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河野外相「新興する課題…:開発のための国際協力の新たな視点」で国際連帯税に言及

9月18日から第73回国連総会が始まり、本日25日から各国代表の一般討論も行われ、また一般討論以外にも様々なハイレベルイベントが開催されます。24日「ネルソン・マンデラ平和サミット」、26日「結核に関するハイレベル会合」等々。

 

そのハイレベルイベントのひとつが、「新興する課題と変化するパラダイム:開発のための国際協力の新たな視点」という会合です(*)。ここに河野太郎外務大臣が出席し、国際連帯税に関して、次のように述べられました。

 

【河野外務大臣臨時会見記録 冒頭発言より】

 

…(前略)…「新興する課題と変化するパラダイム」に関する会合が行われましたが,国際連帯税を含む革新的な資金調達が必要だ,少なくともこの問題についての議論をする必要性に言及しながら,SDGsを推進し,国づくり,人づくりに日本として貢献をしていく考えを示しました。
 議長から,やはりこの国際的な連帯税,政府を経由してODAとしてサポートをするのではなく,なんらかの直接必要なところに財源としていく国際連帯税というものに非常に興味を示されました。…(後略)…

 

なお、この会合についての外務省の報告は、次の通りです。

 

【外務省】「新興する課題と変化するパラダイム:開発のための国際協力の新たな視点」ハイレベル会合への河野外務大臣の出席

 

(*)これは伝統的なODAの枠組みを越えた新しい開発協力のあり方について議論するハイレベル会合で、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)、欧州委員会,OECD開発センターの共催で開催される。

 

★写真は、「新興する課題と変化するパラダイム:開発のための国際協力の新たな視点」で発言する河野外相(外務省のHPより)

待望の『日本の税金 第3版』(岩波新書)が新規発売中!!

日本の税金

 

三木義一・青山学院大学学長(民間税制調査会メンバー)のベストセラーである岩波新書『日本の税金』の第3版が新規に発売されました。「定評ある入門書の最新アップデート版」ですので、ぜひ手に取って勉強しましょう。タックスヘイブン問題や国際連帯税についても記述されています。以下、岩波新書の案内文より

 

<内 容>
日本の税制は複雑でわかりにくい.政治家と官僚まかせで作られた制度を,市民の目線で見直し解きほぐす.所得税,法人税,相続税,消費税,地方税,間接税,国際課税.その基本的な考え方,導入の背景,問題点などをコンパクトに解説する.定評ある入門書の最新アップデート版.税金の仕組みをすぐ知るのに最適な一冊.

 

<目 次>
序 章 私たちは誰のために税を負担するのだろう?
 政権交代・再交代/地震・原発大災害/二一世紀の資本/まず税制を知ろう

 

第1章 所得税――給与所得が中心だが
 1 「所得」税と給与所得
  「収入」と「所得」/給与所得控除/サラリーマンの必要経費/サラリーマンにも実額控除可能?/事業所得者の必要経費/家族労働の必要経費性/住居の維持費
 2 誰の所得なのか
  夫婦の所得?/課税単位/夫婦財産契約
 3 「所得」に課税するのか,「人」に課税するのか
  総所得金額/人税としての所得税/基礎控除額で人間が生活できるだろうか/課税最低限のまやかし/配偶者控除論争/医療費控除等
 4 累進税率の意味
  超過累進税率/税額控除か所得控除か/控除から手当へ/給付付き税額控除/住民税負担
 5 所得税をどう改革すべきか
  建前の応能負担/所得の把握と番号/税のグローバル化

 

第2章 法人税――税率引下げ競争の行く末
 1 会社の税金の実態
  法人税率は高いか/赤字法人/多い法人数
 2 法人税の仕組み
  法人の所得/会社の建前と法人税/同族会社/受取配当益金不算入/交際費損金不算入/税率/公益法人課税/組織再編税制の台頭
 3 会社の所得は誰のものか
  法人擬制説と実在説/選挙権のない法人/法人税の方向

 

