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【速報】G20への金融取引税要請レター、英仏メディアで報道

本日からベネチアでG20財務相・中央銀行総裁会合が開催されますが、これに向けFTT(金融取引税、国際連帯税の一種でもある)を要求する世界のNGOが「途上国支援のための金融取引税実施を要求する国際エコノミスト・専門家署名」活動を行い、G20当局に提出しました。

 

このことについて、7月8日付英ガーディアン紙が「Covid(コロナ)の回復に貢献する金融取引に課税を、G20に報告」と題し報道しました。米国の開発経済の第一人者のジェフリー・サックス氏や、タックスヘイブンの専門家であるフランスのガブリエル・ズックマン氏など、124名のエコノミストが署名しています。

 

日本からも諸富徹京大教授や上村雄彦横浜市大教授など10人のエコノミスト・専門家が署名しています。

 

報道全文はこちらから(要旨は下記参照)
Tax financial transactions to help Covid recovery, G20 told

 

また仏ルモンド紙には署名者の全リストとともに手紙が掲載されました。

 Fiscalité : « Une taxe sur les transactions financières pour générer des investissements publics d’urgence »(有料)

 

124人の署名者はこちらをご覧ください

 

なお、取組み期間がたいへん短かったので、締め切り後に署名された方が結構おられたようです(日本でも)。今後10月末開催のG20首脳会合に向けて様々な取組みを行っていくと思いますので、引き続きご協力をお願いします。

 

 

【ガーディアンの報道・要旨】
…前略…
発展途上国は、先月コーンウォールで開催されたG7サミットの結果に失望しており、今回のG20では、ワクチンプログラム、医療能力への投資、ゼロカーボン経済への移行に対する追加的な財政支援を求める機会になると考えています。

 

エコノミストたちの手紙によると、株式、債券、デリバティブ、外国為替は「かなり過少課税」になっており、今こそ富裕層が困窮している人々のために、より大きな貢献をするべき時だとしています。

 

「このような形でFTTを導入することは、法人税の最低税率を導入するという最近の合意を補完し、さらに発展させるものです。パンデミックにもかかわらず、金融セクターは好調に推移し、さらには繁栄を続けており、このような追加的な税負担を行う余裕があります」と述べています。
…後略…

 

※写真は、南アフリカの遠隔地に医療支援を行うTransnet-Phelophepa ヘルスケアトレイン(ガーディアン紙より)

 

途上国支援のための金融取引税を要求する国際エコノミスト・専門家署名活動

来る7月9~10日G20財務大臣・中央銀行総裁会議が伊ベネチアで開催されますが、これに対し途上国支援のための金融取引税実施に関する国際エコノミスト・専門家署名活動が提起されています。ご賛同される専門家等のみなさんはぜひ署名してくださるよう要請します。

 

*署名方法:Title(Prof/Dr/Directorなど)、Name Surname、Profession/Organisation、Country をお書きください。

 

例)10年前のG20カンヌ・サミット時の専門家署名活動での上村雄彦・横浜市大准教授(当時)の場合
Ass Prof/Takehiko Uemura/Associate Professor, International College of Arts and Sciences, Yokohama City University/Japan

 

*締切り:7月6日(火)午後9時まで gtaxftt@gmail.com にお送りください。

 
●途上国支援のための金融取引税を要求する国際エコノミスト・専門家署名活動
【タイトル】
「金融取引税を直ちに導入し、経済の安定性を向上させるとともに、特に発展途上国において、医療、雇用、気候変動の影響に要する費用への公共投資支援を要請する」

 

【本文要旨】
今回のCOVID-19危機では、富裕層の国々でも大きな困難を経験したが、貧困層の国々の多くは、健康危機が発生する以前から深刻な債務不履行に陥っていました。そして現在はいっそう危機的な経済状況にあり、債務の返済と国民への医療提供の間で生死を分ける選択を迫られています。

 

このような切実な状況に対応するため、私たちは、世界で最も裕福なセクターに目を向け、これまで十分に課税されてこなかった株式、債券、デリバティブ、外国為替などの金融取引に対して包括的な課税を行い、追加の歳入を確保することを強く求めます。

