isl-forum-wp-author のすべての投稿

【報告】『グローバルヘルス戦略』策定記念シンポジウム: グローバルヘルスの新たな展開と市民社会

「グローバルヘルス戦略」策定記念シンポジウム: グローバルヘルスの新たな展開と市民社会」が、2022年7月19日(火)午後5時から参議院議員会館で会場とオンラインを繋いだハイブリット方式で開催されました。

 

本シンポジウムは、5月24日に、2016年以来6年ぶりに改定された日本の国際保健に関する政策『グローバルヘルス戦略』を紐解き、相次ぐ世界が直面する危機や構造変化に対応しつつ、日本として国際保健をどうリードしてゆくのか、その中で日本の市民社会はどう関わっていくべきか、新たな連携の形を明らかにしていくために開催されました。

 

当日は、会場とオンラインを含め、合計120名余りが参加。パネリストは皆、会場で対面での登壇となり、久しぶりに顔を合わせながらの活気のある議論が行われました。

 

本シンポジウムは、大竹財団の支援を受け、国際保健に取り組むNGOと外務省との定期懇談会を行っているGII/IDI懇談会(ジョイセフ事務局)が主催し、外務省及びグローバル連帯税フォーラムの後援を受けて開催したものです。

 

まず、初めに武見敬三参議院議員のビデオメッセージで会がスタート。
グローバルヘルス戦略の策定を担当した内閣府 健康・医療戦略推進事務局 健康・医療戦略ディレクターの南博氏による解説。東京都立大学の詫摩佳代教授による「コロナとウクライナ危機の下でのグローバルヘルスの在り方とその展開」の基調講演。
その後、ジャーナリストの迫田朋子氏がモデレーターを務める中、基調講演を行った詫摩氏に加え、グローバルヘルスを推進する立場にある外務省の原圭一国際協力局参事官、稲場雅紀GII/IDI懇談会NGO連絡会代表/アフリカ日本協議会共同代表、米良彰子世界の医療団日本事務局長の計4人によるパネルディスカッションが行われました。
最後は、日本国際交流センターの伊藤聡子執行理事により、締めくくられました。

 

※詳細は、以下からご覧になれます。

 

◎テキストで読む(含む発表者資料 ジョイセフ編)

https://www.joicfp.or.jp/jpn/wp-content/uploads/2022/08/global-health-event-report-202208.pdf 

 

◎映像で見る https://youtu.be/qy4Tgaw5ifw 

東京市場での外国為替取引高が史上最高!通貨取引税あれば3兆円の税収!

東京の外国為替市場で莫大な投機マネーによる取引が行われています。その取引高は1日当り65兆円! とくに4月に入ってからヘッジファンドなどの円安攻撃が主導したようです。ところで、もし日本で為替取引税(通貨取引税)が実施されていれば、0.005%という超低率(1億円の取引に対し5000円の課税)であっても8160億円もの税収が上がります。さらに、ドル円取引はグローバルに行われており、東京市場でのシェアは20数%に過ぎません。これらにも同税が及ぶと総計3兆円もの税収となります。これはコロナ・パンデミック対策資金としても、また他の地球規模課題対策資金としても十分な税源となりうるのではないでしょうか。

 

●東京市場での外国為替取引高、史上最高の1日当り65兆円!

 

7月26日東京外国為替市場委員会(日銀と民間金融機関で構成)は本年4月の東京市場での外国為替取引高は「1営業日」平均で4785億ドル(約65兆円)に上っていると発表(注1)。読売新聞によれば「2006年の調査開始以来、最高だった。資源高を背景に輸入企業による円売り・ドル買いが取引高を押し上げ、投機的な売買もあった」と報道しています。

 

国際決済銀行(BIS)は3年ごとにグローバル規模で外国為替取引高を調査していますが、上記数字はこの調査のうちの日本分(東京市場)集計のものです。前回の調査(2019年4月)を見ますと、3760億円(約51兆円)ですから、コロナ危機があったにもかかわらず、取引はナント!1000億ドル(約13兆円)も増えています(注2)。

 

ところで、報道では取引高アップの要因として、貿易関連そして投機での増加からと説明しているようです。が、日本総合研究所の主席主任研究員の石川智久氏は次のように言っています。「外国為替取引高が過去最高になった…一番の理由は投機的な動きです。外国為替市場では、輸入や輸出といった実需よりも金利差などで動く投機筋の方が動かす金額が大きくなります」、と。ドル円相場は今年の3月ころまでは1ドル115円ほどで推移していましたが、4月からヘッジファンドなど投機筋の円売り攻勢が活発となって急速に円安が進み、一時130円を超える事態となり、そのことが4月1営業日に反映されたと言えます。

 

その後の経緯から言えば、円安はさらに進み、7月には1ドル140円に迫り、一転今度は8月に入り130円を割る寸前にまでになるという乱高下状況で(今また135円に急騰)、それだけ投機筋が激しく動いていると言えましょう。

 

●外国為替取引の80%程度は投機のための取引

 

そもそも外国為替取引は何のために行うのかと言いますと、円をドルに換えて輸入代価を支払ったり、外国に工場を作ったりするために行われますが、こうした実需に使われるのは実は総量の10%程度です。残りの90%程度は取引そのものから利益を得ようとする投機のために行われているのです。そのために何かイベントが起きると為替差益を狙っていっせいに投機マネーが動き、為替相場が極端に動いたりするのです。今回の超円安相場にあたり、やはり異常なくらい投機マネーが動いているということが、この4月の1営業日での取引高の記録によって分かります。

 

以前紹介した池田雄之輔氏の著書『円安シナリオの落とし穴』(日経プレミアシリーズ)によれば、「為替市場は、商品市況と並んで、もっとも『投機』の色彩が強い市場ということができる。…ヘッジファンドが7~8割、リアルマネーが2~3割」と言っています(ここでのリアルマネーとは、長期保有を想定した投資信託や保険会社などの投資マネーのこと)。

