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【速報】国際租税枠組み条約に向けた付託事項草案、圧倒的多数で採択!!

 国連投票結果

           <クリックすると大きな画面になります>

 

8月16日国連において「国際租税協力に関する国連枠組み条約の付託事項の草案」(1)に関し採決を行ったところ、【賛成:110、反対8、棄権44】ということで、草案が圧倒的多数で採択されました。

 

反対の8カ国は、オーストラリア、カナダ、イスラエル、日本、ニュージーランド、韓国、イギリス、アメリカ(英語圏+米国の関与が強い国と言えますか)。

 

また、先進国で賛成に回る国はなく、賛成はグローバルサウス諸国(含む、中国・インド等新興国)の大多数だけということになり、くっきりと南と北の分断が明らかになりました。

 

ちなみに、枠組み条約を作ろうということになった、2023年11月22日の「国連における包摂的かつ効果的な国際租税協力の促進」決議の採択状況は次の通りです。【賛成125、反対48、棄権9】。この時ほとんどの先進国は反対でしたが、今回は上記8カ国を除き棄権に回ったため、反対がぐっと減りました。

 

■ グローバルサウスのアフリカ・ブルンジからの声

 

ブルンジ国連政府代表部は「X」で、次のようなコメントを出しています(2)。

 

素晴らしいニュースです!国際租税協力に関する国連枠組条約の付託事項の草案が、本日 2024 年 8 月 16 日に採択されました。この重要な節目により、グローバルサウスが国際税務の議論に平等に参加できるようになります。南側諸国はこの歴史的な決定を圧倒的に支持しましたが、北側諸国の大半は棄権または反対票を投じました。この分裂は、真の国際租税協力を達成する上での継続的な課題を浮き彫りにしています。こうした違いにもかかわらず、この成果は、世界的な税の公平性を強化し、持続可能な開発を支援するための重要な一歩となります。公正で公平な国際租税システムを求めるキャンペーンは続きます!

 

■ 今後のタイムテーブル>3年かけて枠組み条約と2つの議定書を作成

 

今後のタイムテーブルですが、この草案が本年の総会で採択された後、「IV. 交渉のアプローチと期間」によれば、3年かけて枠組み条約と2つの議定書(3)を作成することになっています。つまり、2027年末までに完成させるとのことです。アフリカ・グループは2年を主張していましたが、先進国側に押し切られたようです(4)。

 

ともあれ、この草案には何点かの問題点はありますが、全体的にはきわめて包括的かつ野心的なものです。一方、我が日本政府は枠組み条約に対して一貫として後ろ向きの姿勢を取っています。建前としてはグローバルサウスとの連携、連帯を言いながら、いざ国際租税取極めを巡っては分裂、分断を選択しています。こうした拗ねたような姿勢ではなく、グローバルサウスのためにも、OECDでのBEPSプロジェクトをけん引した日本政府・財務省の英知を国連租税枠組み条約の取り組みでも生かせるようにしていただきたいと思います。

 

(1)草案最終版

 

(2)ブルンジ国連政府代表部の「X」

 

(3)二つの議定書について

<草案最終版より>

15. 枠組み条約と同時に2つの初期議定書を作成すべきである。早期議定書の1つは、デジタル化とグローバル化が進む経済において、国境を越えたサービスの提供から派生する所得に対する課税を扱うべきである。

 

16. 第二の早期議定書の主題は、政府間交渉委員会の組織会合で決定されるべきであり、以下の特定の優先分野から選択されるべきである:

  a. デジタル化経済への課税

  b. 税関連の不正な資金フローに対する措置

  c. 租税紛争の予防と解決

  d. 富裕層による脱税と租税回避に対処し、関連する加盟国における効果的な課税を確保する。

 

(4)European Network on Debt and Development (Eurodad)のポリシー&アドボカシー・マネージャーのTove Maria Ryding さんの「X」より

 

※写真は、Tove Maria Ryding さんの「X」より

 

「SDGs推進への資金確保 連帯実現へ 日本も動け」朝日新聞掲載

miyakoshi' report

 

8月7日付朝日新聞「私の視点」コーナーに、当フォーラム理事の宮越太郎氏の投稿が掲載されましたので、紹介します。なお、文中にある「ジョセフ・スティグリッツの外交誌での論稿」というのは、FOREIGN AFFAIRS誌に載ったThe International Tax System Is Broken(国際課税システムは破綻している)です(*)。