 

G20諸国のうち9カ国(アルゼンチン、ブラジル、中国、フランス、インド、イタリア、南アフリカ、英国、米国)では、すでに限定的なFTT(金融取引税)が導入されており、主に株式取引に対して非常に低い税率が設定されています。

 

我々は、FTT を導入していない国は直ちに導入し、FTT を導入している国は税率を上げ、課税対象を他の資産にまで拡大することを提案します。そうすることで、年間1,000億ドル規模の追加収入を得ることができます。そのうちの少なくとも50%は、発展途上国の保健、教育、将来のパンデミックへの備えの強化に充て、残りの50%は、国内で最も困っている人々、特に雇用の保護と提供のための支援に充てるべきです。
……
全文は、こちらを参照ください(英文)

第11回総会報告:議員立法で、各国NGOとの連携で連帯税実現を!

7月2日の日経新聞一面に「法人課税 大枠で国際合意」と大きな記事。そうです。国際連帯税もこのように国際合意されればワクチンほかの途上国支援資金を得ることができます。

 

前河野太郎外務大臣は「SDGs達成のために国際連帯税を国際連携で取り組もう」と呼びかけてきましたが、まさにワクチン接種で途上国・貧困国が取り残されている現状から、その必要性がいっそう高まっています(コロナ終焉のためには世界で110億回分のワクチンが必要だが、先のG7サミットではわずか8.7億回分の支援しか打ち出せなかった)。

 

さて、去る6月20日グローバル連帯税フォーラム(以下、フォーラムと略)第11回総会が開催され、21年度の運動方針などを決めました。総会の特徴を簡単に報告します。

 

1、20年度活動の振り返り

 

1)国際連帯税を取りまく状況のトピック:
外務省が10年連続して税制改正として要望していた国際連帯税実施を断念。一方、国際連帯税創設を求める議員連盟は議員立法の形で実現をめざすことを確認し、フォーラムもそれを支援しともに活動していくことになりました。

 

2)国際的なワクチン格差と国際連帯税の必要性:
コロナ感染に対処する有力なツールのひとつがワクチン。が、先進国などがワクチン囲い込み競争に走り、途上国が取り残さる「ワクチン格差」状況が露呈。その要因の一つが途上国支援のための資金の圧倒的不足があり、その面からも国際連帯税に必要性が明らかになりました。

 

2、21年度の活動方針

 

1)国際連帯税に関する議員立法への取組み
秋の臨時国会は、衆議院選挙があるため短期間開催が予想されるので、議員立法の準備に入り、来年の通常国会での実現を図るように体制を構築していきます。

 

2)G20サミットに向けて、国際署名や国際法人税改革問題の院内集会などを実施
議案書には「欧米の運動と連携し活動を強化」と一般的な提起しか述べていませんが、途上国支援や国内の貧困問題解決のための金融取引税を求める欧州や米国のNGOやシンクタンク、そして欧州の労働組合などが国際署名活動などを提起していますので、これに連動して活動していきます。

 

さらに国際法人税改革問題(デジタル課税や最低法人税率)につき、タックス・ジャステス・ネットワーク・ジャパンと連携して院内集会を持てるようにしていきます。

 

3) 連続オンラインセミナーの実施
総会の後に開催された諸富京大教授の「グローバル・タックス」問題のセミナーはじめ、国際連帯税に関係してくる金融や税制の問題のセミナーを開催していきます。

 

以下、詳細は議案書を参照ください。

 

 

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フォーラムの運営は会員による会費によって成り立っています。ぜひ会員になっていただき国際連帯税実現に向けてともに歩んでいきましょう。個人会員になるには、1口3000円の年会費を納入していただきます。団体会員は1口10000円です。
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金子文夫氏「グローバル・デジタル課税の新局面」を転載

「経済分析研究会」(*)のメルマガに掲載された金子文夫先生の「グローバル・デジタル課税の新局面」を転載します。現在OECD/G20で議論が進められている国際的なデジタル課税問題の全体像を捉えるのに非常に参考となる論考です。元になった原稿はもっと長文とのことですが、読みやすくまとめてくれています。

