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子どもの日に「子どもの貧困」を考えなくてはならないとは!=各社の社説より

今日は「子どもの日」ですが、各新聞の社説を見ると、「子どもの貧困」を取り上げている新聞が多いですね。子どもの貧困についてはここ数年問題となってきましたが、昨年厚生労働省は2013年の「国民生活基礎調査」で子どもの貧困率が16.3%に達し(2012年段階)、過去最悪となったことを公表しました。

 

実際、「学校現場では、給食以外満足な食事を得られない子や、医療費を負担できず病院に行けない子も報告されている。放置すれば社会の階層化と格差拡大が進み、子供が将来に希望を持ちにくい社会となりかねない」(14年7月20日付毎日新聞)という懸念が一層拡大してきています。

 

子どもの将来に希望を持ちにくい国というのは、その国の将来に希望を持ちにくいということを物語っています。このままでは少子化とともに確実に衰退していくでしょう。いずれにせよ祝日である子どもの日に子どもの貧困を考えなければならないというのは国として恥ですね。

 

ところで、その対策ですが、「国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩・社会保障応用分析研究部長は『子どもの貧困率は景気がよい期間も上昇傾向が続き、景気対策だけで解決しないのは明らか。教育などを充実させるだけでは不十分。現金給付を増やし、生活苦を和らげて初めて、教育の充実も有効に機能する』と強調」(同上)しています。まさに「税制や社会保障政策の出番」(朝日新聞・社説)ですね。

 

ともあれ、各マスコミの社説を要旨とともに紹介しますが、全文についてもぜひお読みください。

 

 

(社説)子どもの貧困―大人一人ひとりが動こう

2015年5月5日(火)付 朝日新聞

 

日本の子どもの今を考えるとき、見過ごせない数字がある。16・3%。子どもの貧困率である。ひとり親など大人が1人だけの世帯の貧困率は、5割を超える。先進国の中で最も高い水準だ。

 

親を亡くした子どもたちを支援する「あしなが育英会」が、奨学金を受けている高校生にアンケートをしたところ、こんな声が寄せられた。「正直あした食べるご飯に困っている。早く自立できたらと何度もふさぎこんだ」「学校では食べずにガマンしている。友達といるとお金がかかるのでいつも一人でいる」

 

■不十分な政府の対策

 安倍政権は子どもの貧困対策法の成立を受け、総合的な対策を進める大綱を昨年、決めた。しかし、ひとり親家庭への児童扶養手当を増やすことは、財源不足などを理由に見送られた。また、子どもの貧困率を下げる数値目標もない。

 

…不平等をなくすのは政府の役割だ。「国民全体で負担し、支え合う」という、税制や社会保障政策の出番である。その意味で疑問を感じるのが贈与税の非課税枠の拡大だ。…ゆとりのある家庭には恩恵が大きいが、家庭間の不平等を広げかねない危うさをはらむ。

 

■おせっかいの勧め

■支える連鎖を生もう

 大人が関わることで、子どもを支える連鎖も生まれる。…奨学金を受けてきた大学生たちも、支援活動に加わっている。民間団体の有志らが集まり政策を提言する「子どもの貧困対策センター」。その設立に向けた募金活動を5日に行う。

 

…少しだけ、おせっかいになってみよう。大人になっても貧困から抜け出せない「貧困の連鎖」を断ち切ることにつながるかもしれないのだから。

 

 

(社説)社会全体で子育てを支えよう 

2015/5/5付 日本経済新聞

 

 「団塊の世代」が生まれてすぐの65年前には3人に1人だった。30年前には5人に1人、そして今では8人に1人――。日本の総人口に占める14歳以下の子どもの割合だ。…子どもを持つかどうかは、もちろん個人の選択だ。しかし子どもを持ちたいと望んでも、それを阻む様々な壁がある。社会全体で子育てを支え、子どもが健やかに成長する環境を整えたい。

 

妊娠中からきめ細かく

…子育てや子どもを支える施策には、一定の費用がかかる。20年までの少子化対策をまとめた大綱は、財源を確保して予算を増やすとしたが、具体的な手立ては盛り込まなかった。子どもの貧困対策として、政府は夏までにひとり親家庭や子どもが多い家庭への支援策をまとめる予定だ。この財源もどう手当てするのか。どんな施策を優先させるのかを含め、議論を深めなければならない。