第3章 消費税――市民の錯覚が支えてきた?
 1 錯覚する消費者
  痛みを感じた消費税/誰が払うべきなのか/誰に払っているのか――免税業者/誰に払っているのか――簡易課税業者
 2 複雑で,不公平でもある税制
  どの取引に消費税がかかるのか/複雑な税制/消費税は付加価値税/仕入税額控除否認/逆進性と軽減税率/消費税と滞納
 3 どうなるのか消費税
  税率アップと非課税/ゼロ税率/給付付き消費税額控除/高齢化社会と消費税/正規雇用と付加価値税

 

第4章 相続税――取得税方式に徹底すべきでは?
 1 制度疲労に陥っている税制
  相続額が同じでも/遺産取得税方式から折衷方式へ/死亡件数一〇〇件のうち,相続税がかかるのは?/法定相続分でまず計算/取得額が同じでも税負担増/連帯納付/右肩上がりの税制/通達で評価/事業承継
 2 相続税をどう考えるべきか
  相続廃止は可能か/遺産取得税方式の徹底へ/相続三代続くと
 3 贈与税の仕組みと問題点
  贈与税は補完税/相続時精算課税の導入/いつ取得したか/法人への贈与は注意

 

第5章 間接税等――本当に合理的で必要なのか?
 1 税が酒を造る
  ビール業界と大蔵省のいたちごっこ/分類差等課税/ビールは高級酒?/いたちごっこの終焉?/免許は必要か
 2 たばこ増税の攻防
  たばこにかかる四種類の税/四重課税か/増税で禁煙させられるか
 3 暫定が恒久化する自動車関係税
  引上げは暫定?/特定財源の攻防/環境税化へ
 4 様々な流通税
  各種の流通税/相続させる遺言と登録免許税
 5 不思議な国税
  電源開発促進税/森林環境税

 

第6章 地方税――財政自主権は確立できたのか?
 1 地方税の仕組み
  地方税条例主義/不明確な規定/三割自治は変わらず
 2 事業税
  「事業」に課税/外形標準課税
 3 固定資産税
  台帳課税主義/バブル後遺症/家屋はなぜ下がらない/時価に連動すべきなのか/課税ミスの連続
 4 都市計画税
  固定資産税とどう違う/都市計画財源として機能しているか/都市計画への住民参加と都市計画税の再生
 5 法定外税等
  自治体独自の税/実際の導入例/超過課税

 

第7章 国際課税――国境から税が逃げていく
 1 逃げる納税者
  タックス・ギャップ/「居住者」か否か/住所か国籍か/内国法人・外国法人/税金分捕り合戦
 2 パナマ文書,パラダイス文書の衝撃
  国外逃亡と徴税/パナマ文書・パラダイス文書/国境を超えた税――国際連帯税が出国税に

 

終 章 税金問題こそ政治
 反税の義賊=ロビン・フッドは今?/財政ポピュリズムの台頭/毎年の税制改正手続とその公正化

 

あとがき

【寸評&社説】政府の「SDGsアクションプラン」は科学万能・経済成長主義に偏りすぎ

一昨日(9月17日)の朝日新聞に「政府とSDGs かけ声に終わらぬよう」と題した社説が載りましたので、紹介します。実はNGO・NPO側の懸念と共通することが書かれています。

 

その前に、SDGs(持続可能な開発目標)について簡単に説明します。2015年9月国連において採択され、17目標と169ターゲットをもつもので、①主に途上国の貧困問題等を対象としたミレニアム開発目標(MDGs)分野、②気候変動等地球環境問題を対象にしたリオ・サミット分野、③持続可能な経済成長と雇用分野、の3つの分野を統合したものです。その基本理念は「誰一人取り残さない」「貧しい人々や脆弱な状況下にある人々に対する連帯の精神」(*)にあると言えます。

 

(*)[国連総会採択] 「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」

 

我が国も2016年のG7伊勢志摩サミット直前の5月、内閣総理大臣を本部長とする「SDGs推進本部」が立ち上がり、同年12月には「SDGs実施指針」がまとめられ、世界的にもSDGs取組みの先端を走っていました。ところが、昨年12月「SDGsアクションプラン2018」が公表されたのですが、二重の意味で、それまでの取組みを台無しにするような事態になってきています。

