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金融取引税はCOVID-19により国際法人税改革の次に浮上か⁉

●COVID-19の猛威とともに財源として金融取引税(FTT)が注目さる

 

COVID-19(新型コロナウイルス、以下コロナと略)が猛威を振るいはじめた昨年から、どの国も医療や事業支援など莫大な対策費を余儀なくされ、赤字国債(債券)を大量発行しました。そして問題はそのような赤字財政をどうファイナンスしていくかということで、そのリソースの有力なツールとして金融取引税(FTT:Financial Transaction Tax)が挙げられ、議論されていました。

 

日本でも前年度には60兆円もの赤字国債を発行し補正予算を組みましたが、このままでは財政の持続可能性を大きく損なってしまう恐れも生じてきています。これに対し、現在政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会で活躍されている小林慶一郎氏(東京財団政策研究所)など学者やエコノミストの一部から財政立て直しのため世界的規模での金融取引税(またはトービン税)実施の主張もされました。

 

世界的には、欧州連合(EU)の2021年前期議長国であったポルトガルや米国のバーニー・サンダース上院議員らのFTT実施に向けての動きがありましたが、実現に至っていません。もっともこれらの動きは主に国内政策への資金動員という性格のものですが、課税対象や税収の多寡いかんによっては途上国支援のための国際連帯税的な要素を十分持つことができます。例えば、G7など有力国で外国為替取引(通貨取引)へ共同で課税できれば、すぐれて国際公共財の資金源になります。

 

●ITR誌でのFTT小論の要旨

 

ITR(International Tax Review)誌に『金融取引税は反対がありながらもCOVID-19により、その可能性が高まっている』と題してFTTに関する現状と今後の展望について興味深い小論が載っていましたので、紹介します。以下、小論の要旨です。

 

1)世界的にコロナ禍対策による財政立て直しのために金融取引税(FTT)を求める声は高まっている

 

2)実際、FTTの中の株式取引税についてはフランス、イタリアはじめ相当の国で行われており、その実施に困難性はない

 

3)が、FTTはOECDやG20のような組織にとって優先順位は低いとのこと、現在の国際法人税のルール改革が優先されている。しかも、依然としてグローバル企業の反対も強い

 

4)とはいえ、「コロナにより必要になった収入を求める政府の窮状はこの税を採択することで局面が変わるだろう…(今のところ)EUでさえもコンセンサスを得る事は大変だろうが、個々の国々から変化を起こせるだろう」

 

●ITR誌でのFTT小論の全文(日本語・英語)

 

金融取引税は反対がありながらもCOVID-19により、その可能性が高まっている

FTTs more likely due to COVID-19 although objections remain

2021年8月18日 By Alice Jones

 

~各国政府はパンデミックの代償への支払策を探し求めており、金融取引税(FTT)を求める声は高まっている。しかし、論点が依然として残っている。~

 

税務専門家がITRに語った所によると、トービン税として知られている金融取引税(FTT)はCOVID19により失った収入を取り戻す政府の計画の一環として、今後数年間でその可能性が高まってくる。EUが国家間レベルでの課税を協議している間、スペインなど個々の国々は単独で行動をとってきた。

 

「FTTは長い長い間、浮き沈みを繰り返しながらやってきたが、今後目にする機会が多くなるかもしれない。」と税務・財務・会計のフリーランスコンサルタントであるJohn Bush氏は語っている。

(以下省略、続きはこちらをご覧ください

国際連帯税に関するアンケート結果(第1回)

ワクチン接種

 

●いっそう拡大する高所得国と低所得国とのワクチン格差

 

WHOは4日、コロナワクチンの3回目の接種につき、低所得国等でワクチン不足から9月末まで中止すべきと見解を出しました。実際、人口1人当たりのワクチン購入量は、カナダ10回強、英国8回などですが、アフリカ連合はわずか0.36回という状況です(8月5日付日経新聞)。しかし、高所得国はWHOの見解に構わず接種を行おうとしています。

 

低所得国などの支援への圧倒的な資金不足と特許の壁がグローバルなワクチン格差を招いています。前者の役割を担おうというのが国際連帯税であり、その実現が望まれるところです。

