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ドスト=ブラジ氏「結核 : 手遅れになる前に行動を」=財源、連帯税で

 

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航空券連帯税を主な財源とし、途上国のエイズ・結核・マラリアの治療薬や診断薬等を提供しているUNITAID(ユニットエイド:28か国とゲイツ財団が参加)の理事長であり国連事務総長特別顧問のフィリップ・ドスト=ブラジ氏が、南アフリカ保健相のDr. アーロン・モツォアレディ氏と連名で仏ルモンド紙に「結核 : 手遅れになる前に行動を」という文章を投稿しました。その記事がハフィントンポスト日本版に載りましたので(要旨を含め)紹介します。

 

 

結核 : 手遅れになる前に行動を

 Tuberculose : agir avant qu’il ne soit trop tard

 

毎年150万人の命を奪い、息をするだけで罹ってしまうかもしれない病気のこと、考えたことがありますか。結核は私たちが無視できない脅威で、しかも薬への耐性という新しい様相を帯びてますます恐ろしい病気になっています。イギリス議員連盟による最新の調査結果によると、2050年までには新型結核だけで年間260万人の命がうばわれ、財政支出総額は16兆7000億ドルに上るだろうと指摘されています。… 

 

2035年までに世界的伝染病・結核の根絶は可能です。しかし手遅れにならないうちに革新を起こさなければなりません。

 

革新的資金調達を武器に

永続性がありかつ予測可能な資金である金融取引税や航空券連帯税の世界的な実施を。

 

革新的支出 : 効果ある対策を

過去40年でこの病気治療に認可された新薬はたった2種、薬の生産者には、現存する有望な革新モデルなど、結核研究調査に投資するよう求める。

 

政治的意志 : パズルに欠けているピース

2014年11月、ブラジル、カナダ、フランス、インド、ケニア、南アフリカ、タンザニア、イギリス、アメリカの国会議員により、結核に関する国際議員連盟が創設され、バルセロナ宣言が調印、結核との闘いに強力な協調体制が整い、同時に政治的動員が可能であることが示された。

 

              Dr. アーロン・モツォアレディ

                      南アフリカ保健相

                      ストップ結核 パートナーシップ理事長

 

              フィリップ・ドスト=ブラジ

                     革新的資金調達に関する国連事務総長特別顧問

                      ユニットエイド理事長

                      元フランス外務大臣及び厚生大臣

 

◆写真は、左がUNITAIDのWEBサイトより、右がハフィントンポスト日本版の記事より

 

 

 

資料「ピケティ『21世紀の資本』と資本主義の未来」

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4月12日国際連帯税フォーラムの第5回総会後、本田浩邦・獨協大学教授による「ピケティ『21世紀の資本』と資本主義の未来」と題しての講演会が行われました。会には会場が満杯となる50人ほどの参加があり、時間も30分以上オバーするなど最後まで熱心に議論されました。

 

当日本田教授が使用したレジメパワーポイント資料、ならびに先生が書かれた「ピケティ旋風を読み解く」(週刊『金曜日』)、「アメリカ経済の長期的変化-T・ピケティ、R・ゴードン、W・ボーモルの研究と考察」(月刊『経済』)を資料として送ります。

 

●レジメの内容は次の通りで、パワーポイント資料と併せてお読みください。

 

Ⅰ ピケティ『21世紀の資本』のポイント

(1)経済格差はなぜ拡大したか?

(2)資本主義の未来

(3)何が必要か?

 

Ⅱ 『21世紀の資本』をめぐる論争

(1)主流派経済学からのピケティ批判

(2)マルクス主義陣営からの批判

(3)批判に対する反論

(4)ピケティ自身による反論(Burcharth, 2014: Piketty, 2015)

国際連帯税フォーラム第5回総会開催される(4月12日)

国際連帯税フォーラムの第5回総会は、4月12日自治労会館で開催され、団体会員6団体代表7人、個人会員10人、オブザーバー7人の24人が参加しました(現在フォーラムの団体会員は10団体、個人会員は20人)。

 