 

一人ひとりが担い手に

…多くの大人が活動にかかわることで、子育て家庭の負担は軽くなる。参加する人にとっても生きがいになる。かつて支援を受けた人が、やがて支援をする側に回るという好循環も期待できる。少子化がこのまま進めば、日本経済は活力を失い、社会保障制度の土台も揺るぎかねない。行政も私たち一人ひとりも、前に踏み出すときだ。

 

 

(社説)こどもの日に 貧困の連鎖を断ち切りたい

2015年05月05日 京都新聞 

 

 <けなされて育つと、子どもは、人をけなすようになる>で始まる詩をご存じの方も多いだろう。米国の教育学者ドロシー・ロー・ノルト博士の「子は親の鏡」だ。…この詩を基にした博士の著書「子どもが育つ魔法の言葉」(PHP文庫)は世界中で愛読され、日本でも120万部を超すベストセラーとなった。…通底するのは子どもとしっかりと向き合うことの大切さだ。親は心にゆとりが求められる。だが、今の日本には生きていくのに精一杯で、わが子と向き合う余裕のない家庭が少なくない。

 

支援の手を緩めるな

 …とりわけ母子家庭は深刻だ。子どもを抱えての就労が難しく、4割以上は非正規雇用で平均就労年収は200万円に満たない。子どもの貧困率は5割に跳ね上がる。貧困には負の連鎖も付きまとう。生活苦で進学を諦め、大人になっても安定収入を得られる職に就けず、貧困にあえぐ。その子どもも同じ境遇を繰り返す。生活保護受給世帯で育った子どもの4人に1人が大人になって再び生活保護を受ける、との調査結果もある。

 

深刻さ増す児童虐待

ネットの危うさ懸念

 …冒頭の詩は<和気あいあいとした家庭で育てば、子どもは、この世の中はいいところだと思えるようになる>と結ばれている。

 

 

<社説>こどもの日 貧困対策と教育に全力を

2015年5月5日琉球新報

 

 今日は「こどもの日」。沖縄の未来を担う子どもたちの幸福や教育のため、予算や労力は惜しみなくつぎ込むべきだと強調したい。…県民所得が全国最下位にある沖縄は、もっと深刻だ。特に厳しい状況にある「ひとり親世帯」の割合は、沖縄は全国の約2倍。県のひとり親世帯の実態調査では、生活状況が「苦しい」と回答したのは13年度で8割に上り、母子世帯に比べ余裕があるとされた父子世帯の環境悪化が目立った。

 …使途をめぐって議論がある一括交付金などで、子どもを毎年百人、いや千人規模で留学させるような発想があってもよい。そのくらいの大胆さで、教育には予算をつぎ込むべきだ。

 子どもの貧困は、食事や栄養などの「健康格差」にも直結しているとの非常に気掛かりな指摘もある。子どもたちを取り巻く課題の解決は、社会全体に課せられた課題であることを再認識したい。その取り組みは待ったなしだ。

風薫る5月:が、貧困格差は止めどなく=究極のデータ

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今日から早くも5月1日。5月は風薫る季節で、暦上はすでに初夏です。GW中はどうぞ緑の中を散策してください。

 

ところで、この間のトマ・ピケティの『21世紀の資本』の勉強会でも明らかになったように、彼の学問的功績の第一は、富と所得に関するぼう大な歴史的データを提示したことにあります。このことにより、21世紀は19世紀資本主義と同じく不可避的に格差を生み出す、ということを歴史的に証明しました。この結果「資本主義が発達すれば(所得)格差は自動的に縮小する」とする主流派経済学の超楽観論は打ち砕かれました。

 

さて、データ=事実の集積は、なまなかな理論や仮説、ましてイデオロギーを吹き飛ばすくらい威力があるものですが、次のデータはいかがでしょうか。何かしら暗澹たる感慨をもたらすものですが。

 

それは「親の収入が多いほど、子どもの脳は発達する」というものです(逆に言えば、貧困下に育った子どもの脳は未発達に留まる)。下記のレポートをお読みください。

 

米国で実証された「金持ちの子供は頭がいい」 年収300万円の家の子は、富裕層の子より大脳皮質が6%小さかった

 

 