 

●国際連帯税に関するアンケートの結果

 

さて、先日「国際連帯税に関するアンケート」をお願いしたところ、386人からのアクセスがありまして、具体的な回答を38人の方からいただきました。まことにありがとうございます。みなさまの貴重なご意見、アイデアについては今後の国際連帯税活動の参考にさせていただきます。

 

なお、今回アンケート結果を第1回としたのは、これからもどしどしアンケートを実施し、みなさんのご意見等を聞いていこうと思っています。以下、結果についてご報告しますので、よろしくお願いします。

 

【Q1】国際連帯税に賛成ですか? 

 

・賛成 81.6% ・反対 5.3% ・どちらでもない 13.2%

 

【Q2】賛成/反対/どちらでもないの理由は?

 

1)主な賛成理由:

 

①不勉強なのですが…、気候危機にせよパンデミックにせよ、先進国だけで解決できる問題ではありません。そもそも先進国がその拡大により多くの責任がある事だと思います。先進国のリーダーシップや技術移転、資金援助のような上から目線の対策ではなく、フラットな関係で共に問題に取り組むためには国際連帯税のフレームがいいのではないかと考えました。

 

②国際間取引には国際的な目的税をかけるのが順当であり、また実態経済とかけはなれた自動高速投機の抑制にもなる。加えて、国境を越えた問題を解決するには国家政府を越えた地球政府機関の独自財源が必要だと考えるため。

 

③グローバルな問題を解決する上で、ODA資金やその亜種では、国の意向が強く働き過ぎるし、約束した拠出を守らない政府が多数存在するので、資金規模不安定となる。民間資金では利益に直結しにくい分野への投資は期待できない。したがって、旧来の公私の資金に依存しない新しい資金メカニズムが必要であり、国際連帯税はその可能性を有している。

 

④グローバルな課題の解決において、先進国の国際政治上のその時々の思惑に左右されることなく、持続的に資金が確保できる方策が必要であるため。

 

⑤炭素税などは国単位でも行っているところがありますが、まだまだグローバルには展開できていないのが現状ですし、為替税でケア階級の人にユニバーサルベーシックインカムを導入する一端を担うことを期待しております。

 

⑥各国の拠出金だけでは不測の事態に対応できない。実際、コロナ対応ですら失敗の連続だった。近代的な国民国家の枠組みにもそろそろ限界が来たのではないか、と改めて考えさせられた。二十一世紀、今こそ、世界的な視野を持ち、国際的な税の導入をすべきだと思う。

 

2)主な反対理由:

 

①意図は賛成できますが,徴収手段の構築が難しいと思います。

 

②学問的にまだ定まっていないから

 

③今時期尚早

 

【Q3】あなたの性別は?

 

・男性 65.8% ・女性 28.9% ・その他 5.3%

 

【Q4】あなたの年代は?

 

・10~20代 7.9% ・30~40代 34.2% ・50~60代 39.5% ・70代以上 18.4%

 

【Q5】主なアイデア・ご意見について

 

①賛同するNGO・NPOの世界的合流を通じ、国際連帯税の根拠となる国際条約成立の実現を目指し、取組みをより一層強化する。

 

②反対の立場に立ち得るステークホルダーの中から理解者や協力者を得て、幅広く捲き込んでいくことが、強硬な反対意見へのプレッシャーになっていく。

 

③炭素税、武器取引税、感染予防協力税、児童労働税など、SDGs問題解決のための課税を検討する。

 

 ④核保有国への核兵器開発を止める平和分担税など、無駄な軍事費を地球環境問題などに活かしていく。それには、核兵器禁止条約を国連加盟国に批准を求める運動を強化していく。

 

⑤まずは学問的な知見を国内で増やすことが肝要。

 

⑥中学校の道徳や自由研究、高校で言うところの総合的な学習に取り上げられるレベルを目指す。

 

⑦アイデアとしては、若者に訴え、世論を動かす為には、国際連帯税についてYouTubeなどに投稿する。

 

⑧まずは、先般(7/9~10)イタリア・ベネチアでの財相・中央銀行総裁会議(G20)合意を最終化するよう、日本政府に働きかける。合わせて法人最低税率引き上げ導入方策などさらなる国際課税ルールづくりのため、「国際連帯税創設を求める議員連盟」などにも具体的に提案し、働きかける。

 

⑨地方自治体からの請願を組織的に行う。国際的なネットワークを強化し、G7やG20の議題に取り上げるように働きかける。ダボス会議の活用も考慮する。

 

⑩ 国際連帯ってあまりにも抽象的なのでパンデミック対策税とかネーミングを工夫したらどうでしょうか?

