30年度税制改正大綱:国際連帯税盛り込まれず>6年連続

政府・与党は昨日、平成30年度の税制改正大綱を決定しましたが、国際連帯税については今回も盛り込まれませんでした。これで、政権が交代した25年度大綱から6年連続して国際連帯税の文言が外されたことになります。

 

ただし、国際連帯税に繋がる関連部分として(*)、毎年のことですが、次のような記述がなされています。「また、わが国の経済社会の変化や国際的な取組の進展状況等を踏まえつつ、担税力に応じた新たな課題について検討を進めていく」(第一 平成30年度税制改正の基本的考え方)。

 

●国際連帯税をとりまく税制改正の状況:突然出国税が浮上

 

国際連帯税をとりまく今年の税制改正の動きの特徴としては、何といっても今夏突然浮上した「出国税」(国際観光旅客税)です。当初、8月末に財務省に提出された国交省からの税制新設要望もきわめて抽象的な内容であり、またある自民党税調メンバーも「自民党内で全然議論していない、税制調査会でもめるのではないか」と言っていました。しかし、この出国税導入の背景には、「観光族・菅官房長官」の強力なイニシアティブがあり、結局自民党税調も与党税調もほとんど議論がなく決定してしまったようです。この動きにつき、14日付日経新聞・電子版が詳しく報じています。

 

日経新聞】出国税、観光族・菅氏が剛腕発揮 政治空白に一気に決定

 

ところで、この間述べてきましたように、出国税と航空券連帯税とでは徴税ポイントが航空機の出国時というように一緒ですので、観光資源確保のための出国税が先に決まってしまいますと、連帯税としての税制導入は一段と厳しくなることが予想されます。

 

こういう経過から、グローバル連帯税フォーラムとしては、全国会議員へのニュースレターの配布、そして宣伝有力国会議員への働きかけを行ってきました(その一端として、日本リザルツ代表・白須紀子さんとともに公明党井上幹事長ほかへの働きかけを行いました)。また、国際連帯税創設を求める議員連盟と連携して、とくに衛藤征士郎会長には自民党幹部への働きかけをお願いしてきました。

 

●与党税調での国際連帯税の扱い:中長期的課題か?

 

上記のように国際連帯税(外務省の要望は「国際連帯税(国際貢献税)」)は大綱に盛り込まれませんでしたが、与党税調では“漏れ伝わるところによれば”「中長期的課題」扱いとなったようです。

 

実は、前々年度に(2012年の)政権交代以後はじめて「中長期的課題」になったようですが、前年度にはまた「×」にされてしまったようです。とするならば、今年度は何とか盛り返したと言うことができます。もとより連帯税実現の道はいぜんとして厳しいものがありますが。

 

●航空業界・国交省の反対論破産、連帯税導入の韓国、フランスでは

 

さて、今後の展望ですが、まず次のことが言えます。皮肉なことに出国税が決まったことにより、これまでの航空業界・国交省の航空券連帯税反対の論拠が崩れてしまったことで、この点私たちの主張は通りやすくなりました。

 

業界団体である定期航空協会は平成30年度税制改正要望として、わざわざ航空券連帯税反対を主張し、「本税(注:国際連帯税のこと)は、外国人旅行者に新たな金銭的負担課すことになるため、こうした(注:観光先進国としての)取組みに逆行することとなります」、と。つまり、税導入により外国人観光客の金銭的負担が増すから旅行者減少が予想されるので反対だと言っているのです。

 

では、出国税の場合でも金銭的負担が増すのだから、業界としては反対となるはずですが、この点についてはまったく反対を言っていません。従って、金銭的負担増=旅行者減少という論拠が崩れてしまっていることを自ら認めたものと言えるでしょう。当然、業界と一緒になって連帯税に反対してきた国交省の、とくに航空局の言い分も崩れてしまったのです。

 

ところで、航空券連帯税を導入している国ではいわゆる空港税はどうなっているでしょうか? 並びに連帯税を入れていない英国や日本は?