 

ところが、このところの超円安に関しての金融系エコノミストや日経新聞などの基調からはすっぽり「投機」が抜け落ち、円安の要因をもっぱら貿易や金利の面から説明しています。これでは急速な円安や円高を説明することはできません。

 

●日本で通貨取引税が実施されていれば年間「8100億円+2兆1300億円強」の税収に

 

2022年を通しての外国為替取引高が平均して1営業日当たり65兆円あるとし、そして日本で税率0.005%の通貨取引税(為替取引税)が実施されているとすれば、約8100億円の税収となります(65兆円×営業日250日×0.005%)。

 

ところで、税収はこれに限られません。というのは、ドル円はもとよりユーロ円、ポンド円取引等々は東京市場だけで行われているのではなくグローバルに行われていますので、ここらからの税収も考えられるからです。では、グローバル市場での取引と東京市場レベルでのドル円取引の割合はと言いますと、ざっくり75%対25%となります(注4)。すると、東京市場を除くグローバル市場での取引額は1兆2504億ドル(約170兆1000億円)となります。

 

これらにも0.005%を課税すると2兆1300億円の税収となります(170兆1000億円×250日×0.005%)。しかし、東京市場外のドル円取引に課税できるのかという疑問が出ますが、それは日本政府が決めて制度設計すればよいことであり、また取引に円がからむことにより取引の足跡を補足することは可能であり、従って課税することができます。

 

このように東京市場とグローバル市場での課税により約2兆9000億円程度の税収が得られますが、グルーバル市場では他にユーロ円、ポンド円等々の取引がありますので、こちらにも課税することになりますので、(課税によって税収が少々減少しても)税収が3兆円を超えることになるでしょう。

 

●林芳正外務大臣は国際会議の場で国際連帯税の必要性を訴えるべき

 

とはいえ、通貨取引税実施の壁は厚く、同税の元祖ともいえるトービン税が提唱されてからちょうど半世紀たった今年に至るまで(注4)、主要国で実施された国はひとつもなく、わずかブラジルやトルコで変則的な形で実施されているにすぎません。世界で同時に課税しないと、課税国から非課税国に金融機関が、従って為替市場が移転してしまうという神話のためです。

 

例えば、日本のA銀行が課税を嫌ってすべてシンガポールにディーリングルームを移転させたとしても(実際はありえないと思いますが)、円を扱いかつ日本国籍を有する限り、課税から免れることはできません。シンガポールにあるA銀行支店が100万円で米国のB銀行の1万ドルを買うとしても、日銀の中のA銀行の預金(当座預金)から100万円が払われることになりますから、足跡は残り課税が可能となります。

 

もし日本一国でも実施するとすれば、当面投機筋が税金を払っていると認識できないくらいの超低税率で課すことからはじめてもよいと思います。金融関係者に聞くと、分岐点は0.01%と答える人と0.001%と答える人がいます。0.005%課税は前者に依拠したものですが、最初は0.0005%から始めてよいでしょう。それでも3000億円の税収となります。

 

いずれにせよコロナ・パンデミックのような地球規模課題に対しては一国ではなく、G7やG20などの主要国が共通税率をもっていっせいに国際連帯税としての通貨取引税を実施することが望ましいことは言うまでもありません。昨年10月OECD/G20が140ヵ国を巻き込み「デジタル課税(新グローバル法人税)と世界共通最低税率」を決めたように。

 

しかし、問題はデジタル課税とは違ってどこの政治的リーダーも地球規模課題のための共同資金創出を言い出さないことです。そこで、私たちは我が国の政治リーダーである林芳正外務大臣に(元国際連帯税創設を求める議員連盟・会長)対して、次のように、外務省への23年度税制改正要望を提出しています。

 

林外務大臣におかれては、G7やG20の外相会合において、また国連総会など国際会議の場において、SDGs資金ギャップについて警鐘を鳴らすとともに、国際連帯税を共同して実施することを訴えていただきたいこと

 

(注1)【日経新聞】東京外為市場、4月の取引高は7.7%増 過去最高を更新

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB266I00W2A720C2000000/ 

(注2)【日銀】主要市場の1営業日平均取引高(グローバル分集計結果)

https://www.boj.or.jp/statistics/bis/deri/data/deri1904.pdf

(注3)【ヤフーニュース】https://news.yahoo.co.jp/pickup/6433749 

(注4)2022年のグローバル市場でのドル円取引高は分からないので、2019年でのグローバル市場のうちの東京市場の割合は約24%、2013年では約20%程度。ここから類推しての割合となる。

(注5)ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・トービン(イェール大学教授)が1972年に提唱。投機目的の短期的な資本取引を抑制するため、外国為替取引に1%程度の税を課するというアイデア。

 

23年度税制改正:外務省は「国際連帯税」要望を復活させよ

 林芳正パネル討論

 

2012年10月「国際シンポジウム:金融取引税・国際連帯税は世界を救うか?~革新的資金メカニズムを巡る世界のリーダーと市民社会との対話~」(青山学院大学国際会議場)で発言する林芳正・国際連帯税創設を求める議員連盟会長/参議院議員(当時)

 

グローバル連帯税フォーラムは去る7月25日外務省に「23年度税制改正要望で『国際連帯税』要望を復活させることの要請書」を提出しました。要請書の要旨は次の通りです。

 

1)SDGs達成のための途上国での資金ギャップがコロナ危機が進行する中でそれが4.2兆ドルへと拡大していること、

 

2)このギャップを埋めるには1800億ドル程度のODA(政府開発援助)ではとうてい間に合わず、OECD(経済協力開発機構)は約390兆ドルの金融資産を有する民間資金の動員・利用を提案。しかし、民間資金の投融資には限界があることから、国際連帯税など革新的資金調達が望まれること、

