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金融所得課税:財務省「年間所得が数億円超の富裕層への増税検討」だが…

1億円の壁

 

【金融所得課税10%アップで約3兆円の税収を得ることができる】

 

●日本の所得税制は累進性が途中で崩れ、富裕層が有利に

 

昨日(11月8日)の日経新聞によると、財務省は年間所得が数億円超の富裕層への増税の検討に入ったと報じています(注1)。これは例の「1億円の壁」と言われている、所得が1億円を超えると税負担率が下がってしまうという(累進課税であるべき)所得税の「不公平・不公正性」を是正しようという狙いがあります。

 

実際、「財務省が10月上旬の政府税制調査会(首相の諮問機関)で示したデータによると、所得税と社会保険料の負担率は所得5千万超~1億円の層で28.7%と最も高い。所得5億超~10億円は21.5%、50億超~100億円では17.2%となり、300万~400万円の17.9%より低くなる」(同日経新聞 図参照)となっています。

 

なぜこうした事態になっているかと言いますと、次の通りです。勤労者などの「給与所得」は所得が増えるほど税率が上がっていく「累進課税」で、最高税率は4,000万円以上の45%(+地方税10%)ですが、他方、株式売却益や配当などの「金融所得」は一律15%(+地方税5%)という「分離課税」で、従って4,000万円以上の所得があっても「金融所得」が多いほど税率は下がってきます。その分岐点が1億円所得なのです。

 

●政府・与党は課税強化に向かうか?

 

金融所得課税の不公平・公正性については以前から指摘されており、とくに2019年消費税の10%へのアップ時には財務省も相当前向きでしたが見送られてきたという経過があります。また、岸田首相が誕生した当初「金融所得税の強化」を訴えていましたが、たちまち前言を翻す事態となっています。こうした中での今回の財務省の動きですが、いろいろ制約がかかりそうです。

 

そもそも自民党の税制調査会の動きがどうなのか、実施する気があるのか、です。なにしろ「貯蓄から投資へ」というのが岸田式「新しい資本主義」のキャッチフレーズですので(ぜんぜん新しくないと思いますが)。

 

ともあれ、記事では、①政府が進める創業支援に逆行しないこと、②所得5億円以下の層は土地・建物の売却益が多く固定資産税がかかることを考慮すること、③給与所得が大半の人はすでに高い税を払っているので調整すべきこと、④株売却益への課税強化は幅広い層に影響が及ぶので線引き等を検討、等々課題点が挙げられています。

 

●様々な条件が付き税収は縮小か?金融取引税の新設なども必要

 

では金融所得税を10%アップしたらどのくらいの増税になるかと言いますと、約3兆円になります(2019年の税収で 注2)。同税を分離課税ではなく総合課税としますと35%アップとなりますので税収は10兆円を超えるのではないでしょうか。10兆円超となりますと、消費税の4%分ほどになりますので、税収ボリュウームは十分と言えましょう。

 

しかし、総合課税化は激変となりますので、当面は10%程度のアップがよいのかもしれません。それでも政府・与党が課税強化に向かうとしても、上記のようにいろいろ条件が付いて、思ったほどの税収が上がらない恐れもあります。ですから、1000兆円を優に超える財政赤字を解消していくためには、所得税や法人税の累進課税の強化や金融取引税の新設などが必要となってきます。

 

驚いたのは、今回の22年度第二次補正予算において一晩で4兆円も積み上げ、しかも29兆円中22兆円を赤字国債で賄うという政府の行いです。英国では予算の裏付けのない安易な減税政策が財政の悪化を招くとして市場からの反乱にあい頓挫しましたが、日本の赤字垂れ流しは英国の比ではありませんので、近い将来が心配です。

 

●諸富徹:京都大学大学院経済学研究科 教授の「ひとこと解説」

 

図に示されているように、100億円の所得を得る人の所得税+社会保険料の負担率が、400万円の所得を得る人の負担率より低いという状況は、いくらなんでも正当化し難い。本来、累進所得税の目的は所得を再分配することだ。これでは税制が、格差の拡大を助長しかねない。所得税のこうした問題を是正するため、新興企業支援を施したうえで、一定の所得(5億円とか10億円)以上に対象を絞った課税強化なら、望ましいといえよう。逆進的な消費税は、すでに数次にわたって税率が引き上げられてきた。今後のさらなる引き上げも議論しなければならない中、再分配を担うはずの所得税の機能不全がこれ以上、放置されていてよいはずがない。

 

(注1)
超富裕層に増税検討 財務省「1億円の壁」是正目指す
(注2)
金融所得課税強化の株式市場への影響をどう予測するか

 

 

円安ドル高で物価高騰は止まらず、トービン税でヘッジファンドと戦うべき

149円

 

引き続く円安ドル高によっての物価高騰は止まらず、これに対し政府は「投機筋による過度な変動には断固たる措置を取る」(鈴木財務相)として先月為替介入を行いました。一方、金融系エコノミストや経済評論家は投機筋の動向を所与のものと受け入れ、状況解説するのみです。これに対し、私たちはトービン税による投機筋との戦いを提案しています。

 

●国内企業物価指数9.7%も上昇(コアCPIは+3%)、その50%強が円安要因

 

急速な円安が進み、政府・日銀は先月145円90銭の段階で為替介入を行いましたが止めることができず、150円台の攻防に入ろうとしています(10月17日149円台に)。こうした円安は輸入物価を高騰させ、9月には円換算で前年比+48.0%と跳ね上がり、この結果国内企業物価指数は9.7%も上昇してしまいました。この上昇を受け、生鮮食料品を除くコアCPI(消費者物価指数)は前年比+3%にもなりました。そして10月には6700品目が値上がりし、さらに円安はなお続く傾向ですから、有効な対策がなければまだまだ値上げが続くということになります。

 

この輸入物価高騰はエネルギーや穀物価格の上昇にもよりますが、今日ではますます円安による影響が強くなってきています。その影響は上昇分の5割強にも上っています。

 

●私たちの生活に関係する消費者物価高騰の大元を辿れば米国の高インフレに

 

翻って、そもそもなぜこうした事態になっているのかを探ってみましょう。まずなぜ円安になっているのか。それは日米の金利差によります(米=高金利、日=低金利どころかマイナス金利)。ではなぜ米国FRB(連邦準備制度理事会)は高金利政策を取っているのか。それは高インフレを抑制するためです。

 

つまり、一連の事態は次のような図式となります。【米国高インフレ⇒米国高金利(日本マイナス金利)⇒円安(ドル高)⇒日本輸入物価高騰⇒日本消費者物価高騰】

 

以上から、「日本消費者物価高騰」要因の大元を探っていくと「米国高インフレ」に辿り着きます。ではなぜ高インフレに? 結論的に言いますと、このインフレをもたらした最大の原因は、超がつくくらいの過剰流動性、つまりジャブジャブのお金が市中・市場に提供され、コロナ禍では当初使う場がなかったため過剰貯蓄がなされたのです(注1)。そのお金の出どころですが、基本的に超金融緩和による株高とコロナ対策のための複数回にわたる給付金です。この結果、ただでさえインフレ傾向だったのが、コロナ禍が下火になるとともに爆発的に需要が高まり、インフレも急速に高まったのです。