 

◎韓国:出国税(出国納付金)10000ウォン、国際連帯税(国際貧困退治寄与金)1000ウォン、旅客サービス料28000ウォン  合計 39000ウォン(約4030円)

 

◎フランス:国際連帯税560円、民間空港税990円、空港税1560円、旅客サービス料3410円 合計 6520円 (パリCDG空港→成田空港 エコノミー席の場合)

 

◎英国:旅客サービス料6140円、航空旅客税11500円  合計 17640円(英LHR空港→成田空港 エコノミー席の場合)

 

◎日本(成田空港):旅客サービス施設使用料2090円、旅客保安サービス料520円 合計 2610円

 

以上のように、日本で今後出国税を導入したとしても、いわゆる空港税は韓国より1000円、フランスより4000円弱、英国より12000円も安いことになり、もうワンステップ航空券連帯税を導入する余地は十分あると言えるでしょう。そしてこの連帯税によるSDGs達成のための資金調達は国民的支持を得ることも十分可能だと言えます。

 

こうしたことから、グローバル連帯税フォーラムは引き続き航空券連帯税ほか、SDGs達成のための第二の公的資金としてのグローバル連帯税実現のため頑張っていきたいと思っています。

 

(*)国際連帯税に繋がる関連部分について:

成26年度税制改正大綱では、「(税制抜本改革法)においても示されているこうした課題について検討を進め、所要の措置を講ずる。また、今後、内外の社会情勢の変化を踏まえつつ、担税力に応じた新たな課税について検討を進める」と記述されましたが、この税制抜本改革法が連帯税に繋がる根拠です。

つまり、この「税制抜本改革法」(2012年8月国会で成立)では、その第7条の7で「国際連帯税について国際的な取組の進展状況を踏まえつつ、検討すること」と謳っています。ですから、「こうした課題について検討を進め、所要の措置を講ずる」という中に国際連帯税も含まれることにもなります。

 

注)「税制抜本改革法」の正式名は「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」。

心を改めた?フェイスブック>売り上げ発生地で納税へ、が…

米IT企業の大手であるフェイスブックは、これまで広告収益を実質タックスヘイブンであるアイルランドの法人に集め、そこで納税していましたが(従って、日本やEU各国に法人税を払っていなかった)、今後は売り上げ発生地で納税することにした(従って、日本やEU各国に法人税を払う)とのことです。下記日本経済新聞の記事をご覧ください。

 

「『本来払うべき税金を納めていない』との批判」の高まりの前に、フェイスブックも心を改めて法人税を払う気持ちになったのでしょうか。もしそうであればたいへん結構なことだと思います。

 

しかし、同記事は「フェイスブックは…売上高のうち98%は広告収入が占める。課税額が増えるかについては『今後フェイスブックは各国で生じた知財使用料を費用計上する』(ウォール・ストリート・ジャーナル)との指摘もあり、不明瞭だ」と報じています。つまり、各国内で売り上げが増えても、知財使用料を“がっぽり”と取るので(その国での)利益は少なくなるから、そうたいして法人税を払わなくて済む、というのでしょうか。監視が必要ですね。

 

ところで、フェイスブックの決算を調べた人がいて、「(Facebook Q3 2017 Resultsによると)税引前純利益が$5.2B(約5,200億円)あるのに対し、法人税として支払っているのが$529M(約529億円)で、実効税率が10%となっています」と報告しています。で、Facebookが納めている法人税のあまりにも少ないことに驚いた、と言っています。下記の「Facebook決算で見るべきは驚くほど低い『法人税』だ」をご覧ください。

 

また、筆者は米国と日本のIT企業の実効税率も調べていまして、それは次の通りです。
 《米》Facebook: 10%
 《米》Google/Alphabet: 16%
 《米》Apple: 24.6%
 《日》ヤフー: 31%
 《日》サイバーエージェント: 46%

 

【日経新聞】フェイスブック、納税は売り上げ発生地で 戦略転換 

 

