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19日の『サンデーモーニング』で寺島実郎氏、国際連帯税を訴える

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既に観た方もおられると思いますが、10月19日朝8時から放映されたTBSテレビの『サンデーモーニング』で寺島実郎氏(日本総合研究所理事長)が出演され、国際連帯税の必要性を訴えられました。

 

この番組の最後に『風を読む』というコーナーがありますが、この日のテーマは『エボラ出血熱と世界経済』というものでした。ここで寺島実郎氏は、次のようにコメントしました。

 

国境を越えて行う経済活動にはコストがかかること、その何よりの証左がエボラ出血熱のような熱帯性感染症であり、このような問題に対処するために欧州では国際連帯税を先行して導入していること、「これこそが新しい政策科学論であり、新しい政策は新しい革袋【システム・仕組み】に入れなければならない」と述べられました。

 

また国境を越えて行われているマネーゲームを批判し、その取引に薄く広く課税する金融取引税そして再び国際連帯税の必要性を訴えました。

 

最後に、「実は先日私を座長とする国際連帯税に関する委員会の設立を記念して、青山学院大学でシンポジウムを行った。しかし、残念ながらマスメディアから一人も来てなかった。(メディアは)単に騒ぐだけでは無く、(拡大していく)感染症立ち向かっていく仕組みが必要になっていることを分かって欲しい」と述べられ、苦言を呈しました。

 

メディアのみなさんも、感染症問題のみならず、経済のグローバル化がもたらす負の影響、そして地球規模課題に対して関心を持ち、報道していただければと(寺島さんはじめ)私たちも切に思うところです。

 

◆写真左は、10月12日「第2次寺島委員会設立記念シンポジウム」で講演する寺島実郎氏(青山学院大学)。右はTBSのWEBでのサンデーモーニング紹介。

 

金融取引税に関する国際電話会議(10月2日)報告

遅れましたが、金融取引税に関する国際電話会議(10月2日)の報告を送ります。

 

あまりメディアでは報道されていませんが、欧州11カ国のFTT(金融取引税)導入に向けての準備が着々と行われていることがうかがえます。Peter Wahlによる、
FTTの交渉に関するドイツ政府の立ち位置についての報告が面白いですね。

 

すでに10月20日を過ぎですから、もうちょっとFTT準備の進展があるかもしれないと思っているのですが、まだ報告はありません。

 

◆金融取引税に関する国際電話会議報告を読む⇒PDF

国際連帯税議連、菅官房長官に27年度税制要請書提出

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国際連帯税創設を求める議員連盟(以下、議連)は、10月14日、安倍総理にあてた「平成27年度税制改正に向けた『国際連帯税』に関する要請書」を提出しました。

 

官邸側は、菅官房長官が出席。議連側は、衛藤征士郎会長(自民)以下、谷垣禎一顧問(自民)、高村正彦顧問(自民)、大島理森顧問(自民)、藤田幸久会長代行(民主)、額賀福志郎副会長(自民)、小池百合子副会長(自民)、牧原秀樹事務局長代理(自民)、阿部知子常任幹事(未来)の計9人が出席。

 

下記、議連側による官房長官への要請の模様については衛藤会長のWEBサイトの動画をご覧ください.

 

この要請に対し、「菅長官からは、議連の要請を重く受け止め、しっかり対応していきたいと前向きなご回答をいただきました」(石橋みちひろ議員のWEBサイトより)

 

以下、要請書です。また要請書に関する資料についてはPDFを参照ください。

 

 

    平成27年度税制改正に向けた「国際連帯税」に関する要請書

 

内閣総理大臣 安倍 晋三  殿

 

                                                            国際連帯税創設を求める議員連盟

                                                                                  会長  衛藤 征士郎

 

日頃より、我が国国民及び国際社会のためにご尽力いただいておりますことに感謝と敬意を表します。

 

