巨大IT企業=プラットフォーマーへの逆風>アマゾン・ドットコムは税金払え

フェイスブックによる5000万人にも及ぶ個人情報の流出・不正問題を機に、巨大IT企業の株価が急落しましたが、かろうじてアマゾン・ドットコムがそこから免れていました。しかし、ここにきてトランプ砲もあり、どっと急落(アマゾンは法人税を払えとのシンゾー砲がほしいところですが)。下記日経新聞を参照ください。

 

いずれにせよ、巨大IT企業=プラットフォーマーへの規制強化はもとより、「情報(含む管理対策)」を私企業に独占させるのではなく、社会化が必要です。将来は「情報庁」のような組織が必要になってくるかも。

 

それにしても、アマゾンの配送センターは、AIによる自動化が主でそれに人間が使われているというように過酷な職場であるようで、欧州では労働争議が発生しています。

【ロイター】アマゾン物流拠点でブラックフライデーにスト、イタリアとドイツ

 

 

【日経新聞】アマゾン逆風 トランプ氏があぶり出す「暗部」

 米IT(情報技術)大手に吹く逆風がアマゾン・ドット・コムにも向かい始めた。28日、米ネットメディアがトランプ大統領がアマゾンを狙った課税強化を検討していると報道。株価は1時7%下げ、約500億ドル分の時価総額が消えた。圧倒的な強さで産業界を恐れさせた「アマゾン効果」が「トランプ効果」の前で揺らいでいる。
…中略

 

 もともとトランプ氏は自身に厳しい論調のワシントン・ポスト紙を保有するアマゾンのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)を嫌っているとされる。2017年夏にはトランプ氏が自らのツイッターでアマゾンを「まじめに納税している小売店の仕事を奪っている」と発言。同氏のアマゾンたたきはIT業界ではもはや常識扱いだった。

 

 今回がいつもと違うのは投資家の反応だ。ニュースの真偽が明らかにならないまま売りが殺到した。昨年のトランプ氏のツイート時には60億ドルで済んだ時価総額の逸失は今回は約500億ドルにのぼる。フェイスブック問題でIT企業への厳しい見方が強まる中、いまやアマゾンもその流れから逃れられない。
…中略

 

 同社の配送センターに足を踏み入れた人は、まるで車の工場のように自動化された空間に驚くはずだ。荷物が入った棚と一体化した人工知能(AI)制御の移動ロボットが次々と従業員のもとに走りよっては去り、仕分け作業が極力効率化されている。箱詰めもかなりの作業が機械化されている。

 

 アマゾンはAI研究を進めてさらなる自動化を追求している。年末の需要期は10万人単位で臨時に人を取るが、基本哲学は無駄の排除だ。本社スタッフですら「能力があれば最高の職場だが、そうでなければ社内にはいられない」(元社員)とされる厳しい競争環境下にある。

 

 昨年以降、トイザラスの破綻や地方のショッピングモールの閉鎖が相次いでいるが、そこで職を失った人たちがアマゾンに吸収されるものでもない。
…中略

 

 アマゾン株の急落や足元のフェイスブックへの逆風は、先端を行くIT企業にも「暗部」があるということに人々が気づき始めたことの表れといえる。自動運転では18日、ウーバーテクノロジーズが死亡事故を起こした。業界内では知られていた「テクノロジーは完全ではない」という暗黙のリスクが表に出てしまった。…後略

国会の論戦から:国際観光旅客税と国際連帯税

国際観光旅客税は26年ぶりの国内での新税創設となりますが、国民的議論もないどころか(少なくともパブリックコメント募集はやるべきであった)、自民党内でも十分な議論なく30年度税制改正大綱に盛られ、そして今国会に上程されています。

 

この税の法案は、衆議院で可決され、現在参議院に送られていますが、森友文書改ざん問題で審議が止まっています。

 

●衆議院での質疑/野田佳彦議員(無所属の会)などが追及

 

ところで、衆議院の財務金融委員会の審議では(2月22日、同月28日、3月2日)、次の議員の方たちが国際連帯税について言及しました。野田佳彦議員(無所属の会)、宮本徹議員(共産党)、岸本周平議員(希望の党)が法案反対の立場で連帯税について発言しました。また、斉藤鉄夫議員(公明党)は法案賛成の立場ですが連帯税に言及しています。

 

また、2月13日の衆議院本会議の代表質問で金子恵美議員(無所属の会)が真っ向から国際連帯税について発言されました。

 

ここでは、2月28日の野田佳彦議員の質疑、同月13日の金子恵美議員の発言を紹介します。とくに、前者の質問に対し星野次彦・財務省主税局長が答えていますが、一言でいえば、「外務省が具体的な制度設計を出していない、それを出してもらったら検討する」というものでした。これに対し、すかさず野田議員は「外務省から具体的な制度設計の提案があれば検討するということですね」と念を押し、一方で国交省や航空業界の国際協力・協調政策への非協力を批判しています。以下、野田議員と金子議員の質疑・発言を紹介します。

