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超円安、物価高騰と日本からの資金逃避>今こそトービン税を!

1930①

1930 ②

 

 

超円安が続き、物価値上がりが止まりません。インフレ抑制のため世界中の中央銀行が金融引き締めに踏み切る中、ひとり日銀が自らの首を絞めるような「金融緩和の継続」宣言を行なったため、ヘッジファンドなど国際投機筋が激しく円安攻撃を仕掛けているからです。すぐに打てる対策は為替介入とトービン税(通貨取引税)導入の検討です。

 

●沈没しつつある客船(日本丸)からわれ先に逃げ出す船員たち(日銀OB)

 

日経新聞電子版の名物コラムのひとつ「豊島逸夫の金のつぶやき」で、次のような驚くべき報告がありました。「(本年に入って)円を売っては買い戻す短期的売買を繰り返すヘッジファンドたちが、連戦連勝の勢いに乗って大胆に仕掛けてくる事例が急増し始めた…(こうした状況下で)筆者のプライベート面では、個人的に親しい日銀OBたちが、虎の子の退職金でドルや金を買うためのアドバイスを求めて来た。円という通貨の番人を40年以上勤めあげた人たちが、個人的な資産運用で円を持ちたがらないという傾向はショッキングであった」、と(注1)。

 

本年3月にはまだ1ドル115円台くらいだったのが4月に入るやどんどん安くなっていき、日銀OBたちは円の行く末がはっきり見えたので合理的な判断をしたと言えます。しかし、その行為はまるで国民の乗った客船・日本丸の沈没(の可能性)を察知した船員たち、すなわち日銀OBたちが国民を置いてきぼりにしてわれ先に逃げるようで、たいへん後味が悪いですね。

 

またこの日銀OBに続くように日本の個人金融資産が外国株や債券そして不動産、さらにこれらを含む投資信託にどんどん流れています(注2)。日本の富裕層や小金持ちたちはもはや日本の将来を当てにしていないようで、これでは「貯蓄から投資へ」と岸田総理がいくら叫んでも、日本に投資資金は回りません。

 

●円の適正価格はいくらか? 90円74銭または110円前後

 

以前にも述べましたように、為替相場を決めるのは、次の3つ要素です。①貿易、②金利差、③ヘッジファンドなど投機筋(池田雄之輔『円安シナリオの落とし穴』日経プレミアシリーズ)。ところが、この間経済紙やオンラインでの(金融系)エコノミストたちの主張は、③がすっぽりと抜け落ちています。例えば、この間オンライン投稿数が最も多いみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏の円安に関する所論は、巨額の赤字貿易があり、円だけがマイナス金利なので、「今の円安はファンダメンタルズに沿った動きである」として、投機の「と」の字もありません(注3)。

 

わずか3か月で円相場が115円台から135円台へと約20円、17~18%も下落してしまったことを①と②だけで説明するのはあまりに非論理的ではないでしょうか。だからでしょうか、彼の分析では円安を止めるための対策は取りようがなく、「基本的にはFRBの正常化プロセスがつまずくことでしか円安は止まりようがないだろう」と言う始末です。

 

つまり、今日の円安の20円分は基本的にヘッジファンドなど国際投機筋の円安攻撃によってもたらされているのですが、ではそもそも「ファンダメンタルズに沿った」相場の適正価格はいくらでしょうか。

 

以前日経新聞の記事に載った購買力平価から導き出された価格では「110円前後」というものでした。さらに、米銀のバンク・オブ・アメリカ(バンカメ、BofA)の分析によれば、ファンダメンタルズに基づくBEER(均衡為替レート)モデルに示す適正価格は、何と「約49%高い90円74銭と推定される」(円相場1ドル=135円25銭、6月24日)とのこと(注4)。

 

どちらのレートにせよ、現在のドル円相場は20円~40円も円安に振れており、この要因として上記①と②だけでは説明がつかず、従って投機筋による仕掛けという③によってもたらされていることが分かります。このことは、投機筋を封じ込めることができれば相当円安を防ぐことができることを意味します。

 

●物価値上がりは第2ステージへ、即効性のある政策=トービン税提案を

 

電気料金が毎月のように値上がりし、他の商品も再値上げ、再々値上げという状況が続いていますが、実はこれからが物価高騰の本番になると言われています。そしてこの背景には米国と日本の金利差が一層拡大することを射程に入れた投機筋の引き続く円安攻撃があり、輸入物価の高騰が予想されるからです。

 

どうすればこの円安を防ぐことができるかですが、一つは貿易を黒字化させること、二つは日銀も金利を上げること、三つは投機筋の仕掛けを止めることです。が、前二者を短期間で実現するには困難で、即効性があるのは投機抑制です。まず円買いドル売りの為替介入を図り、しかしこれだけではヘッジファンド等はギブアップしないでしょうから、2014年に中国の人民銀行が行ったように(注5)、日銀も当局も「トービン税(通貨取引税)導入の検討」を宣言すべきでしょう。まずは投機筋に対して、断固として円相場を守に抜くという態度を示すことです。

 

現在投機筋は「円キャリー取引」や「円空売り」等(円安になるほど儲ける)という仕掛けとは別に「日本国債売り」(日銀が円安に耐え切れず金利を上げれば儲ける)という手法でも仕掛けています。ここら辺の分析は、金融系エコノミストたちはまったく行ってなくて、オンラインでは野口悠紀雄・一橋大学名誉教授だけが行っているという有様です(注6)。

 