 

●米高インフレを呼び込んだ株式バブル、金融取引税による抑制必要

 

米国の株高ですが、2008年のリーマンショック以降FRBはゼロ金利や低金利を取り、また量的緩和政策をつい最近まで取り続け、すっかりバブル状況ともいえるような事態になっていました。とりわけGAFAなど大手IT企業の時価総額が大幅に上昇しました(22年1月3日に最高値)。今日高金利政策によって半ば強制的にバブルを弾けさせているのですが、「FRBは株価が下落することが望ましいと考えている」(ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁)とまで言われています。

 

米国が高インフレを避けるとすれば、2010年代の早い時期から超金融緩和政策を転換させるべきだったのですが、いったん決めた政策はなかなか転換できない(ウォールストリートなどのステークホルダーの圧力により)という現実があります。だとしたら、その政策遂行にブレーキがかかる仕組みを埋め込んでいくことが必要だったのです。この場合は、できるだけ過剰流動性を抑制する金融取引税です。

 

米国の与党・民主党内で金融取引税を主張する有力議員が何人もおり法案を作成していますが、どちらかというと税収を得るための金融取引税でした。今後金融市場の正常化というか安定化のための金融取引税という主張が出てくるではないかと思われます。

 

●通貨の著しい変動は「市場の失敗」なのにG7は「注意深く監視する」だけ

 

さて、いわば米国の一方的理由でドル高が取られ、その結果日本円のみならずユーロも韓国ウォンもというように、世界各国が通貨安に見舞われています。この背景には、金利差が激しいドル/円相場が典型ですが、この差を利用してヘッジファンド等投機筋による通貨安攻撃があるのです。こうした事態に対し、今月G7ならびにG20財務相・中銀総裁会議が開催されました。

 

その対策について、G7は次のような声明を発しました。「声明は『多くの通貨がボラティリティー(変動率)の高まりに伴い著しく変動している』と指摘した。その上で、為替レートは市場で決定されるのが原則だとしつつ、過度な変動や無秩序な動きによる経済への悪影響に言及したG7の従来の合意を再確認」し、「注意深く監視していく」とのことです(注2)。

 

つまり、為替レートは市場で決定されるはずだが、そうはなっていない事態とは「市場の失敗」ではないでしょうか。だとするならば、監視しているだけではどうしようもなく、参加国どうしによる協調政策が必要でしょう。例えば、かつてのドル高を抑えるためのプラザ合意による協調為替介入ということも考えられますが、当時とはまるで状況が違いますので、為替取引への課税、つまりトービン税が有効ではないでしょうか。同税は、今から50年前の1972年、ノーベル経済学賞受賞者でもあるイェール大学のジェームズ・トービン教授(当時)が「一国の金融政策の自律性を獲得するためのスキーム」として提唱されました。

 

●国際金融「トリレンマ論」はトービン税で克服でき、税収を有効に活用できる

 

ところで、内田稔・高千穂大准教授は国際金融の「トリレンマ理論」を用いて、現今の円安問題について次のような論考を記しています(注3)。

 

まず「国際金融のトリレンマとは、1)為替相場の安定、2)金融政策の独立性、3)自由な資本移動──の3つを同時に満たすマクロ経済的な枠組みや制度は存在せず、どれか1つを放棄しなければならないことを指す」こと。それでこの枠組みでドル/円上昇に歯止めをかける選択肢を考えると、次の2つ。「1つは、金融政策の独立性を放棄することだ。このケースでは、米国に倣って利上げに踏み出さなければならない」というもの。「もう1つは新興国と同じく資本移動に制限を加えることだ。例えば、円安圧力つながる輸入や対外的な投資への制限がこれにあたる」。しかし、「日本にとって、どちらの選択肢も非現実的であることは明らかだ」、と。

 

では、どうすべきか。「消去法で考えて為替相場の安定を放棄する以外、日本には選択肢がない」「(世界のインフレが収束し、多くの中央銀行が金融緩和へかじを切るとか等々の)外部環境に変化がみられない限り、ドル/円はまだ、高値を目指す危険性が高い。率直に言えば、150円で止まるのかどうか、極めて疑わしくなってきた」、と内田さんは言います。つまり、手の打ちようがなく、150円で止まらないのではないか、というのが内田さんの結論のようです。

 

ウーム、困ったものですが、本当に円安を止める手段はないのでしょうか。あります。G7やG20のリーダーは、まずもって上記トリレンマ論で言うところの「自由な資本移動」がこれまで何度も行き過ぎた投機マネーの跳梁を招いてきたという「市場の失敗」を認識すること、その上でそれを克服すべく為替取引に課税し投機マネーを抑制するというトービン税を協調して実施することです。

 

そういう意味で、イエレン米財務長官の「市場で決定される為替レートがドルにとって最良の体制であり、それを支持する」(注4)という発言はとうてい承認することはできません。同長官は実はイェール大学でトービン教授(当時)の薫陶を受けた学研の徒であっただけに残念です。

 

ともあれ、G7やG20で協調してトービン税を実施すれば、投機筋の跳梁を大規模に抑制できるでしょうし、一国でも取引量が莫大ですので(東京市場の取引は1日当り65兆円にも上る)、税率をぐっと押さえれば実施可能でしょう。そして同税は税収が上がりますから、それを感染症・パンデミックや気候変動・脆弱国「損失と被害」に使用することができます。

 

ともあれ、米高金利による円安/ドル高そして物価高騰はいっこうに止まりませんので、引き続きトービン税の必要性を政府や国会議員、エコノミストやマスコミに訴えていきたいと考えています。

 

(注1)
【日経新聞】「過剰流動性」の正体は 問われるバイデン経済政策
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD00006_Q0A231C2000000/ 
【日経新聞】FRB「倍速利上げ」の賭け 3兆ドルの過剰マネー火種
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB067AS0W2A500C2000000/
(注2)
【時事通信】通貨の「著しい変動」懸念=国際金融市場を注視―G7財務相・中銀総裁会議
https://equity.jiji.com/oversea_economies/2022101300130
(注3)
【ロイター通信】コラム:「国際金融のトリレンマ」からみた円安、150円目指す動き濃厚
https://jp.reuters.com/article/column-minori-uchida-idJPKBN2R907P
(注4)
【ロイター通信】米財務長官「市場で決まるレートが最良」 ドル高批判受け
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN14EQ80U2A011C2000000/

 

※写真は「投機筋による過度な変動には断固たる措置を取る」と発言している鈴木財務相

気候脆弱国が炭素税、航空税、金融取引税などグローバル税を要求

パキスタンの洪水(テレ朝報道ステーションより)

パキスタンの洪水(テレ朝報道ステーションより)

 

今世紀半ばの干ばつ予想(日テレより)

今世紀半ばの干ばつ予想(日テレより)

 

9月20日から国連総会一般討論がはじまり、現在ウクライナ問題を軸に主要国が討論を行っています。一方、世界で最も気候(温暖化)危機に対し脆弱な国が、危機に対処すべく「損失と損害」についての文書を総会向けに準備しているとのことです。このことにつき英ガーディアン紙が報じていますので紹介します。

 

●気候変動「損失と損害」とは?