簡単に要旨を記すと、ロサンゼルス小児科病院とニューヨーク・コロンビア大学医学部を含む9大学の研究者25人が、3歳から20歳までの1099人の子どもの脳の高解像度のMRIによる画像解析と両親・家庭の社会経済学的要因の聞き取り調査を行い、結果は世帯年収が2万5000ドル(約300万円)未満の家庭に育った子供たちは、15万ドル(約1800万円)以上の家庭の子供たちよりも、MRIの計測値で大脳皮質の領域が6%小さかった、というもの。

 

ここでの大脳皮質の領域というのは、とくに言語と認識力をつかさどる脳の部位であり、ここに親の収入によって差異が生じているというのですが、同研究の筆頭執筆者は「生まれ持った資質よりも世帯年収の差違の方が学力に影響を与える」と言っているそうです。

 

もちろん貧困家庭に生まれても(大脳皮質が小さくても?)勉強ができる子どもは必ずいますが(レポーターの堀田氏はこちらの方の神経科学的・社会経済学的な要因を探ってほしいと言っているが)、残念ながらそれは圧倒的に小数であるのも現実です。そういう意味では何ともやり切れないものがありますが、大脳皮質の大小(発達度)も貧困と格差に関係があるのかもしれません。

 

ところで、以下の記事は昨年のハフィントンポストに載ったものですが、富裕層と貧困層の格差が一目瞭然です。米国、北朝鮮、シリア、18世紀のフランス、古代ローマの「持てる者と持たざる者」の食事です。

 

富裕層と貧困層の食事を並べてみた 「持てる者と持たざる者」の目に余る格差(画像)

 

◆中の写真は、ハフィントンポスト電子版より

 

【ご案内】民間税調第3回シンポジウム「法人税を考える」

第3回シンポ案内1

 

民間税調第3回シンポジウムのご案内です。申し込みはお早めに。国際課税を知るためにも、まず国内課税をじっくり勉強しておきましょう。

 

 

関係者各位
                                                                    2015年4月吉日
                                                    民 間 税 制 調 査 会
                                                  同座長 三木義一・青山学院大学教授 
                         同   水野和夫・日本大学教授   

 

                        (シンポジウムのご案内)
                              法人税を考える
                    -民間税調第3回シンポジウム-

 

 陽春の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。さて、この度、標記
シンポジウムを下記のとおり開催する運びとなりましたので、ご参加くださいま
すようよろしくお願い申し上げます。

 

                                         記

1.日時:2015年4月26日(日) 午後1時~5時頃まで(12時半開場)

2.場所:政策研究大学院大学ホール
      〒106-8677 東京都港区六本木7-22-1

3.シンポジウム参加者(予定)    三木義一・青山学院大学教授 
                   水野和夫・日本大学教授   
                    峰崎直樹・東京工業大学非常勤講師
                           志賀  櫻・弁護士  
                           田中秀明・明治大学教授  
4.参加費:無料

5.申込方法: yoshimikimiki@gmail.com にご連絡ください。
(定員制限あり。先着順で申込みを締め切りますので、お早めのお申込みをお願いいたします。)                                   

 

ドスト=ブラジ氏「結核 : 手遅れになる前に行動を」=財源、連帯税で

 

INDIA-HEALTH-TB-TREATMENT-MSF FRANCE 

 

航空券連帯税を主な財源とし、途上国のエイズ・結核・マラリアの治療薬や診断薬等を提供しているUNITAID(ユニットエイド:28か国とゲイツ財団が参加)の理事長であり国連事務総長特別顧問のフィリップ・ドスト=ブラジ氏が、南アフリカ保健相のDr. アーロン・モツォアレディ氏と連名で仏ルモンド紙に「結核 : 手遅れになる前に行動を」という文章を投稿しました。その記事がハフィントンポスト日本版に載りましたので(要旨を含め)紹介します。

 

 

結核 : 手遅れになる前に行動を

 Tuberculose : agir avant qu’il ne soit trop tard

 

毎年150万人の命を奪い、息をするだけで罹ってしまうかもしれない病気のこと、考えたことがありますか。結核は私たちが無視できない脅威で、しかも薬への耐性という新しい様相を帯びてますます恐ろしい病気になっています。イギリス議員連盟による最新の調査結果によると、2050年までには新型結核だけで年間260万人の命がうばわれ、財政支出総額は16兆7000億ドルに上るだろうと指摘されています。… 

 

2035年までに世界的伝染病・結核の根絶は可能です。しかし手遅れにならないうちに革新を起こさなければなりません。

 