 

ひとつは、アクションプランの内容で、あまりにも科学万能・経済成長主義を打ち出し過ぎており(**)、上記SDGs理念から外れつつあること。もうひとつは、マルチステークホルダー(広範な関係者)による連携を謳い、課題の推進や実施について円卓会議で行っていたものが、それなしで一方的に公表されてしまったこと、です。

 

(**)「SDGsアクションプラン2018」

第一目標に「SDGsが掲げる社会課題や潜在ニーズに効果的に対応すべく,破壊的イノベーションを通じた“Society 5.0”や,“生産性革命”を実現」とあるが、経済白書か何かと間違っているのではないか。

 

以下、朝日新聞の社説ですが、本文の下から11行目に「…NPO関係者らは、独自の行動計画づくりに取り組んでいる」とありますが、それはSDGs市民社会ネットワークが作成しつつあるものです。

 

SDGs市民社会ネットワーク「SDGsボトムアップ・アクションプラン2018」(第一次)

 

 

【朝日新聞】(社説)政府とSDGs かけ声に終わらぬよう
 

 地球環境を守り、貧困を克服して、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにする。

 

 そんな世界をめざす「持続可能な開発目標」(SDGs)が国連で採択されて3年。国内でも関心が高まっている。

 

 とくに政府の動きが目立つ。安倍政権は、全閣僚からなる推進本部を設けている。この6月の会合では「国家戦略の主軸にすえる」「SDGsで世界の未来を牽引(けんいん)する」とうたった。

 

 かけ声だおれにしてはなるまい。この国際目標の達成には、官民あげた取り組みが欠かせないが、政権の思惑先行の印象がぬぐえないのが懸念材料だ。

 

 少子高齢化のなかで成長への突破口に位置づけつつ、国際貢献の旗印にする。19年のG20首脳会議、20年の東京五輪・パラリンピックに向け、政権はそんな狙いを抱いているようだ。

 

 SDGsは、貧困や健康・福祉、教育、気候変動、まちづくりなど、17分野の169もの目標からなる。抽象的なテーマも多く、行政のどの施策も何らかの形でかかわるといえる。

 

 推進本部がまとめた行動計画には、「生産性革命」や「地方創生」などの言葉が並ぶ。政権が看板とする課題であり、今年度当初予算に盛り込んだ施策が予算額付きで記されている。

 

 問われているのは、SDGsの理念に沿って政策をどう見直していくかであり、既存の施策をPRすることではない。そのことを肝に銘じてほしい。

 

 政権の姿勢を疑問視するNPO関係者らは、独自の行動計画づくりに取り組んでいる。

 

 「誰一人取り残さない」とのSDGsの標語を踏まえ、まず貧困・格差対策を重視する。既存の施策を見直し、すぐ実行すべき事業、政府は手をつけていないが必要と考えられる事業など4段階に整理する。

 

 そうした作業を重ねながら、いずれ「持続可能な社会」基本法をつくる。そんな構想だ。

 

 NPOが動き出したのは、計画をめぐって政府の「言行不一致」が表れたからでもある。

 

 政府はSDGsを「広範な関係者が協力して推進する」として、NPOや大学、経済団体、国際機関などと、各省庁の担当者が集まる円卓会議を立ち上げた。ところが昨年末に最初の行動計画を決める際、円卓会議では触れないまま、その後の推進本部会合で打ち出した。

 

 行政と企業、NPOをはじめとする市民社会が対等の立場で力を合わせていく。それがSDGsの精神だ。政権の本気度は、民間としっかり手を携えるかどうかを通じても試される。

外務省、10年連続で「国際連帯税(国際貢献税)」を要望

全省庁からの平成31年度(2019年度)税制改正要望が出揃いましたが、外務省は今年も「国際連帯税(国際貢献税)」を要望しました。これで10年連続です。要望内容は、ほぼ例年通りですが、国際的な動向に併せて、積極的な提案も目立ちます。以下、2つ上げます。