 

 ⑪具体的に何に誰が課税する、あるいは使途はどのように決めるのか、また懸念されること、反対の立場の人たちの主張など、具体的な議論があれば、関連した議論が考えやすいものになると思います。

 

 ⑫今回のG20決議を踏まえて、国内の議論形成の場を早急に作る。

 

 

 

 

 

 

 

 

2021Summer:国際連帯税アンケートにご協力願います

グローバル連帯税フォーラム事務局では今回、国際連帯税に対する初めてのアンケート調査を行うことになりました。私たちは国際連帯税実現に向け、議員連盟も創設され、10年以上取り組んでおりますが、未だ実現には遠い状況にあります。

 

課税という行為がとりわけ国家主権と強く結びついていることが、実現を難しくする一つの要因です。現在私たちが置かれているのは、国境をいとも簡単に超えるコロナ禍の状況とその対策に要する資金の圧倒的な不足、そして同じく国境を軽々超える気候変動を始めとした課題に必要とされる莫大な資金の捻出が突きつけられているという状況です。しかし、各国がバラバラに課税主権の枠内で資金調達を行う現在のあり方では、とうていグローバルな課題に対処できないという現実があります。

 

一方、今月行われたG20でのデジタル課税などの「国際課税に関する歴史的合意(予定)」が日本メディアでも大きく取り上げられました。この背景にあるタックスヘイブンの問題やグローバル経済における課税の不公正さはまさに私たちが問題として掲げ、その是正に取り組んできたことでもあります。今このような世界的な「課税」問題に対し、未だかつて無いほど世論が大きく盛り上がっているタイミングではないかと考えております。

 

こうした中で、今日本でもとりわけ関心の高いSDGsや開発の資金に直結する、この「国際連帯税」というアイデアを、上記の国際課税ルールとともに今一度考えるべき一つのモメンタムに来ていると思い、今回のアンケートを行うことになりました。

 

このアンケートは国際連帯税というアイデアに対し、皆様が実際にはどのように考えていらっしゃるのか、率直な声を聴きたいというのが第一の目的です。

 

国際連帯税の簡単な定義も含めて、以下のアンケートリンクに掲載していますので、是非お力を貸して頂ければ、大変ありがたく存じます。

 

アンケート はこちらから ⇒https://questant.jp/q/0IGHEPZK

G20財務相等会議から(1)>法人課税の国際ルール改革、大枠合意したが

7月9-10日開催されたG20財務相・中央銀行総裁会合で、法人課税の国際的な改革(①デジタル<グローバル企業>課税、②国際的最低税率)について大枠合意しました。何よりも、現行課税ルールである、市場国=消費国に物理的拠点がないと課税できないという1国課税主義がグローバル化・デジタル化で機能していない中で、IT企業などグローバル企業に市場国も課税することができるルールが適用できるということで、「歴史的」出来事といっても過言ではありません。

 

とにかく、これまではGAFAなど巨大IT企業を筆頭にグローバル企業が好きなように税逃れをしてきました。例えば、アマゾンドットコムは日本国内に巨大な配送センターをいくつも有し、2兆円も売り上げながら、(工場や支店など物理的拠点がないということで)これまでほとんど法人税を払ってきませんでした(さすがに近年は一部払うようになったが)。上記、①②が最終合意されれば、グローバル企業の税逃れにもブレーキがかかると思います。

 

しかし、この大枠合意には様々な限界もあるようです。フィナンシャルタイムス(*)の記事から見てみましょう。次のようなものです。

 