 

3)コロナ禍にあっても資産や利潤を増やしている金融セクター、ITなど情報技術セクター等グローバル化で受益している経済セクターへの課税を実施すること、

 

4)日本政府は国際連帯税の国内実施と国際社会での共同実施に向け努力すべきこと

 

 

 

 2023年度税制改正要望で「国際連帯税」要望を復活させることの要請書

 

外務大臣 林 芳正 様

                  

                          グローバル連帯税フォーラム                        

                            代表理事 金子 文夫                            

                        田中 徹二

 

日頃からの世界と日本のための外交平和努力に敬意を表します。

 

さて、コロナ禍やウクライナ戦争という厳しい情勢にありますが、次年度税制改正要望を提出する時期となりました。ご承知のように、国際連帯税につきましては、2010年度より外務省から要望が提出され、それが2020年度まで10年間連続して続けられました。ところが、2021年度、2022年度と要望提出を断念し、今日に至っています。

 

その断念の理由は、外務省が2019年7月に「SDGsの達成のための新たな資金を考える有識者懇談会」を設置し、翌年7月に提出された懇談会の「最終論点整理」(以下、「整理」と略)に沿ったからと思われます。つまり、「コロナ禍で日本経済全体が大きな打撃を受けているので課税による資金調達方式は現実的ではない」というのが整理での提言だったからです。

 

しかし、こうした厳しい経済情勢下にあっても、日本を含む世界ではITや金融というグローバル経済セクターは多大な利益を上げていましたし、日本経済も3年目にしてようやく復活の兆しが出てきました。また、整理では課税についてすべて反対しているわけではありませんでした。実際、航空券税については「国際航空事業が正常化した段階で再考すべきではないか」と提言しております。航空事業も正常化に向かいつつあるのが現状です。従いまして、外務省としてはSDGs達成のため課税による資金調達要望を復活させるべきと考えます。

 

一方、林外務大臣は先の国会において「SDGs達成のための資金不足を埋めるためには革新的資金調達は重要と考え、外務省としては引き続き適切な資金調達の在り方を検討してまいりたい」と発言しています(5月19日参議院外交防衛委員会)。ここでの革新的資金調達とは国際連帯税を含む新たな資金調達の在り方と言えるでしょう。

 

林外務大臣はさらに「SDGs達成のためには年間2.5兆ドル不足と言われている。コロナ禍でそのギャップはさらに拡大しているとの推計もなされている」と発言していますが、今やそのギャップはOECDの推計によれば4.2兆ドルへと拡大しています。一方、世界のODA総額は1,789億ドル(2021年)ですから、とうていODAでこのギャップを埋めることはできません。

 

そこで期待されるのは民間資金の利用、動員です。今日SDGs理念の世界的な浸透もあり、ESG投資やインパクト投資、グリーンボンドなど地球規模課題に向けての民間資金の投融資が盛んになってきました。このことは歓迎すべきことですが、それが民間資金という性格上どうしてもリターンが不可欠であることから、最も必要としている貧困国やセクターに届いておらず、また投資分野もエネルギーなど気候変動分野に偏るという傾向があります。これらのことからも、第二の公的資金となりうる革新的資金メカニズムとしての国際連帯税の実施、拡大が望まれます。

 

以上のことから、国際連帯税に関し、下記の5項目を要望しますので、ご検討くださることをお願い致します。

 

 

1.2023年度(令和5年度)税制改正要望に新設税として「国際連帯税(国際貢献税)」を要望すること(注1)

 

2.外国為替取引に課税する通貨取引税につき、外務省が事務局となり政府内に省庁横断的な会議体を設置するとともに、その下に専門家・有識者及びNGOや市民団体の代表者等からなる『有識者検討委員会(仮称)』を設置すること(注2)

 

3.航空券税につき、航空事業が正常化された段階で入国税として実施すること(注3)

 

4.デジタル課税につき、消費地での新グローバル課税ルールと世界共通最低税率をG20財務相会合で取極めたが、この取極めによる新たな税収のX%を国際連帯基金(仮称)として徴収すること(注4)

 

5.林外務大臣におかれては、G7やG20の外相会合において、また国連総会など国際会議の場において、SDGs資金ギャップについて警鐘を鳴らすとともに、国際連帯税を共同して実施することを訴えていただきたいこと

以上

2022年7月26日

 

(注1)国境を超える経済主体に広く薄く課税するという税制の主旨から、国際連帯税のリストとしては、①通貨取引税、②航空券税、③デジタル課税等、が挙げられる。

 

(注2)

①     金融セクターはコロナ禍にもかかわらず利益を増殖させ、為替取引総額が増大していること、

          副次的には今日の超円安等を招いている投機マネーの抑制にも繋がる。

②     先の有識者懇談会でも、通貨取引税に関し検討されたが、十分に検討されないままに報告が出されている。

③     もし日本で導入ということになれば、先進国では初めてのことになり(中進国のブラジルやトルコで実施中)、それだけ国際的に注目を浴びることから、有識者検討会にノーベル賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏や開発経済の第一人者であるジェフリー・サックス コロンビア大学教授など世界の著名人からの助言も有効である。

 

(注3)既に出国税として、国際観光旅客税(利用者一律1,000円)が実施されているので、入国税として実施する。ちなみに、米国では国際通行税として出入国の都度$17.5(約2,280円)徴収されている。                 

 

(注4)日本政府は23年度税制改正でこの取極めへの対応を検討することになっている。なお、この新しい国際ルールによる税収については、カリフォルニア大学バークレー校のガブリエル・ズックマン准教授らが試算している。

【明日です】「グローバルヘルスの新たな展開と市民社会」

GHと市民社会

 

