ドイツ経済研究所(DIW)のFTT税収試算報告書:概要

先に、3月9日付南ドイツ新聞に、「EU11カ国がFTT(金融取引税)を導入した場合の、ドイツの税収見込み」の記事が掲載されたことをお知らせしましたが、この税収見込みを試算したのがドイツでも有力なシンクタンクであるドイツ経済研究所(DIW)です。

 

その試算に関する報告書のエグゼクティブ・サマリー(概要)が英文で発表されていますので、翻訳しました。

 

なお、この報告書全体の意義について、ドイツのNGO、WEEDのピーター・ウォール氏は次のように述べています。

 

「研究の主要なメッセージは、税収が予測されていたよりも高いことで、これは課税の結果として取引高が減少し75%となるシナリオにおいてさえも得られる結果です。これは、配分の議論に関する斬新な情報を私たちに与えてくれています。FfD(国連資金会議)やCOP(気候変動枠組条約会議)のプロセスに対しても、この結果はよく適合します。その他、たとえばデリバティブや公債、居住地原則などに関する興味深い結果が示されています。」

 

DIW研究報告書:

Fiskalische und okonomische Auswirkungen einer eingeschranktenFinanztransaktionssteuer(ドイツ語)

 

エグゼクティブ・サマリー(pp. Ⅲ-Ⅳ、英語):

 

  • 本研究は、EU11加盟国間の先行統合(enhanced cooperation)に基づく金融取引税の導入効果を検証する。特に、欧州委員会の租税概念に基づき、ドイツ、フランス、イタリア、オーストリアの4参加国の税収を試算する。

 

  • クロス・ボーダーの金融取引税(以下、FTTと表記)は、EUにおいて根幹を成す重要性をもつ。FTTには、財政領域を超えた先行統合のモデルを確立すること、相当な税収を生み出すこと、金融セクターによる危機のコスト負担を適切に分配すること、そして将来の危機の予防に貢献することが期待されている。

 

  • フランスとイタリアは、それぞれ2012年と2013年に独自モデルのFTTを導入した。これらFTTモデルの効果に関する使用可能な実証的エビデンス(根拠)の全体的なレビューは、明瞭な結論を導き得ない。既存研究はおおむね取引量の減少を見出しているが、それらの発見は、課税対象企業のコントロール・グループ(統制群)の選択や観察時期の期間にかなりの程度依存した結果となっている。

 

  • EU4カ国における税収の試算が、本研究の核心である。第一試算の結果から、広範な課税ベースのFTTが相当な税収をもたらすことが明らかにされた。ドイツが獲得する税収の幅は、180-400億ユーロ以上で、これは居住地原則と発行地原則の双方を基礎に徴税し、税率を証券につき0.1%、デリバティブにつき0.01%とした場合の試算結果である。フランスの税収は、およそ140-360億ユーロ以上。イタリアの試算結果は、30-60億ユーロの間となった。オーストリアは7-15億ユーロの間の税収が見込めるだろう。

 

  • 課税ベースが広範である場合は、税率が低い場合においてさえも、依然として相当分の税収を見込める。もしデリバティブと証券の双方に0.01%の統一税率を採用した場合、ドイツの税収試算は約90-340億ユーロである。

 

  • もし国債の流通市場が課税されないと、税収見込は相当低くなる。ドイツの場合、およそ110-360億ユーロである。フランスは、およそ100-300億ユーロの間の税収が見込まれる。イタリアの税収は20-50億ユーロの間となる。オーストリアは5億から10億ユーロをわずかに上回る間の税収が見込まれる。

 

  • 同様に、居住地原則の撤回も、金融取引税の税収額を著しく制限することになる。イタリアとオーストリアはとりわけ影響を受けるだろう。フランスとドイツは試算額の30%を失うであろうが、一方オーストリアは試算税収の4分の3以上を失うであろう。したがって、もし居住地原則が落ち、FTTの徴税基本原則に発行地原則のみ採用される場合、より小さな国々が不相応に影響を受けるかもしれない。

 