総会は2014年度活動報告ならびに2015年度活動方針案を巡り、1)国連開発資金会議への対応について、2)NGOと労組との共同行動について、3)(航空券連帯税に反対している)航空業界や国交省への対応について、4)この活動をNGO・市民社会にどう拡大していくかなど、予定時間を大幅に超えて熱心に議論が行われました。

 

結果は、第1号議案から第7号議案まで採択され、国際連帯税フォーラムという組織名称も「グローバル連帯税フォーラム」に変更されることとなりました。総会議案書こちらからご覧ください

 

なお、2015年度の主な活動方針は下記の通りです。

1、「ポスト2015開発アジェンダとグローバル連帯税」キャンペーン

2、2016年度税制改正に対して、グローバル(国際)連帯税を求める活動

3、グローバル連帯税推進協議会と提言書づくりへの協力  他

 

 

★フォーラムの活動を支えるために、あなたも会員になってください

 

グローバル連帯税フォーラムの2015年度の予算は、主に会員からの会費で賄われることになります。そこでみなさまも会員になっていただき、フォーラムの活動を支えてくださることを訴えます。会費ですが、団体会員は年間1口10,000円、個人会員は年間1口3,000円、学生会員は年間1口500円です。

 

会員になってもよいと考えてくださる団体・個人は、info@isl-forum.jp まで連絡ください。もとより会費面からの支援のみならず、具体的な活動(事務局の実務手伝いや翻訳など)に参加していただくことも大歓迎です。

 

なお、12日の総会とその後の講演会を通し、1団体と個人5人が新しく会員になっていただきました。ありがとうございます!!

 

 

『グローバル・タックスの構想と射程』(法律文化社)出版!

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このたび、上村雄彦横浜市大教授の編集による『グローバル・タックスの構想と射程』という貴重な本が法律文化社から出版されました。ご購入するなり、各図書館で購入してもらうよう要望しましょう。

 

<本書の紹介>
地球規模の問題を解決する切り札となりうるグローバル・タックスの実現へ向け、学際的に分析し、実行可能な政策を追究。公正で、平和な持続可能社会創造のための、具体的な処方箋を提起する。【もちろん、金融取引税や航空券連帯税、その他のグローバル・タックスがが提案されていると思われる(まだ読んでいないので…)】

 

<著者は以下の強力メンバーです>
  ・上村 雄彦(横浜市立大学教授)
  ・諸富 徹(京都大学教授)
  ・三木 義一(青山学院大学教授)
  ・道下 知子(西武文理大学講師)
  ・金子 文夫(横浜市立大学名誉教授)
  ・ヘイッキ・パトマキ(ヘルシンキ大学教授)

 

 

★上村雄彦先生のコメント

 

『グローバル・タックスの構想と射程』の紹介、ありがとうございます! 研究会を重ね、みなさんと全力で執筆しました。

 

ピケティが格差をなくすための処方箋として、グローバル・タックスを提示していますが、本書を読めば、その全体像がしっかりとつかめると思います。

 

また、ヨーロッパで進みつつある金融取引税の詳細と最新の動向も詳しく書かれていますので、みなさまぜひぜひお読みください。

ドイツ経済研究所(DIW)のFTT税収試算報告書:概要

先に、3月9日付南ドイツ新聞に、「EU11カ国がFTT(金融取引税)を導入した場合の、ドイツの税収見込み」の記事が掲載されたことをお知らせしましたが、この税収見込みを試算したのがドイツでも有力なシンクタンクであるドイツ経済研究所(DIW)です。

 

その試算に関する報告書のエグゼクティブ・サマリー(概要)が英文で発表されていますので、翻訳しました。

 

なお、この報告書全体の意義について、ドイツのNGO、WEEDのピーター・ウォール氏は次のように述べています。

 

「研究の主要なメッセージは、税収が予測されていたよりも高いことで、これは課税の結果として取引高が減少し75%となるシナリオにおいてさえも得られる結果です。これは、配分の議論に関する斬新な情報を私たちに与えてくれています。FfD(国連資金会議)やCOP(気候変動枠組条約会議)のプロセスに対しても、この結果はよく適合します。その他、たとえばデリバティブや公債、居住地原則などに関する興味深い結果が示されています。」

 

DIW研究報告書:

Fiskalische und okonomische Auswirkungen einer eingeschranktenFinanztransaktionssteuer(ドイツ語)

