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斎藤・上村対談のパワポ資料&小林慶一郎・佐藤主光共著の新刊

1月28日に開催された「斎藤幸平&上村雄彦対談 『人新世』を生き延びるために何ができるのか」集いのパワーポイント(パワポ)資料をアップしました。上村先生のパワポの分量が多すぎたため3分割しています。また、斎藤先生のパワポ資料の説明は、後ほどアップするユーチューブでご覧ください。

 

  ・上村先生のパワポ資料  こちらからお入りください

 

●新刊『ポストコロナの政策構想』の紹介

 

ところで、上村先生のパワポ資料の(ⅲ)で、以下のように、政府のコロナ分科会の委員でもある著名な経済学者の小林慶一郎先生もトービン税導入を提案していることを紹介しています。

 

【上村先生のパワポ】
まだ希望はある!(注:国際連帯税実現に向けて)
……………
小林慶一郎(東京財団政策研究所研究主幹、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会委員)トービン税や「世界財政機関」を提案
 ◎「トービン税(通貨取引税)」の導入を提案
 ◎各国で協調して導入すれば逃げ道がふさがり、税金を分け合うことができる
 ◎各国が協力して財政再建するためには、「世界財政機関」のような新しい国際機関を作り、世界銀行、IMFと並んで財政政策の国際的な調整を行っていくという発想が必要

   (出典:『現代ビジネス』2020年7月12日;『日本経済新聞』2020年7月28日)

 

その小林先生ですが、政府税制 調査会の委員を務める一橋大学の佐藤主光先生と共著で、下記のような新著を現わしています。

 

『ポストコロナの政策構想~医療・財政・社会保障・産業~』(日本経済新聞出版)

 

その「第6章 ポストコロナに向けた税財政の国際協調」で、トービン税、国際連帯税そして「世界財政機関」などが語られています。実は、ここの文章は、東京財団政策研究所のWebサイトでの「ポストコロナの政策構想:税制の国際協調による財政再建を」でも読むことができます。 (上)  (下)

 

斎藤先生の脱成長論と小林・佐藤先生のいわば(日本)経済の健全な発展論とは本質的には異にしますが、様々な政策面でシンクロナイズさせることは可能です。とくに上記の第6章などはそうです。

 

Pコロナの政策構想

「斎藤幸平&上村雄彦対談…」集い報告>グローバルタックスと若者世代

1.28の4

 

一昨日(1月28日)参議院議員会館会議室で「斎藤幸平&上村雄彦対談から 国会議員・市民と共に考える 『人新世』を生き延びるために何ができるのか」の集いが、国会議員8人(Zoom含む)、市民80人(Zoom含む)が参加し、開催されました。

 

主催はグローバル連帯税フォーラムで、国際連帯税創設を求める議員連盟が後援してくれました。

 

集いは、田島麻衣子参議院議員の司会の下、斎藤、上村両先生のミニ講演と対談、そして質疑や意見交換が熱心に行われました。

 

主催者側として印象を一言。斎藤さんは、「SDGsをアヘンにせず」そして「潤沢な社会形成」のために、金融取引税や炭素税などグローバルタックス(国際連帯税)の必要性を主張していたこと、この点20年後には社会の主役になる「ジェネレーション・レフト」(ミレニアム、Z世代)の運動とシンクロしていくことができればと思いました。

 

◎当日の資料です。

・上村先生のパワーポイント資料 ⅰ) ⅱ) ⅲ)

 

◎集いのもようはユーチューブにUPしますので、参加できなかった人はお楽しみに。

 

◎1月29日付東京新聞に集いの記事が掲載されています。下記をご覧ください。国際連帯税の意義、斎藤先生や上村先生のエッセンスを実に簡略にかつ的確にまとめています。

 

【お詫び】Zoom参加で申込んだ人のうち、11人が「迷惑メール」ということで弾かれていました。主催者として迷惑メールBOXをチェックしていなかったためです。この点大変申し訳なくお詫びします。

 

 

【東京新聞】国際連帯税導入で「公正で持続可能な社会を」 斎藤幸平・大阪市立大准教授が講演 国会内で集会

 

 地球規模の課題を解決する資金源として注目される「国際連帯税」を考える集会が28日、国会内であった。著書『人新世の「資本論」』で経済成長からの脱却を訴える斎藤幸平・大阪市立大准教授が講演し、新型コロナウイルス禍で先進国と途上国のワクチン格差などが問題になる中、富の偏在是正や気候変動対策の手段となる国際連帯税の意義を訴えた。

(…中略…)

 斎藤氏は、環境活動家のグレタ・トゥンベリさんら若い世代から、脱成長を求める声が欧州で高まっていると紹介。「日本でもコロナ禍で資本主義を一時的に止めることができた。無限の経済成長を求める資本主義にブレーキをかける必要がある」と指摘した。