  • デリバティブは、課税ベースのほとんどを構成する。もしこれが対象外となった場合、FTTから見込まれる税収の大半は失われる。ドイツとフランスは税収試算の90%を失うことになるだろう。

 

  • さらに、デリバティブの除外は、トレーダーが鞘取りの手段を通じた租税回避を行うことを助長する。そのあり得る帰結は、課税セグメントにおける課税ベースの著しい侵害である。したがって、FTTの導入を段階ごとに進め、デリバティブを第一段階において除外するモデルは、FTTの目的達成には不適当であるように思われる。

 

  • FTTによって特定の取引者(銀行、ヘッジファンド、保険会社など)に対しどのような影響を与えるかというデータは、不足している。国際決済銀行(BIS)における店頭デリバティブ「(BIS)報告銀行」や「その他の金融機関(other financial institutions)」は、とりわけ影響を受けるように思われる。それに対し「非金融機関(non-financial institutions)」はほとんど影響されないようだ。取引については、大雑把な検証でさえも不可能である。取引相手に関する必要なデータも使用可能ではない。

 

  • 金融取引データの改善手段は、至急求められている。公的に使用可能な証券取引の取引高データの明細、金融商品の発行国、取引相手の居住地は、FTTの影響を試算する際、とりわけ有用である。

 

 

ドイツ語圏以外の人々のためのヒント(DIW研究報告書のサマリーの補足、抜粋)

 ――ドイツのNGO、WEEDのピーター・ウォールより

 

・ サマリーにおける税収見込額に幅があるのは、以下の試算想定に基づく:

   最大値=課税による取引減なし

   最小値=課税による取引減の最大ケース

 

・ 研究の核心部分は以下:

  ・表5(p.23):「広範な課税ベースにおける税収」

  ・表6(p.24):「多様な税率と広範な課税ベースにおける税収」

  ・表7(p.25):「全商品0.01%の統一税率と広範な課税ベース」

  ・表9(p.27):「多様な税率と広範な課税ベースにおける税収、公債を除く」

  ・表10(p.29):「居住地原則および公債を除いた税収」

  ・表11(p.30):「居住地原則および公債を除いた、多様な税率と税収」

  ・表12(p.31):「居住地原則(および公債)を除いた税収減割合(%)」

  ・表13(p.32):「デリバティブを除く税収減、回避がない場合」

 

・ すべての取引は2回課税(売り手と買い手)

・ すべての表は、居住地原則を除き、と明示されている場合以外、欧州委員会の提案と同様に、居住地および発行地原則の組み合わせにより計算。

・ 第3章はフランスとイタリアの国内税を分析しており、今後の予測は困難だと述べている。

・ 本研究は、二段階アプローチに強固に反対している(第7章)。

・ DIWは権威ある一流のドイツ機関である。

・ 本研究は社会民主党(SPD)によって委託されたものである。

 

                       (翻訳:K.Tsuda)

UNITAIDテラノバさん、議連訪問&ニュース第11号発行

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3月24日、UNITAID(ユニットエイド)顧問のヴァレリー・テラノバさんが国際連帯税議連の衛藤征士郎会長(自民)と石橋通宏事務局長(民主)を表敬訪問し、懇談を行いました。国際連帯税フォーラムからは田中が参加。

 

ご承知のように、UNITAIDとは10カ国で実施されている航空券連帯税を主な資金源とし、エイズ・結核・マラリアなど感染症への治療薬や診断薬を途上国の患者さんに提供しています。

 

この日の懇談では、まず衛藤会長から国際連帯税の導入に向けた昨年度の活動ついてと今後に向けての説明がありました。やはり航空業界の強い反対がネックになっていることで、今年度はそれをどう乗り越えていくかが課題である、とのことです。

 

一方、テラノバ顧問からはUNITAIDの最新動向について報告を受けました。特にUNITAIDは現在、航空券連帯税の影響評価について、第三者研究機関に調査研究依頼をしており、今年6月にはその結果が報告されること、などが紹介されました。

 

田中の方からは、成田航空会社(株)の最新「世界主要空港の空港利用料金比較(国際線:旅客1人当たり)」資料を提示し、日本での航空券連帯税導入の必要性と可能性につき明らかにしました。

