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近日中にWEBサイトの名称を変更します(グローバル連帯税フォーラムへ)

20154月に開催された国際連帯税フォーラム第5回総会で、組織名称を「グローバル連帯税フォーラム」に変更しました。したがって、それに伴ってWEBサイトの名称も変更しなければならなかったのですが、まことに手が足りなく今日まできてしまいました。この点お詫びするとともに、近日中に名称を変更する予定ですので、引き続き当WEBサイトをご利用くださるようお願いします。(グローバル連帯税フォーラム・事務局)

 

欧州FTT(金融取引税)の現状、2月の国際電話会議から

独FTT

 

2月のFTT国際電話会議の内容をお知らせします。欧州では、残念ながら昨秋の合意からの進展はなく、「主要部分の詳細を詰めていく作業はまだ始まっていない」とのことです。そういう中で、ドイツでは「FTTカウント時計」キャンペーンを実施中とのこと。以下、会議の内容です。

 

 

金融取引税(FTTs)に関する市民社会国際電話会議 ― 2017年2月2日
(抜粋・要約)

 

1、欧州の近況: BY DAVID HILLMAN (STAMP OUT POVERTY) & PETER WAHL (WEED)

 

・モスコヴィシ前仏財務相・現EU欧州委員会租税担当委員は、来るフランス大統領選(4月)とドイツ総選挙(10月)がFTTの最終合意に向けた追い風となっている(妥結できれば現政権にとってプラスになる)という見方を示しているが、選挙プレッシャーが本当に功を奏しているかは怪しい。

 

・昨年の秋に合意したEU FTTの「主要部分(コア・エンジン)」から詳細を詰めていく作業はまだ始まっていない。コア・エンジンの法案化には着手したものの壁にぶつかっている。

 

・参加10カ国のうち、ベルギーとスロベニアが対極の立場にある。ベルギーは年金と保険(生保および損保)の双方を課税対象外としたいが、スロベニアは税収確保の観点からいかなる例外も認めない立場をとっている。

 

・これまで長らくFTTグループの取りまとめ役を買ってでていたオーストリアは、そろそろ限界にきている。

 

・ドイツとフランスの金融セクターはそれぞれ自国政府に対して、Brexitによってイギリスからビジネスを呼び込めるかもしれないチャンスをFTTが台無しにしてしまうとプレッシャーをかけている。これに対しAvinash Persaud(注:シンクタンクIntelligence Capitalの所長)は、小規模なFTTであれば銀行は移転しないだろうと指摘している。

 

・交渉が長引き遅れているようにも見えるが、これはEnhanced Cooperation(強化された協力)手続きの通常のスケジュールであることを忘れてはならない。同手続きは過去2回しかなく、一方(統一特許)は10年間、もう一方(家族法)は5年間かかった。

 

・ドイツでは「FTTカウント時計」なるキャンペーンを実施中。合意締結が叶わなかった昨年12月6日からどれだけの税収が失われたかを積算しているもの。

 

・2017年3月25日のEUのローマ条約調印60周年には、EUの未来に不可欠なものの一つとしてFTTを求める署名運動を実施する予定。

 

2、アメリカの近況:BY SARAH ANDERSON (INSTITUTE FOR POLICY STUDIES)

 

・最近実施した上院議会職員向けの会合の参加は上々で、FTTに焦点を当てたイベントやTake on Wall Streetキャンペーンの他の重要事項を推し進めていく計画を立てた。これは進歩派議団員(Progressive Caucus)の予算案に入る予定。もしかすると民主党予算案にも入るかもしれない。

 

3、G20:

 

・ショイブレ独財務相はすでに提出していたサミット議題案をトランプ政権が誕生したのち変更し、FTTを議題から外した。

 

・次回会合:2017年3月2日

 

(翻訳:K.TSUDA)

【ご案内】シンポジウム「MDGsからSDGsへ:変化する市民社会の取り組み」

グローバル連帯税フォーラムも会員団体として、ならびに運営委員として携わってきた「動く→動かす」が、この度331日をもって解散し、その活動を「SDGs市民社会ネットワーク」(通称、Sネット)に移行することになりました。

 

「動く→動かす」は世界の貧困根絶などを目標としたミレニアム開発目標(MDGs)の達成のために市民社会側から活動してきました。が、昨年9月ポストMDGsとして「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されたことを機に、活動分野を拡大するとともに新たな組織としてSネットを出発させます。