 【ロサンゼルス=中西豊紀】交流サイト(SNS)大手の米フェイスブックは12日、税率の低いアイルランドの法人で一括処理している納税戦略を変更し、今後は売り上げが立った国それぞれで税金を支払うと発表した。欧州を中心に「課税逃れ」との指摘が出ているためで、規模拡大とともに高まるIT(情報技術)企業への反発感情に配慮したものとみられる。

 

…(中略)…

 

 フェイスブックは17年7~9月期決算の売上高が103億2800万ドルと四半期ベースで初めて100億ドルを超えた。売上高のうち98%は広告収入が占める。課税額が増えるかについては「今後フェイスブックは各国で生じた知財使用料を費用計上する」(ウォール・ストリート・ジャーナル)との指摘もあり、不明瞭だ。

 

Facebook決算で見るべきは驚くほど低い「法人税」だ―節税が巨人の競争力を高める

ワン・プラネット・サミット前に、フランスが金融取引税推進を主張

パリ協定採択からちょうど2年目の1212日、パリ近郊で「ワン・プラネット・サミット」が開催されます。このサミットは主宰がフランス政府ということもあり(国連、世界銀行が共催)、日本ではあまり報道されていませんが、時事通信は次のように伝えています。

 

「サミットには政府だけでなく企業やNGOなどから計約2000人の関係者が参加し(注:4000人参加との報道も)、温室効果ガスの抑制と経済成長を両立する方策を話し合う。河野太郎外相も出席し、日本の取り組みについて説明する見通しだ」(1210日付「パリ協定推進へ環境サミット=仏主催、米大統領招待せず」)。

 

このサミットの主な目的は気候変動対策資金の創出に向けての議論にあるようです。11月に開催された気候変動枠組条約・COP23で、米トランプ大統領の「パリ協定」離脱表明を受けて、途上国支援のための資金問題で対立が目立ったことは記憶に新しいところです。

 

そこで気候変動問題に並ならぬ政治的意思を持っているフランスがこのサミットを機に「資金問題」でも国際的なイニシアティブを発揮しようとしているようです。

 

●サミット前に仏政府4閣僚が欧州金融取引税を強く要求

 

この4閣僚とは、ブリュノ・ル・メール財務相とジャン=イヴ・ル・ドリアン外務相、ニコラ・ユロ環境相、フレデリック・ヴィダル高等教育大臣ですが、Le Journal du Dimanche紙に共同声明として掲載されました。

 

骨子は、次の通りです。フランスはすでに金融取引税を導入し(注:株式購入に0.2%課税、17年は0.3%に)、昨年は11億ユーロの税収を上げ、環境政策の資金として役立てている。政府は、この金融取引税を欧州連合(EU)規模に拡大し、気候変動対策のための資金調達に向け推進する方針である。EU規模の金融取引税は2020年までに毎年50億ユーロ(59億ドル=約7000億円)の税収を得ることができる。

 

4人の閣僚は、『欧州でこの税制が適用されるように推進し、全員にこの連帯の努力に参加するよう求めている』と述べた」とのことです。

 

【ロイター】France to push for European financial transactions tax

 

●「ワン・プラネット・サミット」は、フランス、国際連合、世界銀行の共催で、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、ウィ・ミーン・ビジネス、気候エネルギー首長誓約、ヨーロッパ委員会、C40世界大都市気候先導グループ、経済開発協力機構(OECD)、ブルームバーグ・フィランソロピーズの協力、そして参加国は100か国超という大掛かりなものです。

 

*詳細は、フランス大使館のWEBサイトを参照ください。

 

ライブ配信もありますので、関心のある方はご覧ください(公式HPから)。

 

 

 

 

 

シンポジウム「税と正義…」、盛況のうちに開催>当日資料

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12 3日青山学院大学において「シンポジウム『税と正義/グローバル・タックスと税制改正』」が開催され、100人が参加しました。共催は、グローバル連帯税フォーラムと民間税制調査会。

 

4時間にわたるシンポジウムは、予定していた時間をややオーバーして討論が行われました。当日のプログラムと講師の方々の資料を送りますので、目を通していただければ幸いです。なお、録音起こしも行う予定ですので、全体の議論については今しばらくお待ちください。