 

最後に衛藤会長から、「年末に行われる来年度税制改正の議論に向けて、議連としても取り組みを強化していきたい。衛藤―石橋の最強コンビでがんばりたい」と決意を述べて懇談を終えました。

 

3月30日『ニュースレター国際連帯税・金融取引税』第11号を発行し、全国会議員に配布しました。主な内容は以下の通り。

 

世界の主要国では航空券(運賃)に対し、様々な税金を課している。が、日本では航空券への課税はなし。よって、日本に居住する人が国際線を利用して英国、ドイツ、フランス、米国(航空券税が高い順番)に旅する場合、もっぱらそれらの国に税を支払っていることになる。いわば取られっ放し状態。

 

従って、日本でも同税を国際連帯税として実施し、(世界の隅々までの短期間・大量の航空輸送により)今後拡大することが予想されるデング熱やその他の感染症対策の資金にすべきである。なお、急増している外国客に対して、もし日本で航空券連帯税が実施されていれば外国客から約160億円の税を徴収することが可能(2014年 フランス並みの定額税)。

 

◆写真は本文と関係ありませんが、3月30日の上野公園の桜並木の模様。たいへんな人出でした。

 

仏ジラルダン開発担当大臣が国際連帯税議連と意見交換会をもつ

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3月13日、「国際連帯税の創設をめざす議員連盟」の役員とフランスのアニック・ジラルダン開発担当大臣(以下、開発大臣)とが意見交換を行いました。開発大臣は仙台で開催される「国連防災世界会議」に出席のため来日し、この機会にぜひ国際連帯税連盟と意見交換をしたいとの申し出があり、この日の会合となりました。

 

議連側出席者は、衛藤征士郎会長(自民党衆議院議員)、藤田幸久会長代行(民主党参議院議員)、福島みずほ顧問(社民党参議院議員)、石橋通宏事務局長(民主党参議院議員)、でした。

 

ジラルダン開発大臣が再三強調されたのが、今年、2015年はいわゆる「革新的資金調達メカニズム(=伝統的な一般財源からのODA予算ではない、国際協力目的の新たな資金調達手段)」の構築にとって大変重要な年になるということでした。というのは、今年がMDGs(ミレニアム開発目標)の最終年で、かつ次のポストMDGs(2015開発アジェンダ)を策定する大事な国連サミットが行われること、さらに地球温暖化防止に向け新たな合意をとりまとめるCOP21が開催されること、そしてこの両者におけるさまざまな目標達成に向けて、またプロジェクトを実施する手段として「資金調達」が大きな課題となっているからです。

 

ジラルダン開発大臣は、特に航空券連帯税について、「フランスでも導入時にはさまざまな抵抗があったが、その影響を検証するとともに、税の使い途を国民にしっかり説明したことによって賛同を得てきた。日本でも、ぜひ透明性が確保される制度を設計して、国民の理解を得られるよう努力をしてほしい」と述べ、エールを送ってくれました。

 

議連側からも、衛藤会長が「皆で力を合わせ、国民世論を喚起しながら国際連帯税の導入に向けて一層努力していきたい」と決意を述べて、会を終了しました。短時間の会合でしたが、大変有意義な意見交換ができたようです。 【情報提供:石橋通宏事務所】

FTT国際電話会議:国連開発資金会議(FfD)プロセスについて

ご承知のように、本年2015年は国連において歴史的と言ってよい二つのイベントが開催されます。ひとつは、ポストMDGsである持続可能な開発目標(2015開発アジェンダ)が採択される年であり、もうひとつは2020年以降の世界の気候変動・温暖化対策の大枠を決める年です。

 

現在持続可能な開発目標の方は昨年中に17の目標が立てられ(下記「…オープン・ワーキング・グループの提案」参照)、今年に入って(1)9月の国連サミットで採択すべき目標についての政府間交渉、ならびに(2)上記目標を達成するための資金調達についての交渉、が並行的に行われています。

 

◎持続可能な開発目標に関するオープン・ワーキング・グループの提案(日本語)

 

