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国際連帯税adv.‐t:金子宏東京大学名誉教授のごあいさつ

金子先生

 

2月25日「国際連帯税アドバイザリーチーム」立ち上げ会合に、昨年文化勲章を受章された金子宏東京大学名誉教授も駆けつけてくださり、参加者を激励しました。その時の先生の「ごあいさつ」を紹介します。

 

 

             【金子宏先生のごあいさつ】

 

ただ今ご紹介いただきました、金子でございます。予定の時間を過ぎて、遅れて参上いたしまして、大変失礼いたしました。ここに、先輩であり長年の友人である津島雄二さん(注:元自民党税調会長で国際連帯税創設を求める議員連盟の初代会長)がご一緒してくれました。昨年文化勲章を拝受いたしまして、非常に光栄なことと存じております。これは、租税法という法律、これは他の分野と比べると新しい分野でございますけれども、その分野の理論と体系を構築したということで、拝受いたしました。本当に光栄なことと存じております。

 

それから、今ご紹介がありました、国際連帯税に関しまして、私は国際人道税と呼んでおりますが、どちらも国際航空運賃に課税をするという点では共通でございます。1998年に日本の雑誌に国際人道税という名称で国際航空運賃に課税したらどうかという提案を含んだエッセイを書きました。そして、たまたま日本に来ておられたハーバード大学のロースクールのオールドマン先生に、こういうものを書いたと話しました。すると、国際航空運賃に課税するという提案は、まだ誰もしていないから、是非とも英語で発表するようにということで、早速アメリカのインターナショナル・タクゼーションに関する雑誌に掲載する手はずを整えてくださいました。私の拙い英語で英訳しましたが、オールドマン先生の弟子で、私の長年の知り合いのラムザイヤー教授が私の英語を見て、必要な訂正を施してくれて、ラムザイヤーさんが翻訳したくれたところ、見違えるほど内容が良くなりました。そして、それがアメリカの雑誌に載りました。

 

2006年でしたか、2000年代に入ってから、フランスの旧植民地の色々な人道問題を援助しているNGOを通じて、シラクさん(注:当時のジャック・シラク仏大統領)に対して強力に国際人道税を導入して、国際航空運賃に課税をすべきだと、そしてフランスの旧植民地においてマラリア根絶などの費用に充てる為に導入したらどうかと働きかけをしたようであります。シラクさんは最初反対しておりましたけれども、説得の結果導入されたようでありますが、フランスで導入されたものが、フランスの旧植民地に使うということで、UNICEFなど国際組織に寄付をするという私の提案とは違い、フランス政府の手で使うということになったようです。その後、いくつかの国と連帯して、共同で色々な事業に使っているようであります(注:UNITAID・国際医薬品購入ファシリティという国際機関を設立し、途上国の感染症対策のための医薬品等の購入を行う)。

 

私は、国際航空運賃というのはどこの国も消費税をかけることができないという理由で、つまり国外の消費でありますから、消費税の対象にならないためどこの国も課税してこなかったのでありますけれども、色々な宗教対立とか人種間の紛争とか、それによって子ども達が悲惨な目に遭っているという状況に照らして、今までどこの国も課税できないとして課税してこなかった国際航空運賃に課税をして、その税収をUNICEFに寄付して、UNICEFの手で色々な国でひどい目に遭っている子ども達の救済に充てたらどうかと考えた訳であります。

 

いくつかの国で、シラクさんが採用した国際連帯税という制度を採用している訳ですけれども、先ほど申しましたように、私の提案とは徴収した国が使うのか、それを国際組織に寄付をして国際組織の手で色々な、例えば国境なき医師団とか、国際的な活躍をしている、経験のある組織にお金を出してそしてそれを子ども達の救済に充ててもらうのかという違いがあるわけでありますけれども、私は今の国際連帯税がやがて税収を各国が使うのではなく、国際組織に使ってもらうというようになっていくといいなと考えています。

 

ですから、国際連帯税と国際人道税は決して違うものではなくて、私が同種の租税が将来的には徐々に国際人道税に発展してゆくことを期待している訳であります。国際連帯税に反対するわけではなく、むしろその発展に少しでもお役に立つことができればというふうに思っている次第でございます。歳を取ってしまいましたけれども、できる限りでご協力をしていきたいと思っております。ちょっと長くなりましたけれども、以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(大きな拍手)

 