 

<シンポジウム開催の意図>

 

シンポジウム開催の意図につき、冒頭金子文夫・横浜市立大学名誉教授より以下のように述べられシンポジウムは始まりました。

 

「経済のグローバル化が進展するなかで、国内的にも世界的にも所得と資産の格差が広がり、不平等・不公正な社会が出現しており、パラダイス文書で明らかとなった多国籍企業や富裕層の目に余る租税回避を許すならば、格差の拡大は際限なく続く。格差を是正する公正な税制が、国内的にもグローバルな規模でも求められている。

 

今必要なことは、税とは何か、税の正義(タックス・ジャスティス)とは何か、という原理的視点を改めて確認し、国内的およびグローバルな規模での公正な税制の方向を明確にしていくことだ。

 

本日のシンポジウムでは、名古屋市立大学の伊藤先生には、政治哲学の立場から、税の正義について原理的・規範的な議論の提示をしていただく。北海道大学の津田さんからは、国際課税問題の最新の動向について、パラダイス文書とEU金融取引税に絞って紹介していただく。まとめとして、青山学院大学の三木先生には、2018年度税制改正をめぐる問題点について縦横無尽に語っていただく」。

 

<当日配布された資料>

 

1、プログラム

 

2、主催者あいさつ:金子文夫・横浜市立大学名誉教授

     

3、講演 

 1)「税の正義とグローバル・タックス」…伊藤恭彦・名古屋市立大学人文社会学部教授

 

 2)「グローバル・タックス・ジャスティスの検討―“パラダイス文書”と EU 金融取引税の観点から―」…津田久美子・北海道大学法学研究科博士課程日本学術振興会特別研究員 DC

 

 3)「2018 年度税制改革を考える」…三木義一・青山学院大学法学部教授

 

4、今後の活動について…田中徹二・グローバル連帯税フォーラム代表理事

 

<シンポジウムに対する感想・コメント>

 

・普段は日常の仕事に追われてグローバルレベルで税ことを考えないが、それを考える時間をもったことが良かった。カントやアダム・スミスのことも勉強しないといけないと思った。

 

3名の先生方のお話は大変分かりやすく、抱えている課題についても理解が深まりました。伊藤先生の税の正義について考える事は非常に重要だと感じました。ここを考えずして税の話はできないと思います。貴重な会を有難うございます。

 

2018年度税制改革のことがとても理解できた。税の在り方はとても重要だと感じました。

 

・伊藤先生の話されるようなそもそも論は必要。タックスヘイブンの利用などの税回避行為は許せない。それを防ぐ、法的、国際的システムの構築が急務。

 

・現在、税の富の再分配機能について論文を書いており、本日の講義を聞いて枝葉末節の話にならないよう、基本的なところをしっかり押さえた内容にしなければならないと感じました。大変参考になった。

 

ほか。

 

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【申込み締め切り】12.3シンポジウム「正義と税/パラダイス文書…」

●インターネット中継があります!

 

今度の日曜日(123日)開催のシンポジウム「正義と税/パラダイス文書、グローバル・タックス、税制改正」ですが、本日19時を持ちまして、定員100人強に達しましたので、申込みを締め切らせていただきます。

 

このところ、開催日前日にどっと申込みが来る傾向もあり、これ以上増えますと消防法に触れることになりますので、これ以降の申込みはご遠慮くださるようお願いします。

 

なお、今回はインディペンデント・ウェブ・ジャーナル(略称 IWJさんのご協力でインターネット中継を行いますので、参加できない方はこちらをご覧ください。

 

※中継は、http://iwj.co.jp/ からご覧ください。

 

もう少し広い会場が取れればよかったのですが、空きがなかったため申し訳ありません。これに懲りずに次の機会をご利用くださるよう願います。

11.29国際連帯税議連総会報告>安倍総理に早急に要請書を提出へ

縮小議連総会①

 