この(2)の資金調達の交渉ですが、7月に第3回国連開発資金会議(FfD3)が開催され、そこで合意される成果文書作成に向けて、1月、4月、6月と準備会議が行われていきます。

 

さて、今回みなさまに送る「FTT国際電話会議:国連開発資金会議(FfD)プロセスについて」(2月25日)ですが、これは金融取引税(FTT)を求める国際的な市民グループがFfD3、並びに気候変動会合(COP21パリ会議)に向けて、現状分析と何をなすべきかについての議論の議事録です。

 

これまでFTTを主導してきた欧州の市民社会が欧州11カ国FTT実施に向けての活動に時間が取られ、FTTを含む革新的資金メカニズムを盛り込んでいく大きな機会である国連イベントへの対応が遅れていましたが、ようやく動き始めました。電話会議参加の顔ぶれをみますと、FTT推進グループをはじめ、財団、研究所、労働組合など幅広く参加しているようです。どうぞ議事録をお読みください。

 

◆「FTT国際電話会議:国連開発資金会議(FfD)プロセスについて」を読む⇒ PDF

 

議事録の方ですが、いろんな専門用語も飛び交っていますが、FTTや革新的資金メカニズムを求めている国際的な市民社会グループがどのような対応をしようとしているのか、全体のトーンを知っていただければと思います。

 

なお、この1~2年議論されてきたポスト2015開発アジェンダについて統合した国連事務総長の報告書が昨年12月に公表されています。これもぜひ目を通していただくと、今後の資金問題を含むSDGs/ポスト2015開発アジェンダ議論に役立つと思います。

 

◎事務総長統合報告書(The Road to Dignity by 2030)

「2030年、尊厳への道:貧困を終わらせ、全ての人々の生活を変革し、地球を守る」(日本語

 

◆写真は、第2回国連開発資金会議:「モンテレイ合意の実施を評価するための開発資金源に関するフォローアップ国際会議」(2008年11月ドーハ)に向け、開発資金のための金融取引税(当時は通貨取引税)を求める国際NGOワーキンググループ「開発資金のための通貨取引税キャンペーン」のロゴ。“DOHA2008:THE TIME IS RIPE!(機は熟した!) 0.7%ODA+0.005%CTT”

 

 

【速報】本日のドイツ紙に金融取引税の税収試算報道=450億ユーロ

 キャプチャ

 

本日ドイツの有力な日刊紙である“Suddeutsche Zeitung”(南ドイツ新聞)にEU11カ国がFTT(金融取引税)を導入した場合の、ドイツの税収見込みの記事がトップページに載っています。

 

Finanzsteuer konnte 45 Milliarden Euro bringen

(金融税は450億ユーロの税収をもたらす)

 

この税収試算は、有力なシンクタンクであるドイツ経済研究所(DIW)が社会民主党により「EU11カ国のうち4大経済大国(ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)にもたらされる税収見込みの調査」を委託され、その報告書によるものです。

 

ちなみに、記事の中に、2012年10月に国際連帯税フォーラムが主催した国際シンポジウムにスピーカーとして参加していただいたカーステン・ジーリング議員のコメントも載っています。

 

このDIWの報告書について、ドイツのNGOから連絡が来ていますので、詳細については後日報告します。

 

 

 

【ご案内】講演会:ピケティ『21世紀の資本』と資本主義の未来

トマ・ピケティ教授の来日と各メディアの紹介ぶりはまるで台風一過のようでしたが、やや落ち着いたところで本田浩邦先生を講師にお招きして下記の講演会を開催します。ふるってご参加ください。

 

                     講演会:「ピケティ『21世紀の資本』と資本主義の未来」

 

・日時:4月12日(日)14:30~16:30

・会場:自治労会館2F会議室

    アクセス:http://www.jichirokaikan.jp/access.html 

・参加費(資料代):500円

・定員:45人

・申込み:「講演会参加希望」ならびにお名前、所属(あれば)をお書きの上、次のアドレスから申込みください。     info@isl-forum.jp 

◎講演:本田浩邦・獨協大学経済学部教授

   *先生はNHKEテレで6回に渡り放映された「ピケティの白熱教室」に資料提供ということで参加されました

 