早速ですが、平成27年度税制改正に向け、貧困や飢餓、気候変動や感染症など、地球規模的な課題に対応するための『国際連帯税』の創設について、私ども超党派国会議員による「国際連帯税創設を求める議員連盟」として、下記の通り要望いたします。

 

現在、国連では、2000年から取り組まれてきた「国連ミレニアム開発目標(MDGs)」が来年で終了することに合わせ、ポストMDGsとなる新たな「持続可能な開発目標(SDGs)」の策定に向けた議論が活発化しています。そしてこの議論の中の一つの大きな焦点が、実施手段としての「新たな資金調達」問題です。

 

新しい開発目標は、MDGsがめざした飢餓や感染症などの克服に加え、環境保全と経済発展の両立を目指すものであり、必要資金も増大することが予想されております。現状の伝統的なODA資金だけでは、到底、その必要を満たすことが出来ず、従って今、革新的資金調達メカニズムとしての『国際連帯税』への関心が世界的に高まっています。

 

我が国においても、2012年8月、『社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律』が国会で成立し、その中に「国際連帯税について国際的な取組みの進展状況を踏まえつつ、検討する」と規定されました。法律が成立してからすでに2年余が経過する中で、また、欧州やアフリカ、韓国ですでに国際連帯税の導入が進められ、具体的な成果が達成されている中で、我が国においても「検討の段階から実施の段階へ」と歩を進めることが、国民からも国際社会からも大いに期待されております。

 

以下、具体的な要望を3点に絞って提案いたします。

 

                     記

 

1、   平成27年度税制改正において「国際連帯税の創設」を明記するとともに、政府内に「国際連帯税の創設」に向けた本格的検討機関を設置し、速やかに具体的な検討に着手すること

 

2、   我が国で導入する「国際連帯税」については、すでに諸外国で導入・実施されており、比較的導入が容易な税制(例えば航空券連帯税)と、まだ諸外国でも検討段階であり、我が国での導入にも相当の検討時間を要する税制(例えば通貨取引税や金融取引税など)とに区別し、まず前者について平成27年度中の導入をめざし、政府として積極的に取り組みを進めること

 

3、   本格的検討機関の構成については、政府の責任の下で多様なステークホルダーを招請し、国民的な議論の下に進めること。その際、フランスにおける国際連帯税導入の土台となった、2004年創設の大統領諮問委員会(通称ランドー委員会)を参考にすること

 

以 上

 

                         2014年10月14日

 

◆写真は、石橋みちひろ議員のWEBサイトよりお借りしました

 

 

 

 

10.12シンポ基調:グローバル化に伴うコストを内部化するメカニズムを

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10.12シンポジウムですが、既報通り寺島実郎さん(日本総合研究所理事長、多摩大学学長)が基調講演を行います。その内容を簡単に披瀝すると次のようになります。

 

「国境を越えた人、モノ、カネ、エネルギーなどの移動には、必ずそれに付随するコストが伴っており、誰かが責任を持って負担しなければならないが、その国際的なメカニズムが欠落している。今こそ、国際連帯税のような国境を越えた課税メカニズムを具現化しなければならないときで、その理念をしっかり訴えていく必要がある」(7月28日第1次寺島委員会の総括会議から、寺島さんの発言)

 

実際、国境を越えた(主に航空機による)人の移動は予期せずともエボラ出血熱やデング熱ウィルスも運ぶこととなり、結果としてそれら感染症対策というコストをもたらします。また、カネの行き過ぎた移動は、それがたびたびバブル崩壊=金融・経済システムの危機として現れ、その修復のためのコストをもたらします。

 

つまり、グローバル経済はそれに伴うコストを内部化しないまま、公共財を過剰消費しており、それが結果として地球規模課題となって現出しているということです。前日銀総裁の白川方明氏は、2008年のリーマンショックからはじまる国際金融危機が「国際金融システムの安定という公共財の過剰消費の結果」であり「そうした財の供給のためのコストが十分に内部化されていない」として述べています(*)。

 