 

外務省、平成 31 年度税制改正要望事項

 

①『内容』の項:「本年6月の第5回SDGs推進本部会合では,拡大版SDGsアクションプラン2018を決定し,安倍総理は来年のG20サミットとTICADに向け、次世代への保健・教育分野の取組を強化する意向を表明した」

 

②『新設・拡充又は延長を必要とする理由』の項:「平成31年のG20サミット、TICAD7、SDGsのフォローアップを行う首脳級の国連ハイレベル政治フォーラムに向けて,SDGsの実施を我が国として積極的にリードしていくとの観点からも,中長期的な幅広い開発資金の確保に率先して取り組んでいく必要がある」

 

国際連帯税の役割は、基本的には世界の貧困や気候変動問題等の地球規模課題のための資金となるものですから、このような積極的な提案は大いに歓迎するものです。

 

ところで、外務省の要望書でも述べていますように、「国際連帯税に関する(政府による)検討」は2012年8月の国会で決定したものです。つまり、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律(税制抜本改革法)」の第7条第7号で。このことから、私たちは先月の国際連帯税シンポジウムで以下のことを採択し、河野太郎外務大臣に提出しました。

 

「国際連帯税の導入に向けた具体的な検討を行うにあたっては、政府内に省庁横断的な会議体を設置するとともに、その下に専門家・有識者及びNGOや市民団体の代表者等からなる『有識者検討委員会(仮称)』を設置することを要請します」、と。あらためて私たちは、外務省(外務大臣)が省庁横断的な会議体ならびに有識者検討委員会設置のためのイニシアチブをぜひ取っていただくこと、このことを強く要請する次第です。

7月国際連帯税シンポジウム報告書(小冊子):ご希望の方は連絡ください

7月26日に開催された「SDGsのための国際貢献と国際連帯税を考えるシンポジウム」の報告書(小冊子)がもうすぐ出来上がります。ご希望者には送付しますので、お名前、住所、ご希望部数をお書きのうえ、gtaxftt@gmail.com から申込みください。

 

なお、ネットでも読むことができます。当日使われたパワーポイントの資料が上記小冊子では小さ目に印刷されていますが、ネットでは拡大して見ることができますので、ネットの方も利用ください。

 

★「SDGsのための国際貢献と国際連帯税を考えるシンポジウム」(全文)を読む ⇒ フォーラムのWebサイト のバナーをクリック

 

以下が、掲載しているパワーポイント資料です。

①共催者ごあいさつ:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム・代表理事

②基調報告『国際連帯税の意義と未来』:金子文夫・横浜市立大学名誉教授

③「欧州調査報告―EU金融取引税を中心に」:津田久美子・北海道大学法学研究科博士課程 日本学術振興会特別研究員D C 1

④「国際連帯税『貧困・格差のない持続可能な社会』をグローバルに実現する最大のツール」:稲場雅紀・SDGs市民社会ネットワーク理事  

⑤「UNITAIDによる新規抗結核薬の展開支援」:川崎昌則・大塚製薬(株)医薬品事業部抗結核プロジェクト 次長 

⑥「持続可能な開発目標(SDGs)の期待と不安):古沢広祐・國學院大学経済学部/ (NPO)「環境・持続社会」研究センター 

 

国際連帯税議連創設の立役者=峰崎元参議院議員、国際連帯税を語る

峰崎直樹元参議院議員(元財務副大臣)の週刊(個人)レター『チャランケ通信』(8月28日号)で、国際連帯税に関するコメント記事が掲載されています。記事にもありますように、国際連帯税創設を求める議員連盟は当時野党であった民主党の峰崎議員など有志が、自民党税制調査会会長であった津島雄二議員に働きかけて、超党派議連として設立されました。

 

その議連設立の経緯ですが、「肝腎の外務省自身が及び腰」だった、とのことは初耳ですね。が、記事にはありませんが、議連設立後、外務省担当者が打って変わったように積極的に動いてくれました。