ピケティ『21世紀の資本』の特徴は、膨大な歴史的データで格差・不平等を検証していることです。その上に立って理論的根拠を示すとともに、格差是正のための政策提言を行っています。

 

前者が「r(資本収益率)>g(経済成長率)」理論であり、後者はグローバルな累進資本課税の提言です。今回は、主に「r>g」で表わされるピケティ理論の核心を本田先生に分かりやすく語っていただきます。

 

「r>g」を導くためには、次の2つの法則の理解が必要となります。

 ・資本主義の第一基本法則:

  α(国民所得に占める資本(収益)の割合)=r(資本収益率)×β(資本所得比率)

 ・同 第二基本法則:

  β(資本所得比率)=s(貯蓄率)/g(経済成長率)

 

ともあれ、「r>g」がさらに開き、格差・不平等が拡大するとどうなるでしょうか。「20世紀初頭の極端な不平等は…第一次世界大戦に結び付いた。今再びイスラムをめぐる問題や極右勢力の台頭などがクローズアップされているのは、偶然ではない」(週刊東洋経済、インタビュー)とピケティ教授は語っています。いわば資本主義の未来について予言しているわけですが、格差・不平等の拡大は何をもたらすのか、このことについても考えてみたいと思います。

 

なお、ピケティ教授のもうひとつの重要な提言である「グローバルな累進資本課税」の問題については次の機会に取り上げていきます。世界と日本の格差・不平等問題に関心のある方はぜひご参加ください。

 

 

・・・

【主張】世界の貧困・格差とグローバル連帯税=NL第10号発行

本日『News Letter 国際連帯税・金融取引税』第10号を全国会議員に対して配布してきました。第10号のメインの主張は、以下の通りです。

 

いまイスラム国(IS)のテロや、中東からそして欧州・米国から同国へ戦闘員として参加する者が後を絶たないなど深刻な事態が起きています。こうしたテロの背景には、中東・アフリカの貧困や格差があり、欧州では移民たちへの格差や差別があると、多くの識者が指摘しています。

 

かつて、2001年ニューヨークで9.11同日テロがあり、この時もテロの背景として貧困・格差が問題となり、翌2002年国連開発資金会議では米国や欧州がODA(政府開発援助)の増額を決定しました(日本は時代に逆行し10%削減)。この国連会議は、2015年までに「世界の絶対的貧困を半減する」等のミレニアム開発目標(MDGs)実現のための資金会議でした。

 

そして2015年。確かに1日1.25ドル以下で生活する絶対的貧困層の「半減」は、途上国の努力と先進国からの支援で、2010年の段階で実現しました。が、1日2ドル以下で生活する貧困層は未だ27億人もおります。そういう中で、本年9月の国連サミットではMDGsに替わる2030年を期限とする目標=ポストMDGs/2015開発アジェンダが採択されます。

 

これに先立ち7月には第3回国連開発資金国際会議がアジスアベバで開催されますが、この15年の経緯を見ると、先進国の公的資金であるODAが決して十分でなかったことが証明されています。

 

とするならもうひとつの公的資金であるグローバル連帯税(航空券税や金融取引税など)が求められます。テロ等は力だけで抑えきれるものではありません。途上国の貧困や格差を是正していくため、ODAや連帯税など公的な資金援助を含む自立のための支援が今こそ求められています。

 

●「News Letter国際連帯税・金融取引税」第10号を読む⇒ PDF

 

◆ロゴは、“2015 人々と地球のためのグローバルアクションの年”という国連のロゴ

 

 

 

 

【ご案内】3.22民間税調第2回シンポジウム「消費税を考える」

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民間税調第2回シンポジウム「消費税を考える」のご案内です。民間税調ができる限り市民的目線に立って、分かりやすく議論をリードしていただくことを期待します。

 

また、23日の朝日新聞の社説で民間税調のことを取り上げているので、紹介します。同社説では“「民主党の別動隊」といった声が聞こえてきそうだが…”との記述があります。そういう声が専門家やメディアの中に根強くあるのでしょうか。