 

エグゼクティブ・サマリー(pp. Ⅲ-Ⅳ、英語):

 

  • 本研究は、EU11加盟国間の先行統合(enhanced cooperation)に基づく金融取引税の導入効果を検証する。特に、欧州委員会の租税概念に基づき、ドイツ、フランス、イタリア、オーストリアの4参加国の税収を試算する。

 

  • クロス・ボーダーの金融取引税(以下、FTTと表記)は、EUにおいて根幹を成す重要性をもつ。FTTには、財政領域を超えた先行統合のモデルを確立すること、相当な税収を生み出すこと、金融セクターによる危機のコスト負担を適切に分配すること、そして将来の危機の予防に貢献することが期待されている。

 

  • フランスとイタリアは、それぞれ2012年と2013年に独自モデルのFTTを導入した。これらFTTモデルの効果に関する使用可能な実証的エビデンス(根拠)の全体的なレビューは、明瞭な結論を導き得ない。既存研究はおおむね取引量の減少を見出しているが、それらの発見は、課税対象企業のコントロール・グループ(統制群)の選択や観察時期の期間にかなりの程度依存した結果となっている。

 

  • EU4カ国における税収の試算が、本研究の核心である。第一試算の結果から、広範な課税ベースのFTTが相当な税収をもたらすことが明らかにされた。ドイツが獲得する税収の幅は、180-400億ユーロ以上で、これは居住地原則と発行地原則の双方を基礎に徴税し、税率を証券につき0.1%、デリバティブにつき0.01%とした場合の試算結果である。フランスの税収は、およそ140-360億ユーロ以上。イタリアの試算結果は、30-60億ユーロの間となった。オーストリアは7-15億ユーロの間の税収が見込めるだろう。

 

  • 課税ベースが広範である場合は、税率が低い場合においてさえも、依然として相当分の税収を見込める。もしデリバティブと証券の双方に0.01%の統一税率を採用した場合、ドイツの税収試算は約90-340億ユーロである。

 

  • もし国債の流通市場が課税されないと、税収見込は相当低くなる。ドイツの場合、およそ110-360億ユーロである。フランスは、およそ100-300億ユーロの間の税収が見込まれる。イタリアの税収は20-50億ユーロの間となる。オーストリアは5億から10億ユーロをわずかに上回る間の税収が見込まれる。

 

  • 同様に、居住地原則の撤回も、金融取引税の税収額を著しく制限することになる。イタリアとオーストリアはとりわけ影響を受けるだろう。フランスとドイツは試算額の30%を失うであろうが、一方オーストリアは試算税収の4分の3以上を失うであろう。したがって、もし居住地原則が落ち、FTTの徴税基本原則に発行地原則のみ採用される場合、より小さな国々が不相応に影響を受けるかもしれない。

 

  • デリバティブは、課税ベースのほとんどを構成する。もしこれが対象外となった場合、FTTから見込まれる税収の大半は失われる。ドイツとフランスは税収試算の90%を失うことになるだろう。

 

  • さらに、デリバティブの除外は、トレーダーが鞘取りの手段を通じた租税回避を行うことを助長する。そのあり得る帰結は、課税セグメントにおける課税ベースの著しい侵害である。したがって、FTTの導入を段階ごとに進め、デリバティブを第一段階において除外するモデルは、FTTの目的達成には不適当であるように思われる。

 

  • FTTによって特定の取引者(銀行、ヘッジファンド、保険会社など)に対しどのような影響を与えるかというデータは、不足している。国際決済銀行(BIS)における店頭デリバティブ「(BIS)報告銀行」や「その他の金融機関(other financial institutions)」は、とりわけ影響を受けるように思われる。それに対し「非金融機関(non-financial institutions)」はほとんど影響されないようだ。取引については、大雑把な検証でさえも不可能である。取引相手に関する必要なデータも使用可能ではない。

 

  • 金融取引データの改善手段は、至急求められている。公的に使用可能な証券取引の取引高データの明細、金融商品の発行国、取引相手の居住地は、FTTの影響を試算する際、とりわけ有用である。

 

 

ドイツ語圏以外の人々のためのヒント(DIW研究報告書のサマリーの補足、抜粋)