★遅ればせながらお祝いの色紙を手交させていただきました。

「人間の安全保障25周年シンポジウム」(NY)で国際連帯税を発信=星野国連大使

3月5日付外務省報道によれば、「2月28日、日本は、ニューヨークの国連本部において、国連開発計画(UNDP),国連人間の安全保障ユニットや関係国との共催により、『人間の安全保障25周年シンポジウム』を開催しました」とのこと。

 

…中略…

 

閉会挨拶では,星野俊也国連大使が「日本はG20議長国として人間の安全保障に直結する教育・保健分野における取組を強化するとともに、『開発のための革新的資金調達リーディング・グループ』議長国として、人間の安全保障の実現とSDGsの達成に向けて必要な資金ギャップを埋めるために、国際連帯税を含む革新的資金調達の議論もリードしていく」、と発信されました。

 

<概要>人間の安全保障25周年シンポジウム
 (1)日時:2月28日(木曜日)13時15分~14時45分
 (2)場所:ニューヨーク・国連本部
 (3)テーマ:「人間の安全保障25周年:SDGsの達成への貢献を基に」
 (4)共催者:ノルウェー,南アフリカ,タイ,国連人間の安全保障ユニット,国連開発計画(UNDP)
 (5)プログラム概要
    冒頭ビデオメッセージ:アミーナ・モハメッド国連副事務総長,河野太郎外務大臣
    基調講演:アヒム・シュタイナーUNDP総裁,佐藤行雄元国連大使
    パネルディスカッション・質疑応答
※詳細は、こちらから

 

・共同通信も報道:「人間の安全保障」国連でシンポ

 

…前略…
 人間の安全保障は、グローバル化により飢餓や気候変動、難民問題など紛争以外に多様な脅威が生じたのを受け、国家の安全保障だけでなく、人間一人一人が安心して生きられることを重視する考え方。25年前に国連開発計画が本格的に取り上げ、日本は関連基金を設置するなど普及を主導してきた。

 

★写真は、共同通信より。キャプション:国連本部で「人間の安全保障」に関するシンポジウムに参加した国連開発計画のシュタイナー総裁(左端)、佐藤行雄元国連大使(右端)ら=2月28日、米ニューヨーク(共同)

国際連帯税アドバイザリー・チーム立ち上がりました!>金子宏先生も激励

 ◆IMG_2638 (1)

 

昨日(25日)日本リザルツ会議室において、「国際連帯税アドバイザリー・チーム第1回会合」(以下、チームと略)が開催され、国際連帯税議員連盟(以下、議員連盟と略)、国際機関(*)、財団、学術関係者、NGO・市民団体、企業、労働組合、外務省など各セクターを越えて50人ほどが参加しました。

 

チーム設立は、昨年11月の議員連盟の総会で決められました。したがって、チームの役割は議員連盟の活動に対してアドバイス(助言、提言)を行うというものです。が、それにとどまらず様々なセクターの創意を結集し、国際連帯税を日本で実現していくため、独自活動も射程に入れ活動していくことをめざしています。

 

第1回会合の議事ですが、まず議員連盟から、石橋通宏事務局長(参議院議員)が出席しあいさつを行うとともに、チームの役割について、具体的には「趣意書」と「規約」について提案しました。チームの目的は次の通りです(縮めて表記)。

 

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 (1) 国際連帯税の実現に向け、提言、情報発信、世論喚起に尽力すること
 (2) 議連が主催/共催する会議等に出席し、勉強会等での講師を務めること
 (3) 当面チームは、議連のもとに活動し、近い将来議連と連携しつつ独自に活動を展開していくこと

 

続いて、田中徹二・グローバル連帯税フォーラム代表理事からチームの活動について提案しました。内容は、「シンポジウムや集会への賛同と支援」「事務局設置」「理論・制度部会の設置」です。

 

両提案に対して、それぞれ議論を行い、全体の拍手で承認されました。(詳細は、後日報告します)。

 

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続いて、外務省は甲木地球規模課題総括課長が出席し、河野大臣の思いと今後の課題について報告がされました。

 

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この会合のもうひとつの目的として、昨秋文化勲章を受章した金子宏先生からごあいさつをいただくことでした。先生は体調がすぐれていないにもかかわらず、みなさんに御礼をということでご出席くださいました。先生の持論である国際人道税誕生の経緯、フランス提唱の連帯税への感想などが述べられ、「今後とも及ばずながら国際連帯税実現に向けみなさんとともにがんばっていきたい」と表明されました。