 

 その方策として、金融取引や二酸化炭素(CO2)排出への課税を強化し、医療や介護などに従事する「エッセンシャルワーカー」への課税はやめるよう提案。「人間が利己的だという発想を変えれば、公正で持続可能な社会をつくれるのでは」と訴えた。

 

 国際連帯税に詳しい横浜市立大の上村雄彦教授も講演し「(岸田文雄首相が主張する)新しい資本主義は一国だけでできるものではない」などとして、国際連帯税導入を訴えた。

(以下、省略)

1.28の2 1.28の3

 

  斎藤幸平さん      上村雄彦さん

『資本主義・社会主義・権威主義』(日経記事)>1.28集いの議論に資するか?

2020年、「政治潮流」が長期投資の焦点に

 

さて、日経新聞の投資情報欄に「一目均衡」というコラム欄があり、1月18日付に『資本主義・社会主義・権威主義』[注1]と題した記事がありました。それで今度の「斎藤幸平&上村雄彦対談から 国会議員と共に考える」集いに資する議論があるかなと思い、読んでみました。

 

まずコラムの結論。2020年は株式市場にとって「政治潮流」が長期投資の焦点になる、というもの(通常は企業業績や金融政策が投資の焦点=目安になる)。その政治潮流とは(欧米での)「やがて現役世代の多数派となる」「左傾化した『ジェネレーション・レフト』」[注1]のこと。

 

英米の若者層の「資本主義離れ」と日本の若者層

 

英米の若者層の「資本主義離れ」は次の通り(記事から)。

・英国の若者層(10代~30代半ば):資本主義に批判的約70%、社会主義が望ましい67%

・米国の若者層(18~34歳):「資本主義に否定的46%」「肯定的49%」(3年前38%対58%)「社会主義に肯定的」は全世代でも4割超

 

それでは日本ではどうか? 欧米とは違い、日本の若者は衆院選挙の投票結果からもわかるようにとても左傾化しているとは言えない。実際、「日本では(若者は)今の社会システムにどう適応していくかを考える傾向が強く…」[注3]という状況です。

 

しかし、コラムでは「『左からの風』は日本にも吹いている」と主張します。その根拠は?ということで、現在決して若者たちの運動は大きくないが、今後の可能性として斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』がベストセラーになっていることなどを挙げるのかと思いました。

 

左からの風をふかしているのは岸田首相!?

 

が、何と!左からの風をふかしているのは岸田首相だとコラム子は言うのです。

 

「市場に依存しすぎたことで格差や貧困が拡大した」「市場の失敗を是正する」「新しい資本主義は市場任せでは実現しません」(「文芸春秋」誌よりコラム子引用)との首相の主張は、これだけ見れば新自由主義の弊害を認識し、それからの転換を図っているのだなと思われなくもありません。コラム氏にとってはそれが「左傾化」の証と見えるようです。

 

ところが、新自由主義への批判はバイデン米政権も行っていますし、欧州各国の政権も濃淡はあれ批判的でしょう。実際コロナ禍中にあって国家による国民や企業への支援の重要性が高まっている今日、各国は軒並み「大きな政府」となっています。とうてい新自由主義の「小さな政府」では未曾有の危機に立ち向かえないからです。従って、これだけで左傾化というのは早すぎます。コラム子はもともと市場万能の新自由主義者だったのでしょうか。

 

グローバルな再分配政策が必要>国際連帯税の創設を

 

さらに問題は、国内の分配を公平化したとしても、コロナ禍に見られるようにこれだけでは不十分で、グローバルな再分配政策が必要です。というのは、グローバル化された世界にとってコロナ感染を国境内で封じ込めることは不可能だからです。先進国・途上国を超えてワクチンをはじめとした医療体制が必要で、そのための資金調達は緊喫の課題です。国際連帯税のグローバルな創設が今こそ求められています。

 

ともあれ、日本の若者たちがマスとしてジェネレーション・レフトとなるかどうかの前に、きちんと社会に物申せる主体になってくれればよいですね。

 

 

【ご案内】斎藤幸平&上村雄彦対談から 国会議員と共に考える

 ~「人新世」を生き延びるために何ができるのか~

 [日時]1月28日(金)午前11時~12時30分

 [会場]参議院議員会館B104会議室

     ⇒Zoomでの参加をお勧めします

 ◎申込み:gtaxftt@gmail.com までに、お名前と所属、並びにZoom参加希望者はその旨をお書きの上申込みください。

 

[注1]

【日経】資本主義・社会主義・権威主義 一目均衡

[注2]

【朝日】海外で広がる「ジェネレーション・レフト」 日本での可能性は

[注3]

【朝日】「ジェネレーション・レフト」日本では POSSE編集長に聞く

 