 

が、要は様々な税制改革を納税者のものに、国民(市民)のものにしていこうと努力するかどうか、かと思います。

 

 

                 民間税制調査会第2回シンポジウム:「消費税を考える」

 

  ◎日 時:2015年3月22日(日)午後1時~4時30分

  ◎会 場:青山学院大学17号館4階17410教室

                        *キャンパスマップ:         

        http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html

  ◎参加費:無料

  ◎申込み:下記のアドレスにお名前、所属(あれば)、「第2回シンポ参加希望」とお書きの上お送りください。

                           *アドレス: yoshimikimiki@gmail.com

  ●シンポジウム

   ・司 会:水野和夫 (日本大学教授)

   ・パネラー:青木 丈(税理士、千葉商科大学大学院商学研究科客員教授)

      志賀 櫻( 日弁連税制委員会)

      田中秀明( 明治大学教授)

      三木義一(青山学院大学教授)

      峰崎直樹 (東京工業大学非常勤講師)

 

本年10月に予定されていた消費税の引き上げが延期され(8%→10%)、17年4月から導入する、というのが政府の方針です。が、ちょっと待って!

 

現在「税制改革は、…与党、とりわけ自民党の税制調査会が財務省とやりとりしつつ具体案を決める。…肝心の納税者は蚊帳の外と言っても過言ではない」(下記朝日新聞社説)という状態になっており、この間の消費税論議も例外ではありません。

 

民間税調では、様々な税制論議を納税者のものと、すなわち国民のものとすべく奮闘していくということで、今回は国民的関心の高い「消費税」に的を絞りシンポジウムを開催するとのことです。

 

ところで、先の民間税調立ち上げの時の基調報告で、この消費税に関し5つの論点があることが報告されています。すなわち

 

1)10%への引上げの可否

2)その場合における軽減税率の導入による逆進緩和策の可否

3)(導入時=歳入時対策ではなく:注)歳出面での逆進性緩和策(給付付き税額控除を含むがそれには限らず社会保障・文教の歳出面一般、また過重な負担を低所得層に強いる社会保険料)によるべきか否か

4)インボイス制度の導入の可否

5)社会保障・インボイスに伴う番号制の要否の5点です

 

というものでした。

 

私たちの生活に深く影響している消費税も、こうみるとなかなか専門的で分かりずらいものがあります。民間税調ができる限り市民的目線に立って、分かりやすく議論をリードしていただければと思います。納税者としてぜひシンポジウムに参加し、議論をまき起こしましょう。

 

 

【朝日新聞】(社説)民間税調 育て、モノ言う納税者

2015年2月23日

 

 「民間税調(税制調査会)」が発足した。納税やそれに伴う紛争にかかわる税理士や弁護士、税制を研究する税財政分野の学者らのほか、一般の市民にも門戸を開き、皆で議論しながらあるべき税制を考えようという珍しい組織である。

 

 今月上旬の初会合で決めた設立宣言では、真っ先に「格差を是正し、分厚い中間層を形成する税制と財政支出」を掲げた。

 

 中心となる5人は、民主党の元国会議員をはじめ、同党の政権時に政策づくりに加わった人が多い。その主張もあいまって「民主党の別動隊」といった声が聞こえてきそうだが、ここは一般市民の参加を求める姿勢、言わば「モノ言う納税者」を促すことの意義を考えたい。

 

 税制改革は、財務省が選んだ「有識者」からなる政府の税制調査会が理論面を検討し、与党、とりわけ自民党の税制調査会が財務省とやりとりしつつ具体案を決める。その主役は、力の衰えをささやかれながらも、税制通を自任する一部のベテラン議員だ。肝心の納税者は蚊帳の外と言っても過言ではない。

 

以下、省略。

欧州11カ国FTT:5月~6月のEU財務相会合で最終合意か?