 

ご案内のように、MDGs は主に途上国の課題を目標としていましたが、SDGsは途上国・新興国・先進国問わず普遍的な持続可能な開発のための課題を目標とするものです。それで日本政府も安倍首相をトップに「SDGs推進本部」を設立し、先にその活動のためのガイドラインを採択しました(かなり不十分なものですが)。

 

来る228日に「動く→動かす」は総会を行い解散に向けての手続きを踏むとともに、その総会後下記のような(記念)シンポジウムを開催します。こちらのシンポジウムにはSDGsに関心をもつ市民であればどなたでも参加できます。

 

●シンポジウム参加希望者は、今月10日までに(時間が短くてすみません)、以下から連絡をくださるようお願いします。フォーラム参加者としてまとめて申し込みます。

 2.28シンポ参加希望」と明記しinfo@isl-forum.jp から連絡ください。

 

 

シンポジウム「MDGsからSDGsへ:変化する市民社会の取り組み」

 

 ◎日時:2017228日(火)15:10-17:00

 ◎会場:ジーニアス貸し会議室東京秋葉原 (秋葉原駅より徒歩4)

    ・住所:東京都千代田区神田和泉町1-12-17 久保田ビル5階

     ・地図: http://genius-seminarroom.net/access/

 

<開催主旨>SDGsの重要性、MDGsからSDGsへの時代の変化の中で、市民社会の取り組みはどう変わるか ?

 

MDGs時代の市民社会のアドボカシーやキャンペーンを支えた「動く→動かす」から、SDGs時代の幅広い市民社会の取り組みのプラットフォームとなることを目指す「SDGs市民社会ネットワーク」に移行することの意義について、「動く→動かす」の運営委員や、開発分野、環境分野などに取り組むNGOのオピニオン・リーダーたちから発題します(パネル・ディスカッション形式)。そのうえで、SDGs時代の市民社会のアドボカシーやキャンペーンの在り方について、ワークショップ形式で皆さまのビジョンやアイデアを出していただき、今後の展望についてまとめていきます。(了)

外務省「国際連帯税の在り方に関する有識者会議を発足」

下記共同通信の報道にもありますように、外務省は国際連帯税の在り方に関する有識者会議を発足させ、3月中に提言をまとめます。有識者会議の座長は寺島実郎・日本総合研究所会長、座長代理は上村雄彦・横浜市大教授が務めています。どのような提言が出るか注目しましょう。

 

これまで国際連帯税に関する有識者会議は、2009~2010年、2014~2015年の2回行われましたが、どちらも「国際連帯税創設を求める議員連盟」からの要望でした。が、今回は外務省(日本政府)が正式に会議を組織したもので、その提言は公的性格を帯びることになります(もちろん、第一次・第二次提言の内容が劣るということではない)

 

【共同通信】外務省「国際連帯税」で提言へ ODA財源確保、影響力低下懸念
2017/01/14
 外務省は、削減傾向にある政府開発援助(ODA)を巡り、新たな財源として期待している「国際連帯税」の在り方に関する有識者会議を発足させた。3月までに提言をまとめる。外務省幹部が14日、明らかにした。国際貢献の切り札と位置付けるODAの財源が十分に確保できなければ、日本の影響力低下を招くとの懸念が背景にある。政府や与党に慎重論も根強く、世論を喚起したい考えだ。

 国際連帯税はフランスや韓国が既に導入しており、それぞれ徴収した税金を途上国支援に充てている。国際機関を経由して後押しするケースもある。

 

なお、上記共同通信の記事をロイター通信も配信しています。

 

 

スティグリッツの洞察「シャドー・エコノミーを乗り越える」

Jスティグリッツ氏の報告書「シャドー・エコノミーを乗り越える  0vercoming the shadow economy」(201611月発表)の意義について、合田 寛(公益財団法人政治経済研究所主任研究員)さんに寄稿していただきました。

 

タックスヘイブンの闇を暴露したパナマ文書問題は実に世界的な衝撃をもたらしました(そのため、昨年どのマスメディアも10大ニュースのひとつに挙げていた)。その震源地であるパナマ政府は名誉挽回とばかりに独立専門委員会を立ち上げ、スティグリッツ氏らを委員に迎えました。ところが、土壇場に来てパナマ政府は委員会の調査報告書の公表を非公開にする決定をしてしまったため、ティグリッツ氏らは抗議して委員を辞職することになりました(昨年8月)。