 

その前に、「損失と損害」について簡単に説明します。気候変動に関する途上国支援としては2つあり、それは温室効果ガスの排出削減のための緩和策と気候変動影響への適応策です。ところが、近年の気候危機は途上国が適応できる範囲を超えて、大干ばつや大洪水など甚大な被害をもたらしつつあり、途上国は「損失と被害」への補償も先進国に求めてきました。温室効果ガス排出が圧倒的に少ない途上国が、主に先進国からの温室効果ガス排出によってもたらされている気候危機の最大の被害者となっているからです。

 

この「損失と被害」について昨年のCOP26でようやく主要議題の一つとなり、脆弱国は具体的な支援につながる何らかの機関・基金の創設を求めましたが、合意できませんでした。ただ今後もこの実現に向けて協議を続けるということになり、今年のエジプトで開催されるCOP27では「損失と損害の基金の創設と資金動員」が突っ込んで議論されると思います。

 

そこで前もって国連総会という場で、島が沈んでしまう危機を有する島嶼国等の脆弱国が「損失と損害」に関する資金動員を図るための討論文書を用意しているということです。

 

●ガーディアン紙の記事

 

脆弱な国々は、気候がもたらす損失と損害の代償としてグローバル税を要求する

Vulnerable countries demand global tax to pay for climate-led loss and damage 

 -貧しい国々は、化石燃料の大口使用者と航空旅行に対する「気候関連および正義に基づく」課税を検討するよう国連に要求した。

 

世界で最も脆弱な国々は、気候危機によって被る回復不能な損失に対して、化石燃料や飛行機への新たな課税を含む緊急の資金調達を要求し、富裕経済圏に対抗する準備をしていることが、リーク文書で明らかになった。

 

異常気象はすでに多くの発展途上国に大きな打撃を与えており、さらなる大災害を引き起こすと予測されている。損失と損害、つまり、気候破壊の最も極端な影響に苦しんでいる貧しい国々をどのように支援するかという問題は、気候交渉で最も論争になっている問題の一つである。

 

世界で最も脆弱ないくつかの国は、今週の国連総会での議論のためのペーパーを準備した。それによると、貧しい国々は、発展途上国が被った損失や損害に対する支払いを賄う方法として、「気候関連と正義に基づく」グローバルな税の要求のための準備をしているようだ。

 

その財源は、世界的な炭素税、航空旅行への課税、船舶が使用する汚染度が高く炭素集約的なバンカー燃料への課税、化石燃料採掘への追加課税、あるいは金融取引への課税によって調達される可能性がある。

 

討論文書では、それぞれの利点と欠点、そして世界銀行、国際通貨基金といった世界の開発銀行や民間セクターを通じて富裕国から資金を調達する選択肢を指摘している。

 

損失と損害の資金調達に関するすべてのオプションは、化石燃料の価格が高騰し、食糧価格が上昇し、世界中で生活費が危機的状況にある今、富裕国が同意することは困難であると思われ、…中略…(さらに)ロシアのウクライナ侵攻以降の地政学的な激動の中で、今年の協議はより険悪なものになりそうだ。

 

…中略…

 

アンティグア・バーブーダの国連大使で、小島嶼国連合の議長を務めるウォルトン・ウェブソン氏は、次のように述べた。「私たちは、負債と破壊の恐怖におびえることなく生きる資格があります。私たちの島々は、私たちが引き起こしたのではない危機の最も重い負担を負っており、専用の損失および損害対応基金を緊急に設立することが、持続可能な復興の鍵になります。私たちは、年を追うごとに極端になっていく気候の影響を経験しているのです。

 

全文はこちら⇒

Vulnerable countries demand global tax to pay for climate-led loss and damage

https://www.theguardian.com/environment/2022/sep/19/vulnerable-countries-demand-global-tax-to-pay-for-climate-led-loss-and-damage 

【財務省高官への手紙】超円安を止めるスキームとしてトービン税を!

 

 神田財務官

 

この間の急速な円安(ドル高)に対し、日本政府も多くのエコノミストも円安を前提として対策を立てようとしており、短期に為替変動を導いているヘッジファンド等投機筋への対策は立てられないままです。確かに投機筋は日米金利差を利用して円売り攻撃を仕掛けていますので、金利差を縮める政策、例えば長期金利規制(YCC=イールドカーブ・コントロール)の緩和は有効のように見えます。しかし、事はそう簡単ではなさそうです(詳しくは次回に説明)。

 

では投機筋の攻撃を直接抑止する方法はないのかと言えば、為替介入とトービン税導入が考えられます。後者については、投機筋からの徴税を(例えば)感染症・パンデミック対策のための資金として使うことができます。

 

ともあれ、以上の立場から日本政府の為替政策のポリシーメーカーである財務省高官に以下のような手紙を書きましたので、お読みいただければ幸いです。

 

 

 

【財務省高官への手紙】

 

財務省○○局長 様

 

お世話になっています。…略… 円安対策での提案です。ざっと目を通していただければ幸いです。

 

この円安ですが、日米金利差や貿易赤字による影響を背景として、具体的には為替市場でヘッジファンド等投機筋が売りを仕掛けており、それに様々な投資家が追随していることで実現しております。とくに8月26-27日のジャクソンホールでのパウエル-黒田発言以降、売りが売りを呼ぶ事態となり、145円近くまで下落しました。その上投機筋は日本国債へ6月に続いて再度売り攻勢を強めているようです。

 

こうした直近の投機筋の売りを止める方法としてはまず為替介入が考えられますが、それにも限界がありますので、今こそトービン税導入(準備)を考えるべきではないでしょうか。ご承知のように、中国では2014年、2016年と人民元への投機筋のアタックに対し「トービン税検討」を打ち出しファンド等をけん制してきたという経緯があります。

 

投機筋の攻撃は、日本のみに向けられているのではなく、EUのユーロ売りにも、さらにイタリアの国債売りにも向かっているようです。従って、日本政府からEUに呼びかけてヘッジファンド等投機対策を設置し、その対策ツールの一つとして「トービン税検討を行う」とのアナウンスメントを発してはいかがでしょうか。相当投機筋へのけん制となり投機抑制に繋がるのではないでしょうか。またアナウンスメントで終わるのではなく、逆にこうした事態を利用してトービン税導入を図ってみてはいかがでしょうか。税率は0.0001%という超々低率でも構わないと思います。

 

トービン税は税金ですので、税収が上がりますが、それを当面感染症等パンデミック対策のための資金としてもよいと思います。

 