 

 

グローバル・デジタル課税の新局面
            

 コロナ禍を契機に、世界的に新自由主義、市場原理主義の見直しが進行している。米国がコロナワクチンの特許放棄提案を支持することは以前では考えられなかったし、増税政策への転換もそうである。バイデン政権は、1980年代のレーガン財政に始まった小さな政府路線を覆し、大きな政府路線に進もうとしている。

 

コロナ禍から「バイデン革命」へ

 

 バイデン政権はまずコロナ禍対策の「米国救済計画」として、1人最大1400ドルの追加給付など総額1.9兆ドル散布を打ち出したが、これだけならばコロナ対策の大型財政出動として各国で実施されている。だが、バイデン政権はそれを超えてさらなる財政拡大を提起した。第一に、インフラ投資(道路・鉄道、EV設備、半導体供給網等)を柱とする2兆ドル超の「米国雇用計画」である。財源は法人税の増税であり、連邦法人税の21%から28%への引き上げ、多国籍企業の海外収益への増税などで15年間に2.5兆ドルの確保を目指すという。

 

 第二に、所得格差是正をねらった「米国家族計画」であり、10年間で財政出動1兆ドル(幼児教育、介護支援等)、子育て世帯減税8000億ドルを見込み、その財源として富裕層への増税(所得税、キャピタルゲイン増税等)10年間1.5兆ドルをあてるという。

 

 この「バイデン革命」、バイデノミクスともいわれる野心的な提案には議会、大企業、富裕層の抵抗が予想され、その通りに実現するものではないだろう。実際、法人税の28%への増税は25%に削減する動きも出ている。とはいえ、減税、小さな政府路線が格差を拡大してきた現状を転換させる意義は大きい。加えて、法人税増税はOECDが提起しているグローバル企業課税構想を前進させる画期的な意義をもっている。

 

OECDのグローバル企業課税構想の進展

 

 2008年のリーマンショック以後、GAFAなどのグローバル企業によるタックスヘイブンを利用した課税逃れが問題となり、各国政府が本格的に取り組むようになった。OECD租税委員会は2012年に「税源浸食と利益移転」(BEPS)プロジェクトをG20と共同で46カ国の規模で開始し、2015年に15項目の行動計画を作成した。このなかには、グローバル企業に税務当局への詳細な経営情報の提出を義務づけるといった画期的な内容が含まれている。

 

 2016年以降、BEPS行動計画で積み残されたデジタル課税問題についてBEPS包摂的枠組み会合(IF)が組織され、参加国は140カ国・地域へと拡張した。この取り組みのなかで、グローバル・デジタル企業への課税方式として、利用者の企業利益への貢献度に応じて各国で課税する英国案、収益を生む無形資産が作られた国で課税する米国案、売上高・資産・従業員数などに応じて各国で課税するインド案の3案が提起され、2019年10月には米国案をベースにした案にまとめられた。また、それに合わせて、タックスヘイブン対策として、各国共通の法人税最低税率を設定する案も提起された。

 

 これらの案が2020年には正式に140カ国の間で合意されるはずであったが、2020年1月、米国が現行課税方式と新方式を企業が選択できるとする提案を持ち出し、合意は遠のくことになった。これはトランプ政権の米国第一主義を反映した提案だが、この結果各国が個々にデジタル課税を導入する動きが強まっていった。

 

 2021年にバイデン政権が登場すると、米国国内の法人税引上げに合わせて、国際最低税率の設定、グローバル企業への新方式課税が復活することになった。米国は最低税率を21%とする案を示したが、アイルランドなど低税率国の反発に配慮して15%へと下げるもようである。グローバル企業への課税では、売上高100億ドル以上、利益率15~20%以上などの基準で世界100社程度を対象とした提案となっている。

 

グローバル税制への第一歩

 

 GAFAの課税逃れは巨額である。世界の主要企業5万社の平均税負担率25.1%と比べて、15.4%と6割しか負担していない(日経新聞5月9日)。米国をはじめ各国が新方式に取り組むのは、グローバル企業の課税逃れへの対策を確立し、増税政策を全体として推進していくためだろう。