1)対象となるグローバル企業があまりにも少ないこと(年商200億ユーロ超、利益率10%超が基準になりそうだが、これに該当する企業はたった78社しかない)

 

2)ほとんどの企業利益は従来通り物理的な拠点がある国で課税されること(利益率10%を超える利潤の20~30%が市場国の売上げに応じて分配するという制度設計のようなので、市場国の税収は圧倒的に少なくなる)

 

3)最低課税率が「少なくとも15%」とあまり高く設定できなかったため、そうした税率を採用する国に利益を移すインセンティブが残り続けること

 

4)銀行と資源会社が対象とされたこと(とくに銀行が除外とならなければ課税対象利益は2倍に膨れ上がるとの試算も)

 

(*)[FT]課税合意 多国籍企業へ網 簡素化に失敗、税逃れの道残す

 

ところで、FTでは指摘されていないが、今回の大枠合意には130か国・地域が参加しているが、グローバル企業を有しない途上国からすれば、上記2)からして国際課税改革の果実はほとんどないに等しいと言えます。中国を除く新興国にしても然りでしょう。多分途上国等から不満が出ていると思いますが、既存のメディアではほとんど報告されていません。

 

インドやインドネシア、トルコで実施中・実施予定のGAFAの売上高に課税するデジタルサービス税(DST)であれば、きわめてシンプルな制度であり、かつ公平に税収を得ることができますが、米国は国際ルールが合意されたのちにはDSTを取り下げるよう要望しています。

 

国際課税ルール改革は途上国に利益をもたらさず、金融取引税でカバーすべき

 

今回の大枠合意で税収を得るのは、順に「巨大IT企業の本社がある米国>グローバル企業の本社がある先進国と中国>中国を除く新興国>途上国」、となりますでしょうか。とするならば、別の税制改革でコロナ禍(ワクチンなど医療体制、債務問題など経済社会安定化)に苦しむ途上国を支援しなければなりません。それは「途上国支援のための金融取引税(国際連帯税)」についてまず金融市場が大きいのG7で共同実施することからはじめるべきです。もうひとつの国際課税ルール改革として。

【速報】G20への金融取引税要請レター、英仏メディアで報道

本日からベネチアでG20財務相・中央銀行総裁会合が開催されますが、これに向けFTT(金融取引税、国際連帯税の一種でもある)を要求する世界のNGOが「途上国支援のための金融取引税実施を要求する国際エコノミスト・専門家署名」活動を行い、G20当局に提出しました。

 

このことについて、7月8日付英ガーディアン紙が「Covid(コロナ)の回復に貢献する金融取引に課税を、G20に報告」と題し報道しました。米国の開発経済の第一人者のジェフリー・サックス氏や、タックスヘイブンの専門家であるフランスのガブリエル・ズックマン氏など、124名のエコノミストが署名しています。

 

日本からも諸富徹京大教授や上村雄彦横浜市大教授など10人のエコノミスト・専門家が署名しています。

 

報道全文はこちらから(要旨は下記参照)
Tax financial transactions to help Covid recovery, G20 told

 

また仏ルモンド紙には署名者の全リストとともに手紙が掲載されました。

 Fiscalité : « Une taxe sur les transactions financières pour générer des investissements publics d’urgence »(有料)

 

124人の署名者はこちらをご覧ください

 

なお、取組み期間がたいへん短かったので、締め切り後に署名された方が結構おられたようです(日本でも)。今後10月末開催のG20首脳会合に向けて様々な取組みを行っていくと思いますので、引き続きご協力をお願いします。

 

 

【ガーディアンの報道・要旨】
…前略…
発展途上国は、先月コーンウォールで開催されたG7サミットの結果に失望しており、今回のG20では、ワクチンプログラム、医療能力への投資、ゼロカーボン経済への移行に対する追加的な財政支援を求める機会になると考えています。

 

エコノミストたちの手紙によると、株式、債券、デリバティブ、外国為替は「かなり過少課税」になっており、今こそ富裕層が困窮している人々のために、より大きな貢献をするべき時だとしています。

 