 

 

宮越太郎さん「私の視点」

SDGs推進への資金確保 連帯実現へ 日本も動け

 

6月末の国連報告によれば、2030年達成が目標のSDGs(持続可能な開発目標)の内83%が達成されていない。大きな原因は資金不足で、不足額は年間約4.2兆ドルに上る。ESG投資など民間資金は広がっているが、公的資金の拡大なしに達成は難しい。

 

大きなウェートを占める目標が、気候変動対策だ。昨年のCOP28 (国連気候変動会議)では、フランスのマクロン大統領が、「国際課税に関するタスクフォース」を発足した。化石燃料や海上・航空輸送への課税、国境を超えた経済取引の恩恵を受ける金融取引への課税など、グローバルタックス(国際連帯税)に基づく革新的な資金調達手段を決めるのが目的である。グローバルタックスは、従来の国家主権に専属した課税では対応できない、国境を超える取引や資産に課税し、税収を地球規模課題の解決などに充てる税制だ。

 

すでに導入されているのが航空券連帯税だ。税収はユニットエイドという国際保健機関に送られるが、医薬品開発などは成功率が低くリスクが高いので、まさに公的資金が適しているといえる。

 

…中略…

 

これまで先進国中心のOECDが国際課税ルールを策定してきたが、現行制度では年間約4800億ドル(約72兆円)の租税漏れが生じるため、昨年、国連が国際課税の公平な制度を目指し「国際租税協力枠組み条約」交渉開始の決議をした。9月の国連総会で進捗報告が予定されている「枠組み条約」には、租税回避を許す欠陥税制を改革するものと期待が集まる。ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツも7月、外交誌にそう明確に指摘した論稿を寄せた。

 

この条約に加え、今年と来年はSDGs達成の資金調達にとって決定的に重要な年となる。一つは11月に開催されるCOP29で、気候変動対策へ向けた資金動員が主要な議題になる。二つ目は来年十年ぶりに国連の第4回「開発資金国際会議」が開催されることだ。第3回ではその後の開発資金調達の指針となる行動目標が策定された。

 

グローバル連帯税フォーラム(http://isl-forum.jp)はグローバルタックスや枠組み条約の実現に向けて動いているが、非現実的と批判されることも多い。しかし、これらのアイデアはむしろ国境を越えて繋がる今の世界の現実に即したものだ。SDGsを取り巻く困難な現実に世界が諦めつつある中、国際課税のようなアジェンダに大きな発言権を持つ日本だからこそ、官民総掛かりでこの現状を変え得るアイデアに挑戦すべきではないだろうか。

 

(*)原文はこちら邦訳はこちら。

「SDGs推進への資金確保 連帯実現へ 日本も動け」朝日新聞掲載

miyakoshi' report 

 

8月7日付朝日新聞「私の視点」コーナーに、当フォーラム理事の宮越太郎氏の投稿が掲載されましたので、紹介します。なお、文中にある「ジョセフ・スティグリッツの外交誌での論稿」というのは、FOREIGN AFFAIRS誌に載ったThe International Tax System Is Broken(国際課税システムは破綻している)です(*)。

 

 

宮越太郎さん「私の視点」

SDGs推進への資金確保 連帯実現へ 日本も動け

 

6月末の国連報告によれば、2030年達成が目標のSDGs(持続可能な開発目標)の内83%が達成されていない。大きな原因は資金不足で、不足額は年間約4.2兆ドルに上る。ESG投資など民間資金は広がっているが、公的資金の拡大なしに達成は難しい。

 

大きなウェートを占める目標が、気候変動対策だ。昨年のCOP28 (国連気候変動会議)では、フランスのマクロン大統領が、「国際課税に関するタスクフォース」を発足した。化石燃料や海上・航空輸送への課税、国境を超えた経済取引の恩恵を受ける金融取引への課税など、グローバルタックス(国際連帯税)に基づく革新的な資金調達手段を決めるのが目的である。グローバルタックスは、従来の国家主権に専属した課税では対応できない、国境を超える取引や資産に課税し、税収を地球規模課題の解決などに充てる税制だ。

 