革新的資金調達を武器に

永続性がありかつ予測可能な資金である金融取引税や航空券連帯税の世界的な実施を。

 

革新的支出 : 効果ある対策を

過去40年でこの病気治療に認可された新薬はたった2種、薬の生産者には、現存する有望な革新モデルなど、結核研究調査に投資するよう求める。

 

政治的意志 : パズルに欠けているピース

2014年11月、ブラジル、カナダ、フランス、インド、ケニア、南アフリカ、タンザニア、イギリス、アメリカの国会議員により、結核に関する国際議員連盟が創設され、バルセロナ宣言が調印、結核との闘いに強力な協調体制が整い、同時に政治的動員が可能であることが示された。

 

              Dr. アーロン・モツォアレディ

                      南アフリカ保健相

                      ストップ結核 パートナーシップ理事長

 

              フィリップ・ドスト=ブラジ

                     革新的資金調達に関する国連事務総長特別顧問

                      ユニットエイド理事長

                      元フランス外務大臣及び厚生大臣

 

◆写真は、左がUNITAIDのWEBサイトより、右がハフィントンポスト日本版の記事より

 

 

 

資料「ピケティ『21世紀の資本』と資本主義の未来」

講演会①IMG_2973

 

4月12日国際連帯税フォーラムの第5回総会後、本田浩邦・獨協大学教授による「ピケティ『21世紀の資本』と資本主義の未来」と題しての講演会が行われました。会には会場が満杯となる50人ほどの参加があり、時間も30分以上オバーするなど最後まで熱心に議論されました。

 

当日本田教授が使用したレジメパワーポイント資料、ならびに先生が書かれた「ピケティ旋風を読み解く」(週刊『金曜日』)、「アメリカ経済の長期的変化-T・ピケティ、R・ゴードン、W・ボーモルの研究と考察」(月刊『経済』)を資料として送ります。

 

●レジメの内容は次の通りで、パワーポイント資料と併せてお読みください。

 

Ⅰ ピケティ『21世紀の資本』のポイント

(1)経済格差はなぜ拡大したか?

(2)資本主義の未来

(3)何が必要か?

 

Ⅱ 『21世紀の資本』をめぐる論争

(1)主流派経済学からのピケティ批判

(2)マルクス主義陣営からの批判

(3)批判に対する反論

(4)ピケティ自身による反論(Burcharth, 2014: Piketty, 2015)

国際連帯税フォーラム第5回総会開催される(4月12日)

国際連帯税フォーラムの第5回総会は、4月12日自治労会館で開催され、団体会員6団体代表7人、個人会員10人、オブザーバー7人の24人が参加しました(現在フォーラムの団体会員は10団体、個人会員は20人)。

 

総会は2014年度活動報告ならびに2015年度活動方針案を巡り、1)国連開発資金会議への対応について、2)NGOと労組との共同行動について、3)(航空券連帯税に反対している)航空業界や国交省への対応について、4)この活動をNGO・市民社会にどう拡大していくかなど、予定時間を大幅に超えて熱心に議論が行われました。

 

結果は、第1号議案から第7号議案まで採択され、国際連帯税フォーラムという組織名称も「グローバル連帯税フォーラム」に変更されることとなりました。総会議案書こちらからご覧ください

 

なお、2015年度の主な活動方針は下記の通りです。

1、「ポスト2015開発アジェンダとグローバル連帯税」キャンペーン

2、2016年度税制改正に対して、グローバル(国際)連帯税を求める活動

3、グローバル連帯税推進協議会と提言書づくりへの協力  他

 

 

★フォーラムの活動を支えるために、あなたも会員になってください

 

グローバル連帯税フォーラムの2015年度の予算は、主に会員からの会費で賄われることになります。そこでみなさまも会員になっていただき、フォーラムの活動を支えてくださることを訴えます。会費ですが、団体会員は年間1口10,000円、個人会員は年間1口3,000円、学生会員は年間1口500円です。

 

会員になってもよいと考えてくださる団体・個人は、info@isl-forum.jp まで連絡ください。もとより会費面からの支援のみならず、具体的な活動(事務局の実務手伝いや翻訳など)に参加していただくことも大歓迎です。

 

なお、12日の総会とその後の講演会を通し、1団体と個人5人が新しく会員になっていただきました。ありがとうございます!!