「このような形でFTTを導入することは、法人税の最低税率を導入するという最近の合意を補完し、さらに発展させるものです。パンデミックにもかかわらず、金融セクターは好調に推移し、さらには繁栄を続けており、このような追加的な税負担を行う余裕があります」と述べています。
…後略…

 

※写真は、南アフリカの遠隔地に医療支援を行うTransnet-Phelophepa ヘルスケアトレイン(ガーディアン紙より)

 

途上国支援のための金融取引税を要求する国際エコノミスト・専門家署名活動

来る7月9~10日G20財務大臣・中央銀行総裁会議が伊ベネチアで開催されますが、これに対し途上国支援のための金融取引税実施に関する国際エコノミスト・専門家署名活動が提起されています。ご賛同される専門家等のみなさんはぜひ署名してくださるよう要請します。

 

*署名方法:Title(Prof/Dr/Directorなど)、Name Surname、Profession/Organisation、Country をお書きください。

 

例)10年前のG20カンヌ・サミット時の専門家署名活動での上村雄彦・横浜市大准教授(当時)の場合
Ass Prof/Takehiko Uemura/Associate Professor, International College of Arts and Sciences, Yokohama City University/Japan

 

*締切り:7月6日(火)午後9時まで gtaxftt@gmail.com にお送りください。

 
●途上国支援のための金融取引税を要求する国際エコノミスト・専門家署名活動
【タイトル】
「金融取引税を直ちに導入し、経済の安定性を向上させるとともに、特に発展途上国において、医療、雇用、気候変動の影響に要する費用への公共投資支援を要請する」

 

【本文要旨】
今回のCOVID-19危機では、富裕層の国々でも大きな困難を経験したが、貧困層の国々の多くは、健康危機が発生する以前から深刻な債務不履行に陥っていました。そして現在はいっそう危機的な経済状況にあり、債務の返済と国民への医療提供の間で生死を分ける選択を迫られています。

 

このような切実な状況に対応するため、私たちは、世界で最も裕福なセクターに目を向け、これまで十分に課税されてこなかった株式、債券、デリバティブ、外国為替などの金融取引に対して包括的な課税を行い、追加の歳入を確保することを強く求めます。

 

G20諸国のうち9カ国(アルゼンチン、ブラジル、中国、フランス、インド、イタリア、南アフリカ、英国、米国)では、すでに限定的なFTT(金融取引税)が導入されており、主に株式取引に対して非常に低い税率が設定されています。

 

我々は、FTT を導入していない国は直ちに導入し、FTT を導入している国は税率を上げ、課税対象を他の資産にまで拡大することを提案します。そうすることで、年間1,000億ドル規模の追加収入を得ることができます。そのうちの少なくとも50%は、発展途上国の保健、教育、将来のパンデミックへの備えの強化に充て、残りの50%は、国内で最も困っている人々、特に雇用の保護と提供のための支援に充てるべきです。
……
全文は、こちらを参照ください(英文)

第11回総会報告:議員立法で、各国NGOとの連携で連帯税実現を!

7月2日の日経新聞一面に「法人課税 大枠で国際合意」と大きな記事。そうです。国際連帯税もこのように国際合意されればワクチンほかの途上国支援資金を得ることができます。

 

前河野太郎外務大臣は「SDGs達成のために国際連帯税を国際連携で取り組もう」と呼びかけてきましたが、まさにワクチン接種で途上国・貧困国が取り残されている現状から、その必要性がいっそう高まっています(コロナ終焉のためには世界で110億回分のワクチンが必要だが、先のG7サミットではわずか8.7億回分の支援しか打ち出せなかった)。

 

さて、去る6月20日グローバル連帯税フォーラム(以下、フォーラムと略)第11回総会が開催され、21年度の運動方針などを決めました。総会の特徴を簡単に報告します。

 

1、20年度活動の振り返り

 

1)国際連帯税を取りまく状況のトピック:
外務省が10年連続して税制改正として要望していた国際連帯税実施を断念。一方、国際連帯税創設を求める議員連盟は議員立法の形で実現をめざすことを確認し、フォーラムもそれを支援しともに活動していくことになりました。

 