世界的リスク回避の処方策>途上国への有効なワクチンの供給、そのための資金調達

ユーラシア・グループの年頭の「世界の10大リスク」を読み、そのリスク回避のための処方策を考えてみました。

 

●世界のリスクの第一位は「No zero Covid(ゼロコロナ政策の失敗)」

 

米政治リスクの調査会社ユーラシア・グループが毎年年頭に「世界の10大リスク」を発表しており(以下、グループ)、今年の第一位は「No zero Covid(ゼロコロナ政策の失敗)」でした[注1]。これは第一に中国のコロナ政策の失敗を意味し、第二に(グループでは明確に述べていませんが)先進国のワクチン等確保での自国優先政策による国際社会総体の失敗を意味します。

まず、中国の失敗について。中国は現在のコロナ変異種を完全に封じ込めることができず、国内での経済的な混乱が世界的に拡大していく可能性があり、というもの。

 

それはオミクロン株のような感染力の強い変異型に対して、中国製ワクチンは効果が低く[注2]、またゼロコロナを標榜している手前、封じ込めのためにはロックダウン(都市封鎖)を行うしかないことからきます。グループでは述べていませんが、来月の北京冬季オリンピックがこれに拍車をかけるのではないか。すると中国のあちこちの都市で強権的なロックダウンが行われるようになり、中国が世界的なサプライチェーンの要であることから、世界的な混乱に繋がっていくのではないかというものです(現在外資系企業の拠点となっている天津市がロックダウン手前になっている)。

 

●もっとも有効なワクチンであるmRNA型は先進国が独占

 

一方、先進国の自国優先主義からくる帰結は次のようになります。まず数あるワクチンの中でメッセンジャー(m)RNAが最も効力があり、ファイザーとモデルナがそれです。年間35.45億回分の生産を予定しているファイザーへの契約具合ですが、そのうちの75%を先進国が占めています(米、欧州、日、英、加)。これに石油産油国やイスラエルなどを加えると80%以上が高所得国によって買われようとしていますし、中国も3%ほどを契約済みです(数字は昨年9月17日現在[注3])。

 

このような状況の上に、高所得国はブースター(追加)接種をどんどん進めようとしていますからいっそうmRNAワクチンは新興国や途上国には配布されず、ワクチン格差はどんどん拡大することに。この結果どうなるかというと、「(グループは)『発展途上国が最も大きな打撃を受け、現職の政治家が国民の怒りの矛先を向けられる』と指摘し、貧困国はさらなる負債を抱えると警告する」(1月4日付日経新聞)。

 

●アダム・トゥーズ 教授の提言>グローバルワクチン対策こそ本質的経済政策

 

上記のようなグループのトップリスク論につき、ではどう対処すべきかという提言はなく、ただ指摘しているだけですが、実は中国のコロナ政策等につき同様な分析をしているのがアダム・トゥーズ コロンビア大学教授です[注4]。分析をまとめますと、コロナ危機は世界を富裕国、途上国、中国と3つ分断したこと、世界のワクチン接種推進こそ最優先課題なこと、なのに米中関係は緊張したままであり「安全保障」がトップに押し上げられていること、です。

 

ともあれ、教授はワクチン政策について次のように先進国を批判しています。「全員が安全になるまで誰も安全ではないとの教訓をオミクロン・ショックが思い出させたのに、世界のワクチン接種率は最優先課題になっていない。(コロナ政策こそ本質的な経済政策なのに)先進国はいまだに自国優先の政策の狭い枠にとらわれている」、と。

 

●グローバルワクチン対策に必要な政策>知的所有権問題、新しい資金調達問題など

 

では、グローバルワクチン対策に必要な具体的な政策は何でしょうか? 第一に、新興国も途上国もmRNAワクチンの取得などワクチン格差を是正することです。そのためには製薬会社がワクチンという「国際公共財」を提供するという立場から知的財産権を一時放棄し、新興国を含む途上国でワクチン生産を可能とすることです。その際、技術援助も欠かせません。

 
今年初めから南アフリカでファイザー製ワクチン製造が開始されるようですが、ワクチンをバイアルに入れ密封・出荷する生産の最終段階に限られるもので、知的財産の移転はないそうです。つまり、ファイザーの下請け会社が南アフリカにできるだけです。

 

第二に、途上国へのコロナ対策支援のための国際ファシリティーである「ACTアストラレータ」(以下、ACT-A)への資金援助です。ACT-Aは10月に評議会を開催し、1年間の予算額を234億ドル(約2.64兆円)と算出しました。しかし、2021年でも資金不足に見舞われているという現状にあって、上記予算額を調達し、資金ギャップを埋めることは容易ではありません。