 

●実際の質疑/「最初から国交省や航空業界は反対だったが…」

 

<2018年2月28日 衆議院財務金融委員会>
○野田(佳)委員 (野田佳彦議員・無所属の会)
 … そもそも、国境をまたぐ人の動きとかお金の動きに課税をするというやり方は、考え方としてはありました。それは国際連帯税であるとか、あるいは国際航空券税など、そういう議論はありました。2009年ぐらいからこういう提案があって、 旧民主党の時代では、これは税調の大きな議題として議論をし、そして税制改正大綱の中には検討項目としていつも入っていたというふうに思うんです。
 それが、残念ながら、平成25年の税制改正大綱からすっぽり抜け落ちて、6年連続抜け落ちていますね。抽象的な表現では、こういう国境を越えたものに対する課税のあり方についての必要性みたいな議論は書かれていると思うんですが、いわゆる国際連帯税みたいなものは、項目としては消えました。
 やはり、国境を越えた動きに対して課税をするというのは、最終的には、地球温暖化対策であるとか、感染症対策とか、そういうグローバルな課題で国際協調の路線の中でやらなければいけない施策があったときに考える税目だと思うんですね。これは、私は、依然として議論としては必要だというふうに思っているんですが。
 そこで、まずお尋ねしたいんですけれども、この国境を越える地球規模の課題の解決に税収を充てるという国際連帯税、国際航空券税の議論は、 現在、今どうなっているんですか。御説明をいただければと思います。

 

○星野政府参考人(星野次彦・財務省主税局長)
 お答え申し上げます。
 御指摘の国際連帯税、一般的には、御指摘のとおり、感染症対策、また貧困問題、環境問題等々、地球規模の問題への対策のための財源確保を目的とした税ということで議論をされてきたと認識をしております。
 先ほど御指摘がございましたとおり、民主党時代の税制改正大綱に載っていたりとか、また、税制抜本改革法の第七条第七号におきまして、「国際連帯税について国際的な取組の進展状況を踏まえつつ、検討する」とされておりまして、この導入に当たっては、課税の目的、また範囲、効果、執行可能性などの点にも留意しつつ検討していく必要があると考えております。
 これまで、毎年度の税制改正プロセスの中で、外務省から、国際連帯税に係る税制改正要望の提出を受けてきたところではございますけれども、具体的な制度設計の提案については提案をいただいていないという状況が続いておりました。
 本件については、まずは担当省でございます外務省におきまして、諸外国の事例等も参考にしつつ、具体的な制度設計の案を検討していただき、その上で財務省としても検討していくという手順 を踏む必要があると考えております。

 

○野田(佳)委員
 外務省から具体的な制度設計の提案があれば検討するということですよね。
 外務省の努力も必要になるかもしれませんけれども、比較的、この国際連帯税については、はなから国交省とか航空業界は反対の意見が強かったと思います。いわゆる今回の出国税の形式と同じなんですよね。形式は同じなのに、いわゆる国際協調路線で何かやることについては、業界の反対もある、国交省も反対をされる。今回の観光立国に向けての政策だと、同じ出国税なのに、何かするすると出来ちゃう。非常に私は違和感を感じているということをまず申し上げたいというふうに思います。…以下、省略

 

<2018年2月13日衆議院本会議>
○金子恵美君 無所属の会の金子恵美です。

 

 ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案及び国際観光旅客税法案につきまして、会派を代表して質問いたします。
 …国際観光旅客税、いわゆる出国税については、観光立国実現に向けた観光基盤の拡充強化を図るとの看板は美しく見えますが、本来、地方経済の活性化等の観点から、観光インフラや観光資源の整備促進のための財源は一般財源に求めるべきです。
 出国税など、国境を越える人や金融資本の移動にかけられる税は、これまでの国際連帯税の議論や諸外国の導入実績等も踏まえ、主として、気候変動や感染症対策などの国境を越えた地球規模課題への対策にこそ使われるべきと考えます。
 1992年に導入された地価税以来の新税であるにもかかわらず、十分な検討なく取りまとめられた国際観光旅客税は、なぜ日本人出国者にも負担を求めるのか、なぜ出国一回につき千円という水準なのか、なぜ来年一月七日から適用という性急過ぎる時期が設定されているのか、全くわかりません。総理の明確な説明を求めます。

米facebookスキャンダル、個人情報米大統領選挙に利用?>情報の「社会化」必要

フェイスブックスキャンダル図解キャプチャ

 

米欧では、このような不正・スキャンダルがあった場合政府・議会の対応が早いですね。それに比べ我が国は…。

 

で、米facebookスキャンダルですが、簡単に言いますと「米フェイスブックが保有する5000万人超のユーザー情報が不正に外部に流出し、それが英国の選挙政策コンサルタント会社に渡ったが、その会社が2016年の米大統領選挙でトランプ陣営についたのでユーザー情報が使われたのではないか」というものです。

 