国際連帯税またはグローバル連帯税とは、このようなグローバル経済による公共財の過剰消費(負の影響)に対して「課税」という方法を用いて抑制するとともに、その税収を世界の貧困・感染症や気候変動対策などの地球規模課題対策への資金として使用するメカニズムです。

 

本シンポジウムの目的は、第一に、国際連帯税またはグローバル連帯税という考え方の共有、です。第二には、様々な地球規模課題の最前線で活動している研究者、NGOからの最新情報と問題提起を受けて国際連帯税またはグローバル連帯税を豊富化していく、ということです。ぜひシンポジウムに参加し、ともに議論をまき起こしていきましょう。

 

(*)白川方明・前日銀総裁の発言:
「最近の国際金融危機は、国際金融システムの安定という公共財の過剰消費の結果ということができます。金融機関が、システムの安定を当然視し、過剰なリスクをとってしまいました。

 

…問題は、グローバル化を効果的に制御しようとしても、これが難しいことです。公共財の過剰消費は裏を返せば、そうした財の供給のためのコストが十分に内部
化されていないということです。…公共財にかかる問題を解決するための方法はよく知られています。最も直截なのは、公的部門が公共財を供給することです。公共財の消費にかかるルールを定めることもできます。さらに、公共財の消費に課税したり、その供給に補助金を支給することも考えられます。

 

…そうであるならば、私たちは、公共財の問題を解決するために知られた選択肢を組み合わせる、より現実的なアプローチを追求するべきです。…たとえば、自己資本規制も、リスクの高い投融資活動のコストを高めるという意味で、この一例と位置づけることもできるでしょう。さらに、…金融取引課税も選択肢であると主張する方もいらっしゃると思います。」(『公共財としての国際金融システムの安定』日本銀行総裁 白川方明 2012年10月14日)

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko121014a.htm/ 

 

◆文責:田中徹二(国際連帯税フォーラム代表理事)

 

●写真中央は、2010年の国際連帯税シンポジウムで講演する寺島実郎さん(9月、東洋大学)。左は、9月20日ピケティ勉強会の後に、世界の貧困をなくすための世界的なキャンペーン「スタンド・アップ」を行いました。

水野『資本主義の終焉…』14万部突破>格差・貧困、不条理への問い直し

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■すごいタイトルだが、わずか半年で10刷14万部を突破!

 

水野和夫さんの『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書、以下「終焉」本)が、半年足らずで10刷14万部も売れているということです(8月段階)。たいへんな売れ行きでもあり、出版社は特設サイトを開設しています(出版界では「3万部でベストセラー、10万部で一流」と言われているようです)。 

 

水野さんについては、2012年5月12日に国際連帯税フォーラム第2回総会時に講演をしていただきましたが、「過剰マネーと利子率革命~グローバリゼーションの真実~」というのが講演タイトルでした。当時の資料を見ると、ほとんど「終焉」本と同じです。

 

当時、水野理論の根幹である「利子率革命」についていまいちピンと来ませんでした。ひとつに、今日の金利ゼロ=利潤率ゼロという事態がやがて改善される可能性があるのではないか、とも思っていたからです。しかし、アベノミクスの第一の矢(異次元緩和策)や金利ゼロを脱するであろう米国の意外なもたつきなどを見るにつけ、資本主義が終焉するかどうかは別として、資本主義に出口がないことが理解できたような気がします。

 

■ピケティ理論との通底/格差・不条理・貧困を眼前にして

 

「終焉」本は言います。「もはや利潤をあげる空間がないところで無理やり利潤を追求すれば、そのしわ寄せは格差や貧困という形を取って弱者に集中します。…現代の弱者は、圧倒的多数の中間層が没落する形となって現れるのです」(12頁)、と。つまり、資本主義の延命のため(利潤をあげるため)異次元金融緩和などというカンフル剤を打ち続けていればいずれバブル破裂による経済の破たんを招くことになります。また、日常的に非正規雇用などという「辺境」を作り出し労賃を切下げることにより利潤を挙げようとすると、中間層の没落は必至であり、ひいては民主主義の危機ともなります。