以上でございますが、米国の金利上昇はまだ続き、投機筋のアタックもやむことがないと思いますので、日欧連携でヘッジファンド対策を行っていただければ両国・地域の人々は大いに助かることは間違いありません。どうぞご検討のほどよろしくお願いします。

 

※写真は、20数年のドル円相場の推移と9月8日「財務省、金融庁、日銀」3者会合後の記者会見に臨む神田真人財務官【BS-TBS「Bizスクエア」より】

 

超円安140円!続く物価高騰、即効性ある対策は為替介入とトービン税準備

円安が急速に進んでいる

 

●超円安要因は日米金利差を利用したヘッジファンド等投機筋の円売り攻撃

●日銀の大規模金融緩和と国家財政の立て直しの前に、為替介入とトービン税準備が必要

 

1、円安による物価上昇はこれからが本番

 

7月19日に放映されたBS-TBSの『報道1930』で元日本銀行理事の早川英男氏は次のように発言していました。「…物価が上がるのはこれからなんです。今までの物価上昇は原油高とか、小麦が上がったりの影響で、この最近の円安が物価に表れるのは夏から秋くらい。今の物価上昇は1ドル120円くらいの円安の分。その後の分はまだまだ全然反映していない。物価はこれからまだまだ上がる」(注1)。

 

実際、帝国データバンクの調査によれば、「今年8月末までに計2万品目が値上げされ、10月は単月で最多の6532品目の値上げ計画が明らかになった。CPI(消費者物価指数)の上昇率は今秋に3%を超えるとの予想もある」(注2)とのことです。

 

食料品値上げはもとより、電気代も東京電力では、13カ月連続の値上げで、標準的な家庭の1カ月当たりの料金は8月に比べて8円高くなり9,126円となります。これに加えてガス代も上がっていくでしょうから、今年の冬は厳しくなりそうです。

 

2、インフレは預金を減らし、税金を取られるのと同じ>拡大する格差

 

少々のインフレがあっても、連動して賃金や年金が上がっていけばよいのですが、日本の場合そうはなっていませんので、生活レベルが実質的に低下してきています。さらに私たちのなけなしの預金も物価上昇分だけ価値が減少していきます。

 

一方、インフレで得するのは借金をしている側です。どれだけ物価が上がっても、返済する金額に変化はないので、借金の実質的な負担は物価上昇分だけ軽減されます。では国内で一番借金を背負っているのは誰かというと、1000兆円を超す負債を有する政府です。「つまり、インフレが進むと国民の預金から政府に所得が移転するので、これは国民の預金に税金をかけ、政府債務の返済に充てたことと同じになる」(注3)という訳です。

 

もっとも借金を負っているものが得をするとしても、最終的に破綻する可能性もあるわけで、救済されるわけではありません。今回のインフレで最も得をするのは、ドル通貨とドル建て有価証券を持っている大企業や富裕層でしょう。彼らは為替差益でただ寝ていても儲けを得ることができるのです。かくて、物価高に喘ぐ一般勤労者・年金生活者や価格の転嫁できない中小企業と大企業や富裕層との格差が一層拡大していくことになります。

 

3、金利を上げることができない日銀、第2波の国債攻撃の標的に

 

インフレを抑制する手段の一つは中央銀行(日銀)による金利アップ政策(金融引き締め)です。日本のインフレの最大の要因は円安による輸入品価格の上昇にあり、そしてこの円安は米日の金利差を要因としているのですから、二重の意味で日銀は利上げが待ったなしの政策であるはずです。ところが、日銀・黒田総裁は大規模金融緩和を続けると言明し、10年もの国債金利まで0~0.25%に強引に抑え込んでいます(YCC/イールド・カーブ・コントロール)。

 

インフレに備え主要国が軒並み政策金利を上げているのに、なぜひとり日本だけ金融緩和を続けているのでしょうか。それは、次の二つの理由によります。1)日銀の保有する莫大な国債の価格が下落し、日銀が債務超過になる恐れ(日銀当座預金への利払いを含む)、2)国の一般会計歳出での公債利払いが飛躍的に増加し満足に予算がたてられなくなる恐れ、があるからです。

 

要するに日本政府は莫大な借金(国債発行)による予算で国を運営し、その国債を実質的に日銀に買わせ、かくて政府も日銀も借金で首が回らなくなる状況になりつつあるのです。YCC政策などはほとんど金融政策の禁じ手であり、なのにそれを使わざるを得ない事態となっています。

 

8月末のジャクソンホール会議でパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が「(インフレを抑え込むための金融引き締めを)やり遂げるまでやり続けなければならない」と講演。これを受けて外国為替市場では円相場は24年ぶりの安値である1ドル=140円台に急落することになりました。これで息を吹き返したのが、日本の国債価格下落に賭けるヘッジファンドの国債売りが再びはじまりました。かくして外国為替市場では投機筋による二重の円安攻撃が行われることになりました。

 

4、提案:円安攻撃を食い止めるために為替介入とトービン税を

 

米国の金融引き締めはいつまで続きそうかと言うと、「FRB高官には2023年いっぱいは利下げに転じないとの見方が出ている」とのことです。なのに、日銀がこのまま金融緩和を続けることになれば、ますます金利差が広がり、日本のインフレがいっそう高じてきます。

 

では、この円安を食い止めるにはどうすればよいか? 短期的には円買いドル売りの為替介入を行うことです。実際、日本政府は「97~98年には130円台でも円買い介入に動いていた」こともあり、「急激な円安が市場を混乱させるようなことになれば、当局の警戒モードも高まり、円買い介入に踏み切る可能性も出てきそうだ」と日経新聞は報じています(注4)。しかし、日本政府のドル保有(外為特会)にも限度があることから、ヘッジファンドが束になって一斉に円売りに出ると負けることも考えられます(1992年の英ポンド売りや1997年のタイ・バーツ売りのように)。

 

そこでトービン税(外国為替取引への課税)の出番で、上記為替介入とトービン税との合わせ技でヘッジファンド等の投機筋と対決することです。まず日本当局はトービン税導入を研究しはじめたというアナウンスメントを公表することです。中国の人民銀行が行った手です(注5)。最初は10ベーシスポイント(0.1%)課税という高い税率を公表することです。そして

実際為替取引税を導入する場合には、取引当事者の税を取られているとの意識を極力避けるための税率0.0001%(1億円の取引に対し100円の税収)で制度設計することです。

 

このような超々税率でも、年間1000億円(東京市場のみ)~3000億円(グローバル市場)の税収になります。これを感染症パンデミック対策資金として連帯税的要素として使用することが可能です。

 

この間再三述べてきましたが、為替相場を決めるのは、①貿易、②金利、③投機という3要素です。①と②は経済のファンダメンタルズによるものですから、これを改善するには時間がかかります。が、③は短期に対処しなければなりませんし、また政府が本格的に取り組めば対処することができます。要するに、国家はヘッジファンド等投機筋に付け込まれるような金融・財政政策をとってはならないということです。前者は大規模金融緩和であり、後者はもっぱら借金による財政運営のことです。