いずれにせよ、この夏から秋にかけて、米国金利さらなるUP⇒投機筋の円安攻撃激化⇒いっそうの円安の進展⇒さらなる消費者物価の高騰という道筋が見えていますので、トービン税(通貨取引税)議論が復活してくることは間違いありません。申すまでもなく、トービン税(通貨取引税)が実施されればその税収も半端なものではないでしょうから、国際連帯税的な要素として制度設計することが可能だと思います。

 

(注1) 【日経】「日銀は永遠のハト派」ヘッジファンドは140円狙い

(注2)【日経】家計資産、脱「預金」の兆し 物価高・円安 防衛急ぐ

(注3)【東洋経済】今、為替を円安へと突き動かしているものは何か

(注4)【Bloomberg】円の適正価格は90円74銭、日銀がタカ派に転じれば下支えに-BofA

(注5)【日経】中国、「トービン税検討」でさざ波

(注6)【現代ビジネス】金利抑制を巡る日本銀行と海外ファンドの死闘、制するのはどちらか

 

※写真は、7月4日BS-TBS「報道1930」での「日銀“異次元”死守のツケ 海外ファンドとの攻防」から(動画:前半はウクライナ情勢で16分頃から)

 

 

【ご案内】勉強会「新型コロナで大きく変わる『国際保健』のルールと仕組み」

新型コロナですが、ここにきて感染者が増えてきました。感染力がより強いオミクロン株「BA.5」の広がりに関係があるようです。ウイルスに国境はない!ですね。対策をどうするか、「NGO-労働組合国際協働フォーラム」(28組織参加)の勉強会です。グローバル連帯税フォーラムからも資金調達の面からプレゼンをします。どうぞご参加ください。

 

     <NGO-労働組合国際協働フォーラム>勉強会
  新型コロナで大きく変わる「国際保健」のルールと仕組み

=「日本とは関係ない」では済まない「パンデミック対策」の現実とは?=

 

◎日時:7月12日(火)15:00~16:00

 

◎参加方法:
 ・「NGO労組国際協働フォーラム」参加団体の皆様はどなたでも参加可能です【⇒グローバル連帯税フォーラムも参加団体です】
 ・以下のフォームに所定の事項をご記入の上、送信ください。
  フォームへのリンク
  【⇒「所属」のところに「グローバル連帯税フォーラム」とお書きください】

 

◎お問合せ
 NGO労組協働フォーラム エイズ等感染症グループ
  事務局 (特活)アフリカ日本協議会 
  メールアドレス:ajf.globalhealth@gmail.com 電話:03-3834-6902

 

★新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、日本を含め、世界全ての人の健康や生活の在り方に大きな影響を与えています。私たちは「コロナ」により、ともすれば忘れがちだった「感染症」の脅威に正面から直面することになりました。

 

★気候変動や生物多様性の喪失により、パンデミックの脅威は今後もますます大きくなることが予想されます。国際社会では、増大するパンデミックの脅威に対処するため、WHOの枠組みでは2024年をめどに「パンデミック条約」の制定が、また、G20の枠組みでは早期の「パンデミック対策・対応金融仲介基金」の設立が検討されています。これらの国際的なルールや機関は、今後、私たちの生活や取り組みにも影響を与えるものとなります。また、次にパンデミックが起きたときに、これらの仕組みがパンデミックを封じ込められるかどうかは、私たちの生活や生命をも左右する重大な問題になりえます。

 

★この勉強会では、今「パンデミック」をめぐって起こっている国際社会の議論や取り組みを紹介するとともに、これらの動きに関与しているNGO、市民社会の主張を紹介し、ディスカッションできればと思います。ぜひご関心の方々のご参加をお願いいたします。

 

<登壇者>
●国境なき医師団日本 金杉詩子さん
●グローバル連帯税フォーラム 田中徹二さん
●アフリカ日本協議会 稲場雅紀さん

円安危機水準に、高笑いの国際投機筋、今こそ通貨取引税が必要

投機筋の円売りポジション

 

昨日(6月14日)の日経新聞朝刊の一面トップは「円安 98年危機以来の水準 一時135円台前半」との大見出し(注1)。記事は「…金融不安で『日本売り』に見舞われていた1998年以来、約24年ぶりの円安・ドル高水準に逆戻りした」と続きます。

 

24年ぶりの円安、異次元の金融緩和による破綻の着地点見えず

 

1998年と言えば、日長銀や日債銀が破綻した年ですが(前年には拓殖銀行、山一証券が破綻)、この金融危機の処置を間違えれば日本発の「世界金融危機の引き金になる」のではないかという恐怖が当時の関係者にはあったようです。大蔵省(当時)の担当官であった故志賀櫻氏が著書『タックス・ヘイブン』(岩波新書)で顛末の一端を描いています。

 

80年代のバブル経済の最終的破綻が同年に現れ、日本売りともいえる円安に見舞われました。今度の超円安は異次元の金融緩和による破綻の現れとも言えますが、いまだ最終着地点を見出すことができません。まだまだ円安相場が続きそうだからです。

 

●為替相場を決める3要素:ファンダメンタルズと投機筋

 

ところで、為替相場を決めるのは、次の3要素です。①貿易、②金利差、③ヘッジファンドなど投機筋(池田雄之輔『円安シナリオの落とし穴』日経プレミアシリーズ (注2))です。この間マスコミではもっぱら①と②でしか円安を説明していません。ところが、この2か月ほどで20円も急激に円が下落した理由としては、投機筋による仕掛けしか考えられません。

 