昨日(11月29日)衆議院議員会館で「国際連帯税の創設を求める議員連盟」の今年度第2回目の総会が開催されました。早朝午前8時から始まった総会には、国会議員8人、代理10数人、市民11人が参加しました。以下、簡潔に報告します。

 

本総会の課題は、1)衆議院選挙後の新たな役員体制の確認について、2)次年度税制改正に向けた議連方針について、でした。

 

司会は石橋通宏事務局長(参議院議員)が務め、冒頭衛藤征士郎会長(衆議院議員)が次のような挨拶を行いました。「議員連盟も9年目に入り、30年度税制改正も大詰めとなっているが、突然伴走者も現れてきた(注:出国税のこと)。我々の立場は世界の貧困や感染症問題等の資金源となる国際連帯税の実現だ。国際連帯税について国会議員の間では相当理解が進んでいるが、まだそれが行動に結びついていない。国際連帯という理念に軸足を置き、30年度税制改正に向けしっかりと取組みを行っていきたい。早朝にもかかわらず、総会に参加してくれた市民のみなさん、役所のみなさんに感謝したい」。

 

総会は、まず新役員体制が提案され、承認されました。新役員を見ますと、二階俊博幹事長、竹下亘総務会長、岸田文雄政調会長という自民党三役や井上義久公明党幹事長などが参加していることが目立ちます(会員は衆議院39人、参議院22人の計61人)。

 

続いて、外務省の鈴木秀生・地球規模課題審議官より、「平成30年外務省税制改正要望における国際連帯税(貢献税)に関する要望と、国際的な動向について」の説明を受け、また市民社会を代表して、グローバル連帯税フォーラムの田中徹二代表理事より、「国際連帯税の導入に向けた提言」を行いました。

 

外務省・鈴木審議官は「SDGsに示される世界の開発需要に対応し貢献するための国際連帯・貢献税として新設要望していること」を力説しました。田中の方からは、「出国税のたいへんな悪評(マスコミ6大紙がこぞって批判)に対し、航空券連帯税は世論の75%が賛同していること(外務省委託研究より)を踏まえ、外務省は航空の国際線への課税による税収は本来地球規模課題に使用すべきものとして国交省と調整が必要なこと、また議員連盟としては官邸への申し入れを行うこと」を要望しました。

 

これを受けて活発な議論が行われ、「所管である外務省が頑張っている姿を見せるため、外務大臣がことあるごとに国際連帯税の必要性を訴えるべき」などの意見も出されました。最後に、衛藤会長から「各党は税制改正に向けての取り組みを強化していただくこと、そして議連としては、地球規模課題に対応するための国際連帯税の創設を引き続き求めて、安倍総理に早期に要望書を提出したい」と提案され、これを全体で確認して閉会となりました。

【緊急】12.3シンポジウム「税と正義」の会場が変更となりました

12月3日開催のシンポジウム「税と正義/パラダイス文書、グローバル・タックス、税制改正」ですが、予定していた会場の機器類の不具合が見つかりました。それで急きょ別の教室に変更しましたのでお知らせします。

 

●「5号館 545教室(4階)」を⇒「14号館5階14509教室」に変更

 

14号館は正門入ってすぐ右の総研ビルとなります(キャンパスマップ参照)。そこの5階の教室です。突然の変更で申し訳ありませんが、どうぞお間違えのないようにお願いします。

 

 

シンポジウム「税と正義/パラダイス文書、グローバル・タックス、税制改正」

 

・講演1:伊藤 恭彦(名古屋市立大学人文社会学部教授/副学長)
・講演2:津田久美子(北海道大学法学研究科博士課程 日本学術振興会特別研究員DC1)
・講演3:三木 義一(青山学院大学法学部教授/学長)
  
◎日 時:2017年12月3日(日) 13時00分~16時50分  
◎会 場:青山学院大学渋谷キャンパス 14号館(総研ビル)5階14509教室
     キャンパスマップ:http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html   
◎共 催:グローバル連帯税フォーラム、民間税制調査会
◎資料代:500円
◎申込み:info@isl-forum.jp から、お名前、所属(あれば)ならびに「12.3シンポ参加希
       望」とお書きの上、お申込みください。
※詳細は、http://isl-forum.jp/archives/1941 参照ください。