2月12日に行われた「金融取引税(FTTs)に関する市民社会グループの国際電話会合」の議事録が届きましたので、報告します。

 

欧州11カ国FTTですが、5月または6月のEU財務相会合で最終合意に至るのではないか、というのがNGO側の分析です。既報通り、昨年末までにまとまるはずであった共通の制度設計がとん挫してしまいました。が、ブレーキ役となっていたフランスが方針を転換したことにより、制度設計が進んでいるようです。

 

針の転換とは、「最初は株取引への課税に限定して行う」というものから「株だけでなくデリバティブを含む金融取引に幅広く課税する」という(元々の)欧州委員会提案に沿ったものに変わったことです。

 

また、3月10日前にはシンクタンクのドイツ経済研究所(DIW)がFTTの税収試算(ただしドイツ、フランス、イタリア、スペインの分)を公表するということで、たいへん興味がありますね。

 

あと米国でのオバマ大統領の一般教書へFTTを盛り込ませようとした活動や議会の動きも興味深いところです。以下、報告します。

     金融取引税(FTTs)に関する市民社会グループの国際電話会合  
                                               2015年2月12日
             報告: Sarah Anderson(Institute for Policy Studies; IPS)

 

1)議論の現状

 

●報告―ヨーロッパ:David Hillman, Stamp Out Poverty

 

フランスが1月にFTTに関する弱々しい提案を取り下げると、EU-FTTの導入にコミットしている11カ国の政府間協議の最後のフェーズにまさに勢いがついた。今やすべてのデリバティブ(を課税対象とすること)が議論の俎上に戻ってきた。債券については各国の負債をめぐる懸念があるため、ソブリン債(訳者注:国債など)への課税はないだろうと我々は考えている。とはいえ、大いに広範な課税ベースとすべきである。

 

また我々は、11カ国の政府が2段階プロセスの計画を取り下げたと考えている。彼らはもはや可能な限りもっとも広範な課税への合意を目指し、それを単一のプロジェクトとして前進させようとしている。もし政府間交渉が手に負えないほど困難であるとわかった場合にのみ、各国は2段階プロセス計画へと回帰することになるだろう。

 

もう一つの主要な前進は、11カ国グループにおける小国の力が増大していることだ。なぜフランスが自身の立場を変えたのか、その一つの理由は、フランス提案が十分な税収をもたらさないために小国らが抵抗したからであったことは今や明らかである。

 

ポルトガルは非公式な形で、技術的議論の調整役となっていくだろう。これは良い知らせで、その理由の一つは、ポルトガルがFTTに非常に前向きな租税専門家を常駐代表として(EUの本拠地である)ブリュッセルに在籍させているからだ。この専門家は今後主要な役割を担っていくことだろう。オーストリアも非公式に政治的な調整役を担っていく見込みだ。

 

今後のスケジュールについて、我々は技術的な取り決めに約3ヶ月ほどかかるだろうと考えている。そして、おそらく5月、あるいは遅くとも6月のEU財務相会合で、最終合意が発表されることになるだろう。我々は、7月中旬のエチオピアでの国連開発資金調達会合までには、11カ国の政府が税収配分についても何らかの合意に達するよう望んでいる。

 

3月10日のECOFIN(EU財務相会合)の前には、シンクタンクのドイツ経済研究所(DIW)がドイツ社会民主党により委託された報告書のなかで、EU11カ国のうち4大経済大国(訳者注:ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)にもたらされる税収試算を公表する予定だ。我々はその調査結果を広く拡散させるよう計画すべきである(アメリカにおいても、我々は税収試算に取り組む政策決定者へその結果を確実に知らせていく)。

 

●報告―アメリカ:Nicole Woo, Center for Economic and Policy Research

 

前回の電話会合にて、中道・主流派民主党員と見なされているヴァン・ホーレン(Van Hollen)議員が、民主党員で下院議長のナンシー・ペロシの支持のもとFTTに関する提案をしたことを報告した。それ以降ヴァン・ホーレンは、法案提出に向け支持を獲得すべく、その他多くのメンバーと会合をもってきた。約80名が所属する革新党員集会は、自身が提出する予算案にFTTを採用する予定であり、その提案は通常3月の第2週に発表される。アメリカのキャンペーン担当者らは、同提案について広く報道されるよう方法を検討しているところだ。

 