長引くコロナ禍や気候変動・自然災害、ロシアのウクライナ侵攻を引き金に、世界的な食糧危機や経済不安が続く2022年。G7およびG20サミットを目前とした、5月24日、日本政府はグローバルヘルス戦略を策定しました。本シンポジウムでは、このグローバルヘルス戦略を紐解き、パンデミックへの備えを確実にし、『すべての人に健康を』を実現するための政府・民間・公共・市民社会の新しい連携の在り方を考えます。相次ぐ世界が直面する危機や構造変化に対応し、戦略の内容を踏まえて、日本として国際保健をどうリードしてゆくのか、その中で日本の市民社会のあるべき姿を明らかにしていきます。

 

「グローバルヘルス戦略」策定記念シンポジウム

グローバルヘルスの新たな展開と市民社会

 

【日時】2022年7月19日(火)17:00~18:30

        会場参加 開場16:45 / オンライン入室開始16:50

(開始に遅れる場合、17:10以降は会場には入れませんのでご注意ください)

 

【会場】会場参加:参議院議員会館 101会議室

 オンライン参加:Zoom利用(申込の方に、前日および当日正午に参加のリンクを

送ります)

 

【プログラム】

1、開会および進行   迫田朋子氏(ジャーナリスト)

 

2、議員挨拶             武見敬三氏(参議院議員)

 

3、はじめに           「グローバルヘルス戦略とは」 

  南博氏(内閣府 健康・医療戦略推進事務局健康・医療戦略ディレクター)

 

4、基調講演 

「コロナとウクライナ危機の下でのグローバルヘルスの在り方とその展開」

  詫摩佳代氏(東京都立大学教授)

 

5、パネルディスカッション 「グローバルヘルス:市民社会の価値と連携の可能性」

進行:迫田朋子氏

パネリスト:

・有識者 詫摩佳代氏(東京都立大学教授)

・外務省 原圭一氏(外務省 国際協力局参事官 地球規模課題担当)

・市民社会 稲場雅紀氏(GII/IDI懇談会NGO連絡会代表、アフリカ日本協議会共同代

表)

・市民社会 米良彰子氏(世界の医療団日本 事務局長)

    *登壇者がオンラインで参加の可能性もあります。

 

6、討論、質疑応答

 

 7、閉会挨拶     伊藤聡子氏(日本国際交流センター 執行理事)

 

【主催】   GII/IDI懇談会 NGO連絡会

【後援】   外務省、グローバル連帯税フォーラム

【参加費】 無料

【定員】   会場参加50名 オンライン参加100名

【申込〆切】     2022年7月18日(月)

【お申込み】  https://forms.gle/T8pWWH9rBgptdV1s6 

 

【お問い合わせ】GII/IDI懇談会 NGO連絡会(事務局:公益財団法人ジョイセフ)

                           E-mail: gii@joicfp.or.jp 

【関連資料】

1)新グローバルヘルス戦略へのリンク

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/senryaku/r040524global_health.pdf 

 

2)内閣官房 健康・医療戦略推進本部 グローバルヘルス戦略推進協議会へのリンク

 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/global_health/kaisai.html

上記ページのうち「グローバルヘルス戦略推進有識者タスクフォース」の会合記録からは、戦略策定に向けてどのような討議がなされたかや、市民社会からの提出資料などについて確認できます。

 

3)「ポスト・コロナのわが国の国際保健外交」提言書へのリンク

https://www.jcie.or.jp/japan/wp/wp-content/uploads/2020/11/Japan-DAH-Commission_recommendations_final_j.pdf 

この新戦略の策定に向けた動機付けともなった「保健ODAの在り方を考える特別委員会」(委員長:塩崎恭久前衆議院議員)の提言書です。

 

4)日本政府「平和と健康のための基本方針」へのリンク

https://www.mofa.go.jp/files/000099126.pdf 

日本政府・外務省は1994年から5~8年ごとに体系的な国際保健政策を策定してきました。今回の新グローバルヘルス戦略の前の2015-20年の戦略が「平和と健康のための基本指針」です。

超円安、物価高騰と日本からの資金逃避>今こそトービン税を!

1930①

1930 ②

 

 

超円安が続き、物価値上がりが止まりません。インフレ抑制のため世界中の中央銀行が金融引き締めに踏み切る中、ひとり日銀が自らの首を絞めるような「金融緩和の継続」宣言を行なったため、ヘッジファンドなど国際投機筋が激しく円安攻撃を仕掛けているからです。すぐに打てる対策は為替介入とトービン税(通貨取引税)導入の検討です。

 

●沈没しつつある客船(日本丸)からわれ先に逃げ出す船員たち(日銀OB)

 

日経新聞電子版の名物コラムのひとつ「豊島逸夫の金のつぶやき」で、次のような驚くべき報告がありました。「(本年に入って)円を売っては買い戻す短期的売買を繰り返すヘッジファンドたちが、連戦連勝の勢いに乗って大胆に仕掛けてくる事例が急増し始めた…(こうした状況下で)筆者のプライベート面では、個人的に親しい日銀OBたちが、虎の子の退職金でドルや金を買うためのアドバイスを求めて来た。円という通貨の番人を40年以上勤めあげた人たちが、個人的な資産運用で円を持ちたがらないという傾向はショッキングであった」、と(注1)。

 

本年3月にはまだ1ドル115円台くらいだったのが4月に入るやどんどん安くなっていき、日銀OBたちは円の行く末がはっきり見えたので合理的な判断をしたと言えます。しかし、その行為はまるで国民の乗った客船・日本丸の沈没(の可能性)を察知した船員たち、すなわち日銀OBたちが国民を置いてきぼりにしてわれ先に逃げるようで、たいへん後味が悪いですね。

 

またこの日銀OBに続くように日本の個人金融資産が外国株や債券そして不動産、さらにこれらを含む投資信託にどんどん流れています(注2)。日本の富裕層や小金持ちたちはもはや日本の将来を当てにしていないようで、これでは「貯蓄から投資へ」と岸田総理がいくら叫んでも、日本に投資資金は回りません。