またG20レベルで創設された「パンデミックへの備えと対応のための国際公共財への資金調達に関するG20ハイレベル独立パネル(HLIP)」では、向こう5年間、年間100億ドル(約10兆円)規模の「世界保健脅威基金」設立を提案しています。

 

こうしたコロナ・パンデミック関係の資金援助も先進国等のODA等の財源だけでは到底賄えません。それで各国の政府はさかんに民間資金の利用を打ち出しています。そのひとつがESG投資で世界的に35兆ドルもの資金が投資されています。しかし、民間資金はどうしても利潤を上げなければならないため、もっぱら気候変動関係の電力や電気自動車(EV)に集中し、ESGバブルと呼ばれる状況になっています[注6]。

 

そこで国際連帯税の出番です。グローバリゼーション構造なくして事業を展開できない国際金融や巨大ITなどのグローバル企業の、国境を超える取引等に広く薄く課税または課徴金を課し、その資金をワクチン(製造)ほかコロナ感染症ならびに地球規模課題に使用していくべきです。それをまずはG20レベルで実施していくことが求められています。

 

[注1]
【日経】22年の10大リスク、「中国のゼロコロナ失敗」が首位(2022年1月4日)
(原文)EURASIA GROUP’S TOP RISKS FOR 2022(英語日本語
[注2]
【ロイター】中国シノバック製ワクチン、オミクロンに低効果=査読前論文(2022年1月1日)
【ブルームバーグ】中国シノバック製ワクチン、オミクロン株防御効果ない-香港研究(2021/12/15)
[注3]
【日経】チャートで見るコロナワクチン世界の接種状況は 「メーカー別の契約数」
[注4]
【日経】経済より安全の保障に重点 コロナ危機を超えて(2022年1月5日)
[注5]
【ロイター】南アのバイオバック、ファイザー製ワクチン製造開始へ 年初から(2021年12月7日)
[注6] 
【朝日】(多事奏論)脱炭素マネー 高すぎる削減目標に透ける思惑

1.28「斎藤幸平&上村雄彦対談から 国会議員と共に考える」集い

斎藤幸平斎藤幸平さん上村雄彦上村雄彦さん

 

グローバル連帯税フォーラムの新春企画のご案内です。この企画には「国際連帯税創設を求める議員連盟(会長:衛藤征士郎 衆議院議員)」が後援しています。

 

 《斎藤幸平&上村雄彦対談から 国会議員と共に考える》
  「人新世」を生き延びるために何ができるのか
     ~新しい資本主義とグローバル・タックス~

 

◎日時:2022年1月28日(金)午前11時~12時30分
◎会場:参議院議員会館B104会議室(Zoom参加も準備します)
      ⇒東京都がコロナ蔓延防止等措置を実施した場合、参加希望者全員Zoomでお願いする場合があります。
◎申込み:gtaxftt@gmail.com までに、お名前と所属、並びにZoom参加希望者はその旨をお書きの上申込みください。
◎参加費:無料
◎主催:グローバル連帯税フォーラム
 後援:国際連帯税創設を求める議員連盟

 

このたび40万部を超えるベストセラー『人新世の「資本論」』(集英社新書)で「新書大賞2021」を受賞した経済学者の斎藤幸平さん(大阪市立大学准教授)を迎え、グローバル・タックス問題の第一人者である上村雄彦さん(横浜市立大学教授)との対談を企画しました。

 

この対談につき、国会議員のみなさまにも参加していただけるように、「国際連帯税創設を求める議員連盟」に後援していただきました。

 

さて、人類の経済活動が地球の表面を覆いつくした時代である「人新世」は、グローバル化や新型コロナウイルスのパンデミックを通し、地球規模で「格差」「分断」を拡大しました。また気候変動危機は待ったなしに私たちに解決を迫っています。

 

一方、岸田首相も新自由主義的な経済が格差・貧困を拡大し、地球環境への多大な負荷による気候変動問題の深刻化をもたらしたとの認識のもとに、「新しい資本主義」を提唱しています(12月6日臨時国会 所信表明演説など)。

 

斎藤さんの「脱成長コミュニズム(コモン型社会)」、上村さんの「グローバル・タックス」提案を参考としつつ、「新しい資本主義」は可能か? 「人新世」を生き延びるために何をすべきか等を、ともに考えていきたいと思います。みなさまのご参加をお待ちしております。

 

★斎藤さんの最新インタビュー:
【報道ステーション】「脱成長の真意は…人新世の『資本論』斎藤幸平さん」 (7分22秒)
【日経ビジネス】
(前編)星野氏×『人新世の「資本論」』著者 「勝手にSDGs」の真意
(後編)星野氏×「人新世の『資本論』」著者 未来はスローダウン経営に

 

★上村さんの最新インタビュー:
【ソリダリード-J】社会的連帯経済シリーズ Episode 6 「社会的連帯経済とグローバル・タックス、グローバル・ベーシック・インカム」音声のみ 19分48秒)