この事実が発覚してから、米国でもフェイスブックなど「大量のデータを駆使し存在感を増す『プラットフォーマー』に対する規制強化の動きが」加速しそうだ、という事態になっているようです(下記、日経記事参照)。一方、欧州では「一般データ保護規則(GDPR)」が2016年4月に制定され、この規則に違反すれば、最大で年間売上の4%に相当する罰金を科されるとのこと(下記、ロイター記事参照)。また、英国では選挙政策コンサルタント会社に対して、英当局が捜索令状の手続き着手したとのこと(下記、ブルームバーグ記事参照)。

 

金融・資源資本主義からIT(情報)・金融資本主義へ

 

ところで、大量の情報を保有するプラットフォーマーですが、それらのIT企業が今や世界の株式時価総額ランキングのトップ10のうち、何と8つを占めるようになっています。①アップル(米)、②アルファベット(グーグル 米)、③アマゾン・ドット・コム(米)、④マイクロソフト(米)、⑤テンセント(中国)、⑥フェイスブック(米)、⑧アリババ(中国)です。

 

このIT企業のほかに、⑦バークシャー・ハサウェイ(保険・投資会社、米)、⑨JPモルガン・チェース、⑩中国工商銀行(中国)という金融企業がかろうじて占めています(いずれも2018年2月末現在)。

 

2008年の金融危機前の07年時点でのトップ10は、資源会社(3社)と金融会社(4社)が占めていまして、マイクロソフトが第3位で、トヨタが10位でした。

そういう意味で、経済のグローバル化のけん引役は今やITプラットフォーマーで、大量というよりはばく大な個人情報(フェイスブックで20億人)を所有し、広告や小売業の分野で独占化を進めており、何よりも税金を払っていません(または過少にしか払っていない)。

 

我が国でも個人情報保護に関して点検しておかないと不安ですね。また、ITプラットフォームは、よく言われていますように、半ば以上公共的なものになっています。つまり、私企業にだけ扱わせるのではなく、何らかの社会化(システム)が必要です。当面、税金も払わず独占化を強めるITプラットフォーム企業を監視していきましょう。

 

【日経新聞】データ独占に募る不信 フェイスブック、米で規制強化論 

 【ラスベガス=中西豊紀】米フェイスブックが保有する5千万人超のユーザー情報が不正に外部に流出した。自社の管理が及ばない第三者の規約違反だとしてフェイスブックは責任を否定するが、知らぬ間に個人情報が悪用されうるデータ管理のもろさを露呈した。大量のデータを駆使し存在感を増す「プラットフォーマー」に対する規制強化の動きが米国でも加速しそうだ。

 

…中略…

 

 フェイスブックに過失はないのか。今回の問題点はまず、日本や欧州には個人情報保護に関する厳しいルールがあるが、米国には包括的な法律がないところだ。企業は個別の契約などで個人情報の扱いについてを定めることになっている。

 

 ただ調査目的でのデータ取得について契約した教授が、契約に違反して外部に流用した。東京大学の生貝直人客員准教授は「フェイスブック自身に悪意がなくても、悪意ある第三者が関わったときに何が起きるかを考える責任が同社にはある。無防備だったとの批判は強まる」とみる。

 

 データが大統領選で利用された可能性がある点も問題だ。本人も意識しないうちに特定候補への投票を誘導されるような情報操作を受けることについて、個人情報保護に詳しい板倉陽一郎弁護士は「米国では広い意味でのプライバシー侵害として社会問題化している」と指摘する。

 

 巨大なデジタル企業が膨大なデータを抱え、周辺企業がそれを利用する「データ経済圏」が増殖する。今回の問題はその世界で生き始めている企業や個人にとって大きな分水嶺となる。

 

【ロイター】焦点:個人データ保護規制、フェイスブックの「アキレス腱」に

 

【ブルームバーグ】ケンブリッジ・アナリティカ、英当局が捜索令状の手続き着手

 

★図は、上記日経新聞記事より

金融バブル崩壊は「もし」ではなく「いつ」起きるか!>日経コラムより

先の2月上旬の米国株相場の暴落により、主にVIX(恐怖指数)などのボラティリティ(変動率)に関連する商品への投資(投機)家が巨額の損失を被りましたが、金融市場そのものを揺るがすほどではありませんでした。

 

ところが、下記の日経新聞のコラム[一目均衡]にありますように、10年間にわたる世界の中央銀行による超金融緩和政策による超過剰流動性の存在は、投機家をしてリスクを度外視した金融商品へと群がり金融バブルを生じせしめています。

 

・格付けが投機的水準の企業が発行する「ハイイールド債」に4340億ドル(48.6兆円)弱発行
・低格付け企業への融資である「レバレッジドローン」に1.3兆ドル(145.6兆円)超に 等

 

もしこれらの債券などが不払いとなり、連鎖的に企業倒産等が生ずればどうなるか。現在米国の経済は絶好調ですからすぐには“企業の連続倒産⇒金融セクターの毀損”というサイクルにはならないでしょうが、10年もブームが続いていますので景気循環から言って、そろそろやばくなってきています。