2)国際的なワクチン格差と国際連帯税の必要性:
コロナ感染に対処する有力なツールのひとつがワクチン。が、先進国などがワクチン囲い込み競争に走り、途上国が取り残さる「ワクチン格差」状況が露呈。その要因の一つが途上国支援のための資金の圧倒的不足があり、その面からも国際連帯税に必要性が明らかになりました。

 

2、21年度の活動方針

 

1)国際連帯税に関する議員立法への取組み
秋の臨時国会は、衆議院選挙があるため短期間開催が予想されるので、議員立法の準備に入り、来年の通常国会での実現を図るように体制を構築していきます。

 

2)G20サミットに向けて、国際署名や国際法人税改革問題の院内集会などを実施
議案書には「欧米の運動と連携し活動を強化」と一般的な提起しか述べていませんが、途上国支援や国内の貧困問題解決のための金融取引税を求める欧州や米国のNGOやシンクタンク、そして欧州の労働組合などが国際署名活動などを提起していますので、これに連動して活動していきます。

 

さらに国際法人税改革問題(デジタル課税や最低法人税率)につき、タックス・ジャステス・ネットワーク・ジャパンと連携して院内集会を持てるようにしていきます。

 

3) 連続オンラインセミナーの実施
総会の後に開催された諸富京大教授の「グローバル・タックス」問題のセミナーはじめ、国際連帯税に関係してくる金融や税制の問題のセミナーを開催していきます。

 

以下、詳細は議案書を参照ください。

 

 

【会員を募集しています】
フォーラムの運営は会員による会費によって成り立っています。ぜひ会員になっていただき国際連帯税実現に向けてともに歩んでいきましょう。個人会員になるには、1口3000円の年会費を納入していただきます。団体会員は1口10000円です。
※振り込んだ方は、その旨を gtaxftt@gmail.com までお知らせください。

 

<会費振込先>
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金子文夫氏「グローバル・デジタル課税の新局面」を転載

「経済分析研究会」(*)のメルマガに掲載された金子文夫先生の「グローバル・デジタル課税の新局面」を転載します。現在OECD/G20で議論が進められている国際的なデジタル課税問題の全体像を捉えるのに非常に参考となる論考です。元になった原稿はもっと長文とのことですが、読みやすくまとめてくれています。

 

 

グローバル・デジタル課税の新局面
            

 コロナ禍を契機に、世界的に新自由主義、市場原理主義の見直しが進行している。米国がコロナワクチンの特許放棄提案を支持することは以前では考えられなかったし、増税政策への転換もそうである。バイデン政権は、1980年代のレーガン財政に始まった小さな政府路線を覆し、大きな政府路線に進もうとしている。

 

コロナ禍から「バイデン革命」へ

 

 バイデン政権はまずコロナ禍対策の「米国救済計画」として、1人最大1400ドルの追加給付など総額1.9兆ドル散布を打ち出したが、これだけならばコロナ対策の大型財政出動として各国で実施されている。だが、バイデン政権はそれを超えてさらなる財政拡大を提起した。第一に、インフラ投資(道路・鉄道、EV設備、半導体供給網等)を柱とする2兆ドル超の「米国雇用計画」である。財源は法人税の増税であり、連邦法人税の21%から28%への引き上げ、多国籍企業の海外収益への増税などで15年間に2.5兆ドルの確保を目指すという。

 

 第二に、所得格差是正をねらった「米国家族計画」であり、10年間で財政出動1兆ドル(幼児教育、介護支援等)、子育て世帯減税8000億ドルを見込み、その財源として富裕層への増税(所得税、キャピタルゲイン増税等)10年間1.5兆ドルをあてるという。

 

 この「バイデン革命」、バイデノミクスともいわれる野心的な提案には議会、大企業、富裕層の抵抗が予想され、その通りに実現するものではないだろう。実際、法人税の28%への増税は25%に削減する動きも出ている。とはいえ、減税、小さな政府路線が格差を拡大してきた現状を転換させる意義は大きい。加えて、法人税増税はOECDが提起しているグローバル企業課税構想を前進させる画期的な意義をもっている。

 