 

<問い合わせ> Email:gtaxftt@gmail.com Tel:090-3598-3251(担当・田中)

元旦夜BS1「欲望の資本主義2022 成長と分配のジレンマを越えて」放映

みなさま、2022年、明けましておめでとうございます。

 

本日(1月1日)夜、NHK BS1で新春恒例の「欲望の資本主義」シリーズが下記の通り放映されます。

 

「欲望の資本主義2022 成長と分配のジレンマを越えて」(NHK BS1 22:00~23:50)

 

やめられない止まらない欲望の資本主義。2017年から恒例新春巻頭言。成長、分配、生産性、循環。議論百出の中どこへ向かう?世界の知性と考える異色教養ドキュメント。

 

困窮者の救済が議論される一方で金融市場は世界的な緩和で潤い、K字と呼ばれる二極化の中叫ばれる生産性向上…。歪な状況の打開策は?人的資本への投資を進めるスウェーデン、循環型経済を試みるオランダなど取材。共産主義の苦い記憶から資本主義内での改革を語るチェコのセドラチェクと脱成長を主張するマルクス経済学者・斎藤幸平が徹底的に議論。ジム・ロジャーズからバルファキス、ラワースまで、資本主義の本質に切り込む。

 

また、この番組の宣伝を兼ねて、「セドラチェクvs斎藤幸平」対談の一部(3時間を超える対談の冒頭部分)が東洋経済オンラインに載っています。

 

【東洋経済】セドラチェクvs斎藤幸平「成長と分配のジレンマ」

 

今、資本主義をめぐる議論が熱い。
「成長至上」のあり方を否定することにおいてはともに一致しつつも、現状を打開する方策、システムのあり方について意見を異にし、対立する2人が出会った。…

 

なお、日本の22年の政治経済分野ひとつのトレンドとして「(新しい)資本主義」論が本格的に浮上してきそうです。それにしてもこれまでの世界的な超金融緩和政策の結果、超カネ余り状況となっておりあらゆる金融商品がバブル状況となっています(株式や原油等はもとよりESG投資やカーボンクレジットまで)。これを抑制するためにも為替(通貨)取引はじめ金融取引税の実施が望まれますが、資本主義は行きつくところまで行かないと改められないのでしょうか。

 

【NHK】 岸田首相が年頭所感 新しい資本主義の実現に取り組む

【日経・元旦社説】 資本主義を鍛え直す年にしよう

 

国際デジタル課税ルール改革で1兆円弱の税収>一部を国際連帯税へ!

コロナ・オミクロン株があっという間に欧米で吹き荒れ、グローバリゼーションという現実からして、もはや自国だけ安全な国はどこにもありません。途上国・貧困国等のコロナ対策が急がれていますが、圧倒的に資金が不足しています。今般の新たな国際デジタル課税による税収の一部をグローバル公共財として使用すべきです。

 

●まったく新しい税収、約9000億円が2023年より国庫に入ります

 

ご承知のように、国際的な法人税改革であるデジタル課税について、本年10月国際ルールが合意されました。合意内容は、(1)巨大IT企業など消費国での税金逃れを防ぐためのルール、(2)最低法人税率(15%)、の二本柱。

 

この二つの改革により、国際社会は、(1)で250億ドル(約2.7兆円)、(2)で1500億ドル(約16.5兆円)の税収を得ることができます(OECD調査)。各国別では、カリフォルニア大学バークレー校のズックマン准教授らが(2)について調査されています【注1】。

 

日本の場合は、15%最低税率で59億ユーロ(約7380億円)の税収増となります。この最低税率からの税収と(1)での税収を加えると、年間9000億円前後の税収増になるのではないかと思われます。

 

今後のプロセスですが、(1)については2022年中に多国間条約を締結し、2023年から制度実施、(2)については各国が国内法を改正し、2023年から実施、という目標になっています。つまり、早ければ2023年からまったく新しく約9000億円の税収が国庫に入ることになります。

 

●新しい税収であるデジタル課税の一部を国際連帯税または連帯課徴金として徴収を

 

そこで提案です。この9000億円はグローバルに事業を展開し利益を上げている多国籍(グローバル)企業が法人税として納税するものですが、その一部を国際連帯税として規定して徴収すべきである、というものです。例えば、上記(1)+(2)のうちの日本分税収に5%を連帯税として徴収するとすれば450億円の税収となり、国際観光旅客税並みとなります(2019年度の同税の税収は444億円)。

 