 

ともあれ、峰崎先生は「成立した『出国税』を『国際連帯税』へと転換させてはどうか、さらに為替取引への課税など、世界で大いに論議を進めるべきだ」と提言しています。

 

なお、アイヌ語で談判、議論を意味する『チャランケ通信』は、民間税制調査会のWEBサイトで読むことができます。峰崎先生の鋭い税財政・金融問題等の分析・問題提起がとても評判です。以下、記事です。

 

 

河野外務大臣の「国際連帯税」への積極姿勢、大いに注目したい

 

 先週21日、日本経済新聞の政治欄を見て河野外務大臣が「国際連帯税」を提起した事の記事に注目した。7月に都内で開催された国際連帯税に関するシンポジウムに出席し、「国の予算に依存せず、必要な資金ギャップを埋めるやり方として国際連帯税は有力な方法の一つだ」と語り、「先進国は『援助疲れ』している」とも述べ、縮小するODAの代替策の必要性を指摘したようだ。

 

最初のアイディアは、金子宏東大名誉教授の「国際人道税」、それを実践したシラク大統領、フランスが「航空券連帯税」導入へ

 

 この税について、おそらく世界で最初の問題提起をしたのは、税法の権威である金子宏東大名誉教授の「国際人道税」の提唱だろう。1997年の事だった。それを受けて、2006年にフランスでの航空券連帯税が出来上がるわけだ。私自身がこの流れを知った野党民主党時代の2008年、フランスのストラスブールでEU議会との日本の国会議員交流で訪仏した際、フランス外務省を訪問してフランスから始まった航空券連帯税について調査をしたことに始まる。税収の使い道として、ユニットエイドを通じて感染症対策などに支出されていたと記憶する。

 

 この後、日本に帰り、当時自民党税制調査会長を務めておられた津島雄二衆議院議員の部屋を訪ね、超党派の「国際連帯税議連」の設立と津島議員に会長の就任を要請したことから具体化が進む。私自身も副会長として参加し、外務省や財務省などに働きかけたが、肝腎の外務省自身が及び腰で、なかなか前に進まなかったことを記憶する。もちろん、経済界は反対であったし、何よりも航空業界は「航空券連帯税」には真っ向から反対してきたことは言うまでもない。

 

動き始めたのは、2009年の政権交代から、G20の場でも発言へ

 

 やはり動き始めたのは2009年の政権交代からであり、翌2010年には政府税制調査会の下に「国際課税小委員会」を設置して具体的検討に入ったことが日経紙にも記載されている。政権が再び自民党・公明党に交代して以降も、細々と議連の活動が続くのだが、河野外務大臣時代になって、ようやくこの問題が正面から取り上げられるようになって来たわけで、それだけに感慨深いものがある。

 

 ただ、今年5月に開催されたG20外相会合の場で国際連帯税の呼びかけを進めたようだが、実は2010年6月初旬、韓国プサンで開催されたG20財務大臣会合の場で、菅財務大臣の代理出席した副大臣の私は、国際連帯税の提案と法人税の引き下げ競争を止めるべきだ、という発言をしたことを思い出す。当時は、リーマンショック後の世界的金融危機とギリシア危機に始まった途上国の問題などがメインで、税についてはあまり関心を呼ぶことは無かった。だが、財務副大臣として最後の国際会議の場となるわけで、この問題に絞って問題提起をした。財務省からの振り付けではない発言だっただけに、やや緊張したことを思い出す。

 

成立した「出国税」を「国際連帯税」へと転換させてはどうか、さらに為替取引への課税など、世界で大いに論議を進めるべきだ

 