すでに導入されているのが航空券連帯税だ。税収はユニットエイドという国際保健機関に送られるが、医薬品開発などは成功率が低くリスクが高いので、まさに公的資金が適しているといえる。

 

…中略…

 

これまで先進国中心のOECDが国際課税ルールを策定してきたが、現行制度では年間約4800億ドル(約72兆円)の租税漏れが生じるため、昨年、国連が国際課税の公平な制度を目指し「国際租税協力枠組み条約」交渉開始の決議をした。9月の国連総会で進捗報告が予定されている「枠組み条約」には、租税回避を許す欠陥税制を改革するものと期待が集まる。ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツも7月、外交誌にそう明確に指摘した論稿を寄せた。

 

この条約に加え、今年と来年はSDGs達成の資金調達にとって決定的に重要な年となる。一つは11月に開催されるCOP29で、気候変動対策へ向けた資金動員が主要な議題になる。二つ目は来年十年ぶりに国連の第4回「開発資金国際会議」が開催されることだ。第3回ではその後の開発資金調達の指針となる行動目標が策定された。

 

グローバル連帯税フォーラム(http://isl-forum.jp)はグローバルタックスや枠組み条約の実現に向けて動いているが、非現実的と批判されることも多い。しかし、これらのアイデアはむしろ国境を越えて繋がる今の世界の現実に即したものだ。SDGsを取り巻く困難な現実に世界が諦めつつある中、国際課税のようなアジェンダに大きな発言権を持つ日本だからこそ、官民総掛かりでこの現状を変え得るアイデアに挑戦すべきではないだろうか。

 

(*)原文はこちら邦訳はこちら。

 

 

【資料】セミナー「国連国際租税協力枠組条約設立の可能性を探る」

7月29日同上セミナーが開催されましたが、当日提案者が使用したパワポ資料を公開します。

 

1)報告1:「国連国際租税協力枠組条約の形成過程」

  -金子文夫・グローバル連帯税フォーラム/横浜市立大学名誉教授

 

 

 2)報告2:「国際租税協力枠組条約を巡る交渉の状況」

      &国連国際租税協力枠組条約への付託事項(TOR)草案の仮訳

  -青葉博雄・CNEO (Center for New Economic Order)

 

【若干の解説】

2023年12月、国連総会は決議78/230「国連における包括的かつ効果的な国際税務協力の推進」を採択し、国際租税協力に関する国連枠組条約の付託事項の草案を作成する権限を持つ特別政府間委員会を設立し、2024年8月までに委員会の作業を完了することを目指しました。

 

それで現在(本年4月26日~5月8日の特別委の第1回会議に続き)、7月29日~8月16日にかけて第2回会議が行われています。この会議に先立ち、枠組条約への付託事項(TOR)草案の改訂版が公表され、これに沿って議論されています。

 

青葉さんは、この草案内容において、そのまま「維持されるべき要素(守り)」と、さらに草案にはないが今後「追加されるべき要素(攻め)」を指摘しています。第2回会議で後者が多く盛り込まれることが期待されます。

G20財務相等会合、超富裕層への課税、国際租税協力枠組み条約

G20財務相・中銀総裁会議が25-26日に開催されますが、その共同声明のドラフトをロイター通信が入手したということで、電子版に掲載されています(注1)。様々な課題がある中で、議長国ブラジルがもっとも重視し今回の共同声明に盛り込もうとしていたのが「超富裕層へのグローバルな最低課税」案ですが、どうなりそうでしょうか?

 

■超富裕層へのグローバルな最低課税案は共同声明に盛り込まれるか?

 

ロイター記事は次のように述べています。「共同声明案はブラジルが強く主張する富裕層への課税強化について支持表明は盛り込まれず、IMFとブラジルの依頼で行われている収入に関する調査をG20財務相が注目していると記すにとどめた」、と。この富裕層への課税案は次回G20議長国となる南アフリカやアフリカ連合、そしてフランスやスペインなどが賛同しましたが、米国その他が反対したようです。

 

もっとも共同声明とは別に「国際課税協力に関するリオデジャネイロG20閣僚宣言」を上げるようですが、これは多分に議長国のメンツを立てるためでしょうか? ただ、この閣僚宣言が「国際租税協力に関する枠組み条約」との関連で述べられることになれば、たいへん意義のあるものになると思います。

 

ちなみに、タックス・ジャステス関係NGOのみならず、国際協力NGO・研究団体、労働組合は、まず枠組み条約を制定し、その中に富裕層への課税を盛り込むべきではないかと提案しています。同時に、多国籍企業への公正な課税、金融取引税なども。要するに、脱税、租税回避、利益移転、そして違法な資金流出を止めていく手立てを準備していくことです。

 

■OECDの権威の失墜>国連 国際租税協力枠組み条約の動き加速か?

