんので、引き続きトービン税の必要性を政府や国会議員、エコノミストやマスコミに訴えていきたいと考えています。

 

(注1)
【日経新聞】「過剰流動性」の正体は 問われるバイデン経済政策
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD00006_Q0A231C2000000/ 
【日経新聞】FRB「倍速利上げ」の賭け 3兆ドルの過剰マネー火種
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB067AS0W2A500C2000000/
(注2)
【時事通信】通貨の「著しい変動」懸念=国際金融市場を注視―G7財務相・中銀総裁会議
https://equity.jiji.com/oversea_economies/2022101300130
(注3)
【ロイター通信】コラム:「国際金融のトリレンマ」からみた円安、150円目指す動き濃厚
https://jp.reuters.com/article/column-minori-uchida-idJPKBN2R907P
(注4)
【ロイター通信】米財務長官「市場で決まるレートが最良」 ドル高批判受け
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN14EQ80U2A011C2000000/

 

※写真は「投機筋による過度な変動には断固たる措置を取る」と発言している鈴木財務相