 

 

『グローバル・タックスの構想と射程』(法律文化社)出版!

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このたび、上村雄彦横浜市大教授の編集による『グローバル・タックスの構想と射程』という貴重な本が法律文化社から出版されました。ご購入するなり、各図書館で購入してもらうよう要望しましょう。

 

<本書の紹介>
地球規模の問題を解決する切り札となりうるグローバル・タックスの実現へ向け、学際的に分析し、実行可能な政策を追究。公正で、平和な持続可能社会創造のための、具体的な処方箋を提起する。【もちろん、金融取引税や航空券連帯税、その他のグローバル・タックスがが提案されていると思われる(まだ読んでいないので…)】

 

<著者は以下の強力メンバーです>
  ・上村 雄彦(横浜市立大学教授)
  ・諸富 徹(京都大学教授)
  ・三木 義一(青山学院大学教授)
  ・道下 知子(西武文理大学講師)
  ・金子 文夫(横浜市立大学名誉教授)
  ・ヘイッキ・パトマキ(ヘルシンキ大学教授)

 

 

★上村雄彦先生のコメント

 

『グローバル・タックスの構想と射程』の紹介、ありがとうございます! 研究会を重ね、みなさんと全力で執筆しました。

 

ピケティが格差をなくすための処方箋として、グローバル・タックスを提示していますが、本書を読めば、その全体像がしっかりとつかめると思います。

 

また、ヨーロッパで進みつつある金融取引税の詳細と最新の動向も詳しく書かれていますので、みなさまぜひぜひお読みください。

ドイツ経済研究所(DIW)のFTT税収試算報告書:概要

先に、3月9日付南ドイツ新聞に、「EU11カ国がFTT(金融取引税)を導入した場合の、ドイツの税収見込み」の記事が掲載されたことをお知らせしましたが、この税収見込みを試算したのがドイツでも有力なシンクタンクであるドイツ経済研究所(DIW)です。

 

その試算に関する報告書のエグゼクティブ・サマリー(概要)が英文で発表されていますので、翻訳しました。

 

なお、この報告書全体の意義について、ドイツのNGO、WEEDのピーター・ウォール氏は次のように述べています。

 

「研究の主要なメッセージは、税収が予測されていたよりも高いことで、これは課税の結果として取引高が減少し75%となるシナリオにおいてさえも得られる結果です。これは、配分の議論に関する斬新な情報を私たちに与えてくれています。FfD(国連資金会議)やCOP(気候変動枠組条約会議)のプロセスに対しても、この結果はよく適合します。その他、たとえばデリバティブや公債、居住地原則などに関する興味深い結果が示されています。」

 

DIW研究報告書:

Fiskalische und okonomische Auswirkungen einer eingeschranktenFinanztransaktionssteuer(ドイツ語)

 

エグゼクティブ・サマリー(pp. Ⅲ-Ⅳ、英語):

 

  • 本研究は、EU11加盟国間の先行統合(enhanced cooperation)に基づく金融取引税の導入効果を検証する。特に、欧州委員会の租税概念に基づき、ドイツ、フランス、イタリア、オーストリアの4参加国の税収を試算する。

 

  • クロス・ボーダーの金融取引税(以下、FTTと表記)は、EUにおいて根幹を成す重要性をもつ。FTTには、財政領域を超えた先行統合のモデルを確立すること、相当な税収を生み出すこと、金融セクターによる危機のコスト負担を適切に分配すること、そして将来の危機の予防に貢献することが期待されている。

 

  • フランスとイタリアは、それぞれ2012年と2013年に独自モデルのFTTを導入した。これらFTTモデルの効果に関する使用可能な実証的エビデンス(根拠)の全体的なレビューは、明瞭な結論を導き得ない。既存研究はおおむね取引量の減少を見出しているが、それらの発見は、課税対象企業のコントロール・グループ(統制群)の選択や観察時期の期間にかなりの程度依存した結果となっている。

 

  • EU4カ国における税収の試算が、本研究の核心である。第一試算の結果から、広範な課税ベースのFTTが相当な税収をもたらすことが明らかにされた。ドイツが獲得する税収の幅は、180-400億ユーロ以上で、これは居住地原則と発行地原則の双方を基礎に徴税し、税率を証券につき0.1%、デリバティブにつき0.01%とした場合の試算結果である。フランスの税収は、およそ140-360億ユーロ以上。イタリアの試算結果は、30-60億ユーロの間となった。オーストリアは7-15億ユーロの間の税収が見込めるだろう。