 

 新課税方式は国際法人税の課税原則の大転換を意味している。むろん旧方式は存続しており、新方式はごく一部に導入されるにすぎないが、少なくともグローバル企業への課税が1国主義から多国間主義へと転換することは、グローバル税制への一歩前進を意味する。

 

 企業活動のグローバル化に対応して、課税権力もグローバル化する必要がある。その方式には、課税権力のネットワーク化と超国家機関の創出の2ルートがあるといわれるが(諸富徹『グローバル・タックス』岩波新書)、その第1ルートが現実化しつつある。第2ルートについては、EUが近い将来財政同盟をつくるとしても、それは国民国家の拡大であって超国家機関とはいえない。第2ルートは第1ルートが実績を積み上げた後に、いずれ姿を現すことになるだろう。

 

横浜アクションリサーチ 金子 文夫

 

(*)現代の理論・社会フォーラム経済分析研究会  

 

朝日新聞・社説「最低法人税率 減税競争に終止符を」を読む

本日(6月1日)の朝日新聞の社説にとても分かりやすく「(国際)最低法人税率」の課題について載っていましたので、紹介します。

 

ところで、米国が法人税率を21%から28%にまで上げることになれば、日本の同税が23%ということで日本の方が安くなります。大幅増税が必要ではないでしょうか。

 

実は法人税減税は投資拡大に向かうというより、貯蓄(内部留保)を増やすことに貢献したという世銀の研究グループのレポートも公表されています(5月8日付日経新聞)。実際、日本企業の19年度の内部留保475兆円にも上り、過去最大となっています。

 

新自由主義が行き過ぎて、とっても企業に都合の良い税制になっていたようです。「パラダイムの転換」が必要ですね(バイデン大統領の言葉)。

 

 

(社説)最低法人税率 減税競争に終止符を

 

 各国の法人税に共通の最低税率を設ける新たな国際ルールづくりが山場を迎えている。高齢化や低成長の長期化で、慢性的な財政赤字は多くの主要国が直面する課題だ。一刻も早く、法人税率の引き下げ競争に終止符を打たねばならない。

 

…(中略)…

 

 日本もその渦中にある。1986年度は43%だった法人税率(国税)が、23%に低下した。88年度は全税目中のトップだった法人税収が、今年度は消費税の半分以下の見通しだ。

 

…(中略)…

 

 注目されるのは、法人増税を主財源に巨額のインフラ投資を計画する米政府の提案だ。バイデン政権発足直後は最低税率として「21%」を求める構えだったが、最近は「15%以上」に後退した。やはり低税率国に同意を促すためとみられる。

 

 しかし15%でも、多くの日本企業が進出する香港(16・5%)やシンガポール(17%)よりまだ低く、実効性に疑問が残る。日本政府は利害が一致する国々とともに、より高い税率を目指して、粘り強く交渉して欲しい。

 

 新たな国際課税ルールをめぐっては、難航してきた米巨大IT企業などへのデジタル課税の交渉も前進している。新ルールを適用するかどうかの判断を企業に委ねるトランプ前政権の提案を、バイデン政権が撤回したためだ。先送りされてきた合意が現実味を帯びている。

 

 国家主権の根幹である税制は各国の裁量が尊重され、国際協調が遅れた。その結果、グローバル企業には課税逃れの動きも見られる。実効性ある法人税率の統一ルールが合意されれば、歴史的な成果と言えよう。国際社会が英知を結集すべき時だ。

コロナ禍の現状と未来>税財政やグローバル・タックス講演会など

いぜんとしてコロナ禍が続いていますが、その対策のために各国政府は莫大な財政支出を行い、今や日本を筆頭に各国とも持続可能な財政状況ではなくなりつつあります。そういう中で、米国は富裕層や企業への増税を柱にして、また欧州は環境関連の新税や企業増税などを柱にして、それぞれ財政支出や立て直しを行おうとしています(消費税=付加価値税や所得税の全般的な増税など大衆増税でないことに注目を)。

 