 ――ドイツのNGO、WEEDのピーター・ウォールより

 

・ サマリーにおける税収見込額に幅があるのは、以下の試算想定に基づく:

   最大値=課税による取引減なし

   最小値=課税による取引減の最大ケース

 

・ 研究の核心部分は以下:

  ・表5(p.23):「広範な課税ベースにおける税収」

  ・表6(p.24):「多様な税率と広範な課税ベースにおける税収」

  ・表7(p.25):「全商品0.01%の統一税率と広範な課税ベース」

  ・表9(p.27):「多様な税率と広範な課税ベースにおける税収、公債を除く」

  ・表10(p.29):「居住地原則および公債を除いた税収」

  ・表11(p.30):「居住地原則および公債を除いた、多様な税率と税収」

  ・表12(p.31):「居住地原則(および公債)を除いた税収減割合(%)」

  ・表13(p.32):「デリバティブを除く税収減、回避がない場合」

 

・ すべての取引は2回課税(売り手と買い手)

・ すべての表は、居住地原則を除き、と明示されている場合以外、欧州委員会の提案と同様に、居住地および発行地原則の組み合わせにより計算。

・ 第3章はフランスとイタリアの国内税を分析しており、今後の予測は困難だと述べている。

・ 本研究は、二段階アプローチに強固に反対している(第7章)。

・ DIWは権威ある一流のドイツ機関である。

・ 本研究は社会民主党(SPD)によって委託されたものである。

 

                       (翻訳:K.Tsuda)

UNITAIDテラノバさん、議連訪問&ニュース第11号発行

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3月24日、UNITAID(ユニットエイド)顧問のヴァレリー・テラノバさんが国際連帯税議連の衛藤征士郎会長(自民)と石橋通宏事務局長(民主)を表敬訪問し、懇談を行いました。国際連帯税フォーラムからは田中が参加。

 

ご承知のように、UNITAIDとは10カ国で実施されている航空券連帯税を主な資金源とし、エイズ・結核・マラリアなど感染症への治療薬や診断薬を途上国の患者さんに提供しています。

 

この日の懇談では、まず衛藤会長から国際連帯税の導入に向けた昨年度の活動ついてと今後に向けての説明がありました。やはり航空業界の強い反対がネックになっていることで、今年度はそれをどう乗り越えていくかが課題である、とのことです。

 

一方、テラノバ顧問からはUNITAIDの最新動向について報告を受けました。特にUNITAIDは現在、航空券連帯税の影響評価について、第三者研究機関に調査研究依頼をしており、今年6月にはその結果が報告されること、などが紹介されました。

 

田中の方からは、成田航空会社(株)の最新「世界主要空港の空港利用料金比較(国際線:旅客1人当たり)」資料を提示し、日本での航空券連帯税導入の必要性と可能性につき明らかにしました。

 

最後に衛藤会長から、「年末に行われる来年度税制改正の議論に向けて、議連としても取り組みを強化していきたい。衛藤―石橋の最強コンビでがんばりたい」と決意を述べて懇談を終えました。

 

3月30日『ニュースレター国際連帯税・金融取引税』第11号を発行し、全国会議員に配布しました。主な内容は以下の通り。

 

世界の主要国では航空券(運賃)に対し、様々な税金を課している。が、日本では航空券への課税はなし。よって、日本に居住する人が国際線を利用して英国、ドイツ、フランス、米国(航空券税が高い順番)に旅する場合、もっぱらそれらの国に税を支払っていることになる。いわば取られっ放し状態。

 

従って、日本でも同税を国際連帯税として実施し、(世界の隅々までの短期間・大量の航空輸送により)今後拡大することが予想されるデング熱やその他の感染症対策の資金にすべきである。なお、急増している外国客に対して、もし日本で航空券連帯税が実施されていれば外国客から約160億円の税を徴収することが可能(2014年 フランス並みの定額税)。

 

◆写真は本文と関係ありませんが、3月30日の上野公園の桜並木の模様。たいへんな人出でした。

 