 

●円の適正価格はいくらか? 90円74銭または110円前後

 

以前にも述べましたように、為替相場を決めるのは、次の3つ要素です。①貿易、②金利差、③ヘッジファンドなど投機筋(池田雄之輔『円安シナリオの落とし穴』日経プレミアシリーズ)。ところが、この間経済紙やオンラインでの(金融系)エコノミストたちの主張は、③がすっぽりと抜け落ちています。例えば、この間オンライン投稿数が最も多いみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏の円安に関する所論は、巨額の赤字貿易があり、円だけがマイナス金利なので、「今の円安はファンダメンタルズに沿った動きである」として、投機の「と」の字もありません(注3)。

 

わずか3か月で円相場が115円台から135円台へと約20円、17~18%も下落してしまったことを①と②だけで説明するのはあまりに非論理的ではないでしょうか。だからでしょうか、彼の分析では円安を止めるための対策は取りようがなく、「基本的にはFRBの正常化プロセスがつまずくことでしか円安は止まりようがないだろう」と言う始末です。

 

つまり、今日の円安の20円分は基本的にヘッジファンドなど国際投機筋の円安攻撃によってもたらされているのですが、ではそもそも「ファンダメンタルズに沿った」相場の適正価格はいくらでしょうか。

 

以前日経新聞の記事に載った購買力平価から導き出された価格では「110円前後」というものでした。さらに、米銀のバンク・オブ・アメリカ(バンカメ、BofA)の分析によれば、ファンダメンタルズに基づくBEER(均衡為替レート)モデルに示す適正価格は、何と「約49%高い90円74銭と推定される」(円相場1ドル=135円25銭、6月24日)とのこと(注4)。

 

どちらのレートにせよ、現在のドル円相場は20円~40円も円安に振れており、この要因として上記①と②だけでは説明がつかず、従って投機筋による仕掛けという③によってもたらされていることが分かります。このことは、投機筋を封じ込めることができれば相当円安を防ぐことができることを意味します。

 

●物価値上がりは第2ステージへ、即効性のある政策=トービン税提案を

 

電気料金が毎月のように値上がりし、他の商品も再値上げ、再々値上げという状況が続いていますが、実はこれからが物価高騰の本番になると言われています。そしてこの背景には米国と日本の金利差が一層拡大することを射程に入れた投機筋の引き続く円安攻撃があり、輸入物価の高騰が予想されるからです。

 

どうすればこの円安を防ぐことができるかですが、一つは貿易を黒字化させること、二つは日銀も金利を上げること、三つは投機筋の仕掛けを止めることです。が、前二者を短期間で実現するには困難で、即効性があるのは投機抑制です。まず円買いドル売りの為替介入を図り、しかしこれだけではヘッジファンド等はギブアップしないでしょうから、2014年に中国の人民銀行が行ったように(注5)、日銀も当局も「トービン税(通貨取引税)導入の検討」を宣言すべきでしょう。まずは投機筋に対して、断固として円相場を守に抜くという態度を示すことです。

 

現在投機筋は「円キャリー取引」や「円空売り」等(円安になるほど儲ける)という仕掛けとは別に「日本国債売り」(日銀が円安に耐え切れず金利を上げれば儲ける)という手法でも仕掛けています。ここら辺の分析は、金融系エコノミストたちはまったく行ってなくて、オンラインでは野口悠紀雄・一橋大学名誉教授だけが行っているという有様です(注6)。

 

いずれにせよ、この夏から秋にかけて、米国金利さらなるUP⇒投機筋の円安攻撃激化⇒いっそうの円安の進展⇒さらなる消費者物価の高騰という道筋が見えていますので、トービン税(通貨取引税)議論が復活してくることは間違いありません。申すまでもなく、トービン税(通貨取引税)が実施されればその税収も半端なものではないでしょうから、国際連帯税的な要素として制度設計することが可能だと思います。

 

(注1) 【日経】「日銀は永遠のハト派」ヘッジファンドは140円狙い

(注2)【日経】家計資産、脱「預金」の兆し 物価高・円安 防衛急ぐ

(注3)【東洋経済】今、為替を円安へと突き動かしているものは何か

(注4)【Bloomberg】円の適正価格は90円74銭、日銀がタカ派に転じれば下支えに-BofA

(注5)【日経】中国、「トービン税検討」でさざ波

(注6)【現代ビジネス】金利抑制を巡る日本銀行と海外ファンドの死闘、制するのはどちらか

 

※写真は、7月4日BS-TBS「報道1930」での「日銀“異次元”死守のツケ 海外ファンドとの攻防」から(動画:前半はウクライナ情勢で16分頃から)

 

 

【ご案内】勉強会「新型コロナで大きく変わる『国際保健』のルールと仕組み」

新型コロナですが、ここにきて感染者が増えてきました。感染力がより強いオミクロン株「BA.5」の広がりに関係があるようです。ウイルスに国境はない!ですね。対策をどうするか、「NGO-労働組合国際協働フォーラム」(28組織参加)の勉強会です。グローバル連帯税フォーラムからも資金調達の面からプレゼンをします。どうぞご参加ください。

 

     <NGO-労働組合国際協働フォーラム>勉強会
  新型コロナで大きく変わる「国際保健」のルールと仕組み

=「日本とは関係ない」では済まない「パンデミック対策」の現実とは?=

 

◎日時:7月12日(火)15:00~16:00

 

◎参加方法:
 ・「NGO労組国際協働フォーラム」参加団体の皆様はどなたでも参加可能です【⇒グローバル連帯税フォーラムも参加団体です】
 ・以下のフォームに所定の事項をご記入の上、送信ください。
  フォームへのリンク
  【⇒「所属」のところに「グローバル連帯税フォーラム」とお書きください】