ところが、日本ではそのような税財政施策はもとより、議論ですら全くと言ってよいほど政府では進んでいません。5月25日の経済財政諮問会議での骨太方針(骨子)でも「プライマリーバランス黒字化などの財政健全化の旗を降ろさない」などと抽象的に述べるにとどまっています。

 

コロナ禍状況にあって、ポスト・コロナの、とりわけ税財政のあり方に関してどのように展望していくべきか。そのための材料となるシンポジウムや講演会が下記のように開催されます。まだ申し込みが可能ですので、参加してみたらいかがでしょうか(どの会合もオンラインです)。

 

1)シンポジウム「ポスト・コロナの経済・財政」

 

・日時:2021年6月7日(月)13:30~16:00

・主催:東京財団政策研究所 共催:株式会社 日本経済新聞社

・メインスピーカー

 森信茂樹(東京財団政策研究所 研究主幹)

 土居丈朗(東京財団政策研究所 主席研究員、慶應義塾大学経済学部教授)

 佐藤主光(東京財団政策研究所 主席研究員、一橋大学国際・公共政策大学院教授)

*詳細:https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3746 

 

2)【国会議員との対話集会】コロナ禍で拡大する格差・貧困問題に立ち向かう!~市民の立場から税制・財政を考える~

 

・日時:2021年6月7日(月)17:00~19:30

・主催:公正な税制を求める市民連絡会

・メイン報告

 バイデン政権の税制改革プラン 合田寛(同会幹事)

   提言 猪股正(弁護士,同会事務局長)

*詳細:http://tax-justice.com/  

 

3)講演会「グローバル・タックスの意義と可能性」

 

・日時:6月20日(日)14:30~16:30

・主催:グローバル連帯税フォーラム

・講師:諸富 徹(京都大学大学院経済学研究科教授)

   司会:上村雄彦(横浜市立大学国際教養学部(教養学系)教授)

*詳細:http://isl-forum.jp/archives/3147 

諸富 徹教授講演「グローバル・タックスの意義と可能性」

諸富先生

 

フォーラムの講演会のご案内です。

 

諸富 徹教授講演「グローバル・タックスの意義と可能性」(仮題)

 

◎日 時:6月20日(日)14:30~16:30

◎参 加:Zoomでの受講

◎参加費:1000円

◎講 師:諸富 徹(京都大学大学院経済学研究科教授)

 

※要申込:gtaxftt@gmail.com までに、お名前、所属をお書きの上申込みください。40人程度になりましたら締め切らせていただきます。また、前日までに参加URLをメールにてご案内差し上げます

◎参加費振込:上記URLを送付時に振込先をお知らせしますので、後日振り込んでくださるよう願います。

 

<呼びかけ>

所得税のフラット化、法人税率の引き下げ、タックスヘイブン利用による租税回避…。この傾向が1980年代から新自由主義政策として展開されてきました。一言でいえば、富裕層や大企業に優しい税制がとられてきたのです。経済のグローバル化とデジタル化がそれを可能にしました。この結果、GAFAはじめ巨大多国籍企業が台頭し、「租税戦争」が仕掛けられてきました。

 

もとより国際社会はこうした「租税戦争」が各国内の税収過小と企業間の公平な競争を阻害することより、過度な租税回避行為を防止するための国際課税ルールを求めて、2010年代よりOECDにおいてBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを立ち上げました。

 

国際課税ルール(デジタル課税など)議論の10年余を経て、米国トランプ政権に邪魔されながらも、バイデン政権に米国が変わるやデジタル課税に積極的になり、この4月米国案を約140か国に提示。内容は大雑把に言って、年間売上高と利益率が上位100位程度に入る巨大多国籍企業に対してそれぞれの国内で課税というもの。OECD側も米国案が弾みになり、10月のG20首脳会議までには確実に合意できるとの見通しを示しています。

 

さて、講師となっていただく諸富教授は、その著書『グローバル・タックス』(岩波新書、20年10月発行)において、グローバル・タックスとは「課税権力のグローバル化」と定義しています。具体的には、新しい国際共通ルールをつくって、その下で各国が協力しつつ実施していく税制で、今回のデジタル課税もそのようなケースになる、と分析しています。一方で、国際公共財の財源調達を目的に、国境を越える経済活動に対して課税する国際連帯税もグローバル・タックスの重要な要素としています。

