日本でも「君は“21世紀の資本”を読んだか?」が日常の合言葉となりそうなほどに、トマ・ピケティ旋風が吹き荒れつつありますが、ハフィントンポストで下記のような興味深い記事が載っていましたので紹介します。
それは、米の大富豪ビル・ゲイツ氏のピケティ『21世紀の資本』への感想で、以下のポスト記事のタイトルにあるようなものです。
ビル・ゲイツ、トマ・ピケティの『21世紀の資本』に共感するも「富裕税への増税には賛成できない」
【本文の一部】
ゲイツ氏はピケティ氏が、…富裕層をひとまとめにしている点は間違っていると主張した。そして、例えとして「ひとりは企業に投資し、ひとりは慈善活動に充て、ひとりは贅沢な生活に使っている」3人の富豪を挙げ、「最後のひとりの生活に問題はないが、しかし他の2人より多くの税金を払うべきだと思う」と書いている。
つまり、ゲイツ氏は贅沢な生活をしている富裕層に奢侈税(日本でかつてあった物品税)を課せというものです。そのことには全面的に賛成ですが、企業投資や慈善活動についてどうも節税対策に使われている形跡があり、その線引きが難しいですね。
日経ビズネスの載った岡直樹さんの『ピケティと同じ手法で「日本の富」を分析してみた! 日本でも納税者の0.1%に富が集中する傾向が顕著』というレポートによれば、ゲイツ氏のような米国のTop400(Top0.1%を含むウルトラリッチ)の全体の所得からの控除を見ると、1)グローバルな経済活動からの控除、2)寄付金控除が、日本のTop400より断然大きいとのこと。
米国の場合、こうした控除に加えて自分の事業(パートナーシップ及びS法人)を大きく赤字申告して節税しているとのことです(日本の場合は、主な所得は株式からの譲渡益とのことで、その分節税がやりにくいと言えるか?)。
ちなみに、米国のTop400とは一人平均3億4000万ドル=413億円の所得のある人で、日本ではその10分の1程度(2007年)。さらに、実効税率はここ数年日米ともざっくり15~20%程度です(日本の場合、課税所得が5000万円を越える人には45%の所得税がかかるはずだが、株の譲渡益への課税20%が分離課税となっているため実効税率が落ちるのでしょうね)。
ついでに、ウォールストリート・ジャーナルでは「上位1%富裕層はどんな資産を持っているのか 米調査」というレポートが載っています。これも興味深いですね。
米国民の富裕層上位1%(純資産額780万ドル=約9億4000万円以上)の総資産の約半分は、法人化されていない企業の資産や自宅以外の不動産が占める。さらに27%は株式や投資信託などの有価証券で保有されている。自宅関連資産の割合はわずか9%だ。
ところで、このメールのタイトルを「グローバル富裕税か奢侈税か、2段階課税か」と書きましたが、この2段階課税とは次のような諸富先生の提案からのものです。
――国境を越えて所得税や法人税を把握することが難しくなるなか、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏らは、国際的な資産課税による格差是正を提案しています。
「確かに格差拡大は問題ですが、短期間でピケティ氏のプランが実現することはないでしょう。私は二段構えでいくべきだと考えています。まずは、国内の税制を極力公平なものにする努力をし、税収はきちんと人への投資と再配分に充てる。その上で、グローバルに活動する企業や金融所得に対して、グローバルな課税の枠組みをつくっていくのです」
「欧州連合(EU)が始めようとしている金融取引税はその一歩です。利益ではなく取引額に税を課すものですが、銀行や証券会社の取引記録を把握することから、将来、所得や利潤をつかむ第一歩になる。日本もこうした動きと無縁ではいられませんが、まずはEU加盟国並みの付加価値税率を備えた税制を組み立てることが課題です」
◆写真は、ハフィントンポストより