 

(注1)

【報道1930】ヘッジファンドトップが語る「日銀は必ず負ける」

https://youtu.be/7Ma9X0YT4V4 

(注2)

【日経新聞】円安でも動けぬ黒田、覚悟のパウエル 金融政策総点検

日米中銀、異次元の難局(上)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB239SQ023082022000000/ 

(注3)

【現代B】岸田首相もやっと危機感…政府の「インフレへの鈍感さ」が、これから引き起こすこと

https://gendai.media/articles/-/98963 

(注4)

【日経新聞】円安はどこまで進む? 政策の日米差鮮明、節目は147円か

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB020VY0S2A900C2000000/ 

(注5)

【ロイター】為替投機対策でのトービン税導入、研究段階=中国人民銀副総裁

https://www.reuters.com/article/g20-china-idJPKCN0WN09P 

 

※写真とグラフは日経新聞より

金子 宏先生ご逝去、国際人道税を提唱した先駆者

金子先生スピーチ(2019年2月)

              発言する3年前の金子先生(2019年2月)

 

日本の租税法のオーソリティーであり、かつ税制に基づく国際援助資金調達のスキームである国際人道税を提唱した金子 宏・東京大名誉教授が去る8月23日にご逝去されました。91歳でした。報道は「課税要件の理論的解明という課題に取り組み、租税法学の基礎を築いた。2018年に文化勲章受章」(共同)と述べています。

 

国際人道税ですが、広く知られるようになったのは2006年8月3日付日本経済新聞の経済教室に「人道支援の税制創設を 国際運輸に定率で」と題した先生の論考が載ったことです(すでに1998年に発表済み)。私たちは先生の提唱する人道税は航空券連帯税そのものではないかと驚き、早速連絡を取らせてもらい、翌年先生の講演会を開催しました。以降、国際連帯税の節々のイベント等に先生に出席していただき、先生の熱い人道税=連帯税への想いを語っていただきました。

 

金子先生は租税法のオーソリティーであり、従って学のみならず政官財に余多の門下生を送り出しています。しかし、先生のヒューマニティ溢れる国際人道税等の理論を引き継ぐ人士が出ていないことを本当に残念に思います(ただ「金子教授と国際人道税」などと解説する直弟子先生はいますが)。

 

ともあれ、国際人道(連帯)税を学問的に裏付けし、さらに推進しようとした先生の功績は大なるものがあります。日本ではまだ実現していませんが、先生の意思を受け継ぎ頑張っていきたいと思います。以下、3年前の金子先生のスピーチを送ります。

 

 

【金子宏先生のスピーチ】

 

2019年2月25日「国際連帯税アドバイザリーチーム」立ち上げ会合での金子宏東京大学名誉教授のスピーチです。

 

ただ今ご紹介いただきました、金子でございます。予定の時間を過ぎて、遅れて参上いたしまして、大変失礼いたしました。ここに、先輩であり長年の友人である津島雄二さん(注:元自民党税調会長で国際連帯税創設を求める議員連盟の初代会長)がご一緒してくれました。昨年文化勲章を拝受いたしまして、非常に光栄なことと存じております。これは、租税法という法律、これは他の分野と比べると新しい分野でございますけれども、その分野の理論と体系を構築したということで、拝受いたしました。本当に光栄なことと存じております。

 

それから、今ご紹介がありました、国際連帯税に関しまして、私は国際人道税と呼んでおりますが、どちらも国際航空運賃に課税をするという点では共通でございます。1998年に日本の雑誌に国際人道税という名称で国際航空運賃に課税したらどうかという提案を含んだエッセイを書きました。そして、たまたま日本に来ておられたハーバード大学のロースクールのオールドマン先生に、こういうものを書いたと話しました。すると、国際航空運賃に課税するという提案は、まだ誰もしていないから、是非とも英語で発表するようにということで、早速アメリカのインターナショナル・タクゼーションに関する雑誌に掲載する手はずを整えてくださいました。私の拙い英語で英訳しましたが、オールドマン先生の弟子で、私の長年の知り合いのラムザイヤー教授が私の英語を見て、必要な訂正を施してくれて、ラムザイヤーさんが翻訳したくれたところ、見違えるほど内容が良くなりました。そして、それがアメリカの雑誌に載りました。

 

2006年でしたか、2000年代に入ってから、フランスの旧植民地の色々な人道問題を援助しているNGOを通じて、シラクさん(注:当時のジャック・シラク仏大統領)に対して強力に国際人道税を導入して、国際航空運賃に課税をすべきだと、そしてフランスの旧植民地においてマラリア根絶などの費用に充てる為に導入したらどうかと働きかけをしたようであります。シラクさんは最初反対しておりましたけれども、説得の結果導入されたようでありますが、フランスで導入されたものが、フランスの旧植民地に使うということで、UNICEFなど国際組織に寄付をするという私の提案とは違い、フランス政府の手で使うということになったようです。その後、いくつかの国と連帯して、共同で色々な事業に使っているようであります(注:UNITAID・国際医薬品購入ファシリティという国際機関を設立し、途上国の感染症対策のための医薬品等の購入を行う)。

 

私は、国際航空運賃というのはどこの国も消費税をかけることができないという理由で、つまり国外の消費でありますから、消費税の対象にならないためどこの国も課税してこなかったのでありますけれども、色々な宗教対立とか人種間の紛争とか、それによって子ども達が悲惨な目に遭っているという状況に照らして、今までどこの国も課税できないとして課税してこなかった国際航空運賃に課税をして、その税収をUNICEFに寄付して、UNICEFの手で色々な国でひどい目に遭っている子ども達の救済に充てたらどうかと考えた訳であります。

 

いくつかの国で、シラクさんが採用した国際連帯税という制度を採用している訳ですけれども、先ほど申しましたように、私の提案とは徴収した国が使うのか、それを国際組織に寄付をして国際組織の手で色々な、例えば国境なき医師団とか、国際的な活躍をしている、経験のある組織にお金を出してそしてそれを子ども達の救済に充ててもらうのかという違いがあるわけでありますけれども、私は今の国際連帯税がやがて税収を各国が使うのではなく、国際組織に使ってもらうというようになっていくといいなと考えています。

 

ですから、国際連帯税と国際人道税は決して違うものではなくて、私が同種の租税が将来的には徐々に国際人道税に発展してゆくことを期待している訳であります。国際連帯税に反対するわけではなく、むしろその発展に少しでもお役に立つことができればというふうに思っている次第でございます。歳を取ってしまいましたけれども、できる限りでご協力をしていきたいと思っております。ちょっと長くなりましたけれども、以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(大きな拍手)

 

【報告】『グローバルヘルス戦略』策定記念シンポジウム: グローバルヘルスの新たな展開と市民社会

「グローバルヘルス戦略」策定記念シンポジウム: グローバルヘルスの新たな展開と市民社会」が、2022年7月19日(火)午後5時から参議院議員会館で会場とオンラインを繋いだハイブリット方式で開催されました。