 河野外務大臣は、来年日本で開催されるG20の会合でも議題として取り上げるようだが、その前に来年度の税制改正の場でしっかりとした議論をするよう求めるべきだ。航空券連帯税によく似た「出国税」が今年4月成立し、来年1月7日以降日本から出国する2歳以上の総ての人対象に、一人1,000円税として徴収することとなる。航空と船舶が対象だが、これは航空券連帯税とどう違うのか、国際貢献に使うか、それとも国内の観光インフラに使うかの違いだろうが、桁はせいぜい100億円オーダーであり、国際連帯税として支出する方がベターであろう。出国税は観光関連の目的税にする意向のようだが、使い方の監視が緩く成り易いことに警戒すべきだろう。できれば、この「出国税」を「国際連帯税」として改組すべきではないか、と考えるがどうだろう。

 

 今回河野大臣の提起には、外国為替取引などにも課税対象にしているようだが、色々と課税対象も考えて行くべきだろう。それにしても、従来の外務省の姿勢とは質的に異なる画期的な動きとして今後の動きを注目しておきたい。(了)

 

★写真は、2008年6月議員連盟の勉強会で挨拶する峰崎先生(ちょっとお若いですね)

日本経済新聞(8月21日付)に国際連帯税が大きく掲載さる

昨日(21日)の日本経済新聞4面(政治欄)に「外相『途上国支援に新税を』 国際連帯税を提起」と題して、下記の通り、比較的長文の記事が掲載されました。記事では、国際連帯税が「ODAの代替策」として扱われていますが、正確には「ODAの補強策」と表現した方がよいでしょう。日本のODAは1.1兆円(支出純額、2016年)ほどあり、いきなりこの程度の額を国際連帯税で創出するのは無理だからです。

 

ちなみに、航空券連帯税で500億円(フランス並みの定額税で)程度です。ただし、実施に向け議論中の欧州10カ国の金融取引税(株式・債券・デリバティブ取引への課税)の税率並みでは1兆円近くの税収となりますが。

 

また、記事にある「河野氏によると、16年の1日あたりの外国為替取引額は約6.5兆ドル。0.01%の税をかければ1日で6.5億ドルの税収が見込めると主張する」というのは、河野議員のブログ「ごまめの歯ぎしり」に記載されています。

 

 

【日経新聞】外相「途上国支援に新税を」 国際連帯税を提起

安定財源狙う、経済界の反発根強く

 

 河野太郎外相が発展途上国の貧困対策などに充てる「国際連帯税」の導入を提起している。議論を喚起して国内外の関心を高め、政府開発援助(ODA)に代わる新たな途上国支援の財源として検討を進めたい考えだ。国際連帯税の導入はかねて政府内でも構想があったものの、経済界などの反発が強く、長年議論が停滞している。

 

ODAの代替策

 

 外務省は8月下旬に2019年度の税制改正要望を提出し、国際連帯税の新設を提案する方針だ。10年度以降は9年連続で検討を盛り込み、実現を求めてきた。

 

 河野氏は7月、都内で開いた国際連帯税に関するシンポジウムで「国の予算に依存せず、必要な資金のギャップを埋めるやり方として国際連帯税は有力な方法の一つだ」と語った。「先進国は『援助疲れ』している」とも述べ、縮小傾向にあるODAの代替策が必要だと指摘した。

 

 国際連帯税とは、国境を超えた経済取引に課税し、発展途上国の貧困や感染症対策の財源に充てる仕組み。00年に国連が採択したミレニアム開発目標(MDGs)を契機に誕生したアイデアだ。飛行機の利用や金融資産の取引、二酸化炭素(CO2)の排出に課税する案などがある。ODAと違い先進国の財政状況に左右される心配がなく、寄付よりも安定した税収が見込めるのが利点だ。

 

 すでに一部の国で実績がある。フランスや韓国など14カ国は航空券連帯税を導入している。フランスでは国際線の利用客に、ファーストクラスとビジネスクラスで40ユーロ(約5050円)、エコノミークラスで4ユーロを一律上乗せで徴収する。フランスからの出国便に乗る日本人も対象だ。税収はエイズやマラリアといった感染症向け医薬品の支援などに充てる。

 

 国際連帯税の定義はなく、規定する国際条約もない。現在は導入国がそれぞれ自由に税率や使途を設定して運用する。

 