というのは、物価や経済状況からみた円の理論値は110円前後という試算が出されています(注3)。これは経済のファンダメンタルズである①と②で見ると110円前後になる、ということを意味しているのではないでしょうか。だが実勢は135円前後なので、それを説明するには投機マネーの存在ということになります。では、投機マネーはどれだけ動いたのかと言いますと、上記池田本から類推するに数十兆円規模(!)のお金が動いていると思われます。

 

●投機筋が狙い撃ち「サンキュー、ミスタークロダ」

 

ところが、ようやく一昨日(13日)の日経電子版に投機筋を分析した記事が載りました(注4)。その手法は、低金利通貨(円)を売って、高金利通貨(ドル)を買う「キャリー取引」です。この取引は円高になってしまうと損失を出しますが、日銀・黒田総裁が円安を確約したのも同然の政策を取っているので、盛んに行われるようになっているのです。このほかに、円安が進めば進むほど利益が上がる空売りを仕掛けているヘッジファンド等も当然存在するでしょう。

 

米国はじめ欧州でもインフレ対策のために金利アップを実施する、またはしようとする中で、一人日本だけが金融緩和を続けると宣言し、「円安は日本経済にとってプラスだ」などと誓ったので、円安を回避できなくなったのです。かくして「投機筋が安心して円売りを仕掛けられている」状況となり、「インフレを巡り世界の市場が動揺に包まれる中で、円を売る取引が利益を生む確実性の高いトレードと捉えられており、投機筋に狙い撃ちにされている格好だ」と記事は述べています。

 

かくて「…国際通貨投機筋が円安で大もうけの話は市場内に拡散され、…『日銀は永遠のハト派』『サンキュー、ミスタークロダ』との声」(4月14日付日経電子版・コラム「豊島逸夫の金のつぶやき」)が為替市場であふれているようです。

 

●生活難を招く円安をどう止めるか? 通貨取引税が有効 G7サミットでも議論を

 

この円安の結果、大いに困るのは物価高に喘ぐ私たち庶民です。この間生鮮食料品は12.2%のアップ、電気代は21%アップというように、家計にとって不可欠なものの価格が高騰しています。一方4月の実質賃金は 1.2%減少しており、また年金もこの4月より目減り傾向となりました。

 

何よりもこの円安を食い止めなければなりませんが、基本的には日銀・政府の異次元金融緩和政策(量的緩和やマイナス金利など)を修正し、正常化していくことでしょう。こうした基本政策のレールの上に、短期的、中期的取り組みを進めることです。

 

超短期的には「円買いドル売り」の為替介入を行うことでしょう。しかし、これだけでは投機筋に打ち勝てませんので、通貨取引税検討と併せてアナウンスすることです。2016年3月中国の人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は突如、トービン税(通貨取引税)導入を検討すると公表し、世界を驚かせました。当時人民元の下落圧力が強まり投機筋の仕掛けに歯止めをかけるべく当局が為替介入を行ったのですが、その分外貨準備金が相当減少してしまい、これを防ごうとしてのトービン税検討というアナウンスメントでした。

 

よく通貨取引税導入は一国では無理だと言われていますが、超々低率の税率を課すのであれば--例えば税率0.0005%(1億円の取引に500円の課税)--金融関係者の反対も一定避けることができます(投機筋が20兆円の円売りを行えば1億円の税収に)。重要なのは、政府が投機筋の仕掛けは許さないという強い意志を示すことです。

 

来年は日本が議長国となるG7サミットが広島で開催されます。日本政府としては円安阻止のため投機マネーを抑制する通貨取引税とは別に、コロナ・パンデミックや飢餓対策のための国際連帯税としての通貨取引税の共同実施を呼びかけるべきです。コロナ禍やウクライナ戦争による食料危機=飢餓人口の増加という事態に対し、途上国・貧困国への資金支援はいくらあっても足りないからです。

 

(注1)【日経】円安、98年危機以来の一時135円台前半 競争力低下映す

(注2)【日経プレミア】円安シナリオの落とし穴

(注3)【日経】円下落 理論値より大幅安

(注4)【日経】円、一時『日本売り』以来の安値 投機筋狙い撃ち

国連事務総長「前例のない飢餓と貧困の波を引き起こす恐れ」

ちょうど世界の貧困根絶でホワイトバンド運動が日本でも流行っていた2005年頃、1日1.25ドル未満で生活する「極度の貧困」につき、「毎日お腹をすかせて床に就く状態」と表現した記憶があります。お腹がすいても食べるものがなく、それが高じて栄養不良になることが「飢餓状況」です。この20年ほど途上国の経済発展やミレニアム開発目標(MDGs)や持続可能な開発目標(SDGs)による運動もあり、「極度の貧困」「飢餓」人口が確実に減少してきました。ところが、コロナ・パンデミックによりその傾向がすっかり逆転してしまいました。

 

<世界の飢餓人口推移>
・2015年(約7.9億人)⇒2019年(約6.5億人)⇒2020年(約7.2-8.1億人)・・⇒2022年(約16億人?)