ただし、法人税として徴収された税金の一部を国際連帯税として規定するというのは税法上成り立ちうるのかどうか分かりません。このこともあり「税(tax)」という名称はやめて、「課徴金(levy)」として規定し直すということも考えられます。というのは、多国籍企業はその名の通りグローバリゼーションの下に経済活動をしており、今般のコロナ等の感染症パンデミックや気候変動、貧困・飢餓など地球規模課題が厳しくなればなるほど活動基盤そのものが失われてしまうことになります。つまり、この基盤を維持し保護するための課徴金(グローバル公共財)として払うということです。

 

従って、徴収された法人税の一部を「(仮称)グローバル連帯課徴金(Global Solidarity Levy)」と位置づけ【注2】、そこからの税収を地球規模課題に拠出するというものです。

 

●欧州でのデジタル課税の使途>域内財源(復興基金の原資)の一部

 

欧州委員会は今月22日、7500億ユーロに上るコロナ復興基金の資金調達(債券の償還資金)について3つの財源案を発表しました【注3】。そのうちのひとつが、多国籍企業への課税ということで、今般のデジタル課税による(各国に入る予定の)税収の15%を欧州連合(EU)に拠出すべき、というものです。

 

もしEUがデジタル課税による税収の一部をGlobal Solidarity Levyとして徴収するというようになれば、グローバル公共財のための資金調達について各国が個別に拠出するのではなく、「((1)+(2))×5%(例)=9800億ドル(約1兆円)」というように自動的に国際社会に拠出されるという気運が高まり、資金調達システムとして確立する可能性も出てくるのですが。

 

ところで、この欧州委提案は概ね欧州議会で賛同を得ているようですが、ドイツ社会民主党などのS&D・社会民主進歩同盟グループは「復興計画の財源案はまだ不十分。金融取引税(FTT)と企業部門に関連する独自財源も必要。大企業と金融投資家はEU経済の回復に貢献しなければならない!」とのコメントを出しました。これに対し、担当のハーン欧州委員は「FTTが含まれる可能性のある第2次提案に取り組んでいる最中」と明言しました【注4】。

 

●多国籍企業はタックスヘイブン(租税回避地)で100兆円の利益を上げている

 

ズックマン准教授によると、多国籍企業はタックスヘイブンで利益を8000億ユーロ(約100兆円)も上げており、これは何と!多国籍企業の総利益の40%にも及ぶと報告しています。そういう中で、最低法人税率が15%というのはあまりにも低すぎます。ちなみに日本の法人税は23.4%ですが、これに地方法人税、法人住民税、法人事業税(実効法人税)と27.94%になります。とすると15%以下であるアイルランドやその他のタックスヘイブンに本社等を置いておくインセンティブはまだまだありそうです。

 

とはいえ、ズックマン准教授は「多くの人々が21世紀には法人税率の引き下げ競争は不可避だと考えてきた。だが、今回の合意がまだ不十分なものであるとしても、われわれはこの合意により多くの具体的な選択肢を得た」と述べています。つまり、国際的合意があれば、最低税率を段階的に上げていくことができるからでしょう。強い国際的世論と政治的なリーダーシップの登場が望まれます。

 

【注1】(日経新聞)最低税率、格差是正に寄与 法人課税、国際合意の意義

【注2】「連帯のグローバル化:金融課税のための論拠 『国際的な金融取引と開発に関するタスクフォース』専門家委員会報告書2010」

【注3】(日経新聞)欧州委、新型コロナ復興基金の「財源」に炭素税など3案

【注4】MEPs welcome European Commission proposals on establishing EU’s own resources

 

・ズックマン氏の写真は、クーリエ・ジャポンより
・最低税率設定による税収増効果は、12月21日付日経新聞より
・世界のワクチン格差は、12月26日付朝日新聞より
 
 
最低税率ワクチン格差
 

ACT-A資金ギャップ解消へ!コロナ対策のための資金調達を国際連帯税で  

 ●オミクロン型の出現>ワクチン格差(アパルトヘイト)状況に警鐘

 

1)新型コロナウイルスの新たな変異種であるオミクロン型の出現は、途上国・貧困国でのワクチン接種が進まないままでは高所得国も決してコロナ禍から自由ではありえない、ということを明らかにしました。

 

2)世界ではいぜんとしてグローバルなワクチン格差の解消が進んでいません。「アフリカでワクチンを2回接種した人は8%程度と、世界平均の45%を大きく下回る。アフリカの中では接種率が高いとされる南アフリカでも25%とされ、日本(77%)や英国(69%)、米国(59%)との差が歴然だ」(12月11日付日経新聞「進まぬ接種、止まらぬ変異 オミクロン型、アフリカで猛威 ワクチン格差の解消急務」)。さらに、このような事態を抜本的に改善しないまま高所得国が3回目のワクチン接種を行おうとしており、いっそう格差が広がりそうになっています。アフリカの政治指導者は国連総会で「ワクチンのアパルトヘイト(人種隔離)」と批判しました。