 

それで、このコラムの結論は、みずほ総合研究所の長谷川克之市場調査部長の「金融市場は再びバブルの様相を示している。その崩壊は『イフ(もしかしたら)』ではなく、『ホエン(いつ)』の議論ではないか」という言葉を紹介し、「危機から10年を経て、こんな声が少しずつ市場に増え始めている」としています。

 

それにしても、このまま行きますとバブル崩壊⇒金融システム危機となりいつか来た道となります。経済と政治のエリートたちは1997年のアジア通貨危機、2008年のリーマンショックによる恐慌的危機(日本独自では1991年バブル崩壊がありました)を経てもなお、強欲金融主義にどっぷりと浸ったままのようです。バブル制御のための金融取引税をしつこく粘り強く要求する所以です。

 

【日経新聞】[一目均衡] 危機後10年、リスク随所に  証券部次長 山下茂行
2018/3/20 

…前略…
 リスクを度外視し、少しでも利回りの高い金融商品に投資家が群がる状況は危機前をほうふつとさせる。当時は信用力の低い住宅ローン「サブプライム」を組み入れた複雑な証券化商品が飛ぶように売れた。
 足元の過熱ぶりは、いくつかの面で当時を上回ってきた。
 格付けが投機的水準の企業が発行し、利回りが比較的高い「ハイイールド債」は、17年に世界全体で4340億ドル弱発行された。危機前のピークである06年(約1840億ドル)の2.4倍だ。
 低格付け企業への融資である「レバレッジドローン」は米国での実行額が17年に前年比で一気に5割近くも増え、1.3兆ドル超になった。こちらは危機前ピーク(07年の7100億ドル)の1.8倍強だ。
 高リスクの「コベナンツ・ライト・ローン」の比率も上昇している。財務の悪化状況に応じて前倒し返済を義務付ける財務制限条項が緩い半面、利率が高いのが特徴だ。
 17年は、米国でのレバレッジドローンのうち5割近くをコベナンツ・ライトが占めた。危機前はせいぜい1割程度だった。
 これらの理由は明らかだ。危機後に世界の中央銀行が過去最大の金融緩和に動き、先進国の国債の利回りを極端に押し下げたからだ。

□  ■  □

 米10年債利回りは16年に1.4%程度まで低下した。危機前も当時としては低金利といわれていたが、それでも4~5%程度を保っていた。
 先進国の国債は世界の投資家の「主食」である。その利回りが要求水準にとどかなくなれば、飢えた投資家は毒性の高い金融商品にも手を出すようになる。低金利はリスク感覚をいとも簡単に破壊する。
…後略…

国際観光旅客税(出国税)への批判続くー特定財源化への懸念など

27年ぶりの新税となる国際観光旅客税法案(出国税)は、去る2月2日に平成30年度税制改正法案とともに国会に上程。衆議院財務金融委員会で審議し、3月2日同委員会において可決され、 3月9日衆議院本会議で賛成多数で可決されました。現在参議院へ送られていますが、「森友文書改ざん問題」で同院では審議が進んでいません。

 

ところで、国際観光旅客税(出国税)に関しては、1)道路特定財源のように予算が肥大化し無駄遣いとなる、2)受益と負担の関係が不明確、3)国境を超える活動への課税は地球規模課題に使用すべき等、という批判がなされています。

 

先週の週刊エコノミスト誌に佐藤主光・一橋大学国際・公共政策大学院教授が、上記1)と2)の立場から、国際観光旅客税を批判していますので紹介します。佐藤教授は、21世紀政策研究所(注:経団連の公共政策のシンクタンク)「あるべき税制に関する委員会」委員、「地方分権に関する基本問題についての調査研究会」委員(総務省・財団法人自治総合センター) 、内閣府・民間資金等活用事業推進委員会委員なども務めています。

 

なお、3)についてはこの間国会内の議論で、何人かの議員が取り上げていますので、別途紹介します。

 

 

●エコノミスト2018.03.20 
〔27年ぶり新税〕国際観光旅客税・森林環境税 “第2の道路特定財源”懸念も=佐藤主光

 

2018年度税制改正で新たな税「国際観光旅客税」の導入が決まった。この税は報道で出国税とも呼ばれた。国による新税はバブル期の地価税以来27年ぶりである。19年1月7日以降、訪日外国人客が日本から出国するとき、および日本人が旅行などで出国する際に1人当たり1000円を徴収することになっている。

 

…中略…

 