 

そして本年2月ロシアによるウクライナ侵略(戦争)は、両国が小麦など穀物の最大の輸出国であり、これが滞っていることにから、「94カ国の16億人が影響を受ける」恐れが出てきました(注1)。このまま戦争が長引けば、国連事務総長が言うように「前例のない飢餓と貧困の波を引き起こす」ことになりそうで大変懸念されます。16億人と言えば、地球人口の5人に1人です。

 

実際、各国は食料危機から自国民を守るために食料等の輸出禁止を打ち出す国が相次いでおり、それが20か国に及んでいるとのこと(注2)。世界でも最大級の穀物・食料輸入国である我が国にとっても、原油高と円安と相俟ってあらゆる物価が値上がり状況となっています。賃金上がらず、年金切り下げですから、私たちの生活も大変厳しいものになりつつあります。

 

まず世界と我が国の食料危機を止めるためにロシアのウクライナからの撤退と停戦を1日も早く実現させることです。我が国がこのたび国連安全保障理事会の非常任理事国に選出されたのですから、ロシアに直接乗り込んで談判するくらいの気迫で外交力を発揮してもらいたいものです。
以下、食料危機対策や途上国支援、国内財政立て直しのための施策を考えてみます。

 

1)穀物や原油先物市場に流れ込んでいる投機マネーを抑制するために(市場参加の)証拠金の引き上げや投資額(建玉)の制限を行うこと

 

2)円安を抑制すると同時に(飢餓や医療・保健対策など)途上国支援を行うため、外国為替取引税(通貨取引税)を国際連帯税として実施すること

 

3)国内財政を立て直すために金融所得課税の増税と金融資産課税の新設を行うこと

 

(注1)
【共同】黒海封鎖は「16億人に影響」 国連報告書、食料危機に懸念表明
 ロシア軍が黒海を封鎖し、ウクライナ産の小麦など穀物の輸出が滞っている問題で、国連は8日、報告書を公表し「穀物価格の上昇など、94カ国の16億人が影響を受けている」と指摘した。グテレス事務総長は「前例のない飢餓と貧困の波を引き起こす恐れがある」と強い懸念を表明した。
…中略
 ロシアの侵攻以降、黒海沿岸の港からの輸出が大幅に停滞し、世界的な食料の供給不安を招いている。(共同)

 

【TBS】ウクライナ侵攻で食糧危機深刻化 「世界で16億人が影響」と国連発表(動画あり)

 

(注2)
【日経】食料輸出規制、20カ国に 侵攻が自国優先に拍車

時代認識を考える>コロナと戦争で激変した世界、危機と脅威

グローバル連帯税フォーラムの第12回定期総会が、来る6月25日に開催されます。総会議案書の作成に当たり、時代認識について考えてみたいと思います。
 
●人類に対する脅威的事態の発生:コロナ・パンデミックとウクライナ戦争(核)
 
 
・この2、3年の世界の最大の出来事:新型コロナウイルスによるパンデミック(感染者5億人を超える)とウクライナ戦争(ロシアの国連憲章や国際条約破っての侵略)
・コロナはもとより、プーチン大統領の核兵器使用宣言(→核による第3次世界大戦の恐れ)によって人類に対する脅威的事態を呼び起こし、世界の様相も激変。
 
 
●飢餓8億人、難民・避難民1億人>20年間の世界の貧困改善傾向が逆転
 
 
・国連WFP(世界食料計画):現在世界では8億1100万人が慢性の飢餓、過去最大の2億7600万人が餓死の瀬戸際に。さらに今年中に2000万人増加と予測。
・ウクライナとロシアは世界の穀物輸出の約3割。戦争が長期化する傾向となり、食料危機も長期化する恐れ。
・UNHCR(国連難民高等弁務官):ウクライナ難民600万人はじめ難民・避難民が急増、史上初の1億人超え。
 ⇒グローバル化による経済成長もあってこの20年間貧困・飢餓状況は改善されてきたが、それが逆転し悪化傾向に。
 
 
●グローバル化への幻想と非民主主義国家の増加
 
 
・幻想:グローバル化によって途上国が経済成長し豊かになれば、「民主主義が広がっていくはずだ」。しかし、現実は「格差の拡大による先進国、発展途上国を問わない社会の分断で、民主主義に対する疑念をもたらし…むしろ中国主導の権威主義が広がっている」(以上、5月14日付日経新聞コラム「大機小機」)。
・スウェーデンのヨーテボリ大学V-Dem研究所の「民主主義報告書」:
 自由民主主義体制 32ヵ国(世界人口の14%)← 2010年には41ヵ国だった
密室型独裁体制 87ヵ国(世界人口の68%)
 選挙独裁体制 60ヵ国(世界人口の19%)  ―以上、SWIswissinfo.ch(21年5月3日)より
 ⇒グローバル化は金融化と市場原理主義の下に進められ、その結果先進国でも中間層が先細りとなり政治的民主主義も大きく後退。コロナによって、世界的にSDGs指標の貧困や格差が目に見えて悪化。
 
 
●国際連帯税による二重の役割:SDGs資金調達と投機抑制
 
 
・SDGs達成のための資金ギャップ2.5兆ドルだったのが、コロナ禍で4.2兆ドルに拡大。世界のODA総額は1789億ドル(2021年)、とうてい間に合わず
 ⇒OECD「世界の金融資産378.9兆ドル、その1.1%で資金ギャップは解決!」
・金融資産動員の第一歩は、外国為替取引への課税。併せて、巨大IT企業等グローバル企業への課税。これらを国際連帯税としてグローバルに実施。
 ⇒為替取引課税は同時に投機マネーを抑制する機能も(原油・穀物市場も投機マネーが流入し、価格高騰を演出)。

参院外交防衛委で国際連帯税質問(井上議員)、外相「革新的資金調達は重要と認識」

井上議員林外相
                井上議員       林外務大臣
 
 
今月19日の参院外交防衛委員会で共産党の井上哲士議員が、国際連帯税について質問してくれました。質疑の要点を述べます。
 
 
※全発言はこちらから、5/19外交防衛委をクリック(1:41:40あたりから国際連帯税の質疑がはじまります)
 