 

◎お問合せ
 NGO労組協働フォーラム エイズ等感染症グループ
  事務局 (特活)アフリカ日本協議会 
  メールアドレス:ajf.globalhealth@gmail.com 電話:03-3834-6902

 

★新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、日本を含め、世界全ての人の健康や生活の在り方に大きな影響を与えています。私たちは「コロナ」により、ともすれば忘れがちだった「感染症」の脅威に正面から直面することになりました。

 

★気候変動や生物多様性の喪失により、パンデミックの脅威は今後もますます大きくなることが予想されます。国際社会では、増大するパンデミックの脅威に対処するため、WHOの枠組みでは2024年をめどに「パンデミック条約」の制定が、また、G20の枠組みでは早期の「パンデミック対策・対応金融仲介基金」の設立が検討されています。これらの国際的なルールや機関は、今後、私たちの生活や取り組みにも影響を与えるものとなります。また、次にパンデミックが起きたときに、これらの仕組みがパンデミックを封じ込められるかどうかは、私たちの生活や生命をも左右する重大な問題になりえます。

 

★この勉強会では、今「パンデミック」をめぐって起こっている国際社会の議論や取り組みを紹介するとともに、これらの動きに関与しているNGO、市民社会の主張を紹介し、ディスカッションできればと思います。ぜひご関心の方々のご参加をお願いいたします。

 

<登壇者>
●国境なき医師団日本 金杉詩子さん
●グローバル連帯税フォーラム 田中徹二さん
●アフリカ日本協議会 稲場雅紀さん

円安危機水準に、高笑いの国際投機筋、今こそ通貨取引税が必要

投機筋の円売りポジション

 

昨日(6月14日)の日経新聞朝刊の一面トップは「円安 98年危機以来の水準 一時135円台前半」との大見出し(注1)。記事は「…金融不安で『日本売り』に見舞われていた1998年以来、約24年ぶりの円安・ドル高水準に逆戻りした」と続きます。

 

24年ぶりの円安、異次元の金融緩和による破綻の着地点見えず

 

1998年と言えば、日長銀や日債銀が破綻した年ですが(前年には拓殖銀行、山一証券が破綻)、この金融危機の処置を間違えれば日本発の「世界金融危機の引き金になる」のではないかという恐怖が当時の関係者にはあったようです。大蔵省(当時)の担当官であった故志賀櫻氏が著書『タックス・ヘイブン』(岩波新書)で顛末の一端を描いています。

 

80年代のバブル経済の最終的破綻が同年に現れ、日本売りともいえる円安に見舞われました。今度の超円安は異次元の金融緩和による破綻の現れとも言えますが、いまだ最終着地点を見出すことができません。まだまだ円安相場が続きそうだからです。

 

●為替相場を決める3要素:ファンダメンタルズと投機筋

 

ところで、為替相場を決めるのは、次の3要素です。①貿易、②金利差、③ヘッジファンドなど投機筋(池田雄之輔『円安シナリオの落とし穴』日経プレミアシリーズ (注2))です。この間マスコミではもっぱら①と②でしか円安を説明していません。ところが、この2か月ほどで20円も急激に円が下落した理由としては、投機筋による仕掛けしか考えられません。

 

というのは、物価や経済状況からみた円の理論値は110円前後という試算が出されています(注3)。これは経済のファンダメンタルズである①と②で見ると110円前後になる、ということを意味しているのではないでしょうか。だが実勢は135円前後なので、それを説明するには投機マネーの存在ということになります。では、投機マネーはどれだけ動いたのかと言いますと、上記池田本から類推するに数十兆円規模(!)のお金が動いていると思われます。

 

●投機筋が狙い撃ち「サンキュー、ミスタークロダ」

 

ところが、ようやく一昨日(13日)の日経電子版に投機筋を分析した記事が載りました(注4)。その手法は、低金利通貨(円)を売って、高金利通貨(ドル)を買う「キャリー取引」です。この取引は円高になってしまうと損失を出しますが、日銀・黒田総裁が円安を確約したのも同然の政策を取っているので、盛んに行われるようになっているのです。このほかに、円安が進めば進むほど利益が上がる空売りを仕掛けているヘッジファンド等も当然存在するでしょう。

 

米国はじめ欧州でもインフレ対策のために金利アップを実施する、またはしようとする中で、一人日本だけが金融緩和を続けると宣言し、「円安は日本経済にとってプラスだ」などと誓ったので、円安を回避できなくなったのです。かくして「投機筋が安心して円売りを仕掛けられている」状況となり、「インフレを巡り世界の市場が動揺に包まれる中で、円を売る取引が利益を生む確実性の高いトレードと捉えられており、投機筋に狙い撃ちにされている格好だ」と記事は述べています。

 

かくて「…国際通貨投機筋が円安で大もうけの話は市場内に拡散され、…『日銀は永遠のハト派』『サンキュー、ミスタークロダ』との声」(4月14日付日経電子版・コラム「豊島逸夫の金のつぶやき」)が為替市場であふれているようです。

 

●生活難を招く円安をどう止めるか? 通貨取引税が有効 G7サミットでも議論を

 

この円安の結果、大いに困るのは物価高に喘ぐ私たち庶民です。この間生鮮食料品は12.2%のアップ、電気代は21%アップというように、家計にとって不可欠なものの価格が高騰しています。一方4月の実質賃金は 1.2%減少しており、また年金もこの4月より目減り傾向となりました。

 

何よりもこの円安を食い止めなければなりませんが、基本的には日銀・政府の異次元金融緩和政策(量的緩和やマイナス金利など)を修正し、正常化していくことでしょう。こうした基本政策のレールの上に、短期的、中期的取り組みを進めることです。

 