新税は国際観光旅客税だけではない。森林環境税(仮称)も創設されることになった。政府は創設理由を「パリ協定の枠組みの下における我が国の温室効果ガス排出削減目標の達成や災害防止等を図るため、森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から」と説明する。地方自治体が徴収している個人住民税の均等割り(一定額以上の所得がある場合に一律額で課される部分) に年額1000円上乗せされる形をとり、国の地方交付税・譲与税特別会計に払い込まれる。均等割りについては現在、東日本大震災(11年)後の「復興税」として1000円が課されているが、森林環境税は、この復興税が終了する24年度から課税される。森林環境税の税収は全額、「間伐や人材育成・担い手の確保、木材利用の促進や普及啓発等の森林整備及びその促進に関する費用」(18年度与党税制大綱)に充当すべく主に市町村に配分される。

 

◇受益・負担関係に疑問

 

これらの新税に共通して掲げられているのが税の「応益性」である。公共サービス・事業の受益者に一定の負担を求めることは公平にかなっているかもしれない。応益課税は課税の根拠を明確にすることで納税者の信認を得る上でも有用だろう。仮に、多くの納税者が受益を感じていないのであれば、対象事業を縮小して課税を縮減すればよい。ここでサービスの受益者=納税者は(1)高い税を払って受益するか、あるいは(2)低い税にとどめて受益を諦めるかを選択する。

制度上、国際観光旅客税は一般財源(一般会計)向けであるが、使途があらかじめ定められているという意味で目的税にあたる。実際、国際観光旅客税の導入にあたって、基本方針は「受益と負担の関係から負担者の納得が得られること」や「費用対効果が高い取り組みであること」を対象事業の条件に掲げている。財源は国家公務員の人件費などには充当せず、「無駄遣いを防止し、使途の透明性を確保する仕組みとして、行政事業レビューを最大限活用し、第三者の視点から適切なPDCAサイクルの循環を図る」ものとする。

 

しかし、国際観光旅客税を含む応益課税の実態は全く異なる。税の負担と受益の関係が定かではないことが多い。国際観光旅客税の場合、出国者が受益者であることが想定されているが、実際のところはどうだろうか? 例えば、基本方針が使途に掲げている「我が国の多様な魅力に関する情報」は日本人の出国者が受益するところではない。訪日客にしてもビジネスや国際会議などを目的としているのであれば、観光関連の施設・インフラを多く享受するとは考えにくい。そもそも、「受益と負担の関係から負担者の納得」(基本方針)を担保する仕組みが整っているわけではない。つまり、応益課税を建前にしても、実態は「取りやすいところから取る」ことになる。

 

◇予算査定逃れの手法にも

 

また、財源があることを理由に対象事業が膨張することが懸念される。つまり、財政需要(ニーズ)があるから財源確保するのではなく、財源があるから需要(使途)を拡大させかねない。その典型例が「道路特定財源」であろう。道路特定財源は自動車取得税、自動車重量税などに暫定税率を課して道路の整備・拡充に充てていた。08年度予算における道路特定財源税収の総額は約5兆4000億円に上っていた。しかし、利用ニーズの乏しい道路まで建設されたり、使途がミュージカル制作・上演など道路以外に広がったりしたという批判を受けて09年度に廃止され、暫定税率分は全て一般財源化された。

 

国際観光旅客税などについても政府は「無駄遣いを防止」するとしているが、財源を使い切るよう対象事業が際限なく拡大するかもしれない。森林環境税についても既に、30府県以上で 、個人住民税(均等割り)に対する500~1000円の超過課税として独自に導入が進んできた。こうした府県では屋上屋を架すことになり、そのままでは事業費が膨れ上がることになる。

 

観光基盤の拡充・強化であれ、森林整備であれ、それらを目的税=恒久的な財源でまかなうことは必須ではない。仮に国の重要な政策課題であり、「費用対効果が高い取り組み」と評価されるならば、他の政策・事業同様、毎年の予算編成の中で措置すればよいからだ。目的税の本音は国の財政状況が悪化する折、むしろ財政当局の厳しい査定を逃れることになるように思われる。恒久的な財源があると事業を続けたり、拡大させたりする格好の口実になりやすい。予算査定も甘くなりがちだ。政府は既存施策の財源の単なる穴埋めはしないとする。しかし、新規事業が新たな財源でまかなえるなら、既存施策の見直しも進まない。事業に優先順位を付けるにしても観光政策等の枠内であり、「部分最適」にとどまる。本来、国の予算配分は観光といった特定の分野にとどまらず、政策全体に目配りをしたものでなければならない。今後も財源を確保しやすい方法として、国際観光旅客税のような目的税は増えそうだが、財政がひっ迫する折に予算を分断させ、かえって、メリハリがあり効率的な、言い換えれば全体最適にかなった配分を損ないかねない。

 

(佐藤主光、一橋大学国際・公共政策大学院教授)

出国税と連帯税>(岩手日報)「出国税 一人占めしていいの?」

現在(3月2日)、国際観光旅客税(出国税)が衆議院財務金融委員会で議論されていますが、この税につき、岩手日報が論説コーナーで見解を述べていますので紹介します。

 

同論説では、「国内外の旅行客から集めたお金を日本が一人占めして使ってしまってもいいのだろうか」と問うていますが、租税法の大家である金子宏東京大学名誉教授も言うように、出国=日本の領土外での課税による収入は、原則的には国際的課題(感染症とか飢餓とか気候変動対策等の途上国支援)に使うべきでしょう。

 

 

【岩手日報・論説】出国税 一人占めしていいの?