 

  • 課税ベースが広範である場合は、税率が低い場合においてさえも、依然として相当分の税収を見込める。もしデリバティブと証券の双方に0.01%の統一税率を採用した場合、ドイツの税収試算は約90-340億ユーロである。

 

  • もし国債の流通市場が課税されないと、税収見込は相当低くなる。ドイツの場合、およそ110-360億ユーロである。フランスは、およそ100-300億ユーロの間の税収が見込まれる。イタリアの税収は20-50億ユーロの間となる。オーストリアは5億から10億ユーロをわずかに上回る間の税収が見込まれる。

 

  • 同様に、居住地原則の撤回も、金融取引税の税収額を著しく制限することになる。イタリアとオーストリアはとりわけ影響を受けるだろう。フランスとドイツは試算額の30%を失うであろうが、一方オーストリアは試算税収の4分の3以上を失うであろう。したがって、もし居住地原則が落ち、FTTの徴税基本原則に発行地原則のみ採用される場合、より小さな国々が不相応に影響を受けるかもしれない。

 

  • デリバティブは、課税ベースのほとんどを構成する。もしこれが対象外となった場合、FTTから見込まれる税収の大半は失われる。ドイツとフランスは税収試算の90%を失うことになるだろう。

 

  • さらに、デリバティブの除外は、トレーダーが鞘取りの手段を通じた租税回避を行うことを助長する。そのあり得る帰結は、課税セグメントにおける課税ベースの著しい侵害である。したがって、FTTの導入を段階ごとに進め、デリバティブを第一段階において除外するモデルは、FTTの目的達成には不適当であるように思われる。

 

  • FTTによって特定の取引者(銀行、ヘッジファンド、保険会社など)に対しどのような影響を与えるかというデータは、不足している。国際決済銀行(BIS)における店頭デリバティブ「(BIS)報告銀行」や「その他の金融機関(other financial institutions)」は、とりわけ影響を受けるように思われる。それに対し「非金融機関(non-financial institutions)」はほとんど影響されないようだ。取引については、大雑把な検証でさえも不可能である。取引相手に関する必要なデータも使用可能ではない。

 

  • 金融取引データの改善手段は、至急求められている。公的に使用可能な証券取引の取引高データの明細、金融商品の発行国、取引相手の居住地は、FTTの影響を試算する際、とりわけ有用である。

 

 

ドイツ語圏以外の人々のためのヒント(DIW研究報告書のサマリーの補足、抜粋)

 ――ドイツのNGO、WEEDのピーター・ウォールより

 

・ サマリーにおける税収見込額に幅があるのは、以下の試算想定に基づく:

   最大値=課税による取引減なし

   最小値=課税による取引減の最大ケース

 

・ 研究の核心部分は以下:

  ・表5(p.23):「広範な課税ベースにおける税収」

  ・表6(p.24):「多様な税率と広範な課税ベースにおける税収」

  ・表7(p.25):「全商品0.01%の統一税率と広範な課税ベース」

  ・表9(p.27):「多様な税率と広範な課税ベースにおける税収、公債を除く」

  ・表10(p.29):「居住地原則および公債を除いた税収」

  ・表11(p.30):「居住地原則および公債を除いた、多様な税率と税収」

  ・表12(p.31):「居住地原則(および公債)を除いた税収減割合(%)」

  ・表13(p.32):「デリバティブを除く税収減、回避がない場合」

 

・ すべての取引は2回課税(売り手と買い手)

・ すべての表は、居住地原則を除き、と明示されている場合以外、欧州委員会の提案と同様に、居住地および発行地原則の組み合わせにより計算。

・ 第3章はフランスとイタリアの国内税を分析しており、今後の予測は困難だと述べている。

・ 本研究は、二段階アプローチに強固に反対している(第7章)。

・ DIWは権威ある一流のドイツ機関である。

・ 本研究は社会民主党(SPD)によって委託されたものである。

 

                       (翻訳:K.Tsuda)

UNITAIDテラノバさん、議連訪問&ニュース第11号発行

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3月24日、UNITAID(ユニットエイド)顧問のヴァレリー・テラノバさんが国際連帯税議連の衛藤征士郎会長(自民)と石橋通宏事務局長(民主)を表敬訪問し、懇談を行いました。国際連帯税フォーラムからは田中が参加。