OECDのグローバル企業課税構想の進展

 

 2008年のリーマンショック以後、GAFAなどのグローバル企業によるタックスヘイブンを利用した課税逃れが問題となり、各国政府が本格的に取り組むようになった。OECD租税委員会は2012年に「税源浸食と利益移転」(BEPS)プロジェクトをG20と共同で46カ国の規模で開始し、2015年に15項目の行動計画を作成した。このなかには、グローバル企業に税務当局への詳細な経営情報の提出を義務づけるといった画期的な内容が含まれている。

 

 2016年以降、BEPS行動計画で積み残されたデジタル課税問題についてBEPS包摂的枠組み会合(IF)が組織され、参加国は140カ国・地域へと拡張した。この取り組みのなかで、グローバル・デジタル企業への課税方式として、利用者の企業利益への貢献度に応じて各国で課税する英国案、収益を生む無形資産が作られた国で課税する米国案、売上高・資産・従業員数などに応じて各国で課税するインド案の3案が提起され、2019年10月には米国案をベースにした案にまとめられた。また、それに合わせて、タックスヘイブン対策として、各国共通の法人税最低税率を設定する案も提起された。

 

 これらの案が2020年には正式に140カ国の間で合意されるはずであったが、2020年1月、米国が現行課税方式と新方式を企業が選択できるとする提案を持ち出し、合意は遠のくことになった。これはトランプ政権の米国第一主義を反映した提案だが、この結果各国が個々にデジタル課税を導入する動きが強まっていった。

 

 2021年にバイデン政権が登場すると、米国国内の法人税引上げに合わせて、国際最低税率の設定、グローバル企業への新方式課税が復活することになった。米国は最低税率を21%とする案を示したが、アイルランドなど低税率国の反発に配慮して15%へと下げるもようである。グローバル企業への課税では、売上高100億ドル以上、利益率15~20%以上などの基準で世界100社程度を対象とした提案となっている。

 

グローバル税制への第一歩

 

 GAFAの課税逃れは巨額である。世界の主要企業5万社の平均税負担率25.1%と比べて、15.4%と6割しか負担していない(日経新聞5月9日)。米国をはじめ各国が新方式に取り組むのは、グローバル企業の課税逃れへの対策を確立し、増税政策を全体として推進していくためだろう。

 

 新課税方式は国際法人税の課税原則の大転換を意味している。むろん旧方式は存続しており、新方式はごく一部に導入されるにすぎないが、少なくともグローバル企業への課税が1国主義から多国間主義へと転換することは、グローバル税制への一歩前進を意味する。

 

 企業活動のグローバル化に対応して、課税権力もグローバル化する必要がある。その方式には、課税権力のネットワーク化と超国家機関の創出の2ルートがあるといわれるが(諸富徹『グローバル・タックス』岩波新書)、その第1ルートが現実化しつつある。第2ルートについては、EUが近い将来財政同盟をつくるとしても、それは国民国家の拡大であって超国家機関とはいえない。第2ルートは第1ルートが実績を積み上げた後に、いずれ姿を現すことになるだろう。

 

横浜アクションリサーチ 金子 文夫

 

(*)現代の理論・社会フォーラム経済分析研究会  

 

朝日新聞・社説「最低法人税率 減税競争に終止符を」を読む

本日(6月1日)の朝日新聞の社説にとても分かりやすく「(国際)最低法人税率」の課題について載っていましたので、紹介します。

 

ところで、米国が法人税率を21%から28%にまで上げることになれば、日本の同税が23%ということで日本の方が安くなります。大幅増税が必要ではないでしょうか。

 

実は法人税減税は投資拡大に向かうというより、貯蓄(内部留保)を増やすことに貢献したという世銀の研究グループのレポートも公表されています(5月8日付日経新聞)。実際、日本企業の19年度の内部留保475兆円にも上り、過去最大となっています。

 

新自由主義が行き過ぎて、とっても企業に都合の良い税制になっていたようです。「パラダイムの転換」が必要ですね(バイデン大統領の言葉)。

 

 

(社説)最低法人税率 減税競争に終止符を

 