 

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また、金子先生の朋友ともいえる津島雄二元厚生大臣(議員連盟初代会長)も出席され、ごあいさつされました。実はお二人とも1930年生まれでして、88~89歳というご高齢ですが、国際連帯税実現への思いは強く頭が下がります。

 

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ともあれ、チームはこれで発足しましたので、ご関心のある人はぜひチームにご参加ください。

 

(*)国際機関からはオブザーバーを含み、以下の方々が出席されました。
ユニセフ(UNICEF)、国連開発計画(UNDP)、国際労働機関(ILO)、国連世界食糧計画(WFP)、国連広報センター、国連UNHCR(難民高等弁務官事務所)協会、ユニットエイド(UITAID:国際医薬品購入ファシリティ)

「議長国として“国際連帯税”導入へ議論をリードしていきたい」河野外相

河野外務大臣は2月23日、日本青年会議所主催の「JCI(国際青年会議所)金沢会議」へ出席し基調講演を行いました。その内容についてNHKテレビや共同通信が報道していますので、紹介します。

 

講演の後段、次のように発言しました。「河野大臣は、ことし日本が開発のための資金調達の方法などについて話し合う国際会議の議長国になったことを紹介し、為替取引など国際的な経済活動に課税して温暖化対策などの財源に充てる『国際連帯税』の導入に向け、議論をリードしていきたいという考えを示しました」、と。ここでの「国際会議の議長国」とは、国際連帯税など革新的資金調達政策を率先して進めていこうという政府間のグループ、つまり「開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループ」(2006年設立、常設事務局はフランス外務省)の議長国に日本がなった、ということです。

 

ともあれ、青年会議所に参加する全国の青年経営者は、SDGsと為替取引税など国際連帯税の必要性を心底理解してくれたらうれしいですね。

 

 

【NHK】河野外相 国連のSDGs達成に中小企業の協力呼びかけ

 

河野外務大臣は金沢市で講演し、世界の貧困や格差の撲滅などを目指す国連の「SDGs」=(エスディージーズ)「持続可能な開発目標」を達成するためには、政府だけの取り組みでは限界があるとして、中小企業や民間団体に協力を呼びかけました。

 

この中で河野外務大臣は、世界の貧困や格差の撲滅などを目指す国連の「SDGs」=「持続可能な開発目標」について「世界中の誰ひとり取り残すことなく発展しようというのがSDGsの考え方で、日本が提唱してきた考え方とぴったり合っている。だからこそ、日本がリーダーシップをとる価値がある」と述べました。

 

そのうえで、日本の中小企業が発展途上国で浄水ビジネスに取り組み現地の雇用も生み出している例などを挙げ、政府だけの取り組みでは限界があるとして、中小企業や民間団体にも協力を呼びかけました。

 

また、河野大臣は、ことし日本が開発のための資金調達の方法などについて話し合う国際会議の議長国になったことを紹介し、為替取引など国際的な経済活動に課税して温暖化対策などの財源に充てる「国際連帯税」の導入に向け、議論をリードしていきたいという考えを示しました。

 

【共同通信】SDGs実現へ呼び掛け JCI金沢会議、河野外相が講演

【外務省】河野外務大臣の日本青年会議所主催の「JCI金沢会議」への出席

 

★写真は、JCI金沢会議のもよう(外務省HPより)

 

金融取引税は近年になく現実的である可能性>米第116回議会で

米国では1月から第116回連邦議会が行われていますが、与野党の溝は深くて新たな経済法案を成立させることがとても難しくなっています。そういう中で与野党双方が歩み寄りやすい政策のひとつとして(老朽化が甚だしい)インフラストラクチャーへの投資がある、と指摘されています。

 

そのインフラ投資の財源に金融取引税(FTT)を充ててはどうか、という提案が出されています。FTTであれば共和、民主の両党も乗りやすく、したがってかなり現実性のある政策ではないか、というのです。提案者は、K&L Gatesという国際的な業務も行っている米国の法律事務所のメンバーです(東京にも事務所あり)。内容を見てみましょう。

 

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インフラ投資には1兆ドル程度の資金が必要だが、財政的には厳しいので、株式・債券取引への課税によって資金を作ることができ、その実現性はある(というのがまずもってK&L Gates側の見立て)。理由は以下の通り。

 