 

本シンポジウムは、5月24日に、2016年以来6年ぶりに改定された日本の国際保健に関する政策『グローバルヘルス戦略』を紐解き、相次ぐ世界が直面する危機や構造変化に対応しつつ、日本として国際保健をどうリードしてゆくのか、その中で日本の市民社会はどう関わっていくべきか、新たな連携の形を明らかにしていくために開催されました。

 

当日は、会場とオンラインを含め、合計120名余りが参加。パネリストは皆、会場で対面での登壇となり、久しぶりに顔を合わせながらの活気のある議論が行われました。

 

本シンポジウムは、大竹財団の支援を受け、国際保健に取り組むNGOと外務省との定期懇談会を行っているGII/IDI懇談会(ジョイセフ事務局)が主催し、外務省及びグローバル連帯税フォーラムの後援を受けて開催したものです。

 

まず、初めに武見敬三参議院議員のビデオメッセージで会がスタート。
グローバルヘルス戦略の策定を担当した内閣府 健康・医療戦略推進事務局 健康・医療戦略ディレクターの南博氏による解説。東京都立大学の詫摩佳代教授による「コロナとウクライナ危機の下でのグローバルヘルスの在り方とその展開」の基調講演。
その後、ジャーナリストの迫田朋子氏がモデレーターを務める中、基調講演を行った詫摩氏に加え、グローバルヘルスを推進する立場にある外務省の原圭一国際協力局参事官、稲場雅紀GII/IDI懇談会NGO連絡会代表/アフリカ日本協議会共同代表、米良彰子世界の医療団日本事務局長の計4人によるパネルディスカッションが行われました。
最後は、日本国際交流センターの伊藤聡子執行理事により、締めくくられました。

 

※詳細は、以下からご覧になれます。

 

◎テキストで読む(含む発表者資料 ジョイセフ編)

https://www.joicfp.or.jp/jpn/wp-content/uploads/2022/08/global-health-event-report-202208.pdf 

 

◎映像で見る https://youtu.be/qy4Tgaw5ifw 

東京市場での外国為替取引高が史上最高!通貨取引税あれば3兆円の税収!

東京の外国為替市場で莫大な投機マネーによる取引が行われています。その取引高は1日当り65兆円! とくに4月に入ってからヘッジファンドなどの円安攻撃が主導したようです。ところで、もし日本で為替取引税(通貨取引税)が実施されていれば、0.005%という超低率(1億円の取引に対し5000円の課税)であっても8160億円もの税収が上がります。さらに、ドル円取引はグローバルに行われており、東京市場でのシェアは20数%に過ぎません。これらにも同税が及ぶと総計3兆円もの税収となります。これはコロナ・パンデミック対策資金としても、また他の地球規模課題対策資金としても十分な税源となりうるのではないでしょうか。

 

●東京市場での外国為替取引高、史上最高の1日当り65兆円!

 

7月26日東京外国為替市場委員会(日銀と民間金融機関で構成)は本年4月の東京市場での外国為替取引高は「1営業日」平均で4785億ドル(約65兆円)に上っていると発表(注1)。読売新聞によれば「2006年の調査開始以来、最高だった。資源高を背景に輸入企業による円売り・ドル買いが取引高を押し上げ、投機的な売買もあった」と報道しています。

 

国際決済銀行(BIS)は3年ごとにグローバル規模で外国為替取引高を調査していますが、上記数字はこの調査のうちの日本分(東京市場)集計のものです。前回の調査(2019年4月)を見ますと、3760億円(約51兆円)ですから、コロナ危機があったにもかかわらず、取引はナント!1000億ドル(約13兆円)も増えています(注2)。

 

ところで、報道では取引高アップの要因として、貿易関連そして投機での増加からと説明しているようです。が、日本総合研究所の主席主任研究員の石川智久氏は次のように言っています。「外国為替取引高が過去最高になった…一番の理由は投機的な動きです。外国為替市場では、輸入や輸出といった実需よりも金利差などで動く投機筋の方が動かす金額が大きくなります」、と。ドル円相場は今年の3月ころまでは1ドル115円ほどで推移していましたが、4月からヘッジファンドなど投機筋の円売り攻勢が活発となって急速に円安が進み、一時130円を超える事態となり、そのことが4月1営業日に反映されたと言えます。

 

その後の経緯から言えば、円安はさらに進み、7月には1ドル140円に迫り、一転今度は8月に入り130円を割る寸前にまでになるという乱高下状況で(今また135円に急騰)、それだけ投機筋が激しく動いていると言えましょう。

 

●外国為替取引の80%程度は投機のための取引

 

そもそも外国為替取引は何のために行うのかと言いますと、円をドルに換えて輸入代価を支払ったり、外国に工場を作ったりするために行われますが、こうした実需に使われるのは実は総量の10%程度です。残りの90%程度は取引そのものから利益を得ようとする投機のために行われているのです。そのために何かイベントが起きると為替差益を狙っていっせいに投機マネーが動き、為替相場が極端に動いたりするのです。今回の超円安相場にあたり、やはり異常なくらい投機マネーが動いているということが、この4月の1営業日での取引高の記録によって分かります。

 

以前紹介した池田雄之輔氏の著書『円安シナリオの落とし穴』(日経プレミアシリーズ)によれば、「為替市場は、商品市況と並んで、もっとも『投機』の色彩が強い市場ということができる。…ヘッジファンドが7~8割、リアルマネーが2~3割」と言っています(ここでのリアルマネーとは、長期保有を想定した投資信託や保険会社などの投資マネーのこと)。

 

ところが、このところの超円安に関しての金融系エコノミストや日経新聞などの基調からはすっぽり「投機」が抜け落ち、円安の要因をもっぱら貿易や金利の面から説明しています。これでは急速な円安や円高を説明することはできません。

 

●日本で通貨取引税が実施されていれば年間「8100億円+2兆1300億円強」の税収に

 

2022年を通しての外国為替取引高が平均して1営業日当たり65兆円あるとし、そして日本で税率0.005%の通貨取引税(為替取引税)が実施されているとすれば、約8100億円の税収となります(65兆円×営業日250日×0.005%)。

 

ところで、税収はこれに限られません。というのは、ドル円はもとよりユーロ円、ポンド円取引等々は東京市場だけで行われているのではなくグローバルに行われていますので、ここらからの税収も考えられるからです。では、グローバル市場での取引と東京市場レベルでのドル円取引の割合はと言いますと、ざっくり75%対25%となります(注4)。すると、東京市場を除くグローバル市場での取引額は1兆2504億ドル(約170兆1000億円)となります。

 

これらにも0.005%を課税すると2兆1300億円の税収となります(170兆1000億円×250日×0.005%)。しかし、東京市場外のドル円取引に課税できるのかという疑問が出ますが、それは日本政府が決めて制度設計すればよいことであり、また取引に円がからむことにより取引の足跡を補足することは可能であり、従って課税することができます。

 