 

日本の賃金水準の推移は同本77頁、米国の賃金水準の推移は日経新聞コラム「株価と格差の危うい関係 ウォール街も警鐘」を参照ください(http://isl-forum.jp/archives/691)。両国の賃金水準が「激しく低下して」いることが分かります。

 

あとトマ・ピケティ理論の存在も大きかったと思います。どういうことかと言うと、「終焉」本で次のような記述があります。「資本配分を市場に任せれば、労働分配率を下げ、資本側のリターンを増やしますから、富むものがより富み、貧しいものがより貧しくなっていくのは当然です。これはつまり、中間層のための成長を放棄することにほかなりません」(29頁)。しかし、資本配分を市場に任せれば「当然」そうなるのかどうかを証明しないとなりませんが、それが「終焉」本にはありません。一方、それを証明したのがピケティ理論ではなかったか、と私は思います。

 

ともあれ、水野理論もピケティ理論も数百年にわたる資本主義の歴史を踏まえ、現在の分析と未来の予測とを立てていることで共通です。それだけ資本主義が立ち行かなくなっており、歴史的俯瞰が必要になっているのだと思います。そしてそのことを直感した人々が、つまり格差や不条理や貧困などを目のあたりにした人々が(私を含め)、「終焉」本やピケティ理論に引き付けられているのだと思います。

 

■資本主義のソフト・ランディング=金融取引税が第一歩

 

「終焉」本の結論は「いまだ資本主義の次なるシステムが見えていない以上、このように(資本が主人で国家が使用人のような関係)資本の暴走を食い止めながら、資本主義のソフト・ランディングを模索することが、現状では最優先されなければなりません」(187頁)、というものです(ハード・ランディングの道は中国バブル崩壊など)。では、そのソフト・ランディング策は何かと言いますと、あまり明確に打ち出されていません。

 

「終焉」本は、その模索するものとして、日本の債務問題やエネルギー問題に触れ、考え方として、つづめて言えば、ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレという定常状態を維持するための高度な構想力を持つこと、と述べています(ただし、マイナス成長を取るのではない)。つまり、考え方を述べたものであり、政策的なものは述べていません。

 

ところが、『資本主義の終焉国家はその後、どうなるか?』という水野さんと山下範久(歴史社会学者)さんの対談が動画となっておりまして、そこで「ソフト・ランディングのためにまず何をすべきか」と問われた水野さんは、その『シナリオの第一歩としてトービン・タックス(金融取引税)』を挙げ、それを説明しています。

 

実は、「終焉」本でもシナリオとして体系付けされてはいませんが、次のような記述があります。「世界国歌、世界政府というものが想定しにくい以上、少なくともG20が連帯して、巨大企業に対抗する必要があります。擬態的には…国際的な金融取引に課税するトービン税のような仕組みを導入したりする。そこで徴収した税金は、食糧危機や環境危機が起きている地域に還元することで、国境を越えた分配機能をもたせるようにするのがよいと思います」(186-187頁)、と。

 

以上で「終焉」本の書評を終わりますが、水野さんも提起されてている金融取引税や他の「国境を越えた分配機能」のためのグローバル・タックスについて、その方法と可能性とを議論するのが、下記のシンポジウムです。もとより本シンポジウムは「資本主義(終焉)のソフト・ランディングの第一歩策」であるかどうかを議論する場ではありませんが、結果としてそのような歴史的な役割があるのかもしれません。ふるってご参加ください。

 

       【第2次寺島委員会設立記念シンポジウム】

   グローバル連帯税が世界を変える!