1)たいへん低いFTTレートでもすごく税収を上げることができること
 ⇒毎日大量の取引があり、広大なタックスベースがある。株式取引の0.5%、債券取引の0.1%、デリバティブ取引の0.005%という税率で、10年間に5000億ドル~1兆ドルの税収が見込まれる。

 

2)FTTは(税が取られても)見えにくいこと
 ⇒最初は取引を行う仲介者によって税が支払われるので、投資家はごく少額の請求には気づかないだろう。

 

3)FTTはユーザー料金と呼ぶことができること
 ⇒FTTを伝統的な税金ではなくユーザー料金(金融機関を使う利用料)として構想すると、そのような料金は共和党にとって受け入れやすくなる。FTTが適切に記述されていれば、FTTを超党派的に支援する機会ができる。

 

4)FTTはすでに米国でおよび世界中で存在していること
 ⇒米国は年間約15億ドルを証券取引委員会(SEC)に手数料として払っており(100万ドルあたり13ドル、0.0013%の課金)、オーストラリア、ドイツ、インド、韓国などの他の国でも存在している。

 

5)FTTはメインストリートを舗装するために(インフラ整備の意?)ウォールストリートに払わせる方法であること
 ⇒FTTの収益はインフラ開発などの超党派的政策を推進するためにも使用できる。両党もアメリカのインフラを活性化させることには興味を持っているが、それの資金提供の方法で違いがある。従って、FTTの収益をインフラに分配することは双方にとって非常に魅力的になる。

 

結論として、このように考えるとFTTがこの第116回議会で、近来になく現実的に使える可能性ある、ということです。

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原文:【JD Supra】Will a Financial Transaction Tax Be Used to Pay for Infrastructure?

 

【寸 評】
1)FTTについては、当然ウォールストリートからの猛烈な反発が出ると思うので、共和党がこれに耐えうるかは疑問なしとしませんので(ウォールストリートからの政治献金は民主党にも相当流れている)、実現性という点からいえばどうでしょうか。とはいえ、トランプ大統領の公約であるインフラ投資が財政難のため手を付けることができないでいるという点に着眼したのは面白いですね。

 

2)またFTT提案が、このような大手弁護士事務所から出されることも意義があると思います。

 

3)さらにこうした米国でのFTT議論の盛り上がりが、欧州のFTT計画にも跳ね返り少なくとも10か国での実施に弾みがつくこと、そしてそれが日本にも押し寄せ議論が高まることを期待します(日本では連帯税として)。

通常国会での河野外相の外交演説>革新的な資金調達メカニズム創設の訴え

昨日(1月28日)から第198回通常国会がはじまり、冒頭安倍首相の施政方針演説に続いて、河野太郎外務大臣の外交演説も行われました。演説内容は、内閣方針である6つの課題(日米関係、近隣諸国等との関係の強化、多角的貿易体制の堅持、地球規模課題の解決への貢献、対中東政策の強化、「自由で開かれたインド太平洋」の実現)についてと、もうひとつ「河野大臣の独自的課題」について、でした。

 

●全演説中内閣課題が31%、独自的課題が69%占める

 

ざっと演説を読みまして、ユニークなのは内閣方針より「河野大臣の独自的課題」ともいうべき内容の圧倒的多さでした。正確には「外務大臣としての河野氏の独自的課題」と言うべきでしょうが、「今回は、これら(注:6つの重点的課題)に加えて、いくつかのことを申し上げたいと思います」という部分ですね。

 

字数で言いますと、前者が2318文字、後者が5127文字で、それぞれ全演説中31%と69%を占めています(ただし、冒頭あいさつと最後の結びの部分は除く)。ちなみに、前回の第196回国会での外交演説(2018年1月22日)では、重点6課題を述べるのみで、独自的課題を述べてはいません。

 

●外交の基本、人間の安全保障を中心とするODAそして革新的な資金調達メカニズム

 

さて、独自的課題の部分を読みますと、まず外交の基本が次のように述べられています。「日本は、軍事力を背景とした外交を行うことはありません。一方、我が国外交の大きな柱であるODAはピークからほぼ半減しています。知恵と工夫による我が国の『裸の外交力』が試される時代になりました」。

 

またODAに関しては、「背伸びをせず、身の丈にあった、人間の安全保障を中心とする日本らしいODAを目指します」と述べています。

 

そしてさまざまな課題がある中で、SDGs達成のために次のように訴えています。【注:「革新的な資金調達メカニズムが必要です」⇒「国際連帯税など革新的な資金調達メカニズムが必要です」と述べてもらった方がより明示的でしたが…】