 

ご承知のように、UNITAIDとは10カ国で実施されている航空券連帯税を主な資金源とし、エイズ・結核・マラリアなど感染症への治療薬や診断薬を途上国の患者さんに提供しています。

 

この日の懇談では、まず衛藤会長から国際連帯税の導入に向けた昨年度の活動ついてと今後に向けての説明がありました。やはり航空業界の強い反対がネックになっていることで、今年度はそれをどう乗り越えていくかが課題である、とのことです。

 

一方、テラノバ顧問からはUNITAIDの最新動向について報告を受けました。特にUNITAIDは現在、航空券連帯税の影響評価について、第三者研究機関に調査研究依頼をしており、今年6月にはその結果が報告されること、などが紹介されました。

 

田中の方からは、成田航空会社(株)の最新「世界主要空港の空港利用料金比較(国際線:旅客1人当たり)」資料を提示し、日本での航空券連帯税導入の必要性と可能性につき明らかにしました。

 

最後に衛藤会長から、「年末に行われる来年度税制改正の議論に向けて、議連としても取り組みを強化していきたい。衛藤―石橋の最強コンビでがんばりたい」と決意を述べて懇談を終えました。

 

3月30日『ニュースレター国際連帯税・金融取引税』第11号を発行し、全国会議員に配布しました。主な内容は以下の通り。

 

世界の主要国では航空券(運賃)に対し、様々な税金を課している。が、日本では航空券への課税はなし。よって、日本に居住する人が国際線を利用して英国、ドイツ、フランス、米国(航空券税が高い順番)に旅する場合、もっぱらそれらの国に税を支払っていることになる。いわば取られっ放し状態。

 

従って、日本でも同税を国際連帯税として実施し、(世界の隅々までの短期間・大量の航空輸送により)今後拡大することが予想されるデング熱やその他の感染症対策の資金にすべきである。なお、急増している外国客に対して、もし日本で航空券連帯税が実施されていれば外国客から約160億円の税を徴収することが可能(2014年 フランス並みの定額税)。

 

◆写真は本文と関係ありませんが、3月30日の上野公園の桜並木の模様。たいへんな人出でした。

 

仏ジラルダン開発担当大臣が国際連帯税議連と意見交換会をもつ

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3月13日、「国際連帯税の創設をめざす議員連盟」の役員とフランスのアニック・ジラルダン開発担当大臣(以下、開発大臣)とが意見交換を行いました。開発大臣は仙台で開催される「国連防災世界会議」に出席のため来日し、この機会にぜひ国際連帯税連盟と意見交換をしたいとの申し出があり、この日の会合となりました。

 

議連側出席者は、衛藤征士郎会長(自民党衆議院議員)、藤田幸久会長代行(民主党参議院議員)、福島みずほ顧問(社民党参議院議員)、石橋通宏事務局長(民主党参議院議員)、でした。

 

ジラルダン開発大臣が再三強調されたのが、今年、2015年はいわゆる「革新的資金調達メカニズム(=伝統的な一般財源からのODA予算ではない、国際協力目的の新たな資金調達手段)」の構築にとって大変重要な年になるということでした。というのは、今年がMDGs(ミレニアム開発目標)の最終年で、かつ次のポストMDGs(2015開発アジェンダ)を策定する大事な国連サミットが行われること、さらに地球温暖化防止に向け新たな合意をとりまとめるCOP21が開催されること、そしてこの両者におけるさまざまな目標達成に向けて、またプロジェクトを実施する手段として「資金調達」が大きな課題となっているからです。

 

ジラルダン開発大臣は、特に航空券連帯税について、「フランスでも導入時にはさまざまな抵抗があったが、その影響を検証するとともに、税の使い途を国民にしっかり説明したことによって賛同を得てきた。日本でも、ぜひ透明性が確保される制度を設計して、国民の理解を得られるよう努力をしてほしい」と述べ、エールを送ってくれました。

 

議連側からも、衛藤会長が「皆で力を合わせ、国民世論を喚起しながら国際連帯税の導入に向けて一層努力していきたい」と決意を述べて、会を終了しました。短時間の会合でしたが、大変有意義な意見交換ができたようです。 【情報提供:石橋通宏事務所】