仏ジラルダン開発担当大臣が国際連帯税議連と意見交換会をもつ

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3月13日、「国際連帯税の創設をめざす議員連盟」の役員とフランスのアニック・ジラルダン開発担当大臣(以下、開発大臣)とが意見交換を行いました。開発大臣は仙台で開催される「国連防災世界会議」に出席のため来日し、この機会にぜひ国際連帯税連盟と意見交換をしたいとの申し出があり、この日の会合となりました。

 

議連側出席者は、衛藤征士郎会長(自民党衆議院議員)、藤田幸久会長代行(民主党参議院議員)、福島みずほ顧問(社民党参議院議員)、石橋通宏事務局長(民主党参議院議員)、でした。

 

ジラルダン開発大臣が再三強調されたのが、今年、2015年はいわゆる「革新的資金調達メカニズム(=伝統的な一般財源からのODA予算ではない、国際協力目的の新たな資金調達手段)」の構築にとって大変重要な年になるということでした。というのは、今年がMDGs(ミレニアム開発目標)の最終年で、かつ次のポストMDGs(2015開発アジェンダ)を策定する大事な国連サミットが行われること、さらに地球温暖化防止に向け新たな合意をとりまとめるCOP21が開催されること、そしてこの両者におけるさまざまな目標達成に向けて、またプロジェクトを実施する手段として「資金調達」が大きな課題となっているからです。

 

ジラルダン開発大臣は、特に航空券連帯税について、「フランスでも導入時にはさまざまな抵抗があったが、その影響を検証するとともに、税の使い途を国民にしっかり説明したことによって賛同を得てきた。日本でも、ぜひ透明性が確保される制度を設計して、国民の理解を得られるよう努力をしてほしい」と述べ、エールを送ってくれました。

 

議連側からも、衛藤会長が「皆で力を合わせ、国民世論を喚起しながら国際連帯税の導入に向けて一層努力していきたい」と決意を述べて、会を終了しました。短時間の会合でしたが、大変有意義な意見交換ができたようです。 【情報提供:石橋通宏事務所】

FTT国際電話会議:国連開発資金会議(FfD)プロセスについて

ご承知のように、本年2015年は国連において歴史的と言ってよい二つのイベントが開催されます。ひとつは、ポストMDGsである持続可能な開発目標(2015開発アジェンダ)が採択される年であり、もうひとつは2020年以降の世界の気候変動・温暖化対策の大枠を決める年です。

 

現在持続可能な開発目標の方は昨年中に17の目標が立てられ(下記「…オープン・ワーキング・グループの提案」参照)、今年に入って(1)9月の国連サミットで採択すべき目標についての政府間交渉、ならびに(2)上記目標を達成するための資金調達についての交渉、が並行的に行われています。

 

◎持続可能な開発目標に関するオープン・ワーキング・グループの提案(日本語)

 

この(2)の資金調達の交渉ですが、7月に第3回国連開発資金会議(FfD3)が開催され、そこで合意される成果文書作成に向けて、1月、4月、6月と準備会議が行われていきます。

 

さて、今回みなさまに送る「FTT国際電話会議:国連開発資金会議(FfD)プロセスについて」(2月25日)ですが、これは金融取引税(FTT)を求める国際的な市民グループがFfD3、並びに気候変動会合(COP21パリ会議)に向けて、現状分析と何をなすべきかについての議論の議事録です。

 

これまでFTTを主導してきた欧州の市民社会が欧州11カ国FTT実施に向けての活動に時間が取られ、FTTを含む革新的資金メカニズムを盛り込んでいく大きな機会である国連イベントへの対応が遅れていましたが、ようやく動き始めました。電話会議参加の顔ぶれをみますと、FTT推進グループをはじめ、財団、研究所、労働組合など幅広く参加しているようです。どうぞ議事録をお読みください。

 

◆「FTT国際電話会議:国連開発資金会議(FfD)プロセスについて」を読む⇒ PDF

 

議事録の方ですが、いろんな専門用語も飛び交っていますが、FTTや革新的資金メカニズムを求めている国際的な市民社会グループがどのような対応をしようとしているのか、全体のトーンを知っていただければと思います。

 

なお、この1~2年議論されてきたポスト2015開発アジェンダについて統合した国連事務総長の報告書が昨年12月に公表されています。これもぜひ目を通していただくと、今後の資金問題を含むSDGs/ポスト2015開発アジェンダ議論に役立つと思います。