*【ロイター】パナマ文書調査委、スティグリッツ氏らが辞任

 

今回の「シャドー・エコノミーを乗り越える」と題した報告書は、そのような経過をへてまとめられたものです。合田さんは次のように言っています。「この報告書にはタックスヘイブンに対するたたかいの歴史やグローバル経済におけるその意味など、詳しい解説が盛り込まれていますが、特に注目されるのが、タックスヘイブンをなくすための10の提案です」。

 

タックスヘイブンの存在は、多国籍企業や富裕層の税金逃れを可能にし、世界的な規模での格差拡大、ひいては民主主義の破壊をもたらしています。引き続きこの問題に取り組んでいきましょう。

 

スティグリッツの洞察「シャドー・エコノミーを乗り越える」を読む  ⇒ PDF

 

 

 

 

 

【意見】井手栄策ビジョンの課題は何か? 最大の既得権者は?

堤さん・井手さん

 

このところ井手栄策・慶応大学教授のメディアへの登場の機会がぐんと増えています。東京新聞元日号の堤未果さんとの対談『対立 政治が利用  みんな 受益者に』は見開き2ページというボリューム満点の記事でした(WEBサイトに載っていないのが残念!)。

 

対談では井手節(ビジョン・理念)満載です。そのエッセンスを紹介します。

 

今までの経済の議論は経済成長、財政再建、格差是正の三つだけ。でも、財政再建や格差是正を犠牲にしてあれだけアベノミクスで頑張ったけれど、経済は成長しませんでした。いつまでも成長に頼り続けるのか。やはり、第四の選択肢、「あなたたちが安心して生きていける社会をつくる。そのためにはお金がかかる。そのお金を誰がどう払うのか」という選択肢を出さないと、若い人たちがかわいそうです。

 

…大事なのは未来の不安をなくすこと。税を払って社会に貯蓄して、安心して生きていける状況をつくりましょう、と(引用者挿入:そうすればお金を消費に回すから景気も良くなる)。「すべての人が受益者になる」という僕の戦略は、既得権をなくすこと。社会的な構成に最もかなうし、所得制限を設けない普遍的な給付なので行政も効率化できます。実は多くの日本人も気づき始めています。

 

これに対し堤さんは次のように言います。

 

これに真っ向から反論する人はいないのでは。お話をイメージすると、そういう社会に住みたいと、幸せな気持ちになります。

 

そうなんです。井手教授のビジョン・理念を読んでいると、本当に目から鱗が落ちて、希望が湧いてきます。しかし、課題はないのかと言いますと、そのビジョン・理念の先にあるような気がします。

 

つまり、対談で述べているところの「既得権をなくすこと」ですが、結論から言えば、最大の既得権を持っているのは大企業であり、富裕層ではないのでしょうか。これらの層は端的に言って、タックスヘイブンを利用でき、税金を払わない、または過小に払うことが可能だからです。またとくに重厚長大産業に有利となっている租税特別措置法による法人税の切下げ問題もあります。詳しくは、田中秀明・明治大学教授の「国民不在の意思決定過程に見る28年度税制改正の課題(下)」を参照ください。

 

井手教授の「既得権をなくすこと」で一番言いたいことは、例えば“格差是正のために所得制限を設けて貧しい人に給付するというやり方では、貧しい人たちが既得権化し、中間層以上の人たちからのバッシングを受け、とくに中間層から租税抵抗を呼び起こす”(「第189回国会 国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会」での井手発言の要旨)と言っているように、階層分断を招くようなやり方ではよくないことの証明に使っていることが多いようです。

 

これはこれで理解できるのですが、本格的な格差是正のためには「最大の既得権者・層」にどう切り込んでいくか、だと思います。

 

追伸.井手教授の最新本は『分断社会ニッポン』(朝日新書)で、著者は井手英策、佐藤 優、前原誠司という“最強トリオが語り尽くす”(本の帯より)つくりとなっています。

 