 

なお、本日(25日)の日経新聞は、『デジタル課税遠い決着、独自税復活に懸念 G20の焦点に』と題し、次のように述べています(注2)。「これまで国際課税の議論は先進国の主導でOECDがけん引してきたが、近年はアフリカ諸国を中心に国連に軸足を移す動きもある。東京財団政策研究所の岡直樹研究員はデジタル課税の膠着が続けば『OECDの権威を失墜させかねない』と警鐘を鳴らす」。

 

日経新聞ではほとんど報道されていませんが、「国連に軸足を移す動き」とは国際租税枠組み条約づくりに動きのことですが、スケジュールは以下の通りとなります。
 1)7月29日~8月16日枠組条約の付託事項を起草する特別委員会の第2回目の会合
 2)ここで草案が合意されると、これを9月からの国連総会に報告し、最終決定を図る
 3)その後条約文の交渉が行われる。

 

◎以下、特別委員会によるドラフト(⇒この分析は29日のセミナーで行います)
国際連合枠組条約のゼロドラフト(2024年6月7日)
国際連合枠組条約の規約改訂案(2024年7月18日)

 

 

【セミナー「国連国際税務協力枠組条約の設立の可能性を探る」】

 

 ◎日 時:7月29日(月)午後7時~8時30分
 ◎提案者:青葉博雄・CNEO(Center for New Economic Order)代表/GATJ                        

      (Global Alliance for Tax Justice)世界委員会アジア代表             

      金子文夫・横浜市立大学名誉教授:

 ◎参 加:Zoomによるオンライン配信。gtaxftt@gmail.com から申込み下さい。
 ◎参加費:無料
   ※ 詳細は、こちらをご覧下さい。

 

(注1) 
G20財務相、共同声明で世界経済「軟着陸」の可能性に言及へ
(注2)
デジタル課税遠い決着、独自税復活に懸念 G20の焦点に

国際租税協力に関する枠組条約>スティグリッツの小論とセミナー開催

著名な経済学者のジョセフ・スティグリッツが、FOREIGN AFFAIRSオンラインに、『国際課税システムは破綻している しかし国連はそれを解決できる―ワシントンが邪魔をしなければ』と題して、現在国連で議論中の「国際租税協力に関する枠組条約」について寄稿文を寄せています。

 

今日まで国際課税ルールを主導してきたOECD(経済協力開発機構)の政策は失敗に帰していること、これを克服するためには途上国が主張するように、気候変動枠組条約の租税版となる国際枠組条約を創設すべきと訴えています。スティグリッツの寄稿文は下記をご覧ください。

 

■「枠組条約」問題は歴史的な取組み>しかし、日本ではまったく報道されず

 

この「枠組条約」問題ですが、二重の意味で歴史的ともいえる取組みとなりそうです。巨大IT企業等の目に余る租税回避行為に対し、OECD主導で「恒久施設なくして課税なし」という100年来の国際課税ルールの変更を、2021年にG20で合意しましたが、まずこのことが歴史的と言えます(まだ実施には至っていませんが)。さらに途上国側はこうしたプロセスが不十分として「国連枠組条約」として国際ルールを決めるべきとして、2023年に国連で採択したこと、です(現在、特別委員会で草案作成に向け議論中)。もし「枠組条約」案が国連で採択されるなら、気候変動問題に続いて歴史的なものになるでしょう。

 

ところが、日本では前者のことは報道されても、後者のことはまったく報道されていませんし、驚くべきことにシンクタンクなどでも分析や論文等が公表されていません。この背景には、日本を含むG7諸国がこぞって「枠組条約」創設に後ろ向きの態度を取っているからでしょうか。

 