 

「今や世界的に難民、避難民の数は約7,000万人に達し、第2次世界大戦後最多となっています。気候変動の影響で台風や集中豪雨などの自然災害は激甚化することが予想されています。2030年までにSDGsを達成するためには、毎年2兆5000億ドルの資金ギャップを克服しなければならないと言われていますが、我が国を始め、先進国の多くは厳しい財政制約に直面しています。そのため、革新的な資金調達メカニズムが必要です。グローバリゼーションから利益を得た者が、その利益の一部を人道支援のために国際機関に提供することが求められます。国際的な取組みの進展状況等を踏まえつつ、グローバリゼーションがもたらす利益の一部を活用し、それを地球規模課題の対策に充てる国際的な資金調達の方法は議論を深める価値のある一つのアイデアです。日本は、こうした議論の先頭に立ってまいります。」

 

第198回国会における河野外務大臣の外交演説:全文
https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/pp/page3_002672.html

 

★写真は、昨年の第196通常国会で外交演説を行う河野外相(自由民主党のHPより)

諸富教授、金融取引課税などグローバルタックスを語る(朝日新聞)

Professor Moromi

 

25日の朝日新聞のオピニオン欄に「(耕論)誰でも10%なんて 慎結さん、冨田和成さん、諸富徹さん」と題し、消費税と税の公平化問題で3人に論考が載っていました。その中で、諸富徹・京大教授がグローバルな視点で考えたらどうかということで、国境を越える金融取引への課税などを議論すべきと提案していますので、紹介します。(記事をクリックすると大きくなります)

 

■仕組みの議論、世界全体で 諸富徹さん(京都大学大学院教授)

 

【引用 はじめ】

…前略…

 といって、消費税や社会保険料の比率を野放図に上げていくことはできません。所得の低い人、貧しい人も食料など生活必需品を買わねばならない。でも、税率を上げれば収入に占める生活必需品購入費の割合が高くなり、結果として高所得者より税の負担率が大きくなってしまう。逆進性という欠点があるのです。

 

 税の構造変化の中で、今、考えたいのがグローバルタックスという仕組みです。経済活動が国境を越え、税収が国際的な公共財を供給するための財源になっている、などの特徴がある税の一つです。

 

 (フランスの航空券連帯税等…省略)

 

 日本もグローバルタックスを外為取引や国境を越えて商われる金融商品の売買に取り入れ、消費税や社会保険料も負担できない国内の貧困者の支援の財源に充てることを検討してみたらどうでしょう。

 

 格差社会に苦しむ弱者や子どもたちの救済は、公共的な使命です。無論、様々な困難はありそうです。13年に欧州連合(EU)の有志国が金融取引などへの課税を導入しようと大枠では一致しましたが、反対する関係業界から激しいロビーイングを受けて、宙に浮いています。

 

 しかし税財源が不足し、公正さが損なわれる中、日本を含め世界で議論すべきです。

 【引用 おわり】

 

【朝日新聞】(耕論)誰でも10%なんて 慎結さん、冨田和成さん、諸富徹さん

今秋、消費税が上がる。誰でも同じ10%。低所得者ほど負担が重いのはなんだかいびつだ。とはいえお金持ちが多めに払うには限界があり、税逃れもある。税の公平性、どうすれば?

河野外相、革新的な資金調達に関するLGの議長国就任を報告

河野太郎外務大臣が昨日の記者会見で「(開発のための)革新的な資金調達に関するリーディンググループ」への議長国就任を記者のみなさんにご披露しました。が、これを報じているメディアはありませんね。ともあれ、会見を紹介します。

 

【河野外務大臣会見記録 平成31年1月18日】

  
◎冒頭発言
(1)新年挨拶
【河野外務大臣】あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。2019年,即位の礼,G20,TICAD,さらにラグビーのワールドカップ等,外国から多くの要人も来日される日程が目白押しでございますので,外務省としてもしっかりそうした機会を有効に活用して外交を進めてまいりたいと思います。
…中略…

 

◎今年の抱負
【NHK 奥住記者】今年1回目の会見ということで,今年の抱負を伺いたいのですが。特に日露交渉,日露平和条約交渉とか日韓関係,北朝鮮の諸問題について,どのように臨むのか。また最近,総裁候補としてよく名前が巷間あがりますけれども,そういったことも踏まえてどのような1年にしたいかお聞かせください。