パブリック・シティズン(訳者注:米国の有力なNGO)は、オバマ大統領の予算案にFTTを含めるよう求める署名を集めた。タイミングの良さもあいまって、この署名活動は主として教育的効果をもち、短期間で2万人の支持者を確保した。結果オバマは予算案にFTTを含めず、我々もそれを期待はしていなかったが、オバマは大銀行の報酬に関する提案を盛り込んだ。これらの提案について、我々は代替策ではなく補完的な施策として検討すべきだと主張している。

 

<訳者注:上記の点については下記の注参照>

 

議会職員は、(予算)法案の税収試算を担う両院合同税制委員会(Joint
Committee on Taxation: JCT)と共に作業を進めており、さまざまな税率の分析に着手している。(それに対し)ドイツの研究は大いに役に立つだろう。同委員会の試算(JCT score)なしには、法案が議会で真剣に検討されることはほとんどあり得ない。

 

Ken Zinn(NNU:全米看護師組合)によれば、ロビン・フッド税キャンペーンは引き続きエリソン議員の法案(もうひとつのFTT法案)が迅速に再提案されるよう推進している。またZinnは、ヴァン・ホーレンがFTT提案を中産階級の減税を含む提案パッケージの一部として提示しているのは問題だと指摘した。

 

2)エチオピアで7月に開催される国連開発資金調達会議に向けたプロセスにおけるFTTの推進

 

サラ・アンダーソンは、このプロセスにてFTTが扱われるよう働きかける集中戦略を検討するため、2週間以内に会合を開催する予定だ。もし同会合に参加したい方、あるいは参加すべき者を推薦したい方がいれば、サラ(sarah@ips-dc.org)まで連絡を。

 

会合では、以下の異なる関わり方について検討する予定。

 

1.インサイダー:どのように最終宣言にFTTを盛り込むよう推進できるか、あるいは公式的なプロセスでFTTに関する話題を取り上げる他の方法、その他すべきことなどを検討。

 

2.準インサイダー:アディスにおいてFTTに関する市民社会イベントを計画。

 

3.アウトサイド:このプロセスに直接的には関係しない人々に、FTTやFfD(開発資金調達)とのつながりをどのように持たせることが出来るか。メディアやその他のコミュニケーション・ツール、あるいは政策決定者の参画に関する戦略的機会、要点など(の模索・検討)。

 

次回会合:3月12日AM9時

 

<注>オバマ大統領の銀行課税案
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NIHZ916TTDS401.html
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM18H0C_Y5A110C1FF8000/
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-02-17/2012021707_01_1.html
http://blog.knak.jp/2015/01/post-1500.html

                                                                                                                                 (翻訳:K.Tsuda)

 

◆写真は、ユーロネックスト(証券取引場)・ブリュッセル

西村内閣府副大臣の国際連帯税発言>ピケティ・シンポジウム

キャプチャ2

 

1月29日朝日新聞主催のピケティ氏来日シンポジウムの動画が同新聞電子版で観ることができるようになりました。

 

それであらためてシンポジウムのパネラーの一人であった西村康稔内閣府副大臣の国際連帯税に関する部分の発言をまとめます。

 

最後に、(ピケティ教授の)資産課税、累進的資産課税のご提案ですが、これは総理も国会で答弁されているように、なかなか現実的には難しいところがあります。わたしはこの議連(国際連帯税創設を求める議員連盟)にも入っているが、国際連帯税(というのがある)。例えばフランスが行っている航空券税。ビジネス・ファースト席で高い賦課金をかける。金融取引税、これもフランスで行われているが、高頻度取引や時価総額の大きい企業の株取引にかける。

 

一応これも国際協調しないと、抜け駆けで国は有利になるとか、また航空業界や金融業界も反対するでしょうし、調整が要ります。

 

とくに所得の高い人が使う(航空券の)ファースト席、株式の高頻度取引、こういうところに国際的に協調して税をかける。そしてこれを貧困層の教育に使う。こうした構想はありえると個人的にはずっと思っていて活動を進めています。こういったことを国際協調の枠組みの中で検討を進めたらどうかと思っています。

 

( )内は投稿者が挿入

 

以上です。