 
★井上:政府はSDGs推進のために革新的資金調達を挙げているが、それはどうしてか?
☆外相:SDGs達成のためには年間2.5兆ドル不足と言われている。コロナ禍でそのギャップはさらに拡大しているとの推計もなされている。この不足分を埋めていくには、従来の資金調達のみでは困難であることから、革新的資金調達は重要だと認識している。
 
 
★井上:国際連帯税について、2010年度から10年間税制改正要望をしてきた。その経過の上に「SDGs達成のための新たな資金を考える有識者懇談会」が設置され(実施に向けての)期待が大いに高まった。が、懇談会ではコロナ禍で日本経済が打撃を受けているからと言って新税を見送ることにしてしまった。逆であって、コロナ禍を理由に革新的資金調達をやめたら、ますます資金不足になる。国際連帯税も先のデジタル課税のようにコロナ禍だからこそ必要性は高まっていると考える。
☆外相:10年間要望してきたが、制度の具体化に至らなかった。そこで懇談会の提言を踏まえ、令和3年度、4年度と要望提出を見送った。が、冒頭申した通りSDGs達成のための資金不足を埋めるためには革新的資金調達は重要と考え、外務省としては引き続き適切な資金調達の在り方を検討していきたい。
 
 
★井上:2019年5月のODA特別委でTICADに向け全会一致で「SDGs達成に向け国際連帯税など革新的資金調達メカニズムを検討し、我が国が議長を務めるG20等の機会も活用し、議論を行えるように努めること」と決議した。ところが、懇談会はこうした経過を踏まえることなく逆の結論を出してしまった。今やコロナ禍において国際連帯税の必要性はいっそう高まっているのではないか。(外務省は)しっかり検討し税制改正要望に上げるべきだ。
☆外相:懇談会の提言はあくまで20年での判断だ。革新的資金調達の必要性、重要性は変わっていない。状況を踏まえながらしっかり検討していきたい。
 
 
★井上:国際連帯税を(元国際連帯税議員連盟会長として)よく知る外相であるので、リーダーシップを強く期待したい。
 
 
【グローバル連帯税フォーラムのコメント】
 
 
この外相答弁は極めて重要です。今日コロナ禍はもとより、ロシアのウクライナ侵略という野蛮な行為もあり、世界的に難民が激増し(1億人を超える!)、食料危機も現実の問題となってきました。世界の弱者や貧困国への支援は急務です。しかしながら今までのような各国の(任意の)ODA拠出だけでは、上記林外務大臣も言うように限界です。ドナー国自身がコロナ禍やインフレで莫大な借金を抱えてしまい、まったく財政的に余裕がないからです。
 
 
そこで国際連帯税など革新的資金調達メカニズムが必要となってきます。危機下にあってもしっかりと儲けている金融関連企業から、巨大IT企業等のグローバル企業から、地球規模課題対策のための資金として国際連帯税を徴収し(グローバル化市場の使用料と言ってもよい)、ODAとともに上記課題に使用していくことが求められています。
 
 
グローバル連帯税フォーラムも23年度税制改正要望にあって再度政府に対し国際連帯税新設を求めていきたいと思います。
 
 
 

オリガルヒ制裁にはタックスヘイブン対策、金融資本台帳が必要

日本ではまったく報道されませんでしたが、4月20日に開催されたG20財務相・中央銀行総裁会合に向け、「国際法人課税改革のための独立委員会(ICRICT)」が公開書簡を公開しました。ICRICTとはノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツや著書『21世紀の資本』のトマ・ピケティ、タックスヘイブン研究のガブリエル・ズックマンたちによって創設された公正なグローバル税制を求める非政府組織です。

 

そのICRICTが公表した書簡は「隠された富を対象としたグローバルな資産登録が必要な時だ」というもの(注1)。この書簡につき、4月19日付の英ガーディアン紙が「G20閣僚はオリガルヒへの取り締まりをタックスヘイブン対策に活用するよう促された」と題して報道していますので、紹介します。本文の前に、2,3の背景説明を行います。

 

1、オリガルヒと「ロンドングラード」

 

オリガルヒ(新興財閥)とはプーチン政権と癒着して財を成している者たちのことですが、その財(資産)たるやロシアGDPの21%に達すると言われています(米経済誌「フォーブス」)。その莫大な資産の相当部分が海外に移されていますが、最大の受け皿となったのが英国ロンドンで、その実態をNHKテレビが伝えていました(注2)。

 

英国には『ゴールデン・ビザ』という制度があり、投資額に応じて居住権、永住権が与えられる投資家用のビザ制度で、どんなに汚い金やマネーロンダリング用の金であろうと、金さえ払えば匿名でビザを取得できるというもの。オリガルヒはこれを使ったのですが、「英ロンドンは、ロシア語で都市を意味する“グラード”にかけて“ロンドングラード”と揶揄されるほどロシアマネーで潤った」とのこと。

 

現在、イギリス政府はオリガルヒ51人に制裁を科すことになっていますが、その資産の総額は1000億ポンド(15兆6000億円)。しかし、オリガルヒたちは「資産凍結はある程度見込んでいたのではないか かなりの資金をタックスへイブン(租税回避地)に、名義を別にしてきれいにして、すでに移している」とNHKは報じています(注2)。

 

2、タックスヘイブン対策、金融資産台帳作成が必須

 

それでオリガルヒへの制裁を有効裡に進めるにはタックスヘイブン対策が必要となります。多国籍企業に対しては先のデジタル課税(新多国籍企業税+世界共通最低法人税率)で網をかけることができますが、中小企業・ペーパーカンパニーや個人資産には網をかけることができていません。真の所有者と金融資産の中身が分からないからです。それでピケティやズックマンはグローバルな金融資産台帳を作成し、資産そのものへの課税を行うべき、と提案しています(注3)。