 河野氏が提唱するのは個別の国ではなく国際社会が全体で合意し、課税する仕組みだ。例えば外国為替取引に税をかけ、税収を国際機関が管理する案だ。河野氏によると、16年の1日あたりの外国為替取引額は約6.5兆ドル。0.01%の税をかければ1日で6.5億ドルの税収が見込めると主張する。

 

G20で呼びかけ

 

 河野氏は5月の20カ国・地域(G20)外相会合で国際連帯税の検討を呼びかけた。来年に日本で開くG20関連会合でも議題とし、国際的な関心を高める狙いがある。

 

 日本では10年ほど前に国際連帯税の導入に向けた機運が高まった。08年には超党派の議員連盟が立ち上がり、10年には政府税制調査会の下に「国際課税小委員会」を設置して具体的検討に入った経緯がある。

 

 ただ、当時は経済界の反発が強く、その後の議論は進んでいない。航空業界は課税によって旅行客が減少し、国際競争力の低下を招くと主張。株式や債券に課税する金融取引税に関しても、市場をゆがめ、経済全体に悪影響を及ぼすとの懸念が根強い。

 

 年末の与党税制調査会では国際連帯税の導入について議論する見通しだ。途上国支援のための効果的な仕組み作りには国内外の理解を得て検討を進める必要があり、成案をまとめるのは一筋縄にはいかない。

報告書:SDGs…の国際貢献と国際連帯税を考えるシンポジウム

         (小)表紙

 

7月26日に開催された「SDGsのための国際貢献と国際連帯税を考えるシンポジウム」の報告書(全文、52ページ)を送ります。内容は、①当日のプログラム、②シンポジウムの記録、③宣言文、④発言者のプロフィール、⑤有識者からのメッセージ、です。

 

なお、上村雄彦・横浜市立大学教授以下の「有識者からのメッセージ」は当日配布の資料の中には入っていなかったものです。

 

★「SDGsのための国際貢献と国際連帯税を考えるシンポジウム」報告書(全文)を読む ⇒ PDF

 

 

また、発言者が使用したパワーポイント資料は下記のPDFファイルをご覧ください。

 

①共催者ごあいさつ:田中徹二・グローバル連帯税フォーラム・代表理事 ⇒ PDF

 

②基調報告『国際連帯税の意義と未来』:金子文夫・横浜市立大学名誉教授 ⇒ PDF

 

③「欧州調査報告―EU金融取引税を中心に」:津田久美子・北海道大学法学研究科博士課程 日本学術振興会特別研究員D C 1 ⇒ PDF

 

④「国際連帯税『貧困・格差のない持続可能な社会』をグローバルに実現する最大のツール」:稲場雅紀・SDGs市民社会ネットワーク理事 ⇒ PDF

 

⑤「UNITAIDによる新規抗結核薬の展開支援」:川崎昌則・大塚製薬(株)医薬品事業部抗結核プロジェクト次長 ⇒ PDF

 

⑥「持続可能な開発目標(SDGs)の期待と不安):古沢広祐・國學院大学経済学部/ (NPO)「環境・持続社会」研究センター ⇒ PDF

 

★写真左は、欧州FTTの現状を報告する津田久美子氏、中央は、報告書の表紙です。

報告書(1):SDGs…と国際連帯税を考えるシンポジウム③

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7月26日に開催された「SDGsのための国際貢献と国際連帯税を考えるシンポジウム」の報告書(1)を送ります。報告書(1)では、当日のプログラムとシンポジウム本体の記録、そして宣言文が記載されています。

 

 

これに、発言者のプロフィールと当日出されたパワーポイントなどの資料が入れば、ネット上の報告書として完成です。さらに現在小冊子として公表すべく印刷中ですので、紙媒体として入手希望の方はしばしお待ちください。

 

★「SDGsのための国際貢献と国際連帯税を考えるシンポジウム」報告書(1)を読む 

⇒ PDF

 

★写真左は、稲場雅紀・SDGsジャパン理事のパワーポイントによる一枚紙。中央は、欧州FTTの現状報告する津田久美子氏(クリックすると拡大します)。