 

 連日の熱戦に沸く平昌(ピョンチャン)冬季五輪、続くパラリンピックで多くの外国人観光客が韓国を訪れている。韓国を離れるとき、千ウォン(約百円)上乗せして航空運賃を払っていることはご存じだろうか。

 

 韓国人も含めて出国する国際線にかけられる航空券連帯税。2005年にフランスのシラク大統領が提唱し、フランス、韓国、チリのほか、カメルーン、モロッコなどのアフリカ諸国を含め十数カ国が導入している。

 

 税収は途上国のエイズ、マラリア、結核の感染症対策に使われている。フランスや韓国を訪れれば、意識しなくても少額ながら途上国支援をしていることになる。

 

 日本では外務省が2010年度以降、「伝統的な政府開発援助(ODA)だけでは資金量が十分でない」として、税制改正に国際連帯税の導入を要望している。有力な選択肢として挙げているのが航空券連帯税だ。

 

 これに対し負担と受益の関係が不透明、観光政策に反する-などの反対論が根強く実現していない。航空業界も国際競争力低下を招くとして抵抗している。

 

 ところが、18年度税制改正では新税「国際観光旅客税」(出国税)が盛り込まれた。19年1月から、訪日外国人や日本人が出国する際に1人千円を徴収する。仕組みは航空券連帯税と変わらない。

 

 使途は快適な旅行環境の整備、海外への情報発信、観光資源の開発。年明けには公衆無線LAN「Wi-Fi」整備を新税で整備する法案を閣議決定した。

 

 17年で計算すると、訪日外国人2869万人と出国する日本人1789万人で税収は年465億円余。今後は、東京五輪・パラリンピックを控えてさらに多くの税収が見込める。

 

 でも疑問が残る。旅行環境の整備などは税で賄うべきものか。そして、国内外の旅行客から集めたお金を日本が一人占めして使ってしまってもいいのだろうか。

 

 ODAも負担と受益の関係は薄いが、税金から多くのお金を出す国際貢献だ。まだ間に合う。制度設計を変更し、ほんの一部を途上国支援に回してはどうか。納税者から不満は出るだろうか。

 

 ベストセラー「世界がもし100人の村だったら」の最新刊「お金篇」に「もしも国際線のチケットに税をかけたら」という一節がある。

 

 この10年間で集まったのは15億ドル。本書は「もしもすべての国が加わったら1年に少なくとも14億ドルがあつまります」と指摘する。

 

 「分断される世界では分かち合い、お裾分けの経済が求められている」。著者池田香代子さんの言葉は重い。
                             (2018.2.22)

 

★バナーは岩手日報のWebサイトより。プロ野球の大谷翔平選手ですが、彼は岩手県出身です(高校まで)。

(日経報道)「アマゾン課税」をG20が議論>日米租税条約改正必要だが

昨日(24日)の日本経済新聞の1面トップに「G20『アマゾン課税』協議へ EU案軸、売上高を対象」という記事が掲載されました。ようやくG20レベルでもアマゾン・ドットコム等の電子商取引業者の「法人税」未払い問題に対処する動きになってきました。

 

問題は二つあります。

 

(A)…ひとつはアマゾンが日本で展開しているように配送センターを持ち営業をしていながら、その配送センターや倉庫が(支店や工場のような)「恒久的施設(PE)」ではないという規定のため、法人税を払わないで済んでいるという問題(「PEなくして課税なし」)。これに対しては、OECDが昨年6月国際的な課税逃れを防ぐ多国間協定を採択し、「『大型の物流倉庫』があれば消費国で課税できるようルールを変更」(日経新聞)しました。それで日本も19年1月から適用することになるはずです(今国会での承認を得て)。

 

(B)…もうひとつは、「ネット上で完結する音楽や映画の売買は相変わらず所得課税の抜け穴だ」(日経新聞)という状態で、このままでは課税できません(OECDで詰め切れなかったのですね)。それで3月のアルゼンチンでのG20財務相・中央銀行会合で議論し、4月中にOECDでルール作りを議論する、という段取りになったようです。

 

しかし、このままでは実物を販売しているアマゾンに課税できません!