          -環境危機、貧困・格差、カジノ経済への処方箋-     

 

   ・日 時:10月12日(日)午後1時30分~4時45分(午後1時開場)

   ・場 所:青山学院大学 9号館22号室

      (東京メトロ「表参道駅」より徒歩5分)

   ・資料代:500円(学生は無料)

   ・申込み:こちらのフォームから申し込みください。  

 

《メインスピーカー》

 

*基調講演:寺島実郎(日本総合研究所理事長、多摩大学学長)

 

*パネル討論

 ・テーマ「欧州では今:金融取引税実施に向けた最新情報」

      上村雄彦(横浜市立大学教授)

 ・テーマ「COP21に向けて:気候変動問題の解決のカギは持続可能な資金源」

      小西雅子(WWFジャパン気候変動・エネルギープロジェクトリーダー)

 ・テーマ「地球規模の課題としての貧困と格差:『ポスト2015』の地平から」 

      稲場雅紀(「動く→動かす」事務局長)

 

※詳細は、http://isl-forum.jp/ まで

がんばれ労組!「連合」第3回国際連帯税に関する勉強会報告

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先日の9月19日、労働組合の「連合」で、国際連帯税に関する勉強会の第3回目の講師として、お話をしてきました。

 

この勉強会の目的は、「国際連帯税を巡る国内外の情勢変化、国際連帯税の意義、経済・産業・雇用への影響や課題等について連合内構成組織に所属する政策担当者の相互理解を深めること」と位置付けられています。

 

第1回目は7月に、民主党政権時に政府税制調査会を主導した峰崎直樹元財務副大臣、第2回目は8月に諸富徹京都大学教授が金融取引税について、そして第3回目のテーマは「国内における国際連帯税議論と航空券連帯税」でした。

 

それで私の話ですが、そもそも国際連帯税というのはグローバルな公共財(地球規模課題)の資金創出をめざすものであるから、運動・活動の方も最初からグローバルな形で行われている、ということを理解していただきたい、ということからはじまりました。

 

「そのグローバルな運動の中で、とくにロビン・フッド・タックス・キャンペーン(金融取引税を求めるキャンペーン)が欧州と北米で活発に行われているが、特筆すべきなのは英国と米国の運動である。というのはこの両国の運動には労働組合が深く関わっており、それ故全国規模の運動を作ることができている」と説明しておきました。

 

詳しくは、連合「第3回国際連帯税勉強会」パワーポイント(PDF)を参照ください。

 

ロビン・フッド・タックス・キャンペーンのみならず、先日9月21日の「気候マーチ」で労働組合も大量に動員してNGO・市民とともにデモを行いました(スローガン「健康な地球&良い仕事」)。今や労働組合も自らの労働条件だけに取組むのではなく、国際的・社会的課題に対しても積極的に関わっていく時代に入ってきました。日本のナショナルセンターである連合もぜひそうなっていただくよう期待するところです。

 

◆中央の写真は、9.21「気候マーチ」での労働組合の隊列(http://peoplesclimate.org/march/ より)、左上は航空券連帯税による税収を主たる原資として運営されているUNITAID(国際医薬品購入ファシリティ)より

 

 

 

 

 

 

FTT国際電話会議報告、ドイツ政府の税収見積り&NL第7号発行

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報告が遅れましたが、1)金融取引税市民グループの国際電話会議(9月4日)、2)「ドイツ財務省、EU FTTに関するレポートを発表」と題してのドイツNGOよ
りの報告(9月8日)、3)国際連帯税・金融取引税News Letter第7号(9月16日発行)を送ります。

 

NL第7号にも書きましたが、ドイツ財務省はFTTによる税収につき、控えめな数字で176億ユーロ(2兆4000億円)に上ると見積っています(ただし、欧州委員会の提案内容で:株式・債券に0.1%課税、デリバティブに0.01%課税)。

 

「えー、こんなに税収が上がるの--だったらユーロ圏の経済成長や国内の老朽化しているインフラ整備に使えるじゃないか」と、ドイツのマスメディアは騒いでいるようです。ただし、課税は一気に欧州委員会提案通りに行うのではなく、最初は株式とデリバティブ取引の一部にと、段階的に導入される予定となっています。