 

金融取引税でも難しいのに、金融資産税となるともっと難しいのではと思われますが、一つには有価証券については有力国ではほとんど電子化されていること(日本は証券保管振替機構)、二つにマネー・ローンダリングおよびテロ資金供与防止が目的ですが、正・準会員併せて200以上の国・地域が参加する金融活動作業部会(FATF:Financial Action Task Force)が活動中であり、匿名のペーパーカンパニーに対する透明性確保を目指しています。これらが金融資産台帳作成のツールとして利用できるでしょう。

 

3、日本ではまず預金通帳の名寄せを行い、マイナンバーとリンクさせ金融資産台帳作成へ

 

ところで、金融資産は有価証券だけではなく、預金もあり、暗号通貨もあり、絵画や宝石もあるでしょう。これらすべてをカウントしなければなりませんが、日本では何よりも個人・法人の預金口座を正確に把握することが大事です。10億冊あると言われている預金通帳の名寄せを行い、預金口座とマイナンバーとをリンクさせることが必要です(プライバシー保護を前提として)。

 

ともあれ、ずタックスヘイブンの存在は税の公正さを著しく歪め、同時にグローバルな格差是正を台無しにさせるものです。例え国際連帯税が世界で実行され、途上国への支援が一層活発となっても、その支援以上ものリソースがタックスヘイブンへと流出するであろう構造を何としても解体していかなければなりません。

 

4、ガーディアン紙の報道

 

G20閣僚はオリガルヒへの取り締まりをタックスヘイブン対策に活用するよう促された
G20 ministers urged to use oligarch crackdown to tackle tax havens

重鎮エコノミストが、富裕層が国に支払うべきものを奪うのを阻止するための世界的な登録を要求

 

G20諸国は、著名な経済学者のグループから、ウクライナ制裁の中でのオリガルヒの富の取り締まりを、タックスヘイブン対策に大いに利用するようにと促されている。

 

火曜日に開催される20カ国の財務相会議に送られた公開書簡では、資産、会社、建物を所有者に関連付ける世界的な登録制度を導入し、彼らが国に支払うべきものを奪うことができなくなるようにすることが求められた。

 

この公開書簡には、経済学者のガブリエル・ザックマン、ジョセフ・スティグリッツ、トマ・ピケティや、フランスの捜査判事エヴァ・ジョリなど、租税回避防止団体「国際法人課税改革のための独立委員会(ICRICT)」の委員14名が署名している。

 

彼らは、タックスヘイブンに隠された極端な富の集中が不平等を拡大し、社会の最貧層を貧困化させていると主張し、「富裕層の税金悪用で歪んだ」国際金融システムの改革を要求しているのです。

 

パンデミック発生以来、世界の富裕層の富は2倍の150億ドル(1.01兆ポンド)に達したが、ICRICTの委員は、その間、貧富の差は広がるばかりで、ウクライナ紛争で悪化した状況は、多くの貧困層を生活危機とエネルギーや食料の高騰に直面させていることを明らかにした。

 

彼らは、グローバルエリートのメンバーは、しばしば「税金の支払いを避けるためだけでなく、汚職や違法行為によって生じたお金を隠すために精巧な構造を通し…グローバル金融は、税の悪用、汚職、マネーロンダリングを繁栄させることができ」その富を隠していると書いている。

 

ウラジーミル・プーチンの侵攻後、ロシアのオリガルヒに属する資産を制裁しようとする試みは、彼らの富の保有場所について署名者たちが「不透明性の壁」と呼ばれる壁によって、クレムリンとつながりを持つ人々に刑罰を課そうとする国々を困難にしていた。

 

書簡にはこうある。「ウクライナ戦争は、タックスヘイブンに正面から取り組み、緊急に透明化対策を実施する必要があることを示している。それは、すべてのオリガルヒ、そして税務当局や一般市民から隠され、金融の不透明性が高い国・地域に隠されているあらゆる富をターゲットにすることである」、と。

 

同グループによると、金融口座情報の自動交換や受益者登録の導入など、富とその真の所有者を結びつける上で、近年いくつかの進展が見られたという。しかし、これまでの進展は「政治的な意思」を欠いていたとし、G20諸国にさらなる努力をするよう促している。

 

「パナマ文書」、「パラダイス文書」、そして最近では「スイス・シークレット」など、大量の文書がリークされ、富裕層や企業の活動、そしてオフショアのタックスヘイブンの利用が浮き彫りになっている。しかし、その結果、各国政府に対してより厳しい税制上の措置を取るよう圧力がかかったにもかかわらず、活動家は、オフショア租税回避地の利用を取り締まることにほとんど進展がないと述べている。

 

ICRICTのエコノミストは、不動産、ヨット、ジェット機、宝石などの資産から、銀行口座、暗号通貨資産、貸金庫、信託などの法的手続き、さらには知的財産や商標などの無形資産まで、あらゆる形態の富を登録した資産登録の国際ネットワークの導入を提案した。

 

これらの資産は、法的な所有者とは異なる実際の受益者にリンクされることになる。経済学者らは、何がどこに、誰によって所有されているかを詳細に示すグローバル資産登録によって、各国が富と不平等を記録・分析できるようになり、税法の執行強化につながると同時に、不正な活動を行おうとする人々の防止になると述べています。

 