そこであらためて私たちは国際租税枠組条約の意義を探るとともに、決して前向きではない日本政府を変えるために何をすべきか、ともに議論していくために下記のようなセミナーを開催します。ふるってご参加ください。

 

■セミナー「国連国際税務協力枠組条約の設立の可能性を探る」開催

 

◎日 時:7月29日(月)午後7時~8時30分

◎提案者:青葉博雄・CNEO(Center for New Economic Order)代表/GATJ(Global          Alliance for Tax Justice)世界委員会アジア代表

     金子文夫・横浜市立大学名誉教授:

◎参 加:Zoomによる配信。gtaxftt@gmail.com  から申込み下さい。

◎参加費:無料

詳細は、こちらをご覧ください。

 

 

 

国際課税システムは破綻している【FOREIGN AFFAIRS】

しかし国連はそれを解決できる―ワシントンが邪魔をしなければ

ジョセフ・E・スティグリッツ

 

国連の静かな廊下で激しい戦いが繰り広げられている。昨年 12 月、国連総会は、より公平な新しい世界税制の枠組みに関する交渉を開始する決議を可決した。提案されている国連国際税務協力枠組条約は、企業や富裕層が納税逃れを許す抜け穴だらけの現行の欠陥税制を改革するものである。

 

今日の租税回避の規模は驚くべきものだ。現在の制度では、企業や富裕層がタックスヘイブンに利益を「隠す」ことができる。毎年、多国籍企業の海外利益、つまり企業の本国以外で発生した利益の35% が、スイス、シンガポール、バミューダ、ケイマン諸島などの国に帰属し、利益が実際に発生した国の税務当局の手が届かない場所に帰属している。その結果生じる歳入の損失は、年間 2,400 億ドルから 6,000 億ドルに上ると推定される。

 

…以下、全文はこちらをご覧ください。

フォーラムへの夏季資金支援のお願い>3つの国際課税問題への取組み

例年ですと、梅雨の時期のはずですが、日本列島各地で35℃を超える猛暑日=危険日の日々が続いています。温暖化は容赦なく襲ってきていますが、みなさまにおかれましてはお元気でお過ごしのことでしょうか?

 

さて、グローバル連帯税フォーラムは6月26日第14回定期総会を行い、2024年度の活動方針を決めました。つきましては、今年度の私たちの活動を支えていただけるよう、夏季資金支援(カンパ)を訴えます。

 

第14回総会の議案書はこちらからお読みください。

 

◎驚くべきことに、日本では「国際租税枠組条約」に関し報道も分析・研究もなし

 

今年度のフォーラムの活動ですが、例年通り国内で国際連帯税の実現を目指すことはもとより、主に3つの国際的な課税問題に取り組んでいきます。一つは、ケニア、フランス、バルバドスを議長国とする「開発、気候、自然のための国際課税に関するタスクフォース」、二つは、本年のG20サミットの議長国であるブラジルが提唱している持続可能な開発資金創出のための「グローバル・ミニマム富裕税」(世界の超富裕層への世界最低富裕税)、三つは「国連国際租税協力に関する枠組条約」です。

 

これらの国際課税は、G20で合意されたBEPS枠組(巨大IT企業などの市場国での課税並びに世界最低法人税)以外の新しい動きですが、日本ではメディアも専門家も(!)ほとんど取り上げていません。とくに驚くことは、3番目の国際租税枠組条約問題について報道も分析・研究文もまったく見当たらないことです。この問題が近いうちに国連気候変動枠組条約のような条約になるかもしれないというのに、です。

 

この点、私たちも取り組みが遅れていたことから、まず「経緯と現状」を知ろうということで、セミナーを行うことにしました(下記、参照)。

 

以上、今年度の活動はこれらの国際課税をウォッチしつつ(必要に応じて日本政府にロビイングしつつ)、国内で国際連帯税の実現を図っていくという構えでがんばっていきたいと思っています。そのための資金支援(カンパ)の方ぜひよろしくお願いします。なお、会員になっていただき会費を納入=支援するという形でも結構です(会費は、個人一口3,000円/年、団体一口10,000円/年 となります)。

 

※資金支援、会費納入のお振り込み先は次の通りです。振り込みにあたっては、資金支援(カンパ)か会費かをお書きの上、gtaxftt@gmail.com  までご一報くださると助かります。

 