 

あと、市民グループの国際電話会議からの情報によれば、EU  FTTから離脱したと思われたスロベニアが復帰していること、また英国とともに強固にFTTに反対
していたスウェーデンが総選挙で政権交代の可能性が高まり、FTT推進連合へ参加するチャンスが生まれるのではないかと分析しています(訳者注:総選挙で社民党が第一党となり政権交代となったが少数与党ということでどうなるか?)。

 

なお、欧州のNGOとしては、FTTの税収の15~20%を開発・気候問題に使うべき(配分問題)というフランス政府の主張を後押ししていくとの立場をとるようです。

●金融取引税(FTTs)に関する市民社会グループの国際電話会合
2014年9月4日(木)

 

1)ヨーロッパのアップデートおよびキャンペーンの次のステップ(by David Hillman, Stamp Out Poverty)

 

デイヴィッド・ヒルマン(訳者注:英国Stamp out poverty)は、最近のCoalition Plus(訳者注:HIV /エイズと戦うフランス語圏の連合団体)が主催したパリでのヨーロッパ・キャンペーン担当者会合について報告した。参加者は、主にドイツ、フランス、イタリア、スペインのEU-4グループから集まった。彼らは、EU FTTの設計に関する合意の後まで配分の問題が脇に置かれてしまう危険を認識し、主として配分に関して焦点をしぼって協議した。

 

彼らは同時進行の戦略の必要性を認識した。(FTTの)設計に関する交渉で手一杯となってしまう財務大臣へのアプローチにのみ焦点をしぼるのではなく、より大きなビジョンを持ち、かつ配分に関わるコミットメントを行うはずの首相や大統領へのアプローチにも焦点をあてる必要がある。彼らは、FTTの収入の15~20%を開発・気候問題にコミットすることにしているフランスの主張を強化する予定だ。彼らは、オランド大統領が後退するのを食い止め、彼に周りの人たちへプレッシャーをかけるようにさせる必要がある。

 

彼らの目標は、配分に関するすべてのEU11ヶ国による声明を作成することだ。このグループの中の最も小さな国々も国際的目的にお金を配分するべきかどうかについては相当な議論があったが、会合での合意はコンセンサスを目指すということだった。

 

EU FTTに参加する国の数に関する最新のアップデート:スロベニアは政権交代期であったため本年5月6日の公式コミットメント文書にサインしなかったものの、EU FTTへ参加することになるだろう。また、スウェーデンの選挙が9月14日にあり、社会民主党が政権復帰する見込みだ(おそらく連立政権の第一党として)。これはスウェーデンがFTT推進連合へ参加するチャンスを大幅に高めることになる。過去にFTTに関わったスウェーデンの活動家を再度引き込み、かつてのスウェーデン国内FTTが失敗した理由は欠陥のある設計だったからだ(そしてそれはFTTに反対する理由にはならない)という最良の分析をまとめることが重要となる。

 

(会合の)より詳細な結論とターゲットとなる日程を含む文書は、間もなく共有されることになるだろう。彼らは、世界エイズ・デー、グリーン気候基金会合、ECOFIN会合といった主要なイベントを取り巻く行動に加えて、12月初旬のヨーロッパ行動デーを中心としてアイディアを練っている。

 

2)9月19-23日ニューヨークでの国連気候サミットのFTT関連イベント
(Janet Redman, IPS, and Karen Orenstein, Friends of the Earth)

気候変動問題への取り組みを訴える市民たちのデモ行進*へのロビン・フッド・タックス・キャンペーン・グループの派遣(9月21日):Friends of the Earth,
VOCAL NY, Community Voices Heard, SGAC (student global AIDS campaign; 学生グローバルエイズキャンペーン?), PUSH Buffalo, Health GAP, NNU, IPS

 

【写真は国際連帯税フォーラムのフェイスブックをご覧ください。https://www.facebook.com/NGOFORUM.FISL】

 