委員は、G20首脳に対し、このようなシステムを導入し、オフショア富とタックスヘイブンを議論するための緊急国際サミットを開催するよう促しています。「もう言い訳はいらない、パンデミックもいらない、戦争もいらない、行動しないことを正当化できない」と彼らは署名し、そのような行動は「民主主義を守り、一層進行する不平等を終わらせ、社会契約を再構築するために」必須だと結論づけた。

 

(注1)
https://www.icrict.com/press-release/2022/4/19/icrict-open-letter-to-g20-leaders-its-time-for-a-global-asset-register-to-target-hidden-wealth 
(注2)
https://www.nhk.jp/p/nw9/ts/V94JP16WGN/blog/bl/pKzjVzogRK/bp/pQ8JrVgMyX/ 
(注3)
https://toyokeizai.net/articles/-/74897 

【ご案内】5.25コロナ禍における在日外国人の健康問題を考える

グローバル連帯税フォーラムも参加しているNGO労働組合国際協働フォーラムの感染症グループが下記のようなウェビナーを開催しますので、関心のある方はふるってご参加ください。

 

NGO労働組合国際協働フォーラム:HIV/エイズ等感染症グループ ウェビナー
   コロナ禍における在日外国人の健康問題を考える
    =NGOと労働組合が協力してできること=

 

◎日時:2022年5月25日(水) 午後3時~4時30分
◎形式:ズームによるオンライン会議
・参加費:無料 参加申込をお願いします。
◎申込:以下のリンクから登録フォームにアクセスし、必要事項を記入して送信をお願いします。
 URL: https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf3_u33ZDU_27nc6O0m-yN_rOSPcF8KXWKqHJQnub2ltQ2-Zw/viewform
◎主催:NGO・労働組合国際協働フォーラム HIV/エイズ等感染症グループ

 

◎問合せ:HIV/エイズ等感染症グループ事務局
 (特活)アフリカ日本協議会 国際保健部門
 担当:稲場・廣内・小泉 
 メールアドレス:ajf.globalhealth@gmail.com

 

<プログラム>全体90分
・開会挨拶・趣旨説明:NGO労組協働フォーラム 感染症グループ
・外国人労働者の受け入れに関する連合の考え方:連合 労働法制局 菅村裕子さん
・労働組合の取り組み事例:UAゼンセン 外国人相談担当 エスター・スイバンモイさん(ミャンマー)
・NGOの取り組み事例1:シェア=国際保健協力市民の会 副代表理事 沢田貴志さん
・NGOの取り組み事例2:移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)運営委員 旗手明さん
・コメント:JETROアジア経済研究所 佐藤寛さん
・パネル・ディスカッション、質疑応答
・閉会挨拶:NGO労組協働フォーラム 感染症グループ

 

<開催の趣旨>
◎現在の日本では、少子高齢化などによる労働力不足を解消するために、外国人労働者の受入れが拡大しています。その中で、メディアでもよく取り上げられているように、外国人労働者をめぐる労働問題、人権問題が頻繁に生じています。

 

◎特に技能実習制度では、「国際協力の一環」という制度の目的とは裏腹に、実習生は過酷な労働環境で働いていたり、職を失うなど様々な困難に直面しています。また、外国人労働者がHIV/AIDSや結核、新型コロナなどの感染症、勤務中のケガなど、健康状態が悪化した時には、言語や制度、医療費などが障害となって、十分に治療を受けられずに失職したり、帰国を促されるといったケースもあります。

 

◎NGOと労働組合が協働してSDGsの達成を目指すことを目的とする「NGO・労働組合国際協働フォーラム」のHIV/エイズ等感染症グループでは、これまで、外国人労働者への現場での課題や労働組合の取り組みについて、いくつかの労働組合との座談会を開催してきました。実際のところ、労働組合の取り組みや、NGOとの連携の事例はそれほど多くはないものの、共有し広げていくべき事例もあるということがわかりました。

 

◎今回のウェビナーでは、外国人労働者関連で実績のあるNGOと労働組合の方々の登壇をお願いし、それぞれの立場で具体的な取り組み事例をお話いただきます。外国人労働者の健康、労働権、人権について、NGO・労働組合としてできること、お互いに協力していけることは何かについて考える機会にしたいと考えております。ご関心のある多くの方々のご参加をお願いいたします。

【ご報告】5.12国際保健への取り組み強化を求める緊急院内集会

 A NEW WAY TO INVEST

        (OECD)Global Outlook on Financing for Sustainable Development 2021

 

オミクロン株の登場で、コロナウイルスもエンデミック状態へと転化していくのではと期待されましたが、中国や北朝鮮でも感染拡大が見られ、パンデミック状況は収まりそうもありません。

 

そういう中で我が国をはじめ各国のグローバルヘルスについての資金的貢献や取り組みを強化してもらうため、昨日(5月13日)参議院議員会館会議室において、『コロナ時代のグローバル・ヘルス(国際保健)への日本の取り組みに関する緊急院内集会』が超党派の国会議員とともに開催されました。主催は同集会実行委員会(注1)で、議員による呼びかけは7党派のみなさんから行われました(注2)。

 

◎集会プログラムと国際連帯税と資金調達に関する報告

 

集会は、議員呼びかけを代表して武見敬三参議院議員が行い、その後基調報告を國井修・GHITファンド(グローバルヘルス技術振興基金)最高経営責任者が行いました。國井さんは、高所得国と中・低所得国との桁違いともいえる医療格差の実態を明らかにしつつ、今日のグローバルヘルスの課題について述べました(詳細は後日報告)。参加した国会議員との質疑も活発に行われました。

 質問に答える國井

 国会議員の質問に答える國井氏(右から2人目)