このように東京市場とグローバル市場での課税により約2兆9000億円程度の税収が得られますが、グルーバル市場では他にユーロ円、ポンド円等々の取引がありますので、こちらにも課税することになりますので、(課税によって税収が少々減少しても)税収が3兆円を超えることになるでしょう。

 

●林芳正外務大臣は国際会議の場で国際連帯税の必要性を訴えるべき

 

とはいえ、通貨取引税実施の壁は厚く、同税の元祖ともいえるトービン税が提唱されてからちょうど半世紀たった今年に至るまで(注4)、主要国で実施された国はひとつもなく、わずかブラジルやトルコで変則的な形で実施されているにすぎません。世界で同時に課税しないと、課税国から非課税国に金融機関が、従って為替市場が移転してしまうという神話のためです。

 

例えば、日本のA銀行が課税を嫌ってすべてシンガポールにディーリングルームを移転させたとしても(実際はありえないと思いますが)、円を扱いかつ日本国籍を有する限り、課税から免れることはできません。シンガポールにあるA銀行支店が100万円で米国のB銀行の1万ドルを買うとしても、日銀の中のA銀行の預金(当座預金)から100万円が払われることになりますから、足跡は残り課税が可能となります。

 

もし日本一国でも実施するとすれば、当面投機筋が税金を払っていると認識できないくらいの超低税率で課すことからはじめてもよいと思います。金融関係者に聞くと、分岐点は0.01%と答える人と0.001%と答える人がいます。0.005%課税は前者に依拠したものですが、最初は0.0005%から始めてよいでしょう。それでも3000億円の税収となります。

 

いずれにせよコロナ・パンデミックのような地球規模課題に対しては一国ではなく、G7やG20などの主要国が共通税率をもっていっせいに国際連帯税としての通貨取引税を実施することが望ましいことは言うまでもありません。昨年10月OECD/G20が140ヵ国を巻き込み「デジタル課税(新グローバル法人税)と世界共通最低税率」を決めたように。

 

しかし、問題はデジタル課税とは違ってどこの政治的リーダーも地球規模課題のための共同資金創出を言い出さないことです。そこで、私たちは我が国の政治リーダーである林芳正外務大臣に(元国際連帯税創設を求める議員連盟・会長)対して、次のように、外務省への23年度税制改正要望を提出しています。

 

林外務大臣におかれては、G7やG20の外相会合において、また国連総会など国際会議の場において、SDGs資金ギャップについて警鐘を鳴らすとともに、国際連帯税を共同して実施することを訴えていただきたいこと

 

(注1)【日経新聞】東京外為市場、4月の取引高は7.7%増 過去最高を更新

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB266I00W2A720C2000000/ 

(注2)【日銀】主要市場の1営業日平均取引高(グローバル分集計結果)

https://www.boj.or.jp/statistics/bis/deri/data/deri1904.pdf

(注3)【ヤフーニュース】https://news.yahoo.co.jp/pickup/6433749 

(注4)2022年のグローバル市場でのドル円取引高は分からないので、2019年でのグローバル市場のうちの東京市場の割合は約24%、2013年では約20%程度。ここから類推しての割合となる。

(注5)ノーベル経済学賞受賞者のジェームズ・トービン(イェール大学教授)が1972年に提唱。投機目的の短期的な資本取引を抑制するため、外国為替取引に1%程度の税を課するというアイデア。

 

23年度税制改正:外務省は「国際連帯税」要望を復活させよ

 林芳正パネル討論

 

2012年10月「国際シンポジウム:金融取引税・国際連帯税は世界を救うか?~革新的資金メカニズムを巡る世界のリーダーと市民社会との対話~」(青山学院大学国際会議場)で発言する林芳正・国際連帯税創設を求める議員連盟会長/参議院議員(当時)

 

グローバル連帯税フォーラムは去る7月25日外務省に「23年度税制改正要望で『国際連帯税』要望を復活させることの要請書」を提出しました。要請書の要旨は次の通りです。

 

1)SDGs達成のための途上国での資金ギャップがコロナ危機が進行する中でそれが4.2兆ドルへと拡大していること、

 

2)このギャップを埋めるには1800億ドル程度のODA(政府開発援助)ではとうてい間に合わず、OECD(経済協力開発機構)は約390兆ドルの金融資産を有する民間資金の動員・利用を提案。しかし、民間資金の投融資には限界があることから、国際連帯税など革新的資金調達が望まれること、

 

3)コロナ禍にあっても資産や利潤を増やしている金融セクター、ITなど情報技術セクター等グローバル化で受益している経済セクターへの課税を実施すること、

 

4)日本政府は国際連帯税の国内実施と国際社会での共同実施に向け努力すべきこと

 

 

 

 2023年度税制改正要望で「国際連帯税」要望を復活させることの要請書

 

外務大臣 林 芳正 様

                  

                          グローバル連帯税フォーラム                        

                            代表理事 金子 文夫                            

                        田中 徹二

 

日頃からの世界と日本のための外交平和努力に敬意を表します。

 

さて、コロナ禍やウクライナ戦争という厳しい情勢にありますが、次年度税制改正要望を提出する時期となりました。ご承知のように、国際連帯税につきましては、2010年度より外務省から要望が提出され、それが2020年度まで10年間連続して続けられました。ところが、2021年度、2022年度と要望提出を断念し、今日に至っています。

 

その断念の理由は、外務省が2019年7月に「SDGsの達成のための新たな資金を考える有識者懇談会」を設置し、翌年7月に提出された懇談会の「最終論点整理」(以下、「整理」と略)に沿ったからと思われます。つまり、「コロナ禍で日本経済全体が大きな打撃を受けているので課税による資金調達方式は現実的ではない」というのが整理での提言だったからです。

 

しかし、こうした厳しい経済情勢下にあっても、日本を含む世界ではITや金融というグローバル経済セクターは多大な利益を上げていましたし、日本経済も3年目にしてようやく復活の兆しが出てきました。また、整理では課税についてすべて反対しているわけではありませんでした。実際、航空券税については「国際航空事業が正常化した段階で再考すべきではないか」と提言しております。航空事業も正常化に向かいつつあるのが現状です。従いまして、外務省としてはSDGs達成のため課税による資金調達要望を復活させるべきと考えます。

 

一方、林外務大臣は先の国会において「SDGs達成のための資金不足を埋めるためには革新的資金調達は重要と考え、外務省としては引き続き適切な資金調達の在り方を検討してまいりたい」と発言しています(5月19日参議院外交防衛委員会)。ここでの革新的資金調達とは国際連帯税を含む新たな資金調達の在り方と言えるでしょう。

 

林外務大臣はさらに「SDGs達成のためには年間2.5兆ドル不足と言われている。コロナ禍でそのギャップはさらに拡大しているとの推計もなされている」と発言していますが、今やそのギャップはOECDの推計によれば4.2兆ドルへと拡大しています。一方、世界のODA総額は1,789億ドル(2021年)ですから、とうていODAでこのギャップを埋めることはできません。

 