 

高所得国が追加接種を優先している

 (図表は、12月11日付日経新聞より)

 

●途上国へのコロナ対策機関=ACTアクセラレータ、十分に機能を発揮できず

 

3)途上国・貧困国へのコロナ対策のため、ワクチン、検査、治療、保健システムなど公平なアクセスを実現させるための国際ファシリティが「ACTアクセラレータ」(以下ACT-A)です。ACT-Aは年内に20億回分のワクチンを提供する予定でしたが、12月上旬で6億回程度に留まり、多くの貧困国等へのワクチン接種が遅れたのです。この要因は、①G7など政治的なリーダーの不在、②圧倒的な資金不足が挙げられます。

 

4)ACT-Aは10月に評議会を開催し、①ワクチン、検査、治療、個人用防護具のアクセス格差や重大な障壁ついて全体的に把握すること、また②ワクチンについては2022年内に世界人口の70%のワクチン接種目標に向けた進展を加速させること、等を軸に向こう1年間の活動計画を決めました。またこれらの目標を実施するために必要な予算額を234億ドル(約2.64兆円)と算出しました。しかし、2021年でも資金不足に見舞われているという現状にあって、上記予算額を調達し、資金ギャップを埋めることは容易ではありません。

 

●従来の各国ODAなどによる資金調達ではとうてい資金ギャップを解消できず、国際連帯税を

 

5)一方、パンデミック危機に国際社会が立ち向かうために、WHOならびにG20がそれぞれ独立パネルを設置しました。後者は「パンデミックへの備えと対応のための国際公共財への資金調達に関するG20ハイレベル独立パネル(HLIP)」で、向こう5年間、年間100億ドル(約10兆円)規模の「世界保健脅威基金」設立を提案しています(*)。しかし、この基金に向けての資金調達方法は「事前に合意された拠出額に基づいて各国が資金を供給し、緊急時には債券発行(各国拠出誓約に基づく債券発行)を実施」との提案で、各国が自国の財政(主にODA)からの拠出で賄うという従来の方法のままです。

 

6)コロナ対策のみならず気候変動関係の途上国支援1000億ドル問題はじめ飢餓や難民問題など地球規模課題での資金需要は多額に上り(そもそもコロナ以前のSDGs資金ギャップでも2.5兆ドルに上っている)、とうてい先進国等のODAでは賄いきれるものではありません。そこでインパクト投資やブレンデッド・ファイナンスなど民間資金を利用してとなるのですが、公的資金ではありませんので、地球規模課題解決のために動員するには限界があります。

 

7)そこで第二の公的資金となりうる国際連帯税の必要性が浮上してきます。それはグローバル化によって利益を上げている経済セクターに広く薄く課税し、その税収を地球規模課題に充てる、というものです。国際金融や巨大IT企業などグローバル企業への課税が対象となります。詳細は後日。

 

(*)G20独立パネル報告書 ”A Global Deal for Our Pandemic Age”

 

#MakeAmazonPay キャンペーン!開始 署名にご協力を!

当フォーラムの正会員でもあるUNI-LCJapan(世界150か国以上2000万人の商業・サービス・技能労働者を組織する国際組合の日本加盟組織連絡協議会)が#MakeAmazonPay キャンペーンを提案しています。

 

「11月26日ブラックフライデーに世界中のアマゾン労働者が一斉に連帯行動し、アマゾンによる労働者、地域社会、そして地球への搾取に立ち向かいます。私たちは今、この瞬間も莫大な荷物と格闘している労働者に正当な賃金、人間らしい労働条件を要求します」ということで、このキャンペーンへの賛同署名を求めています。

 

キャンペーンの署名は以下のURLからお願いします。
https://makeamazonpay.com/ja/

 

なお、アマゾンは(他のGAFAも)つい2年ほど前までは法人税をほとんど払っていませんでした。それは外国企業が日本に何らかの課税の根拠(恒久的施設、PE)を持っていなければ税を払わなくても済むからです。ようやくアマゾン日本法人が一定法人税を払うようになりましたが、まだまだ過少納税と言われています。

 

ところで、新デジタル課税ともいうべき法人税改革が、この10月にG20で合意されましたが、2023年から適用されるということで、アマゾンの納税がどうなるか注目していきたいと思います。

 

国際連帯税に関するアンケート(第二弾)への協力願い

日頃よりお世話になっています。グローバル連帯税フォーラム事務局です。

 

今回は先日行ったアンケート第一弾の結果報告及びアンケート第二弾の実施のお知らせ、最後に著名研究者による国際連帯税関連の論文の紹介をさせて頂きます。

 

【アンケート第一弾結果概要】

 

まずはアンケートにご回答頂いた方々、本当にありがとうございました。頂いたご意見は今後のフォーラムの運営にしっかり活かさせて頂きます。

 