《 お振り込み先 》

■銀行口座: みずほ銀行 築地支店(支店番号015)

       普通 2698313

■口座名義: 国際連帯税フォーラム

 

 

【インフォ:セミナー「国連国際税務協力枠組条約の設立の可能性を探る」】

◎日 時:7月29日(月)午後7時~8時30分

◎提案者:青葉博雄・国際公務労連(PSI)東アジア事務所 所長

     金子文夫・横浜市立大学名誉教授:

◎参 加:Zoomによるオンライン配信。gtaxftt@gmail.com から申し込みください。

詳細は、こちら をご覧ください。

 

6月26日 グローバル連帯税フォーラム第14回定期総会を開催

グローバル連帯税フォーラムの第14回定期総会が6月26日に開催され、5つの議案が提案され、質疑討論ののち採択されました。

 

質疑のうち2つを紹介します。

 

・情勢認識として、国際課税政策をめぐり、議案書の方では国連側にルールづくりの主導権が移ったように書かれているが、実際は国連とOECDの間でどちらが主導権を取るのかせめぎ合い状況となっていることと認識した方が良い。

(⇒了解です)

 

・会員の特典のひとつとして会員向けのニュースレター発行が考えられないか、年3-4回、PDF版でもよい。

(⇒理事の中で編集長を決め、年4回程度の発行を考えたい)

 

※第14回定期総会の議案書はこちらからご覧ください。

 

【ご案内】セミナー:国連 国際租税協力枠組条約の設立の可能性を探る

g-taxセミナーを開催します! ふるってご参加ください。

 

      ~ストップ!多国籍企業・富裕層による脱税・租税回避~
    国連 国際租税協力枠組条約の設立の可能性を探る 

 

◎日 時:2024年7月29日(月)午後7時~8時30分
◎場 所:Zoomで開催
◎参加申込:

  希望者は次のアドレスに「7.29 g-taxセミナー」と明記の上申込み下さい。

  gtaxftt@gmail.com(担当:田中)

    ⇒参加希望者に、後ほどZoomリンクを送ります。   

◎参加費:無料
◎提案者:青葉博雄・CNEO(Center for New Economic Order)代表、GATJ(Global           Alliance for Tax Justice)世界委員会アジア代表
     金子文夫・横浜市立大学名誉教授

 

■各国は世界的な税制の不正利用により、年間4,800億ドルの税金を失っています。

 

この4,800億ドル(約72兆円)損失のうち、3,110億ドルは多国籍企業による国境を越えた法人税の不正利用により、1,690億ドルは富裕層によるオフショア税(タックスヘイブンなど)の不正利用により失われています(英Tax Justice Network、2023年)。

 

国際課税ルールは、長年OECD(経済協力開発機構)が担ってきましたが、経済のデジタル化やグローバル化が進行するにしたがって、国境を越えて事業展開をする巨大IT企業などが進出先の国(市場国)に工場や子会社など恒久的施設(PE)を必要としないため、PEがなければその国で課税できないという旧来の課税ルールを逆手に取り、市場国で莫大な利益を上げていながら法人税を払わず、租税回避を行ってきました。

 

これに対し、OECDはBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを立ち上げ、2021年にはG20の場で、①第一の柱:PEがなくても市場国で課税できるデジタル課税、②第二の柱:世界最低法人税ルール、が合意されました(BEPS包摂的枠組み)。

 

とはいえ、①については条約化が必要であり、現在その目途が立っていませんし、②についても具体的には2025年からはじまります(日本の場合)。こうして包摂的枠組みが始動してないことや、他方において依然として無課税・軽課税地であるタックスヘイブンが世界に存在していることから、上記のような巨額な税収損失を生んでいるのです。

 

■途上国の不満:「国際租税協力に関する枠組条約」を求めて

 

上記包摂的枠組みには途上国を含む140カ国余りが参加していましたが、途上国側からは議論には参加できるが意思決定過程には参加できないとの不満があり、こうした不満を背景に2023年11月22日、 国連総会第2委員会は決議「国連における包括的かつ効果的な国際租税協力の推進」を採択しました。

 

この決議には、主に途上国の125カ国が賛成し、英国、ドイツ、日本、米国を含む主に先進国約48カ国が反対し、OECD加盟国のアイスランド、メキシコ、ノルウェー、トルコを含む9カ国が棄権しました。