 

 

全国会議員へNL配布「出国税、使途に地球規模課題を含めよ」

今年の夏、突然観光資源整備のための財源として「出国税」構想が浮上し、官邸の強い意向もあり実現の可能性が高まっています。このことに対し、私たちは「出国税の使途に地球規模課題を含めるべき」として、昨日全国会議員に対してニュースレター『g-tax News Letter 国際連帯・貢献税』を配布しました。

 

この出国税ですが、実は「受益と負担」の関係を見れば大幅に乖離していることが分かります。

 

◎受益する人(観光目的の訪日外国人):1990万人

◎受益しない人(出国日本人①+商用目的の訪日外国人②):2110万人

         ※①1700万人、②410万人  (⇒数字は2016年)

 

そこで観光庁の検討委員会では、使途を観光資源関係だけをとするのではなく、出入国の管理体制の強化や空港整備等も加えています。しかし、課税ポイントが出国という領土主権外のサービス提供に対してですので、税収による使途は一国の一部門のみに使用すべきではなく、国際社会での普遍的課題に(感染症問題や気候変動問題など地球規模課題に)使用すべきです。

 

そういう立場から、ニュースレターでは、グローバル連帯税的要素も入れた出国税として制度設計すべき、と提案しています。今後国際連帯税創設を求める議員連盟とも連携しつつ、地球規模課題の財源を得るために活動していきます。

 

★ニュースレターを読む ⇒ PDF

 

 

 

 

「パラダイス文書」:三木義一・青山学院大学長のコメント

先月末に第2のパナマ文書が出るかもしれないという報道が一部にありましたが、予想を超えて「パラダイス文書」として公表されたものは電子ファイル1340万件(パナマ文書は1150万件)に上るというぼう大な資料のようです。

 

また、パナマ文書の出所はパナマのモサック・フォンセカ社で、ほとんど米国の会社や個人の名前は出てきませんでした(なのでCIA説が流れた)。が、今回のパラダイス文書の出所の法律事務所「アップルビー」は主に米英系の会社・個人を顧客に持っているようです。従って、とくに米国の権力中枢やグローバル企業の実態が明らかにされてきています。ロシアとの<秘匿されていた資金の>繋がりがこれほどあるとは!驚いてしまいます。

 

さて、昨日(6日)の朝日新聞の「パラダイス文書」の記事につき、三木義一先生のコメントが載っていましたので紹介します。

 

 

●高い「守秘性」の闇に光あてた意義大きい 《三木義一・青山学院大学長(租税法)の話》 

 

 タックスヘイブンの利用について、日本企業では、租税回避を目的としているのは一部で、(税制や規制などで有利な国に船籍を置く)便宜置籍船や海外の企業の買収などが多いと言われている。一方で、日本で納税されるべきお金がタックスヘイブンに流れているのも事実だ。タックスヘイブンは「守秘性」が高く、通常はその利用法が適切かどうか、一般市民が知るすべさえない。その闇に光をあてる意味でも、秘密文書がその一部をつまびらかにする意義は大きい。本来であれば、企業が積極的に開示していくのが望ましいだろう。

 

朝日新聞】商社・損保・海運…日本企業も「パラダイス文書」に続々

 

 

財務省、外資系企業への課税強化>が、アマゾンは日本で法人税を払わず

財務省は日本で営業している外資系企業への課税対象を広げるため、来年の通常国会で法改正するとのことです(下記参照)。が、日本で営業しているなら、日本国に法人税やら一般消費税を払うのが当然でしょう、財務省は何を今さら寝ぼけたことを言っているのか、とお思いでしょうが、実は税を払っていない外資系企業があるのです。

 