 

以上から、1)BEPSプロジェクトとデジタル課税、2)米国案の評価と課題点、3)グローバル・タックスの意義と可能性などについて述べていただき、議論できればと思っています。ふるってご参加ください。

 

●諸富教授の著書

『グローバル・タックス-国境を超える課税権力』(岩波新書 2020年)、『資本主義の新しい形』(岩波書店 2020年)、『財政と現代の経済社会』(NHK出版 2015年)、『私たちはなぜ税金をおさめるのか-租税の経済思想史』(新潮選書 2013年)など多数

 

GTタックス

 

コロナ禍を経ての時代変化>バイデン米政権と国際課税の現状から

日本でのコロナ感染は英国型株「N501Y」が主流となり、厳しい状況が続いています。みなさま、どうぞお気をつけ願います。

 

●国際課税、グローバルタックス、国際連帯税などのキーワードでの問い合わせ

 

14世紀のペスト大流行以来、感染症のパンデミックの歴史を見るならば、時代の政治経済そして社会状況を大きく変えることになりました。2019年から顕在化した新型コロナウイルス危機もその例外でないようです。そのことを国際課税(デジタル課税)の状況から見てみますが、その変化をもたらしつつあるのが米国バイデン政権のデジタル課税(含む、法人税の世界共通「最低税率」)についての提案です。現在、トランプ前政権のため停滞していた同税の国際的合意が一気に進むような気運となっています。

 

このこともあり、実は上村雄彦横浜市大教授や当フォーラムに、国際課税、グローバルタックス、国際連帯税などのキーワードでの問い合わせ、原稿依頼が来るようになってきました。

 

●バイデン米政権の新自由主義政策からの転換>企業増税と大きな政府

 

米国バイデン政権の何が時代の変化をもたらそうとしているのでしょうか。それを簡潔に説明しているのがハーバード大教授のダニ・ロドリック氏です。「バイデン米政権(の)企業増税を財源にインフラや研究開発などに2兆ドル(約217兆円)を投じる『米国雇用計画』は、同国経済の重要な転機になる公算が大きい。政府の関与を減らし、市場原理を重視する新自由主義の時代の終わりをします」(「米『雇用計画』、政府の役割変えるか」4/29付日経新聞)、と。

 

ここから2つのことが指摘できます。ひとつは、財源を企業への増税によって賄おうとしており、これまでの世界の企業減税競争という流れからの大転換を意味します(英国も企業増税を提案)。もうひとつは、「大きな政府」の復権です。新自由主義は政府の福祉・公共サービスの縮小(小さな政府)を図るものですが、バイデン政権はそれを逆転しようとしています。

 

デジタル課税については、これまでOECD/G20で、①巨大IT企業等への「デジタル課税」、②法人税に対する世界共通の「最低税率」を議論してきて、昨年合意手前まできましたが、トランプ前米政権の反対でとん挫していました。ところが、バイデン政権になってから、とくに①につき、世界で100社程度の大企業を対象に各国で課税権を分かち合うという米国案が提示され、本年半ばの合意を目指し各国の協議が進む事態となっています。

 

もっとも金融政策の面では規制が弱い、また法人税増だけで大規模な政府支出が賄えるのかとの懸念はあり、後者では金融取引税まで踏み込むことが期待されます。

 

●ネット企業の勃興とGAFAの税金逃れ

 

グローバリゼーションは、IT(ネット)企業の勃興をもたらし、GAFA(アルファベット=グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)等が今日のデジタル化した新経済を独占的に支配するようになってきました。これらGAFA等は独占の問題もさることながら、「悪質な課税逃れ」という問題も生じてきました。

 