そこで期待されるのは民間資金の利用、動員です。今日SDGs理念の世界的な浸透もあり、ESG投資やインパクト投資、グリーンボンドなど地球規模課題に向けての民間資金の投融資が盛んになってきました。このことは歓迎すべきことですが、それが民間資金という性格上どうしてもリターンが不可欠であることから、最も必要としている貧困国やセクターに届いておらず、また投資分野もエネルギーなど気候変動分野に偏るという傾向があります。これらのことからも、第二の公的資金となりうる革新的資金メカニズムとしての国際連帯税の実施、拡大が望まれます。

 

以上のことから、国際連帯税に関し、下記の5項目を要望しますので、ご検討くださることをお願い致します。

 

 

1.2023年度(令和5年度)税制改正要望に新設税として「国際連帯税(国際貢献税)」を要望すること(注1)

 

2.外国為替取引に課税する通貨取引税につき、外務省が事務局となり政府内に省庁横断的な会議体を設置するとともに、その下に専門家・有識者及びNGOや市民団体の代表者等からなる『有識者検討委員会(仮称)』を設置すること(注2)

 

3.航空券税につき、航空事業が正常化された段階で入国税として実施すること(注3)

 

4.デジタル課税につき、消費地での新グローバル課税ルールと世界共通最低税率をG20財務相会合で取極めたが、この取極めによる新たな税収のX%を国際連帯基金(仮称)として徴収すること(注4)

 

5.林外務大臣におかれては、G7やG20の外相会合において、また国連総会など国際会議の場において、SDGs資金ギャップについて警鐘を鳴らすとともに、国際連帯税を共同して実施することを訴えていただきたいこと

以上

2022年7月26日

 

(注1)国境を超える経済主体に広く薄く課税するという税制の主旨から、国際連帯税のリストとしては、①通貨取引税、②航空券税、③デジタル課税等、が挙げられる。

 

(注2)

①     金融セクターはコロナ禍にもかかわらず利益を増殖させ、為替取引総額が増大していること、

          副次的には今日の超円安等を招いている投機マネーの抑制にも繋がる。

②     先の有識者懇談会でも、通貨取引税に関し検討されたが、十分に検討されないままに報告が出されている。

③     もし日本で導入ということになれば、先進国では初めてのことになり(中進国のブラジルやトルコで実施中)、それだけ国際的に注目を浴びることから、有識者検討会にノーベル賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏や開発経済の第一人者であるジェフリー・サックス コロンビア大学教授など世界の著名人からの助言も有効である。

 

(注3)既に出国税として、国際観光旅客税(利用者一律1,000円)が実施されているので、入国税として実施する。ちなみに、米国では国際通行税として出入国の都度$17.5(約2,280円)徴収されている。                 

 

(注4)日本政府は23年度税制改正でこの取極めへの対応を検討することになっている。なお、この新しい国際ルールによる税収については、カリフォルニア大学バークレー校のガブリエル・ズックマン准教授らが試算している。

【明日です】「グローバルヘルスの新たな展開と市民社会」

GHと市民社会

 

長引くコロナ禍や気候変動・自然災害、ロシアのウクライナ侵攻を引き金に、世界的な食糧危機や経済不安が続く2022年。G7およびG20サミットを目前とした、5月24日、日本政府はグローバルヘルス戦略を策定しました。本シンポジウムでは、このグローバルヘルス戦略を紐解き、パンデミックへの備えを確実にし、『すべての人に健康を』を実現するための政府・民間・公共・市民社会の新しい連携の在り方を考えます。相次ぐ世界が直面する危機や構造変化に対応し、戦略の内容を踏まえて、日本として国際保健をどうリードしてゆくのか、その中で日本の市民社会のあるべき姿を明らかにしていきます。

 

「グローバルヘルス戦略」策定記念シンポジウム

グローバルヘルスの新たな展開と市民社会

 

【日時】2022年7月19日(火)17:00~18:30

        会場参加 開場16:45 / オンライン入室開始16:50

(開始に遅れる場合、17:10以降は会場には入れませんのでご注意ください)

 

【会場】会場参加:参議院議員会館 101会議室

 オンライン参加:Zoom利用(申込の方に、前日および当日正午に参加のリンクを

送ります)

 

【プログラム】

1、開会および進行   迫田朋子氏(ジャーナリスト)

 

2、議員挨拶             武見敬三氏(参議院議員)

 

3、はじめに           「グローバルヘルス戦略とは」 

  南博氏(内閣府 健康・医療戦略推進事務局健康・医療戦略ディレクター)

 

4、基調講演 

「コロナとウクライナ危機の下でのグローバルヘルスの在り方とその展開」

  詫摩佳代氏(東京都立大学教授)

 

5、パネルディスカッション 「グローバルヘルス:市民社会の価値と連携の可能性」

進行:迫田朋子氏

パネリスト:

・有識者 詫摩佳代氏(東京都立大学教授)

・外務省 原圭一氏(外務省 国際協力局参事官 地球規模課題担当)

・市民社会 稲場雅紀氏(GII/IDI懇談会NGO連絡会代表、アフリカ日本協議会共同代

表)

・市民社会 米良彰子氏(世界の医療団日本 事務局長)

    *登壇者がオンラインで参加の可能性もあります。

 

6、討論、質疑応答

 

 7、閉会挨拶     伊藤聡子氏(日本国際交流センター 執行理事)

 

【主催】   GII/IDI懇談会 NGO連絡会

【後援】   外務省、グローバル連帯税フォーラム

【参加費】 無料

【定員】   会場参加50名 オンライン参加100名

【申込〆切】     2022年7月18日(月)

【お申込み】  https://forms.gle/T8pWWH9rBgptdV1s6 

 

【お問い合わせ】GII/IDI懇談会 NGO連絡会(事務局:公益財団法人ジョイセフ)

                           E-mail: gii@joicfp.or.jp 

【関連資料】

1)新グローバルヘルス戦略へのリンク

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/senryaku/r040524global_health.pdf 

 

2)内閣官房 健康・医療戦略推進本部 グローバルヘルス戦略推進協議会へのリンク

 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/global_health/kaisai.html

上記ページのうち「グローバルヘルス戦略推進有識者タスクフォース」の会合記録からは、戦略策定に向けてどのような討議がなされたかや、市民社会からの提出資料などについて確認できます。

 

3)「ポスト・コロナのわが国の国際保健外交」提言書へのリンク

https://www.jcie.or.jp/japan/wp/wp-content/uploads/2020/11/Japan-DAH-Commission_recommendations_final_j.pdf 

この新戦略の策定に向けた動機付けともなった「保健ODAの在り方を考える特別委員会」(委員長:塩崎恭久前衆議院議員)の提言書です。

 

4)日本政府「平和と健康のための基本方針」へのリンク

https://www.mofa.go.jp/files/000099126.pdf 

日本政府・外務省は1994年から5~8年ごとに体系的な国際保健政策を策定してきました。今回の新グローバルヘルス戦略の前の2015-20年の戦略が「平和と健康のための基本指針」です。