★写真は、堤 未果物(国際ジャーナリスト)さんと井手英策(慶応大学教授)さん=1月1日付東京新聞

ピケティの予言が現実に>トランプ・リスクに大慌ての産業界

2017年の幕が開けましたが、米国トランプ次期大統領の出現で、世界は政治的・経済的に大きなリスクを抱えての出発となりそうです。

 

5日には、トヨタ自動車のメキシコ新設工場につきツイッターで「ありえない! 高い関税を払え」と投稿し、トヨタのみならずメキシコ進出企業は軒並み大慌てという事態になっています。グローバル化の先駆けともいうべきNAFTA(北米自由貿易協定)が危うくなっているのですが、グローバル化が行き過ぎた結果(含む、自由貿易)、その鬼っ子ともいえる人物が今や大統領になろうとしています。

 

それにしても世界最大の権力者になろうとしている人物が、一方的にツイッターで見解を述べる、攻撃する(しかも下品に)なんて、まったく信じられないことです。こんな人物が核のボタンを持つことになりますから、実に厄介極まりないですね。

 

ところで、こうした事態が起こり得るかもという予測は、トマ・ピケティの『21世紀の資本』の中に出ています。最初のフランス語版は2013年に出版されているので、3年前に予測できた?ということになります。当該箇所を見てみましょう。

 

こういうようなことが起きなければ、国粋主義的な色彩を持つ防御反応がほぼ確実に生じてしまう。たとえば、各種の保護主義と、資本統制の強制との組み合わせへの復帰が生じるかもしれない。…これはほぼまちがいなくフラストレーションにつながり、国際的な緊張が高まってしまう。〔「第15章 世界的な資本税」日本語版540頁〕

 

「こういうようなこと」とは、「世界的な資本税(注:資産税)」の実現のことですが、それを何のために行うのかと言えば、歴史的な最高記録となりつつある富の格差をもたらしている「21世紀のグローバル化した世襲資本主義」を規制し民主主義を取り戻すため、です。そうでなければ、資本主義は「次の危機や次の大戦(今度は本当の世界大戦になる)を待つ」ことになるからです。〔以上、「第13章 21世紀の社会国家」日本語版489頁の要約〕

 

どうでしょうか? “米国ファースト”を掲げるトランプ新大統領の出現は、文字通り「国粋主義的な色彩を持つ防御反応」として保護貿易などに走りつつあります。さらに、今後(米国の雇用を奪っていると信じ込んでいる)中国との間できな臭い出来事が生ずる恐れなしとは言えません。

 

とはいえ、私たちは引き続き、民主主義を取り戻すために世界的な資産税をめざすことになりますが、これはピケティも言うように徹底したグローバルな金融の透明性と情報共有が前提となります。そういう意味で、現在OECD/G20が取り組みつつあるBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの取組みを前進させていくことが必要です(とくに税務当局に提出する多国籍企業の国別報告書の取組み)。この取り組みの進展なくしてタックスヘイブンを根絶することはできません。

 

また、欧州(10カ国)でなかなか決まりませんが、金融取引税の取組みにも注目していくことが重要です。こちらも金融の透明性と情報共有が求められるからです。

 

さて、最新の富の格差ですが、昨年末ブルームバーグが次のような記事を配信していました。2016年中経済・景気の浮き沈みはあったものの「(世界の)富豪の資産評価額の合計は今年に入って12月27日の株式取引終了時点までに5.7%、2370億ドル(約27兆9000億円)増加した」(16年12月28日付ブルームバーグ)。昨年1月に「世界で最も富裕な62人の資産と世界人口の(下位)半分の36億人の資産の合計とほぼ同じ」と国際NGOオックスファムが発表しましたが、今年は最富裕層の数がいっそう減っていくと思われます。

*【ブルームバーグ】世界の富豪の資産評価額:今年は27.9兆円増加

 

●トランプ次期大統領のツイッターのフォロアー:18,946,051人!!
 