 

日経新聞を読むと、(A)で関連法を改正して日本国内で改正法人税ができればアマゾンに適用できるかのように読めますが、実はそうではないのです。というのは、米国はOECDの多国間協定に署名していませんので、日米租税条約(二国間条約)を改定しないと、アマゾンなど米系IT企業関係にはすぐに適用できないのです。多分米国の壁は厚く、相当難しい交渉が予想されます。私たちは、交渉を政府にだけ任せるのではなく、市民社会側からも圧力をかけていく必要があります。

 

(B)の方ですが、これについては「欧州委員会が主張する2段階によるルールづくり」、つまり第一段階として「平衡税」を、第二段階としてネット上の通販に対しモノでの(改正)PEような規定を行う、というものです。

 

アマゾン・ドットコムを柱に、米系IT企業(アップル、グーグル、フェイスブック)がIT空間はもとよりビッグデータはじめ情報を独占しはじめています。しかも、税金を払わないで。「グローバル企業は価値が創造されるところで税金を支払うべき」(OECD BEPSプロジェクトの柱)です。まず税金をしっかり払ってもらうように世論を盛り上げていきましょう。

 

 

【日本経済新聞】G20「アマゾン課税」協議へ EU案軸、売上高を対象 

 

 20カ国・地域(G20)は、米アマゾン・ドット・コムのような電子商取引業者に対する課税強化案を検討する。現在の租税ルールでは、国境を越えてインターネットで売買される電子書籍などの利益に、各国が法人税をかけられないためだ。国ごとの売上高に課税する欧州連合(EU)の案を軸に協議が進むが、実現すればネット企業の立地戦略やサービス展開に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 経済協力開発機構(OECD)の租税条約では、グローバル企業が進出先の国に支店や工場などの恒久的施設(PE、Permanent Establishment)を持たない場合、法人税をかけられない。

 たとえばアマゾンの電子書籍「キンドル」を日本の消費者がネットでどれだけ購入しても、日本政府はアマゾンの利益への課税権がない。法人税は米政府に入る。動画配信サービスの米ネットフリックスが米本土のサーバーから配信した映画・ドラマのほか、音楽ソフト、アプリといった様々な「無形固定資産」も法人税は非課税扱いだ。

…(中略)

 OECDなども野放図にしていたわけではない。ネット企業の「大型の物流倉庫」があれば消費地国が課税できるようルール変更しており、日本も19年1月から適用する。それでもモノの動きを伴わず、ネット上で完結する音楽や映画の売買は相変わらず所得課税の抜け穴だ。

 G20は3月のアルゼンチンでの財務相・中央銀行総裁会議で本格的な議論に着手し、OECDの作業部会に論点報告をする。これを受けOECDは4月にも電子商取引への課税に関する報告をまとめ、具体的なルールの話し合いへとステップを進める構えだ。

 現時点でG20で有力視されている案は、欧州委員会が主張する2段階によるルールづくりだ。提唱者の中心はフランスやドイツ。欧州勢は同じサービスを提供しても海外企業と国内企業で税負担が異なるのは不公平と考え、内外企業の租税負担のバランスをとるため海外企業に限って「平衡税」と呼ぶ税金を課す。

 国ごとの売上高に一定の割合で課税する手法で、OECDルールに沿って企業は19年5月にも国ごとの売上高を公表する。このデータなどを参考に各国の課税当局は平衡税を課す。これが第1段階だ。

 第2弾として早ければ20年にも、課税の仕方を抜本的に見直す。具体的には「恒久的施設」の概念をあらため、モノだけでなく、実際にネット通販を展開している国でのデータ収集量なども基準に加える案などがある。

…(中略)

 日本では海外から配信される音楽ソフトなどに15年10月から消費税を課税するようになった。ネット商取引への法人課税は積み残しており、日本政府は「全ての国に適用される国際ルールが必要」との立場。暫定的にEU案を支持する見通しだ。

 難航が予想されるのは米国との調整だ。EU案は結果としてアマゾンなど米ネット大手を狙い撃ちするかたちで、「米国第一」を掲げるトランプ米政権の反発が予想される。

…(後略)

世界中、超カネ余りで債務の山>ドル高・高金利はデフォルトの道

 債務増大

 

2月に入っての未曽有の米株価急(暴)落に引きずられて世界同時株価急落が起きましたが、その後急落の半分ほど取り戻すなど、現在株式市場は落ち着きを取り戻しつつあるようです。しかし、今回の急落劇を局地的バブルの破裂として片づけられるかどうか、まだまだ予断は許されないようです。

 

ロイター通信は次のようにベテランの米国投資家のコメントを伝えています。「…市場には、さしたる確信もないまま『パーティー』に加わろうと、インデックス・ファンドやETFなどの購入を通じて流れ込んだ大量の足の速いお金(ホットマネー)が存在し、先週は恐らくは年内により大きな事件が起きる単なる予兆にすぎないとの見方を示した」(2月18日付ロイター(*))

 

そうです。何よりも各国中央銀行の超金融緩和政策によるマネー供給が、空前のカネ余りとなり投機マネー(ホットマネー)となって、あらゆる金融市場に流れ込み、株式バブル、債券バブルとなって現れています。このバブルが立ち行かなくなりつつあることを示したのが、先々週の株急(暴)落劇でした。多分今後とも米株式市場も、そしてそれに引きずられて各国の株式市場も不安定な動きとなっていくと思われます。

 