 各国の法人税に共通の最低税率を設ける新たな国際ルールづくりが山場を迎えている。高齢化や低成長の長期化で、慢性的な財政赤字は多くの主要国が直面する課題だ。一刻も早く、法人税率の引き下げ競争に終止符を打たねばならない。

 

…(中略)…

 

 日本もその渦中にある。1986年度は43%だった法人税率(国税)が、23%に低下した。88年度は全税目中のトップだった法人税収が、今年度は消費税の半分以下の見通しだ。

 

…(中略)…

 

 注目されるのは、法人増税を主財源に巨額のインフラ投資を計画する米政府の提案だ。バイデン政権発足直後は最低税率として「21%」を求める構えだったが、最近は「15%以上」に後退した。やはり低税率国に同意を促すためとみられる。

 

 しかし15%でも、多くの日本企業が進出する香港(16・5%)やシンガポール(17%)よりまだ低く、実効性に疑問が残る。日本政府は利害が一致する国々とともに、より高い税率を目指して、粘り強く交渉して欲しい。

 

 新たな国際課税ルールをめぐっては、難航してきた米巨大IT企業などへのデジタル課税の交渉も前進している。新ルールを適用するかどうかの判断を企業に委ねるトランプ前政権の提案を、バイデン政権が撤回したためだ。先送りされてきた合意が現実味を帯びている。

 

 国家主権の根幹である税制は各国の裁量が尊重され、国際協調が遅れた。その結果、グローバル企業には課税逃れの動きも見られる。実効性ある法人税率の統一ルールが合意されれば、歴史的な成果と言えよう。国際社会が英知を結集すべき時だ。

コロナ禍の現状と未来>税財政やグローバル・タックス講演会など

いぜんとしてコロナ禍が続いていますが、その対策のために各国政府は莫大な財政支出を行い、今や日本を筆頭に各国とも持続可能な財政状況ではなくなりつつあります。そういう中で、米国は富裕層や企業への増税を柱にして、また欧州は環境関連の新税や企業増税などを柱にして、それぞれ財政支出や立て直しを行おうとしています(消費税=付加価値税や所得税の全般的な増税など大衆増税でないことに注目を)。

 

ところが、日本ではそのような税財政施策はもとより、議論ですら全くと言ってよいほど政府では進んでいません。5月25日の経済財政諮問会議での骨太方針(骨子)でも「プライマリーバランス黒字化などの財政健全化の旗を降ろさない」などと抽象的に述べるにとどまっています。

 

コロナ禍状況にあって、ポスト・コロナの、とりわけ税財政のあり方に関してどのように展望していくべきか。そのための材料となるシンポジウムや講演会が下記のように開催されます。まだ申し込みが可能ですので、参加してみたらいかがでしょうか(どの会合もオンラインです)。

 

1)シンポジウム「ポスト・コロナの経済・財政」

 

・日時:2021年6月7日(月)13:30~16:00

・主催:東京財団政策研究所 共催:株式会社 日本経済新聞社

・メインスピーカー

 森信茂樹(東京財団政策研究所 研究主幹)

 土居丈朗(東京財団政策研究所 主席研究員、慶應義塾大学経済学部教授)

 佐藤主光(東京財団政策研究所 主席研究員、一橋大学国際・公共政策大学院教授)

*詳細:https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3746 

 

2)【国会議員との対話集会】コロナ禍で拡大する格差・貧困問題に立ち向かう!~市民の立場から税制・財政を考える~

 

・日時:2021年6月7日(月)17:00~19:30

・主催:公正な税制を求める市民連絡会

・メイン報告

 バイデン政権の税制改革プラン 合田寛(同会幹事)

   提言 猪股正(弁護士,同会事務局長)

*詳細:http://tax-justice.com/  

 

3)講演会「グローバル・タックスの意義と可能性」

 

・日時:6月20日(日)14:30~16:30

・主催:グローバル連帯税フォーラム

・講師:諸富 徹(京都大学大学院経済学研究科教授)

   司会:上村雄彦(横浜市立大学国際教養学部(教養学系)教授)

*詳細:http://isl-forum.jp/archives/3147