みなさま、よいお年を!来年もよろしくお願いします

セツルメント

 

昔々日本のどの大学にもセツルメント部というのがあり、貧しい人々のコミュニティに入り、識字運動とか、子ども会活動とかを、今で言うボランティア活動を行っていました(今でもあるとのことですが)。

 

しかし、日本がだんだん豊かになり1980年代に入ると、学生・青年たちは貧困に喘ぐ人々を支援するために大挙してアジアに出かけ、今日のNGO/NPOを基礎を作りました。

 

そして2000年が過ぎたら、また日本でもワーキングプア―が非正規雇用とともに大量に表れ、今年に入るや子ども食堂が全国に作られるなど貧困・格差が目に見えて現れてきました(相対的貧困率がOECD加盟30か国のうち下から4番目!)。

 

グローバリゼーション(経済のグローバル化)から取り残されているのは、これまでは圧倒的に途上国の人々でしたが、今や先進国の中流階層にまで及び、このことが英国のEUからの離脱や米国のトランプ新大統領を生み出した要因のひとつになりました。

 

確かにトランプ新大統領の誕生は、ひとりよがりの米国ファースト政策を推進しようとするでしょうから、国際協力・協調政治や経済を困難にさせるでしょう。しかし、こうしたある意味とんでもない政治家の登場はこれまでのグローバリゼーションとして体現されていた資本主義そのものの破壊というか自滅につながって
いくのかもしれません。

 

時代は、一時バーバリズム(野蛮主義)に陥るかもしれませんが、その後はグローバリゼーションの時よりも理性的な世界を構築できるかもしれません。そのためにもグローバル連帯税(含むタックスヘイブン根絶)を求める運動は欠かせません。

 

それではみなさま、ご健康に留意され、よいお年をお迎えください。

 

★グローバル連帯税フォーラム代表理事: 田中 徹二

 

 

ポスターは【井上直行 弁護士ブログ」より】
http://kansaigodo.blog42.fc2.com/blog-entry-213.html
「懐かしいポスターが貼ってありました。30年前の全国学生セツルメント連合の新入生勧誘ポスターじゃないでしょうかね?」とのキャプション

SDGs(持続可能な開発目標)「実施指針」策定される

去る12月22日、安倍総理出席のもと「SDGs推進本部」第2回会議が開催され、『SDGs実施指針(本文)』および『SDGsを達成するための具体的施策』が策定されました。
 *12月22日SDGs推進本部決定: http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/

 

国連SDGs採択から日本「SDGs実施指針」策定へ

 

ご案内のように、持続可能な開発目標(SDGs)は昨年9月の国連持続可能な開発サミットにおいて、ポストMDGs(ミレニアム開発目標)として策定されたもので、その内容は2030年までに世界から貧困をなくすなど、持続可能な社会をめざす17の目標が掲げられました。この目標は、同サミットで採択された成果文書『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』(以下、2030アジェンダ)の中に出てきます。
 *2030アジェンダとSDGs:http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf 

 

このSDGs採択を受けて、各国でも国内課題を含むSDGs推進のための政府組織等が作られつつありますが、日本はいち早く内閣総理大臣を本部長、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」が本年5月に設立されました(同月開催されたG7伊勢志摩サミットの議長国としてのイニシアティブもあり)。この推進本部体制の特徴として、全政府を網羅した事務作業部門と非政府系のステークホルダーとによる「SDGs推進円卓会議」が設置されたことです。

 

この非政府系のステークホルダーの構成員は次の通りです。NGO/NPOセクター3人、民間(企業)セクター3人、有識者3人、国際機関3人、消費者団体1人、労働団体1人。円卓会議は9月、11月の2回開催され、その後パブリックコメントの募集があり、その上で上記SDGs実施指針が策定されました。

 

MDGsとSDGsとはどう違う?

 

ポストMDGs (ポスト2015開発目標)がSDGsであると述べましたが、MDGsとSDGsとはどう違うのでしょうか。MDGsは開発・貧困問題など主に途上国の目標であったのですが(8つの目標中7目標が途上国の課題)、SDGsは世界の環境、社会、経済の3分野を網羅し(それで目標が17にもなった)、したがって途上国のみならず先進国も取り組むべき国際社会の普遍的な(ユニバーサルな)目標となったことです。

 

つまり、先進国である日本も17の目標を指針にして(貧困や格差問題などの)国内ならびに(途上国支援など)国際的な取り組みを、2030年に向けて行っていかなければならない、ということになります。

 

「SDGs実施指針」をどう評価するか

 

さて、日本政府の「SDGs実施指針」についてどう評価すればよいでしょうか。結論的に言えば、SDGs(2030アジェンダ)実施に向けた構えというか心意気としては素晴らしいものがあります。しかし、その実施基調については多々疑問が出てきます。

 

◎「大胆かつ変革的な手段をとる」との心意気や良し

 