一方、この空前のマネー供給により世界的に債務(借金)を膨らませ、とくに途上国や新興国企業のドル債務が急膨張し、グローバルなリスクとなっています(下記の昨日(19日)の日経新聞記事を参照ください)。その債務は、新興国で2兆8350億ドル(17年末、約360兆円)にも上っています。

 

今後、米国の金利上昇とそれに連動するドル高が予想されますが、この二重パンチで途上国・新興国の債務返済や借り換えが滞り、それがグローバルリスクとして顕在化する可能性あり、という訳です。実際、米金利上昇警戒で、新興国からマネーが流出に転じている状況となっているようです(2月20日日経新聞(**))。

 

こうした金融バブルを抑えるのは、まず中央銀行の超金融緩和政策を停止することです。日銀の場合、国債等を大量に購入することをやめ、出口戦略を真剣に模索しなければなりません。次に、金融取引税(FTT)を実施し、ホットマネー(投機マネー)の移動にブレーキをかけることです。FTTからの税収を国内外の貧困・格差対策に使用すれば(SDGs達成に向け)、一石二鳥にも三鳥にもなるでしょう。

 

 

【日経新聞】企業のドル債務 膨張  昨年末、世界で21兆ドル ドル高進めば新興国に打撃 

 世界の企業によるドル建ての借金が膨張している。2017年末に米国企業を除き6兆ドル(約640兆円)と10年前の2倍以上。ドル高が進むと企業の債務返済負担が増え、さらなる信用低下に見舞われる恐れがある。アジア通貨危機を教訓に新興各国は備えを強化しているが、米インフレ観測などから金融市場もドル債務のリスクを意識しつつある。…以下、省略。

 

(*)【ロイター】古参投資家が警戒、「米株の波乱はまだある」
  
(**)【日経新聞】新興国マネー流出基調 半月で76億ドル

 

★図表は「【日経新聞】企業のドル債務 膨張  昨年末、世界で21兆ドル ドル高進めば新興国に打撃 」より
 

巨額の損失発生!>5-6日の米株相場の乱高下で不可視のリスクが顕在

5日の米株式市場での暴落や6日のジェットコースターのような急落・急騰(567ドルの大幅高で引けたが)の結果、実はまったく予想していなかった金融商品(「恐怖指数」絡みの商品)で巨額の損失が発生したようです。

 

それは低ボラティリティー(相場の変動(率))に賭ける金融商品でして、下記の日経新聞によれば2つの代表的な商品で、「運用資産総額が30億ドルから2日間で1億5000万ドルに縮小」したとのこと。たった2日間で28億5000万ドル(約3100億円)が吹っ飛んだことになりますので、かの盗まれた仮想通貨NEMの580億円の5倍強にもなり、確かに巨額ではありますが、実はこんな程度ではないようです。

 

「恐怖指数」絡みの低ボラティリティーに賭ける金融商品は全体でどのくらい投資(運用)されているのかと言いますと、何と2兆ドル(約218兆円)!!余りと見積もられているとのことです(下記ブルームバーグ参照)。え? これが本当であれば、確かに日経新聞で書かれている損失よりははるかに巨額になりそうです。

 

この損失額が、実際に全体としてどの程度のものになるのか、また上記金融商品を売っていたクレディ・スイスや野村証券は取引を停止したようですが、他の金融会社はどうなのか、全体の金融市場にどのような影響を及ぼすのか等々、注視していかなければなりませんね。また、金融バブルをしぼませるには、取引に税をかけること、すなわち金融取引税が有効です。その税収をSDGs達成のために使用できれば一石二鳥ですね。

 

 

【日経新聞】「恐怖指数」絡みの商品に怖さ

…前略
この日(注:2月6日)のダウ平均の値幅は1100ドルに達した。嵐のような相場を経て、これまで見えなかったリスクも露呈した。デリバティブ(金融派生商品)を利用した金融商品が予想外の相場変動(ボラティリティー)に直面して一気に損失を出したためだ。

 

 中でもボラティリティーの激しさを示すVIX指数(通称・恐怖指数)がらみの金融商品で巨額の損失が発生した。一部投資家はVIX指数が下がると価格が上がる「インバースVIX」連動の上場投資信託(ETF)やその関連商品である上場投資証券(ETN)に投資して高収益を上げていたが、前日の相場急落で一気に損失を被った。

 

…中略
 これらの商品は、ボラティリティーが低ければ低いほど価格が上昇する。2017年を通じて「なぎ相場」が主流だった市場環境で高収益を誇った。ヘッジファンドなど相場の上下にかかわらず収益を上げることを目標にする投資家にとっては格好の投資先となった。
…後略

 

【bloomberg】元ゴールドマンのVIXトレーダー、株売り収束までに一段の痛み予想

 

【ロイター】アングル:米VIX逆張り証券の損失、個人投資家を直撃

 米国株が急変動しないことに賭ける上場投資商品(ETP)の価格が、5日の株価急落とともに急落した。複雑な金融商品にもかかわらず、最近では多くの個人投資家が手を出しており、急落によって傷を負っている。…以下、省略