 

◎事務総長統合報告書(The Road to Dignity by 2030)

「2030年、尊厳への道:貧困を終わらせ、全ての人々の生活を変革し、地球を守る」(日本語

 

◆写真は、第2回国連開発資金会議:「モンテレイ合意の実施を評価するための開発資金源に関するフォローアップ国際会議」(2008年11月ドーハ)に向け、開発資金のための金融取引税(当時は通貨取引税)を求める国際NGOワーキンググループ「開発資金のための通貨取引税キャンペーン」のロゴ。“DOHA2008:THE TIME IS RIPE!(機は熟した!) 0.7%ODA+0.005%CTT”

 

 

【速報】本日のドイツ紙に金融取引税の税収試算報道=450億ユーロ

 キャプチャ

 

本日ドイツの有力な日刊紙である“Suddeutsche Zeitung”(南ドイツ新聞)にEU11カ国がFTT(金融取引税)を導入した場合の、ドイツの税収見込みの記事がトップページに載っています。

 

Finanzsteuer konnte 45 Milliarden Euro bringen

(金融税は450億ユーロの税収をもたらす)

 

この税収試算は、有力なシンクタンクであるドイツ経済研究所(DIW)が社会民主党により「EU11カ国のうち4大経済大国(ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)にもたらされる税収見込みの調査」を委託され、その報告書によるものです。

 

ちなみに、記事の中に、2012年10月に国際連帯税フォーラムが主催した国際シンポジウムにスピーカーとして参加していただいたカーステン・ジーリング議員のコメントも載っています。

 

このDIWの報告書について、ドイツのNGOから連絡が来ていますので、詳細については後日報告します。

 

 

 

【ご案内】講演会:ピケティ『21世紀の資本』と資本主義の未来

トマ・ピケティ教授の来日と各メディアの紹介ぶりはまるで台風一過のようでしたが、やや落ち着いたところで本田浩邦先生を講師にお招きして下記の講演会を開催します。ふるってご参加ください。

 

                     講演会:「ピケティ『21世紀の資本』と資本主義の未来」

 

・日時:4月12日(日)14:30~16:30

・会場:自治労会館2F会議室

    アクセス:http://www.jichirokaikan.jp/access.html 

・参加費(資料代):500円

・定員:45人

・申込み:「講演会参加希望」ならびにお名前、所属(あれば)をお書きの上、次のアドレスから申込みください。     info@isl-forum.jp 

◎講演:本田浩邦・獨協大学経済学部教授

   *先生はNHKEテレで6回に渡り放映された「ピケティの白熱教室」に資料提供ということで参加されました

 

ピケティ『21世紀の資本』の特徴は、膨大な歴史的データで格差・不平等を検証していることです。その上に立って理論的根拠を示すとともに、格差是正のための政策提言を行っています。

 

前者が「r(資本収益率)>g(経済成長率)」理論であり、後者はグローバルな累進資本課税の提言です。今回は、主に「r>g」で表わされるピケティ理論の核心を本田先生に分かりやすく語っていただきます。

 

「r>g」を導くためには、次の2つの法則の理解が必要となります。

 ・資本主義の第一基本法則:

  α(国民所得に占める資本(収益)の割合)=r(資本収益率)×β(資本所得比率)

 ・同 第二基本法則:

  β(資本所得比率)=s(貯蓄率)/g(経済成長率)

 

ともあれ、「r>g」がさらに開き、格差・不平等が拡大するとどうなるでしょうか。「20世紀初頭の極端な不平等は…第一次世界大戦に結び付いた。今再びイスラムをめぐる問題や極右勢力の台頭などがクローズアップされているのは、偶然ではない」(週刊東洋経済、インタビュー)とピケティ教授は語っています。いわば資本主義の未来について予言しているわけですが、格差・不平等の拡大は何をもたらすのか、このことについても考えてみたいと思います。

 

なお、ピケティ教授のもうひとつの重要な提言である「グローバルな累進資本課税」の問題については次の機会に取り上げていきます。世界と日本の格差・不平等問題に関心のある方はぜひご参加ください。

 

 

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