『指針・本文』は次のように言います。「我々は、これまでと異なる決意を持って、国際協調主義の下、国際協力への取組を一層加速していくことに加え、国内における経済、社会、環境の分野での課題にも、またこれらの分野を横断する課題にも、国内問題として取組を強化するのみならず、国際社会全体の課題としても取り組む必要がある」(「1 序文」の「(1)2030アジェンダの採択の背景と我が国にとっての意味」)。

 

「これまでと異なる決意」とは「(SDGs実施に向け)大胆かつ変革的な手段をとる」ということで、その心意気は大いに良し!です。

 

◎ビジョンの独創性なし

 

しかし、心意気とは裏腹に、指針の最も目玉となる「ビジョン」(「3 ビジョンと優先課題」)については見るべきものがありません。つまり、《我が国として》国内的にも国際的にも“これこれこのような持続可能な社会・世界を目指す”という独創性がないのです。『指針・本文』は言います。「我々は、2030年までに以下のことを行うことを決意する。あらゆる貧困と飢餓に終止符を打つこと。国内的・国際的な不平等と戦うこと。平和で、公正かつ包摂的な社会をうち立てること。…以下省略」と。これは国連文書『我々の世界を変革する』の第3パラグラフそのまま!で、これが《我が国のビジョン》のエッセンスなのです。

 

◎気になる(経済)成長依存主義

 

なぜ自らの確たるビジョンが出せなかったのか。『指針・本文』が井手英策慶大教授の言葉を借りなら「(経済)成長依存主義」に陥っている日本社会のあり方を一方で持ち上げ、他方では必ずしも成長主義ではない『2030アジェンダ』のエッセンスのアマルガム(混合物)となっているからと思われます。

 

『指針・本文』の「2 現状の分析」のところの「(2)現状の評価」を見ますと、(現在日本政府が推進している)「一億総活躍社会」の実現はSDGsのキーワードである「誰一人取り残さない」と軌を一にしていると述べています。そして一億総活躍社会の実現のためには、まず経済成長を強化し、その果実をSDGsや社会保障に回す(分配する)ことだと述べています。しかも、これこそ日本が他の先進国に先駆けて提示できるメカニズム(新たな「日本型モデル」)と高らかに言っています。

 

これは「成長なくして分配なし」という、それこそ経済のトリクルダウン論と同じく、とても古い考え方です。今日の世界的な論調としては(OECDなど)、「分配なくして成長なし」という方向性へと変化してきています。「不平等の拡大は経済成長の鈍化につながっており、富裕層以外の人々が恩恵を受けられるような税制によって(田中:つまり分配政策の強化によって)そうした状況が和らぐ可能性があると経済協力開発機構(OECD) が指摘した」(2014年12月9日ブルームバーグ電子版)。
 *OECDワーキングペーパー『所得格差の動向と経済成長への影響』:
http://www.oecd.org/tokyo/newsroom/inequality-hurts-economic-growth-japanese-version.htm 

 

一方、『2030アジェンダ』の方を見ますと、経済成長と不平等(分配政策)については明確に述べていませんが、その第27パラ(経済基盤)では「「我々は、すべての国のために強固な経済基盤を構築するよう努める。包摂的で持続可能な経済成長の継続は、繁栄のために不可欠である。これは、富の共有や不平等な収入への対処を通じて可能となる。…以下省略」と書かれています。

 

著書『21世紀の不平等』(*)で世界的に著名なアンソニー・アトキンソン氏(オックスフォード大学フェロー)は、「不平等は多くの国で生じており、豊かな国にも貧困が依然として存在している。…(中略)IMF(国際通貨基金)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事も『不平等は世界の経済的システムの安定性を脅かすものだ』と述べた。そして国連のメンバーは2015年9月に、貧困と不平等の問題を強調した『持続可能な開発のための2030アジェンダ』に署名した」(東洋経済online15年12月)と述べています。
 *「貧困度の高い日本は格差是正策を打つべきだhttp://toyokeizai.net/articles/-/97409 
 (*)『21世紀の不平等』は日経新聞の「2016年エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」の堂々第一位となっています
   http://www.nikkei.com/article/DGKKZO11042800U6A221C1MY5000/

 