超短期的には「円買いドル売り」の為替介入を行うことでしょう。しかし、これだけでは投機筋に打ち勝てませんので、通貨取引税検討と併せてアナウンスすることです。2016年3月中国の人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は突如、トービン税(通貨取引税)導入を検討すると公表し、世界を驚かせました。当時人民元の下落圧力が強まり投機筋の仕掛けに歯止めをかけるべく当局が為替介入を行ったのですが、その分外貨準備金が相当減少してしまい、これを防ごうとしてのトービン税検討というアナウンスメントでした。

 

よく通貨取引税導入は一国では無理だと言われていますが、超々低率の税率を課すのであれば--例えば税率0.0005%(1億円の取引に500円の課税)--金融関係者の反対も一定避けることができます(投機筋が20兆円の円売りを行えば1億円の税収に)。重要なのは、政府が投機筋の仕掛けは許さないという強い意志を示すことです。

 

来年は日本が議長国となるG7サミットが広島で開催されます。日本政府としては円安阻止のため投機マネーを抑制する通貨取引税とは別に、コロナ・パンデミックや飢餓対策のための国際連帯税としての通貨取引税の共同実施を呼びかけるべきです。コロナ禍やウクライナ戦争による食料危機=飢餓人口の増加という事態に対し、途上国・貧困国への資金支援はいくらあっても足りないからです。

 

(注1)【日経】円安、98年危機以来の一時135円台前半 競争力低下映す

(注2)【日経プレミア】円安シナリオの落とし穴

(注3)【日経】円下落 理論値より大幅安

(注4)【日経】円、一時『日本売り』以来の安値 投機筋狙い撃ち

国連事務総長「前例のない飢餓と貧困の波を引き起こす恐れ」

ちょうど世界の貧困根絶でホワイトバンド運動が日本でも流行っていた2005年頃、1日1.25ドル未満で生活する「極度の貧困」につき、「毎日お腹をすかせて床に就く状態」と表現した記憶があります。お腹がすいても食べるものがなく、それが高じて栄養不良になることが「飢餓状況」です。この20年ほど途上国の経済発展やミレニアム開発目標(MDGs)や持続可能な開発目標(SDGs)による運動もあり、「極度の貧困」「飢餓」人口が確実に減少してきました。ところが、コロナ・パンデミックによりその傾向がすっかり逆転してしまいました。

 

<世界の飢餓人口推移>
・2015年(約7.9億人)⇒2019年(約6.5億人)⇒2020年(約7.2-8.1億人)・・⇒2022年(約16億人?)

 

そして本年2月ロシアによるウクライナ侵略(戦争)は、両国が小麦など穀物の最大の輸出国であり、これが滞っていることにから、「94カ国の16億人が影響を受ける」恐れが出てきました(注1)。このまま戦争が長引けば、国連事務総長が言うように「前例のない飢餓と貧困の波を引き起こす」ことになりそうで大変懸念されます。16億人と言えば、地球人口の5人に1人です。

 

実際、各国は食料危機から自国民を守るために食料等の輸出禁止を打ち出す国が相次いでおり、それが20か国に及んでいるとのこと(注2)。世界でも最大級の穀物・食料輸入国である我が国にとっても、原油高と円安と相俟ってあらゆる物価が値上がり状況となっています。賃金上がらず、年金切り下げですから、私たちの生活も大変厳しいものになりつつあります。

 

まず世界と我が国の食料危機を止めるためにロシアのウクライナからの撤退と停戦を1日も早く実現させることです。我が国がこのたび国連安全保障理事会の非常任理事国に選出されたのですから、ロシアに直接乗り込んで談判するくらいの気迫で外交力を発揮してもらいたいものです。
以下、食料危機対策や途上国支援、国内財政立て直しのための施策を考えてみます。

 

1)穀物や原油先物市場に流れ込んでいる投機マネーを抑制するために(市場参加の)証拠金の引き上げや投資額(建玉)の制限を行うこと

 

2)円安を抑制すると同時に(飢餓や医療・保健対策など)途上国支援を行うため、外国為替取引税(通貨取引税)を国際連帯税として実施すること

 

3)国内財政を立て直すために金融所得課税の増税と金融資産課税の新設を行うこと

 

(注1)
【共同】黒海封鎖は「16億人に影響」 国連報告書、食料危機に懸念表明
 ロシア軍が黒海を封鎖し、ウクライナ産の小麦など穀物の輸出が滞っている問題で、国連は8日、報告書を公表し「穀物価格の上昇など、94カ国の16億人が影響を受けている」と指摘した。グテレス事務総長は「前例のない飢餓と貧困の波を引き起こす恐れがある」と強い懸念を表明した。
…中略
 ロシアの侵攻以降、黒海沿岸の港からの輸出が大幅に停滞し、世界的な食料の供給不安を招いている。(共同)

 

【TBS】ウクライナ侵攻で食糧危機深刻化 「世界で16億人が影響」と国連発表(動画あり)

 

(注2)
【日経】食料輸出規制、20カ国に 侵攻が自国優先に拍車

時代認識を考える>コロナと戦争で激変した世界、危機と脅威

グローバル連帯税フォーラムの第12回定期総会が、来る6月25日に開催されます。総会議案書の作成に当たり、時代認識について考えてみたいと思います。
 
●人類に対する脅威的事態の発生:コロナ・パンデミックとウクライナ戦争(核)
 
 
・この2、3年の世界の最大の出来事:新型コロナウイルスによるパンデミック(感染者5億人を超える)とウクライナ戦争(ロシアの国連憲章や国際条約破っての侵略)
・コロナはもとより、プーチン大統領の核兵器使用宣言(→核による第3次世界大戦の恐れ)によって人類に対する脅威的事態を呼び起こし、世界の様相も激変。
 