その筆頭が、みなさんもよく利用するアマゾン・ドット・コム社(以下、アマゾン)です。アマゾンは法人税を払っていません(一般消費税は2015年10月から課税されることに)。アマゾンは千葉県などに100%子会社のアマゾンジャパン合同会社という巨大な配送センターを持ち、日本人を顧客として大規模なネット販売ビジネスを展開し、その売り上げは、何と!昨年で1兆1千億円もあったのにもかかわらず、です(純利益は分かりませんが数百億円に上るでしょう)。

 

(法人税を払わないなんて)そんな馬鹿な、と思いますが、外国企業(非居住者等)に関しては日本国内に支店や支社などのなどの拠点がなければ法人税をかけられないというのです。それは「恒久的施設(PE)」と言い、「PEなければ課税なし」というのがこれまでの原則でした。でも、アマゾンには巨大な配送センターがあるではないか、これはPEそのものではないか、と誰でも思うでしょう。ところが、「『倉庫はPEには当たらない』(正確には、『倉庫の様々な機能を活用した活動の全体が、準備的・補助的なものである場合にはPEに当たらない』)」という規則ゆえに(森信茂樹・東京財団上席研究員/税・社会保障調査会座長)、配送センター等はPEではないと言うのです。

 

そんな馬鹿な!(これで馬鹿を二回使いました-失礼)ということで、実はOECDがこのような規定は租税回避に繋がるのではないかということで、「グローバル企業は払うべき(価値が創造される)ところで税金を払うべきとの観点」に立って、BEPS(税源侵食・利益移転)プロジェクトをスタートさせたのです。そこでは「人為的にPEの認定を逃れることを防止するために、租税条約のPEの定義を変更する」(行動7)とされたのです。

 

が、BEPSプロジェクトは勧告であり法的な拘束力がありませんので、行動7につき行動15(多国間協定の開発)で対応するとしたのです。そしてついに、2016年11月24日100を超える国・地域が多国間協定の交渉妥結に至ったのです。これを受けて、日本の財務省も、冒頭に述べたように、「現在は支店や支社などの拠点がなければ法人税をかけられないが、大型の配送用倉庫などがあれば課税できるようにする」として外国企業の課税対象の拡大を企図し、国内法を改正する段取りへと進んだのです。

 

これで、ようやくアマゾンからも法人税を取れる!と思ったのですが、何と先の多国間協定につき米国が署名していないことと、(古いPE規定のままの)日米租税条約があるため、いぜんとしてアマゾン等米系グローバル企業からは法人税を取れないまま推移しそうです。同じ悩みを抱えるEUは国際的に決まらなければ(米系企業に適用できなければ)、EU独自策を取ると言っています。日本もぜひそうすべきではないでしょうか。

 

追記. では日本での売り上げは、(日本にあるアマゾンジャパン合同会社ではなく)米国のワシントン州法人である Amazon.com Int’l Sales, Inc. に入り、同社が米国に法人税を払っているという形となっている。すると、ものすごく円安(ドル高)になったら、米国のアマゾンはすごく損をすることになると思うのだが…? (逆に、円高・ドル安になれば為替差益=不労所得そのもの=が生じますが)

 

 

【日本経済新聞】財務省 外資への法人税課税の対象拡大

 

 財務省は日本で営業する外資企業の課税対象を広げる。現在は支店や支社などの拠点がなければ法人税をかけられないが、大型の配送用倉庫などがあれば課税できるようにする。ネット通販企業などにも法人税を課せるようにする。日本、欧州、中国などが参加する多国間協定に対応して、2018年の通常国会で関連法を改正する見込みだ。

 一方で米アマゾン・ドット・コムのような米国企業の場合は見直しの対象外だ。米国はOECDの多国間協定に署名しておらず、日米間の租税条約が適用されるため課税されない。

 

 グローバルに展開するIT企業のなかにも認定できるPEがなく、国内で事業展開していても課税対象外となる企業がある。欧州委員会は「国際的な進展が乏しければ、EU独自策を導入すべきだ」と主張しているが、日本はグローバルに協調すべきだとの立場だ。

 

図は、「アマゾン日本事業の売上はほぼアメリカへ ~自国の税金をどう確保していくか~」よりお借りした。
https://manetatsu.com/2016/06/66812/