まず、最初にあった「国際連帯税に賛成ですか?」という質問に対しては……

 

賛成:80.0% 反対:6.7% どちらでもない:13.3%でした。

 

以下は頂いた主な賛成/反対理由及び国際連帯税に関するアイデア・ご意見です。(読み易くする為、一部編集しています。)

 

主な賛成理由

 

 ・グローバルな問題を解決する上で、ODA資金では国の意向が強く働き過ぎるし、約束した拠出を守らない政府も多数存在するので、資金規模不安定となる。民間資金では利益に直結しにくい分野への投資は期待できない。したがって、従来の公私の資金に依存しない新しい資金メカニズムが必要であり、国際連帯税はその可能性を有している。

 

 ・気候危機にせよパンデミックにせよ、先進国だけで解決できる問題ではありません。先進国の資金援助だけではなく、フラットな関係で共に問題に取り組むためには国際連帯税のフレームがいいのではないかと考えました。

 

・グローバルな課題の解決において、先進国のその時々の思惑に左右されることなく、持続的に資金が確保できる方策が必要であるため。

 

 ・各国の拠出金だけでは不測の事態に対応できない。実際、コロナ対応ですら失敗の連続だった。近代的な国民国家の枠組みにもそろそろ限界が来たのではないか、と改めて考えさせられた。今こそ、世界的な視野を持ち、国際的な税の導入をすべきだと思う。

 

・パンデミック対応など国際感染症対策は我が国にとって喫緊の課題であり、その財源の一部負担を感染媒体の可能性がある旅行者に求めることは理があると考えます。また、国際的な感染制御対策の財源にもなります。

 

 ・暴走するマネーをコントロールし、国際的な課題に対応する費用を賄うため。

 

主な反対理由(どちらでも無いを含む)

 

 ・意図は賛成できますが,徴収手段の構築が難しいと思います。

 

・原則賛成。しかし、各国事情、国連の現状を見れば連帯性のなさに実現性はない。

 

・課税側・課税される側、徴収した税を分配する側・受け取る側、その税の執行について管理・監督・監査する側、各プレイヤーのメリット・デメリットが整理出来れば不可能な仕組みではないと思いますので、よりよい仕組みの実現に期待します。

 

主なアイデア・意見

 

・賛同するNGO・NPOの世界的合流を通じ、国際連帯税の根拠となる国際条約成立の実現を目指す。

 

・炭素税、武器取引税、感染予防協力税、児童労働税など、SDGs問題解決のための課税を検討する。

 

・核兵器開発を止める平和分担税など、無駄な軍事費を地球環境問題などに活かしていく。

 

・若者に訴え、国際連帯税についてYouTubeなどに投稿する。

 

・反対の立場に立ち得るステークホルダーの中から理解者や協力者を得て、捲き込んでいくことが、強硬な反対意見へのプレッシャーになっていく。

 

・地方自治体からの請願を組織的に行う。国際的なネットワークを強化し、G7やG20の議題に取り上げるように働きかける。ダボス会議の活用も考慮する。

 

・大企業のトップに理解を求めるような働きかけをしていき、そういった層から発信ができたら、社会へのインパクトになるのではないでしょうか。

 

【アンケート第二弾の実施】

 

第一弾の結果も踏まえて、以下の課題を設定しました。

 

1:一つはそもそも「国際連帯税」という名称が「固すぎる」などの意見があり、名称を変えた方が良いということ。

 

・ただし、「国際連帯税」という名称は法律で定まっており(2012年「社会保障と税の一体的改革」法の第7条)、正式名称は変えられないので、あくまで通称という形です。

 

・私たちは仮称として「SDGs税」というのを考案したのですが、これについてご意見を伺いたいと思います。

(ちなみに我々の方でも「税」という名称を何とかしたいという意見などが出ました。)

 

2:もう一つは「国際連帯税」の認知度と理解を何とか広めたいということです。

 

・SDGsも少し前まで日本では1割ぐらいの人しか知りませんでした。「国際連帯税」もSDGsのようなブレイクスルーを狙っています。

 

第二弾アンケートはこちらから!!

https://questant.jp/q/VAEYW4R6

 

 

 

【経済学者等による国際連帯税に関する最近の論文】

 

最後に国際連帯税の理論的な拠り所となる最近の論文を紹介します。

 

著者は佐藤主光・一橋大学教授と小林慶一郎・慶応大学教授で、下記の論文の中でポストコロナの税制・財政政策として、環境税、財産税、金融取引税(トービン税)を挙げ、その財源の使途として、今回のコロナ禍に係る財政赤字の償還財源に充当するとともに、将来の天災・災害への備え、及び新たな「国際連帯」として発展途上国への支援に充てる、と提案しています。

https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3514

https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3515