SDGsの背景をなす『2030アジェンダ』のそもそもの意義につき、アトキンソン氏は「貧困と不平等の問題(の解決)」と喝破していることが印象的です。

 

SDGsの今後

 

以上『SDGs実施指針(本文)』の方をざっと見てきましたが、指針に基づいた『SDGsを達成するための具体的施策』の方もチェックしなければなりません。こちらの方は、基本的に各府省庁が実際に行っている政策・プロジェクトを寄せ集めているという感じです。肝心の「貧困と不平等・格差問題」については“子どもの貧困”を取り上げているにすぎません。

 

またタックスヘイブン対策やグローバル連帯税の創設というSDGs市民社会ネットワークからの提案も具体的施策に反映されないままです。

 

ともあれ、実施指針づくりにおいて本部事務局は様々なステークホルダーによって構成される「SDGs推進円卓会議」を設置し意見を吸い上げる努力をしていたことも事実です。「5 推進に向けた体制」の「(3)ステークホルダーとの連携」でも、NPO・NGO、民間企業、消費者、地方自治体、科学者コミュニティ、労働組合がしっかりと入りました(当初の「たたき台」では民間企業だけがカテゴライズされていた)。あと農民団体、生活協同組合、障害者団体、先住民、若者・青年等もメンバーになることが望まれます。

 

NPO・NGOとして円卓会議をけん引したのはSDGs市民社会ネットワークです。同ネットワークは実施指針が策定された12月22日、日本記者クラブで共同記者会見を開催しました。これには日本政府や企業関係者、学界、国際機関の方々も参加し、「実施指針は“目的”ではなく、あくまでも達成のためのスタートラインである」ということを確認しました。
 *記者会見: http://www.huffingtonpost.jp/ugoku-ugokasu/sdgs_1223_b_13840326.html 

 

SDGsは今年(2016年)が開始年ですが、今後世界レベルでは国連総会主催の下で フォローアップ・レビュー4年に1回行われることになりますが、ハイレベル政治フォーラム(HLPF)が毎年自主的レビューを行っていきます。来年(2017年)夏には日本もレビューを行うということで、この実施指針がたたき台となっていくと思います。

 

★ロゴは、ハイレベル政治フォーラム(HLPF)のものです。

29年度税制改正大綱:国際連帯税盛り込まれず>5年連続

政府・与党は12月8日、平成29年度の税制改正大綱を決定しましたが、国際連帯税については今回も盛り込まれませんでした。これで、政権が交代した25年度大綱から5年連続して国際連帯税の文言が外されたことになります。

 

ただし、国際連帯税に繋がる関連部分として(*)、毎年のことですが、次のような記述がなされています。「また、わが国の経済社会の変化や国際的な取組の進展状況等を踏まえつつ、担税力に応じた新たな課題について検討を進めていく」(第一 平成29年度税制改正の基本的考え方)。

 

与党の(合同)税制調査会で国際連帯税につきどのような議論がなされたのかはまだ分かりませんが、前年度には(政権交代以後はじめて)議論のテーブルに乗り、「長期的な検討課題扱い」となりました。今年はここから前進したのか、あるいは後退したのか、が問題です。

 

税制改正に向けて、この間フォーラムは有力国会議員、府省庁へ一定ロビー活動を行いました。また、国際連帯税議員連盟も外堀を埋めるべく航空業界との意見交換などを行いました。さらに、外務省も独自で動いていました。しかし、税制調査会全体また官邸を動かすまでには至りませんでした。

 

ともあれ、5年連続して大綱に盛り込まれなかったという現実を見据え、今後抜本的対策を考えていきたいと思います。

 

 

(*)国際連帯税に繋がる関連部分について:

 

平成26年度税制改正大綱では、「(税制抜本改革法)においても示されているこうした課題について検討を進め、所要の措置を講ずる。また、今後、内外の社会情勢の変化を踏まえつつ、担税力に応じた新たな課税について検討を進める」と記述されましたが、この税制抜本改革法が連帯税に繋がる根拠です。

 

つまり、この「税制抜本改革法」(2012年8月国会で成立)では、その第7条の7で「国際連帯税について国際的な取組の進展状況を踏まえつつ、検討すること」と謳っています。ですから、「こうした課題について検討を進め、所要の措置を講ずる」という中に国際連帯税も含まれることにもなります。

 

注)「税制抜本改革法」の正式名は「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」。