…中略…

 

ワークショップ:
・「気候問題に結集」会議(Climate Convergence)**、9月19-21日:IPSは、気候問題の対策資金としてFTTが話題にとりあげられる可能性があると思われる、気候資金調達に関するパネル・ワークショップに参加登録した。

・気候正義市民サミット(Peoples Climate Justice Summit)***、9月22-23日
:IPSは、計画されている既存のワークショップへFTTのテーマを入れるよう取り組んでいる(FTTのみを議題にするワークショップのための十分な余地はない)。

 

すべてのグループへの質問:
・誰か参加しにいらっしゃいますか?デモ行進前の集会に参加してロビン・フッドの帽子をかぶることができそうな地元の加盟組織がある団体はありませんか?

* http://peoplesclimate.org/march/
** http://globalclimateconvergence.org/2014/07/nyc-climate-convergence-september-19-20-2014/
*** http://www.ourpowercampaign.org/peoples-climate-justice-summit/

 

3)デイヴィッド・ヒルマン、9月25-26日ワシントンDCへ…省略

 

4)世銀/IMF年次総会と関連するFTTの取り組みー10月10-12日、於ワシントンDC…省略

 

◎次回会合:10月2日 AM9時(Eastern)

●ドイツ財務省、EU FTTに関するレポートを発表 ―ドイツの税収は少なく見積もっても176億ユーロ見込み:内容&評価

(by Peter Wahl, WEED)

 

1)サマリ 
・株式、債券、すべてのデリバティブを課税ベースに試算すると、ドイツにおける課税ベースは18兆5000億-188兆8000億ユーロとなる(デリバティブの額面価
格と市場価格のどちらを基礎にするかで幅がある)

 

・これに対し、欧州委員会指令案の税率に基づけば、ドイツの税収は282億ユーロ(もし市場移転や課税逃れを見込めば176億ユーロ)となる ※これは控えめな試算

 

・ドイツにおける取引の性質を反映すると、株式・債券からの税収は100億ユーロ、デリバティブからの税収は70億ユーロ見込み

 

・ドイツGDPへは0.02~0.09%にあたる6億~24億ユーロの悪影響があると計算しているが、税収を生産的目的に使えば大部分は相殺されうるとしている

 

・現在進行中の交渉におけるデリバティブをめぐる課税要件といった議論は未反映、EU FTTに参加するその他の国については対象外

 

2)メディアの反響
本研究が出した税収の大きさは、ユーロ圏の緩慢な成長と、ドイツのますます老朽化しているインフラへの継続的な過少投資に対して対策を講じなければならないというプレッシャー、といった背景の中で、メディアにかなりのセンセーションを惹き起こしている(国内最大の日刊紙「南ドイツ新聞」の報道など)

 

・「南ドイツ新聞(9月8日)」の記事(独語):
http://www.sueddeutsche.de/politik/finanztransaktionssteuer-steuer-soll-milliarden-bringen-1.2119145 

以下、省略

 

(翻訳:K.tsuda)

 

●『国際連帯税・金融取引税News Letter』第7号(9月16日発行)

 

◆写真は、9月21日ニューヨークで行われた「人々の気候マーチ」のもよう。30~40万人が参加。

http://peoplesclimate.org/march/ より

外れっぱなしの経済予測、根本的見直しが必要 

今朝(21日)の日経新聞の「日曜に考える」というオピニオン面のテーマは『個人消費停滞 どうなる再増税』。その中で、セブン&アイHD会長の鈴木敏文氏ともう一人の人が議論を展開しています。

 

鈴木氏の結論は「『痛税感』強く(次の消費税2%の)先送りを(すべき)」というものですが、氏も「春の時点で増税後の影響が軽微になるのは6月くらいだと考えていた」ようです。しかし、現実は「沈滞気味だ。過去2度の消費増税(1989年、97年)時の反動減とは消費の行動が大きく違う。これまでは商品の価格を下げれば
売り上げは確保できたが、今回は価格を下げても手にしてくれない」と述べています。