課税逃れの手法は次のようなものです。まず特許やブランド等の知的財産をタックスヘイブンなどの低税率国に設立した子会社で所有し、その子会社にライセンス料などの形で各国から利益を集め、全体的に税負担を減らす、というもの。既存の法人税では、国内に支店とか工場とかの「恒久的施設(PE)」がないと課税することができません。ですから、ネット企業は各国で巨大な収益を上げながら、どの国からも課税されないのです。これが既存の国際課税ルールの限界でした。

 

その結果GAFAがいかに税金逃れしてきたかを見てみましょう。5月9日付の日経新聞で報じています。

 

・GAFAの税負担率:15.4%(世界5万社超の平均:25.1%)

・日本企業の平均:28.3% トヨタ自動車:24.8%

・主要国の法人税率(地方法人税を含む実効税率):日本29.7%、米国25.8%、英国19.0%、フランス32.0%、ドイツ29.9%

 

※グラフは同日付日経新聞・電子版より

 

GAFAの税率と世界の税率

 

「持続可能な開発に関するHLPF」関係会合で国際連帯税を提案

アフリカ・ワクチン接種2%

4月23日「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」に関する市民社会と関係府省庁の意見交換会」が行われました。市民社会側はSDGs市民社会ネットワークに参加している団体など、省庁側は外務省地球規模課題総括課を窓口に関係省庁など、総勢73人が参加しました。

 

HLPFとは、持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)の取組み状況に関して、毎年希望する国が「自発的国家レビュー(VNRs)」を行う場です(首脳級会合は4年に1回)。今年日本政府が2度目のVNRsを発表するので、その前段に市民社会からの意見を聞くということで「意見交換会」がもたれました。

 

会合では市民側から次の14項目についてインプットし、それに対して関係省庁から答えをもらうという形式で行われました。「1教育、2防災・減災、3環境、4社会的責任、5ビジネスと人権、6開発、7保健、8財源・連帯税、9国際貿易、10ジェンダー、11地域、12ユース、13障害、14働き方」。それで私(田中)は「8財源・連帯税」について述べました。

 

【田中の「財源・連帯税」に関するインプットは次の2点】

 

1、目標17「パートナーシップ」の17.2の遵守

・神棚に祭るのではなく、先進国の責務であることの確認

・ODAのGNI比0.7%、LDCへのGNI比0.15~0.20%拠出

・各国は2030年に向けてロードマップを提示すべき

 

2、第二の公的資金、国際連帯税の実現

・コロナ禍にあって、一挙にODA増は困難。民間資金をあてにするのではなく、第二の国際的な公的資金を探るべき

・グローバル化から多大に受益している金融セクターやIT情報セクター等から、その取引等に課税し、グローバルイシュー対策のための資金とする(金融取引税やデジタルサービス税など)

・コロナワクチン問題で高所得国と低所得国との格差が露骨に現れ、「一人も取り残さない」 SDGs理念がズタズタにされた(*)。各国で連帯税を探るとともに、今こそ主権国家の枠を超えた共同の「地球規模課題のための資金創出」を構想し、実施すべき。

 

【外務省地球規模課題総括課の吉田課長からの答弁】

 

・SDGsの資金ギャップは大きいが、ODAは伸び悩んでおり、何らかの資金調達は必要だ。国際連帯税については議員立法で行おうという動きもあり、私たちも出来るだけ支援したい。

 

(*)テドロスWHO事務局長

「ワクチンの供給に『衝撃的な不均衡』が生じている。世界の大半の国が医療関係者や高リスクの人々の接種に必要なワクチンの入手さえ不可能な状況だ」(4月12日付ロイター通信)

「世界で約9億本近いワクチンが接種されているが、高・中所得国がその81%を占める一方、低所得国はわずか0.3%にとどまっている」(4月23日付ロイター通信)

アワー・ワールド・イン・データ

「世界人口の2割弱を占めるアフリカ大陸でのワクチン接種回数は約1500万回と世界の2%にとどまる」(4月22日付日経新聞) ※グラフは同新聞より

欧州金融取引税にフランシスコ・ローマ教皇が関与

教皇

 