 

【河野外務大臣】日露の平和条約交渉も始まりましたので,しっかりとまとめていけるように努力をしていきたいと思っております。日韓は様々,懸案が山積みでございますが,しっかりと両国関係を維持できるようにですね,早期にこの問題を解決してまいりたいと思います。
 北朝鮮に関しましては,国際社会としっかりと連携をして,非核化ならびにあらゆる射程のミサイルの廃棄,そして拉致問題の解決に向けての努力をしていきたいと思います。
 このたび革新的な資金調達に関するリーディンググループの議長に日本がなりましたので,このSDGsの達成のためのファンディング・ギャップを含め,こうした問題についてリーダーシップをしっかりととっていきたいというふうに思っております。
 総裁候補と言っていただくのは非常にありがたいと思いますし,これはいつかしっかりと総理総裁になって自分の目指す政策の実現をしたい,これは政治家誰しもが思うことだと思いますので,いつの日かしっかりとやってみたいと思いますが,当面は自分のやるべき仕事が山積みでございますので,しっかりと自分の仕事をやってまいりたいと思います。
…後略…

金子 宏先生(18年度文化勲章受章者)からの便り

国際連帯税の理論的な指針とも言える「国際人道税」を提唱した金子 宏先生(東京大学名誉教授 租税法学)が昨年度文化勲章を受章されました。それで、早速グローバル連帯税フォーラムからもお祝いの電報を打たせていただきました。

 

年が明けてから、先生より御礼の封書が寄せられまして、それに手書きで次のように書かれていましたので、ご紹介します。

 

『私も体調が回復するのをまってお手伝いしたいと思います』

 

先生は御年88歳になられていますが、なお人道税(連帯税)実現に向けて頑張ろうとしている姿勢に頭が下がります。先生! 体調が回復されましたら、ぜひご講演などをよろしくお願いします。

 

★先生の国際人道税等の資料はコチラから読むことができます。

『人道支援の税制創設を』(政府税制調査会・専門家委員会・国際課税小委員会 2010 年)

 

 

欧州10か国FTT(金融取引税)再起動か?>独仏で作業進行中!

ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領の政治的な求心力は低下していますが、昨年6月の両首脳会合で2021年以降中期のユーロ圏財政確立のための一手段として金融取引税導入も射程に入れ合意していました。しかし、その後準備が遅れていまして、ようやくここにきて「両国はユーロ圏を強化するための努力の一環として、7年以上もの間続いてきた税の交渉に弾みをつけようとし…新しいドラフトを作成した」(下記、ブルームバーグ)ようです。

 

内容は、現在フランスが実施している株式取引税をベースに制度設計を考えているようで、具体的には「時価総額が10億ユーロ(12億ドル)を超える企業の株式」取引(購入)に0.2%課税するというもの。また税収はFTT参加国で一定程度分配し、小規模国も利益を得るようにするようです。

 

【bloomberg】Germany, France Push for 0.2% Tax on European Stock Trades

 

昨年6月の独仏首脳案では、欧州改革の一環としてのユーロ圏財源確立のためのFTTでしたが、今回の新しい案ではまず2013年にFTTが合意された10か国(当初11か国)で実施していくというもののようです。

 

欧州委員会による欧州FTT提案は最初が2011年でしたから(*)、それから時間的に8年ほども経とうとしています。また、今回の案では、取引額が最も多く、したがって税収が最も上がるはずのデリバティブ取引が外されていますので、かなり小型のFTTになろうかと思います。またFTTによる税収は財源補填が主目的ですから、国際連帯税のような役割を負ってもらうまでにはいかないいようです(各国の開発大臣クラスからそういう要望も上がっていますが)。金融セクター、とくに欧州の大銀行はどこもデリバティブ取引が最大の収入源ですから、相当の抵抗があったと思われます。

 

(*)2011年欧州委員会提案とその後:全欧州規模で、株・債券・デリバティブ取引に課税するという内容。が、英国等の反対でとん挫してしまい、2013年「強化された協力」手続きを用いて11か国で先行実施するということになった。

 

ともあれ、まずは実施することを優先して低率の株式取引税から行っていくというのが独仏当局の考えのようです。小型FTTでも各国が課税主権の壁を越え、共通の税制を敷くことになれば(しかもその税収の一部をシェアし合う)、共通予算(財政)の第一歩になるということで税収以上に意義のあるシステムになるでしょう。注目していきましょう!