 

さらに、12月22日の国連総会において上記委員会決議が追認され、アドホック政府間委員会が2024年8月までに国際租税協力に関する枠組条約の草案作成し、2024年9月の国連総会で進捗状況の報告を行う、という段取りとなっています。その後条約文についての交渉が行われることになります。

 

このように国際課税ルール策定につき、途上国側は加盟国すべてが参加できる国連気候変動枠組条約のような組織を作り、国連が主導すべきという立場であり、先進国側はこれまでのようにOECD主導ということにこだわっています。

 

ともあれ、国連は草案作成に向けての委員会を設立し、草案作成に向け実質的な会合を2回行う段取りとなっています(1回目は4月26日~5月8日、2回目は7月29日~8月16日)。また、6月には委員会事務局がゼロドラフトを公表しています。

 

■「国際租税協力に関する枠組条約」作業の現在地、日本政府へのアプローチ

 

このように国際課税ルール策定を巡る状況は、現在大きく転換しようとしています。今日枠組条約を強く求めるグローバルサウスの声を先進国側はもはや押し留めることはできないことは明らかです。共に協力し合いながら本格的な租税に関する枠組条約ができることを望みます。国境を超えてビジネスを行う巨大IT企業などの多国籍企業や超富裕層が易々と租税回避できる(または過小課税で済む)体制がいつまでも許されることではありません。

 

今回のセミナーでは、以下につき報告をもらい、議論していきたいと思います。
1)国際枠組条約決議が採択されるまでの経過並びにその意義について
2)条約に関する作業委員会での議論と市民社会からの提言
3)日本政府を(真の)条約賛成派に変えるための取り組み

 

1)については、当フォーラムのもう一人の代表理事である金子先生から報告してもらいます。2)については、CNEO(Center for New Economic Order)代表/GATJ(Global Alliance for Tax Justice)世界委員会アジア代表として広く世界の市民社会・NGOと意見交換を行っている青葉さんから報告してもらいます。これらの報告を受け、セミナー参加者のみなさんとともに議論し、3)について考えていきたいと思います。ふるってご参加ください。(了)

 

 

 

ストップ 投機マネー! 財務省への質問と提案>国際課税と投機マネー対策

穀物相場

 

来る6月6日に「第82回財務省・NGO定期協議」(注1)がありますが、当フォーラムからも財務省へ質問と提案を行います。ブラジルやフランス並びにグローバル・サウスが議論している国際課税に関しての質問等が主な内容となりますが、その前に「投機マネー」について一言。

 

■穀物価格の急騰がはじまっている>投機マネーが価格上昇を増幅

 

現在投機マネーに翻弄されているのが為替相場の超円安ですが、世界の穀物相場でも投機マネーの動向で小麦など穀物価格が急騰しています。前者については、下記の財務省質問の項目に入っているのでそれを見ていただくとして、後者については5月6日付日経新聞の「穀物相場が急反騰 霜害・洪水、市場の雰囲気が一変」という記事に詳細が述べられています(注2)。

 

記事の要旨は、(コロナ禍やウクライナ戦争で)高騰していた穀物価格も過去2年間穀物生産地で豊作であったので価格が低下してきた。しかし、今日ロシア、ブラジル等大生産地での異常気象により穀物相場が反騰しており、そのため投機筋が「…買い戻しを迫られている。相場の上昇圧力は長引く恐れがある」というもの。

 

驚くべきことに、価格低下の時期にヘッジファンド(投機筋)が「穀物で過去最大規模のカラ売りを仕掛けていた」ということです。小麦で見ますと、2022年3月7日トン当たり523.7ドルを付けていましたが、24年5月3日には222.7ドルまで下落してきました(「穀物等の国際価格の動向」農水省)。すると、下落幅のかなりの部分は投機筋の仕掛けによるのではないかと思われます。ところが、今や相場が反騰してきたため、売った分を大急ぎで買い戻さなくてはならなくなり、価格急騰として現れているというわけです。

 

今や私たちの生活は、超円安によるインフレ・物価高騰に苦しんでおり、今後さらに穀物価格高騰が拍車をかけそうです。

 

■財務省への質問と意見(案)

 

1、日本円はじめアジア通貨安を止めるための投機筋への対処方法について

 