今月、フランシスコ・ローマ教皇は、ヘルス・雇用・気候変動対策のために500億ユーロのロビンフッド税(金融取引税)を求めるフランスの活動家たちと会われました。教皇は、従来から金融システムが地球を破壊していると考えており、社会のために働くようにすべきだ、と主張してきました。昨年10月に発表した回勅でも、「新型コロナウイルス禍における資本主義は失敗に終わったとの見解を示し、自由市場政策では人道上最も差し迫った課題全てを解決できないことが、今回のパンデミックで示されたと指摘」(CNN)していました。

 

今後ローマ教皇は欧州金融取引税について、様々な場で関与してくれるのではないでしょうか。

 

今回の活動家たちと教皇との謁見を仲立ちしたのはジャン=クロード・ホレリッチ(Jean-Claude Hollerich)大司教ですが、同大司教は日本での長い宣教経験を持ち、上智大学の元副学長を務めていたとのことです(バチカン・ニュースより)。

 

●宗教家と金融取引税・国際連帯税

 

ところで、金融取引税や国際連帯税に関し、倫理と正義を重んじる宗教家も格差・不平等解消のツールとしてこれを支持してきました。バチカン(ローマ教皇庁)はベネデクト16世前教皇の時から金融取引税への支持を表明していましたし、欧州10か国金融取引税問題が浮上した2014年には欧州カトリック指導者がいっせいにこれを支持。また、ローワン・ウィリアムズ(当時)カンタベリー大主教、デズモンド・ツツ元南部アフリカ聖公会ケープタウン名誉大主教(ノーベル平和賞受賞者)も支持を表明。日本では池田大作・創価学会インタナショナル会長が従来より国際連帯税推進を呼びかけています(*)。

 

(*)金融取引税(FTT)に関する欧州カトリック指導者の声明

 

以下、教皇との謁見の経緯・意義についての報道をお知らせします。

 

 

        欧州金融取引税:ローマ教皇関わる

 

【archyde】European tax on financial transactions: the Pope gets involved

 

欧州(議会)の予算担当の審査官は強力な態度に出ました。L’obs Sundayが伝えるところによると、昨年10月に金融取引税を擁護するためにハンガーストライキを行った欧州議会議員のピエール・ラルトゥロウ(Pierre Larrouturou)氏が、今度は3月15日月曜日に教皇に謁見する予定である。共存運動(Coexist movement)の創始者であるサミュエル・グジボフスキー(Samuel Grzybowski)氏、市民気候会議(Citizen’s Climate Convention)の後見人のシリル・ディオン(Cyril Dion)氏、そして起業家のエヴァ・サドゥン(Eva Sadoun)氏を伴い、エコロジー社会への移行に向けた資金調達を話し合うために会いに行くのである。

 

この会談は、ルクセンブルク大公国の大司教であるジャン=クロード・ホレリッチ(Jean-Claude Hollerich)氏の助力によって実現した。去年1月、ピエール・ラルトゥロウ(Pierre Larrouturou)氏は、財務大臣と会うためルクセンブルクに訪問した期間中、気候擁護に熱心で知られる氏をバチカンに訪ねた。欧州連合司教会議委員会の会長であるジャン=クロード・ホレリッチ(Jean-Claude Hollerich)氏はこの話し合いの内容に賛同を示し、これを発展させる為、教皇に謁見を願い出、教皇はこれに快く応じました。

 

毎年500億ユーロの収入をもたらす税

 

この欧州金融取引税は、年間500億ユーロをもたらすと、広く欧州議会議員や環境活動家から評価されている。しかしながら、このプロジェクトは多くの反対、とりわけフランスからの反対に直面している(注)。

 

教皇はこの大義の為に彼の影響力を行使する用意があるようだが、ポルトガルも「強化された協力 (Enhanced Cooperation)」のために関係国を一つにまとめようとしている。ポルトガルは現在EU理事会の議長を務めており、この教皇の協力により、全会一致を待たずに欧州金融取引税を前に進めることを希望している(注)。

 

(翻訳者:注)本年1月からポルトガルがEU理事会の議長を務めているが、ポルトガルは10か国主導の金融取引税をまず実現しようと株取引と株関連デリバティブ取引への課税を提案しているが、フランスが反対している(デリバティブ取引を含むことに否定的)。