 

結局、「消費増税後の個人消費の反動減については国や多くの企業が軽微に終わると楽観視していたが、いざ蓋を開けてみるとそうではなかった」(聞き手側まとめ)ということですが、ここに日銀やほとんどの金融係エコノミストも加えてよいでしょう。

楽観視と言えば、この消費税問題だけではなく、「円安は輸出増をもたらしGDPが拡大するとともに経常収支の黒字増をもたらす」と、政府も日銀もほとんどの金融係エコノミストも言っていましたね(ついでに「企業収益が増加し賃金も上がりデフレを脱却できる」、と)。しかし、現実は「財務省幹部が円安の輸出増効果を否定…」(ロイター通信、2月19日)という有様です。

 

消費税の影響や円安による輸出増問題も国内経済政策の根幹ですが、この根幹の政策がことごとく誤った分析によるものであることが明らかになった今日、「異次元の金融緩和」政策というアベノミクスの(もっとも成功したと言われている)第一の矢からして根本的に見直すことが必要となっていますね。

「格差拡大は成長にマイナス」説が今やメインストリームに

「格差拡大は成長にマイナス」説が今や国際的にもメインストリームの論調となっていますが、この背景のひとつに5月EU議会選挙での極右や民族排斥主義者の伸長という現実への危機感があるようです。
 
 一方、格差が拡大しているのに成長論ばかり議論しているのが我が国の論調のようです。が、他民族への憎悪と排斥をあおるようなヘイトスピーチが横行するなど、欧州と同様な社会現象になってきていると言えるでしょう。
 
ともあれ、一昨日(9月7日)の東京新聞に『格差拡大は成長妨げる』と題した社説が載っていまして、上記のような内容を丁寧にまとめていますので、紹介します。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014090702000138.html
 
【以下、肝となるところの引用です】

 先進国では長らく「経済成長すれば格差を縮小させる」という説が有力でした。国内総生産(GDP)の生みの親でノーベル経済学賞受賞の米経済学の泰斗、クズネッツ氏が一九五〇年代に唱えたクズネッツ仮説です。この常識を揺るがした(のがトマ・ピケティ理論)と言っていいでしょう。
 
 もう一つ、日本にとって同じくらい重要な命題があります。「格差拡大は成長を妨げる」。OECDや米格付け会社スタンダード&プアーズが最近明らかにしました。かいつまんでいえば、消費を担う中間層が減少し、何より所得格差は教育機会の格差となって深刻な問題をはらむというのです。  

=====引用、終わり=====


ポール・クルーグマン先生もThe New York Timesで『社会の足を引っ張る格差』と題してコラムを書いています。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40292

 
 ◎それで、スタンダード&プアーズの報告は以下で見ることができます。
「格差拡大が米経済成長の足かせに、打開策はあるのか」(動画・字幕付き) 2014/08/14  http://urx.nu/bJkL
 
◎また、OECD関係は下記で。
「OECDによると、今後数十年で所得格差の拡大により世界の成長は鈍化する」 2014年7月2日 http://urx.nu/bNzP
「今後50年間の政策課題 OECD経済局 ポリシー・ノート( no. 24)」2014年7月ー『社会の足を引っ張る格差』より
http://www.oecd.org/eco/growth/Shifting-gears-japanese-version.pdf
 
◎ついでに、IMF関係は下記に。
「所得格差は経済成長にマイナス作用の可能性=IMF調査報告」2014年2月27日
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYEA1Q00420140227
「IMF サーベイ 健全な政策設計:格差を減らす有効な方法」2014年3月13日
http://www.imf.org/external/japanese/pubs/ft/survey/so/2014/pol031314aj.pdf
「IMF サーベイ IMFセミナー:格差は成長を著しく阻害」2014年4月12日
http://www.imf.org/external/japanese/pubs/ft/survey/so/2014/res041214aj.pdf