今日のドル高により日本円はじめアジア通貨安が一段と進んでいる。このため国内ではインフレ・物価値上げが進行しており、低所得国では対外債務返済額が増大し、債務リスクが進行している。為替相場を決定するのは「①貿易、②(米国との)金利差、そして③投機」(池田雄之輔「円安シナリオの落とし穴」)の三要素だが、とくに短期間の上昇・下落は投機筋の仕掛けによる。日本円についていえば、円の理論値である「日経均衡為替レート」(日経新聞)は133円であり(購買力平価では90.82円)、この値は基本的に経済のファンダメンタルズを示す上記①と②の値であり、投機筋が20数円も押し下げていることになる。

 

ところで、円安の要因を構造的問題として貿易赤字を挙げるエコノミストもいるが、前年度(年間)赤字は5.9兆円。一方、ドル円の東京市場での為替取引量は「1営業日」で67兆円なので、貿易赤字が円安に寄与する割合ははるかに小さい。

短期的に為替相場を守るには、為替介入か金利を上昇させるしかなく、日本はじめ中国、韓国、インドネシア、マレーシアが為替介入を行っている。しかし、対外債務を抱える低所得国では為替介入を行う財政的余裕はなく、また金利の上昇も困難である。

 

以上から質問: 日本政府・財務省はかかる通貨安に苦しむアジア各国を糾合し、まずは投機筋に対抗するために協調介入を行う用意はないか? また、一時を凌ぐ協調介入だけでなく、絶え間ない投機筋の圧力からアジア各国及び日本を守るために、アジア共通金融取引税(為替取引税)を実施する用意はないか? 税収については、アジアの重債務国支援のための原資とすべき。

 

2、国際的に議論が高まっている「BEPS包摂的枠組み」の第3の柱としての国際課税への対応について

 

今年のG20サミット議長国であるブラジルが、財務相・中央銀行総裁会合で、「グローバル・ミニマム富裕税」を議題に挙げ、OECD/G20で合意されたBEPS包摂的枠組み(国際課税ルール)の2つの柱に続く第3の柱として位置づけるべきと主張し、サミット本番に提案するとしている。

 

また、フランス・ケニア・バルバドスを議長国とする「開発・気候・自然のための国際課税に関するタスクフォース(以下、TFと略)」が先のIMF・世銀春季総会の期間中に始動しはじめたが、同TFは化石燃料による汚染や金融取引への課税など5つほどの国際課税オプションを検討し、2025年のブラジルでのCOP30時に公表し、やはり第3の柱としてG20レベルで実施を提案する予定である。このTFには有志国が参加することになっているが、現在OECD・DAC(開発援助委員会)に属する国の参加はフランスとスペインにとどまっている。

 

コロナ・パンデミックや気候災害、そして債務危機に見舞われている途上国では、SDGsを達成する資金として4兆ドルを超えて不足していると言われている。先進国のODAでは圧倒的に足りず、期待する民間資金も低所得国等資金が必要とするところには届いていない。従って、国際社会は世界銀行やIMFなどIFIs(国際金融機関)の改革を通して、また共通の国際課税を通して、資金調達を行おうとしている。

 

後者につき、ブラジル提案やTF提案に関して相互に議論されることになれば、開発や気候対策のための新しい資金が、BEPS包摂的枠組み(国際課税ルール)の3つ目の柱として、グローバルな規模で創出される可能性が出てくる。

 

以上から質問: 日本政府・財務省は上記ブラジル提案やTF提案に関して、どのような見解をもっているか? 並びにTF議論につき、我が国では国際連帯税議論の経緯もあるのでこれに参加する予定はないか?

 

3、国連「国際課税協力に関する枠組条約」について

 

BEPS包摂的枠組は、OECDつまり先進国主導の進め方であるとして、グローバル・サウスは不満をもっている。グローバル・サウスは気候変動問題と同じように国連の枠組条約をつくりそこで国際課税のルール形成をしたいと考えている。

 

以上から質問:こうした動きを日本政府としてどのように認識しているか?

 

(注1)

財務省・NGO定期協議(事務局:「環境・持続社会」研究センター)  h

(注2)

穀物相場が急反騰 霜害・洪水、市場の雰囲気が一変 (5月16日)