 
●飢餓8億人、難民・避難民1億人>20年間の世界の貧困改善傾向が逆転
 
 
・国連WFP(世界食料計画):現在世界では8億1100万人が慢性の飢餓、過去最大の2億7600万人が餓死の瀬戸際に。さらに今年中に2000万人増加と予測。
・ウクライナとロシアは世界の穀物輸出の約3割。戦争が長期化する傾向となり、食料危機も長期化する恐れ。
・UNHCR(国連難民高等弁務官):ウクライナ難民600万人はじめ難民・避難民が急増、史上初の1億人超え。
 ⇒グローバル化による経済成長もあってこの20年間貧困・飢餓状況は改善されてきたが、それが逆転し悪化傾向に。
 
 
●グローバル化への幻想と非民主主義国家の増加
 
 
・幻想:グローバル化によって途上国が経済成長し豊かになれば、「民主主義が広がっていくはずだ」。しかし、現実は「格差の拡大による先進国、発展途上国を問わない社会の分断で、民主主義に対する疑念をもたらし…むしろ中国主導の権威主義が広がっている」(以上、5月14日付日経新聞コラム「大機小機」)。
・スウェーデンのヨーテボリ大学V-Dem研究所の「民主主義報告書」:
 自由民主主義体制 32ヵ国(世界人口の14%)← 2010年には41ヵ国だった
密室型独裁体制 87ヵ国(世界人口の68%)
 選挙独裁体制 60ヵ国(世界人口の19%)  ―以上、SWIswissinfo.ch(21年5月3日)より
 ⇒グローバル化は金融化と市場原理主義の下に進められ、その結果先進国でも中間層が先細りとなり政治的民主主義も大きく後退。コロナによって、世界的にSDGs指標の貧困や格差が目に見えて悪化。
 
 
●国際連帯税による二重の役割:SDGs資金調達と投機抑制
 
 
・SDGs達成のための資金ギャップ2.5兆ドルだったのが、コロナ禍で4.2兆ドルに拡大。世界のODA総額は1789億ドル(2021年)、とうてい間に合わず
 ⇒OECD「世界の金融資産378.9兆ドル、その1.1%で資金ギャップは解決!」
・金融資産動員の第一歩は、外国為替取引への課税。併せて、巨大IT企業等グローバル企業への課税。これらを国際連帯税としてグローバルに実施。
 ⇒為替取引課税は同時に投機マネーを抑制する機能も(原油・穀物市場も投機マネーが流入し、価格高騰を演出)。

参院外交防衛委で国際連帯税質問(井上議員)、外相「革新的資金調達は重要と認識」

井上議員林外相
                井上議員       林外務大臣
 
 
今月19日の参院外交防衛委員会で共産党の井上哲士議員が、国際連帯税について質問してくれました。質疑の要点を述べます。
 
 
※全発言はこちらから、5/19外交防衛委をクリック(1:41:40あたりから国際連帯税の質疑がはじまります)
 
 
★井上:政府はSDGs推進のために革新的資金調達を挙げているが、それはどうしてか?
☆外相:SDGs達成のためには年間2.5兆ドル不足と言われている。コロナ禍でそのギャップはさらに拡大しているとの推計もなされている。この不足分を埋めていくには、従来の資金調達のみでは困難であることから、革新的資金調達は重要だと認識している。
 
 
★井上:国際連帯税について、2010年度から10年間税制改正要望をしてきた。その経過の上に「SDGs達成のための新たな資金を考える有識者懇談会」が設置され(実施に向けての)期待が大いに高まった。が、懇談会ではコロナ禍で日本経済が打撃を受けているからと言って新税を見送ることにしてしまった。逆であって、コロナ禍を理由に革新的資金調達をやめたら、ますます資金不足になる。国際連帯税も先のデジタル課税のようにコロナ禍だからこそ必要性は高まっていると考える。
☆外相:10年間要望してきたが、制度の具体化に至らなかった。そこで懇談会の提言を踏まえ、令和3年度、4年度と要望提出を見送った。が、冒頭申した通りSDGs達成のための資金不足を埋めるためには革新的資金調達は重要と考え、外務省としては引き続き適切な資金調達の在り方を検討していきたい。
 
 
★井上:2019年5月のODA特別委でTICADに向け全会一致で「SDGs達成に向け国際連帯税など革新的資金調達メカニズムを検討し、我が国が議長を務めるG20等の機会も活用し、議論を行えるように努めること」と決議した。ところが、懇談会はこうした経過を踏まえることなく逆の結論を出してしまった。今やコロナ禍において国際連帯税の必要性はいっそう高まっているのではないか。(外務省は)しっかり検討し税制改正要望に上げるべきだ。
☆外相:懇談会の提言はあくまで20年での判断だ。革新的資金調達の必要性、重要性は変わっていない。状況を踏まえながらしっかり検討していきたい。
 
 
★井上:国際連帯税を(元国際連帯税議員連盟会長として)よく知る外相であるので、リーダーシップを強く期待したい。
 
 
【グローバル連帯税フォーラムのコメント】
 
 
この外相答弁は極めて重要です。今日コロナ禍はもとより、ロシアのウクライナ侵略という野蛮な行為もあり、世界的に難民が激増し(1億人を超える!)、食料危機も現実の問題となってきました。世界の弱者や貧困国への支援は急務です。しかしながら今までのような各国の(任意の)ODA拠出だけでは、上記林外務大臣も言うように限界です。ドナー国自身がコロナ禍やインフレで莫大な借金を抱えてしまい、まったく財政的に余裕がないからです。
 
 
そこで国際連帯税など革新的資金調達メカニズムが必要となってきます。危機下にあってもしっかりと儲けている金融関連企業から、巨大IT企業等のグローバル企業から、地球規模課題対策のための資金として国際連帯税を徴収し(グローバル化市場の使用料と言ってもよい)、ODAとともに上記課題に使用していくことが求められています。
 
 
グローバル連帯税フォーラムも23年度税制改正要望にあって再度政府に対し国際連帯税新設を求めていきたいと思います。