 

その後、市民社会から3人、政府から2人がコメントを寄せました(注3)。私(田中)も『グロ-バルヘルスと資金調達――方法論としての国際連帯税』と題して報告を行いました。その骨子は次のようなものです。

 

 プレゼン・田中

   国際連帯税を報告する田中氏(右端)

 

◎国際連帯税報告の要旨

 

田中報告のパワーポイント資料はこちらを参照願います。

 

1)これまでSDGs達成のための資金ギャップは年間2.5兆ドルと言われてきたが、コロナ禍の発生でそれが4.2兆ドルと拡大した(OECD2021)。保健に限れば1兆ドル。

 

2)一方、公的な開発援助資金ODAはトータルで1789億ドルしかなく、保健すら賄えず。それでOECDは民間資金である金融資産378.9兆ドルに着目し、その1.1%を動員できればギャップは解消すると提言。

 

3)その民間資金(金融資産)を動員する方法として、①投融資によるやり方、②税制によるやり方という2つ。OECDは前者を提言しているが、私たちは後者の国際連帯税という方法を提案する。

 

4)国際連帯税の2つのスキーム。①新多国籍企業税、②外国為替(通貨)取引税だ。何よりも政治リーダーが国際会合で主張し、専門家をまきこみつつ、市民=世論がこれを支えること。そうすれば国際共同スキームとして、兆円単位の援助資金を創出することができる。

 

(注1)

参加団体(50音順):グローバル連帯税フォーラム、新型コロナに対する公正な医療アクセスをすべての人に!連絡会、アジア太平洋資料センター(PARC)、アフリカ日本協議会、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、日本リザルツ

 

(注2)

自由民主党  衛藤征士郎 衆議院議員、武見 敬三 参議院議員

立憲民主党  西村智奈美 衆議院議員、田島麻衣子 参議院議員

公 明 党  古屋 範子 衆議院議員

日本維新の会 青柳 仁士 衆議院議員

国民民主党  古川 元久 衆議院議員

日本共産党  井上 哲士 参議院議員

社会民主党  福島 瑞穂 参議院議員

 

(注3)

田中徹二:グローバル連帯税フォーラム(開発資金等)

堀江由美子:セーブザチルドレンジャパン(保健システム等)

金杉詩子:国境なき医師団(公平な医薬品アクセス等)

赤堀 毅:外務省地球規模課題審議官

三村 淳:財務省国際局長

 

ウクライナ難民、SDGs(持続可能な開発目標)、国際連帯税

田島麻衣子

 

国際連帯税議員連盟でお世話になっている田島麻衣子参議院議員が、毎日新聞電子版の政治プレミアに「ウクライナ難民」問題について取材されていますので、紹介します。その前に若干思ったところを述べます。

 

1)日本政府は「避難民」受け入れと言っていますが、これは難民認定を極端に渋っている政府の政策によります。難民と避難民では、まるっきり保護待遇が違ってきます。その点をまず田島議員は指摘しています。

 

2)なお、この問題については4月10日TBS「サンデーモーニング」放送で分かりやすく解説していました(動画)。こちらと併せて読むことをお勧めします。

 

3)この難民問題は当然SDGs(持続可能な開発目標)の課題で、コロナ以前には貧困と保健関係の目標は相当改善されてきましたが、難民だけは2013年頃より急増し、2015年にはドイツがシリア難民等を100万人引き受けました。2020年で世界の難民数は8240万人にも上り、今日ウクライナから520万人の難民が生じていますので、全体で9000万人に上るのではないかと思われます(地球人口の約1.1%が故郷を追われている)。

 

4)ところで、河野太郎元外務大臣(17年8月-19年9月)はSDGs対策のため国際連帯税の必要性を国際的に提案していましたが、その事例として当時急増する難民の救済を挙げていました。日本政府は、国際的支援を実施することはもとより国内的にも「故郷を追われた人は世界中にいる…日本が国際社会の中で応分の責任を果たすならば、これからもっと難民を受け入れなければならない」と田島議員は訴えています。

 

<以下、記事です>

ウクライナ難民受け入れで豊かになる日本

田島麻衣子・参院議員

 

 英オックスフォード大学院で難民問題や人道支援を学び、国連の世界食糧計画(WFP)でコンゴ民主共和国から隣国のアンゴラに逃れてきた難民たちのキャンプに入るなど支援の現場に関わった。日本はこれまで難民政策と言えるものがなかった。今回のウクライナ難民の受け入れによってまず一歩を踏み出さなければならない。

 

 日本政府は、ウクライナからの「避難民」を受け入れたと言っているが国際的には通用しない。命を守るため、政治的な武力紛争から逃れ国境を越える人々は難民だ。岸田文雄首相が国際会議で「避難民」と発言した時にどう通訳するというのか。「難民ではなく、避難民だ」などと言えば、私が学んだ教授たちに怒られてしまう。

 

 日本政府は難民制度を本質的に変えていく気がない。ウクライナ難民への対応も場当たり的で、長期的な視点がない。

 

大量の難民が来たらどうするか

 

 国連の現場にいると、人道支援がいかに難しいかということを、身をもって体験する。難民キャンプに支援に入るとしても、受け入れ国の許可がなければ入っていけない。助けようと思っている難民が受け入れ国の政府から迫害されている場合、どうすればいいのか。人道支援の原則である中立的な支援ができるのか。

 

 そうした問題を抱えながら、それでも人道支援をしなければならないことを実地で学ぶ機会が、これまでの日本には欠けていた。……(以下、省略)

 

※写真は毎日新聞電子版より